このぼっちな少女と狂戦士に祝福を!   作:一雪氏

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第6話

 

 

「もう一度、今度は今日まで起こった出来事も含めて、考えを整理してみましょう」

 

 

 あれから全く役に立たなくなっためぐみんに対して、私は半泣きになりながら説得を行い、なんとか気持ちを持ち直させることに成功した。

 

 

 とりあえずお昼を少し過ぎた時間になったので、私達はお腹が空いたこともあり、2人で落ち着いて話し合うためいったん場所を変えることにした。

 

 

 

 移動して着いた場所は、喫茶『デッドリーポイズン』。

 

 紅魔の里の中で喫茶店と言えばここ!となるくらいには有名店である。

 

 その店で出される軽食やランチ・飲み物に関しての味が絶品であり、店内の雰囲気も変に派手すぎず地味すぎない、店主のセンスがキラリと光っている内装なため、里の中にも外にも一定のコアなファンがかなりいるらしい。

 

 惜しいのは『デッドリーポイズン』なんて飲食店としてどうなのかと問われるくらい、恥ずかしい店名だけであり、これが改善されればもっと里への旅行者が気軽に入れるのではないか、と私はいつも考えているのだけど。

 

 あれだけ喫茶店を経営することに関してセンスのいい店主に私が、それとなく、そのことを提案しても、「そんなことを言う里の住民はゆんゆんだけだよ?」と言って聞き入れてくれないし、里のみんなも「何か問題ある?むしろカッコいいじゃん!」みたいな顔をするので、私だけ感性がおかしいのではないか、といつもよく考えこんでしまう。

 

 

 

 

 そんな喫茶店に入り、内緒の話をしても聞こえないくらい店の奥の方の席に座って、店員さんに渡されたメニューから、私とめぐみんが決めたオーダーを注文した。

 

 お店に入る前に、めぐみんが『お金がないので奢ってください』と真顔で言ってきた。

 

 普段ならそれに少しは抵抗する私だが、相談内容が内容だけに今回は文句を言わず奢ることに。

 

 

 

 「まず、私達への敵意がなく、いきなり現れたあの怪物にはここ、紅魔の里への目的も執着もないはず。だから、どこかにすぐ去って行くだろうと言う私の仮説は、この7日間で里の近辺から見つかった怪物がつけたであろう痕跡から否定されました」

 

 

 この喫茶店の名物である「ナポリタン大盛り」をズルズルと食べながら、めぐみんは自分の考えを整理するように話してくれる。

 

 

 「こうなると、もうあの怪物の正体が何かとか、目的が何なのかとか、私達が考えて本当に結論に辿り着けるのかも怪しくなってきました。私達を見逃した理由とか、何故里の近辺に居座り続けているのかも、今ある情報だけでは、何が正しくて何が間違いなのかも分かりませんしね」

 

 「最悪、やっぱりあれはゆんゆんが呼び出した悪魔であり、一度は見逃したが何らかの事情があってあなたを探している、なんてことも考えられます」

 

 

 「でも、わざわざそんなことをする為に、あの怪物がこの近辺を探し回っているとは思えないわ」

 

 

 私はランチメニューである「ミックスサンドとサラダのセット」を注文し、お皿にあるサンドイッチの一つを手に取って、一口ずつ齧りながら、めぐみんの説を否定した。

 

 

 「だって、もし私を探すためにこの近くにいるのだとしたら、既に探索隊と鉢合わせてもおかしくはないでしょう?あんなに大きな足音を立てながら歩くのに、この7日間での収穫がその怪物の痕跡らしきものだけなんて、不自然よ!」

 

 「それに、森の中を私を探して彷徨っているのだとしたら、何故直接、紅魔の里には現れないの?めぐみんの説を今まで聞いてきた限りだと、あの怪物には一定の知性が感じられるわ。なら、この近くで私がいる可能性が一番高い里に来ていない時点でおかしいじゃない?」

 

 

 「そう、そこなんですよねぇ…………」

 

 

 ナポリタンを食べ終え、コップの水を一杯飲み干しためぐみんが、食べ終わった皿をテーブルの端に寄せて、机の上にグデっと頭を置きながら、お手上げだみたいな雰囲気で言ってきた。

 

 

 

 「……あの怪物の行動に、まるで一貫性がないのですよ」

 

「この里に襲撃するわけでもなく、離れていこうともしない。私達を見て襲ってこないあたり、意外と大人しい部類のモンスターかと思えば、一撃熊やオーク、果てはフェンリルと言った別のモンスターを食べる為ではなく、ただただ残虐的に倒していっていることから、見た目通りの攻撃的で、非常に危険な部類のモンスターかもしれない」

 

 「……どちらにせよ、あれが一体何をしたいのかが全く見えてきません……」

 

 

 

 ハァー、っとため息を吐くめぐみん。

 

 

 

 

 

 「…………本当、こんなことなら直接あの怪物に会って、目的を聞ければいいのにって思うわ……。ハァー、一体どうすれば……」

 

 

 めぐみんの無気力そうな顔から出る『もう無理。わからん!』みたいな雰囲気に引きずられて、私も一緒に暗い顔をして俯きながらそんなことを言うと。

 

 

 

 

 「…………そうか、その手が……。ゆんゆん、こうなったら、直接あの怪物に会いに行って目的を聞いてみますか?」

 

 「へ??」

 

 

 ガバッと顔を上げためぐみん。

 さっきまでの雰囲気がなくなったことから、何か思いついたみたいだけど……

 

 

 「会いに行くって、どうやって??大人が大勢で、しかも7日間も探し回ってたのに全然見つからなかったのよ?私達だけでどうやって見つけるって言うのよ?それに万が一見つけることが出来ても、どうやって会話するのよ?」

 

 

 

 ついにおかしくなったのだろうかと、相談に乗ってもらっている立場なのに失礼なことを考えていた私に、チッチッチッ、と人差し指を振りながら自信を取り戻しためぐみんが言った。

 

 

 「あの怪物に知性があることは分かっているので、会話が成立する可能性はかなり高いと思っています。問題なのは、これまでの痕跡から、あの怪物はやはり危険なのかもしれないということだけ」

 

 

 ですが、と一度説明を区切る。

 

 

 

 「里を襲撃してきていないことや、残虐的に倒した死体が報告されているのはモンスターのみです。あれが現れてから4, 5日の間に来ていた、里の外の旅行者には被害が出ていないことから、まだあの怪物は人に対しては危険ではない可能性も残っているのですよ」

 

 「た、確かにそうかもだけど、それは流石に楽観的すぎない?」

 

 

 めぐみんその考えを、確信は出来ないのだから危ないと私は言った。

 

 そんな私を、わかってますよ、と頷きながらめぐみんが続けて。

 

 「何故そんなに楽観的なのか、ちゃんと根拠もあります。それを示すためにはまず、あの怪物が今何処にいるのか。このあと私達がどうすればよいのかを占ってもらうのですよ……彼女に頼んで、ね」

 

 「……?……………!あ、あぁ!なるほど!!そうか、その手があったわね!なら、すぐに会いにいきましょう!」

 

 

 めぐみんの提案の意図が分かった私は、急いで残りのサンドイッチを食べて、会計を済ませてからその件(くだん)の女性が住んでいる家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「どうやら、今日は家にいるようですね」

 

 「うん!ちょうどよかったわ!」

 

 

 目的地に着いた私達は、その家の前にある『OPEN』の看板から女性がいることを知り、一先ず安心した。

 

 

 

 

 

 

 

 その女性ーーーそけっとさんは、『紅魔の里随一の美人占い師』であり、その占いはほぼ百発百中という凄い人なのだが、紅魔の里の人はあまり彼女に頼ることはないため、もっぱらお客さんは里の外の人達ばかりらしい。

 

 

 

 ちなみに、里のみんなが彼女をあまり頼らない理由は『占いで自分の未来が分かるなんて、そんなのつまらない。未来とは、自分の力で切り拓いていくものだ!!』という理由らしい。

 

 

 

 

 そんな彼女は時々、暇になっては『修行してくるわ!!』と言って、里の外に出て行き、しばらく帰ってこないこともあるらしい。

 

 私は、この騒動中にまだ彼女が里に居てくれてよかったと思った。

 

 

 

 

 

 「さぁ、行きますよ。ゆんゆん」

 

 「ま、待ってよめぐみん!ご、ごめん下さ〜い……」

 

 

 扉を開けて中に入って行くめぐみんの後ろをついて行くと、中は外が明るさとは反対に薄暗いことから、カーテンか何かで光を遮断しているのが分かり、代わりの光源としてランプの光が淡く部屋の中を淡く照らしていた。

 

 

 

 「あら、いらっしゃい。めぐみんにゆんゆん。久しぶりね、元気にしてた?」

 

 

 その部屋の真ん中にある丸いテーブルの上には、占いで使うのであろう水晶玉が小さなクッションの上にあり、そのテーブルを基準に私達と対になるよう置かれている椅子に、そけっとさんが優しく微笑みながら座っていた。

 

 スラっとした容姿に出るところはきちんと出ている、同じ女性でも憧れてしまうプロポーションを持った彼女を見て、やっぱり美人だなぁと私は思った。

 

 

 

 「今日はそけっとに、是非占って欲しいことがあって来たのですが」

 

 

 

 「……それは今、里で騒ぎになってる、例の怪物のこと?それとも、ゆんゆんがきちんと紅魔族の族長になれるかどうかについて?」

 

 

 

 「ッ!?」

 

 「やっぱり、知っていましたか……」

 

 

 そけっとさんの言葉にビクッと反応することしか出来なかった私とは別に、めぐみんは予想通りといった顔をした。

 

 

 「……そもそも、占いで未来が分かるそけっとが、里に危機が訪れるかも知れない状況で、何もしないなんてことがあるはずない。にも関わらず、族長達にそけっとが何も未来のことを伝えていない時点で、あの怪物は里に危険を及ぼすことはない、と考えれば分かったことなのですよ」

 

 

 「ふふっ♪正解!……流石に今回の件はマズいと思ってね?私はすぐに里の将来を占ってみたんだけど、あの怪物が里を破壊するなんて未来は見えなかったわ」

 

 「なら、そんなに焦ることもないかなって思って。噂になっている怪物のことについていろいろ占ってたの。例えば……怪物はどこから来たのか、とか……ね?」

 

 

 そけっとさんが、とても言いづらそうに目を逸らしながら、私の目をチラッと見ながら言った。

 

 

 

 

 

 「その…………偶然、ゆんゆんが魔法陣を描いているところが……」

 

 

 「わあああああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「だ、大丈夫ですよ、ゆんゆん!そけっとは商売上、口は固い方ですから!きっとバラしたりなんかしませんって!」

 

 

 「うぅ……ありがとう、めぐみん!!」

 

 

 最近はすっかりめぐみんに対して涙脆くなってしまった私を、そけっとさんがふふふっ♪と笑いながら口を手で隠して見ていた。

 

 

 

 「ごめんなさいね♪ついからかい過ぎたわ♪今回の占いはタダにして上げるから、それで許してちょうだい?」

 

 

 「ほ、ほら!そけっともこう言ってますし!よかったですね!ゆんゆん!

 

 

 「うん……うん!ありがとうございます、そけっとさん!」

 

 

 「いえいえ。代わりに、私が助けて欲しいときには、2人とも必ず1回は私を助けること。それで完全にその件については水に流してあげる♪」

 

 

 「ッ!?は……はい…………」

 

 やはりタダより高いものはないらしい。

 

 これからはもっと誠実に生きていこう。

 

 

 

 

 

 「……さて、お遊びもこれくらいにして……。2人とも、あの怪物について何を占って欲しいの?」

 

 再び落ちこんでいる私を他所に、そけっとさんがめぐみんに聞いていた。

 

 一度私の方を向いて『任せろ』と目で言ってきたので、私は『わかった。任せるね』と一回頷く。

 

 そしてめぐみんが、そけっとさんにこう質問した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あの怪物がこの数日、何処を拠点にしているのか。そして、その怪物が拠点にいるタイミングについて占って貰えますか?」

 

 

 

 

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