このぼっちな少女と狂戦士に祝福を!   作:一雪氏

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第9話

 

 

 

 

 「我が名はぺぷちど!『アークウィザード』にして、上級魔法を操るもの!紅魔族随一の旅先案内人にして、この里の外交的な雑務をこなすもの!いらっしゃい!族長、ゆんゆんにめぐみんも!おっ、彼が噂の大男かい?本当に噂通り、大きいねぇ〜!」

 

 

 「こんばんは、ぺぷちどさん。夜遅くにすみません!」

 

 「やぁ、ぺぷちど。悪いね、もう閉店の準備の最中だったろう?」

 

 

 「別に構わないよ。族長の頼みだ、とりあえず用件を聞こうじゃないか!」

 

 

 

 

 ぺふちどさんのお店は表向きは里の外交関係の窓口みたいなものだ。

 

 紅魔の里を訪れた旅行者に向けて、里で流行りのお土産やオススメ観光スポットへ行くための地図などの作成と配布と言った、観光案内を主に収入源にしている。

 

 

 それとは別に、里に何か依頼を持ち込まれたときには一旦私の父がその件を預かり、依頼内容が問題なければ、ぺぷちどさんのお店の掲示板に依頼書が貼られ、その依頼を里の誰かが受ける。

 

 

 彼のお店は、その中継点のような役割も持っているため、族長である父とは仲が良かった。

 

 

 

 

 

 そして、『冒険者カード』は本来ならば、『冒険者ギルド』という場所に置いてある魔道具を使わないと作ることが出来ない。

 

 カードを作成するためには、前払いでお金が必要なのだが、紅魔族は全員、ある程度の年齢になると学校に入ることになり、そこで生徒は出世払いという名目で『冒険者カード』を作ることになる。

 

 

 そのときの費用や、カードを作るための魔道具の管理も、外交的な問題から、このお店が全て管理しているのだ。

 

 

 私達は歓迎するよと笑顔のぺぷちどさんに、さっきの件についてお願いすると。

 

 

 「はぁー、なるほどね。そんな話を聞いたら、是非俺も知りたくなるってもんさ!……よし!ちょっと待っててくれ!」

 

 

 快く受け入れてくれ、一旦店の奥に入ると件(くだん)の魔道具を持ってきてくれた。

 

 

 「ほら!まずこのカードに自分の名前を書きな。それから自分の身長と体重なんかも書いて、この魔道具のここにカードを置くんだ。で、最後にこの丸い球の上に手を乗せりゃあ、いい。あとは勝手に魔道具がステータスを記入してくれるぜ!分かったか?」

 

 「■■■!」(コクッ)

 

 

 「よしよし、分かったみたいだな!あ、身長と体重に関して、もし憶えていないなら言ってくれよ?こっちで測る魔道具があるからな!」

 

 

 「■■!」(コクッ)

 

 

 『冒険者カード』を作成する手順の説明を真面目な顔?で聞いている大男を見て、これでまず彼の名前が分かるなと私は思った。

 

 彼が人間ならば、当然名前があるはずであり、いつまでも大男や怪物と呼ぶことは失礼だろう。

 

 

 「■■■■■!」(トントンッ)

 

 

 「ん?ああ、身長と体重の欄か。了解!ならこっちに来てくれ!」

 

 

 「■■!」(コクッ)

 

 

 「よし、その場から動くなよ?えっと……身長が約250cmで、体重が……300kgオーバー!?うわぁ、うちのこの魔道具じゃあ、これ以上は測れないぞ?……お前さん、本当に人間なのか??」

 

 

 「…………■■■」

 

 

 「ん?どうした?落ち込んで。ちょっと太っちまったか?大丈夫だよ!ここまでくれば誤差だよ、誤差!!」

 

 

 「………………」

 

 

 

 ……どうやら彼は、ぺぷちどさんと仲良くなったらしい。

 

 意外と社交的なのだろうか?

 

 こめっこちゃんとも、仲良さそうだったし。

 

 もしかしたら、私とも友達に…………

 

 

 

 

 

 

 そんなことを思っている内にカードに記入を終えたのか、それをぺぷちどさんへと渡し、指示通り魔道具の丸い球の上に大男は手を置いた。

 

 

 

 『冒険者カード』にステータスが書き込まられる風景を見て、彼は驚いた顔をしていたが、私達は魔道具が作動したことにホッとしていた。

 

 

 これで彼が正真正銘の人間だと分かったのだ。

 

 

 肩の力を抜いた父と目が合い、お互いに良かった良かったと静かに頷きあう。

 

 

 

 

 記入が全て終わった『冒険者カード』をぺぷちどさんが魔道具から取り出して、名前の部分を確認してもらうと

 

 

 「…………なんじゃ、こりゃ?」

 

 「ん?どうしたんだ、ぺぷちど。何か問題があったか?」

 

 「いや、問題っつうか……名前の部分だけが変な文字になっているんだが」

 

 

 「「「はっ???」」」

 

 

 ぺぷちどさんからカードを受け取り、私達3人で確認すると

 

 『??? ?????』

 

 「「「何、これ??」」」

 

 

 全く見たこともない文字になっていた。

 

 ……これじゃあ彼の名前が分からないじゃない…………

 

 本当に、彼は何者なのだろうか?

 

 いきなり私の目の前に現れるわ、言葉は分かるのに話せないわ、挙げ句の果てに名前すら分からないなんて。

 

 何か事情があるのだろうか?

 

 

 「って、何ですかこのステータスやスキルは?!」

 

 「え!?ど、どうしたのめぐみん。いきなり大声出して」

 

 「いや、見てくださいよみんな!冒険者としてのレベルとステータス、それから持ってるスキルのところ!」

 

 

 めぐみんが指指す部分を見ると

 

 

 「うわ?!なんじゃこりゃ?!名前の部分ばかり意識が行ってたが、このステータスやべぇぞ!?」

 

 

 「本当だ!パワーとスピードが見たこともないくらい高い!知力は平均より少し高くて、幸運はそこそこ、魔力は最低レベルだが、それを補って余りあるくらい、パワーとスピードが突出しているじゃないか!これってベテランの冒険者でも、中々いないんじゃないか?!」

 

 

 

 「いや、それだけじゃないぜ!!<パッシブスキル>の欄を見てくれ!『怪力』や『物理耐性(特大)』、『魔法耐性(小)』に『自己回復(微)』とか、物理アタッカーとして優秀なものばかり持ってるぞ!それに何だ、この『魔獣化』ってスキル!!こんなスキル、見たことも聞いたこともないぞ!?」

 

 

 

 「……あれ?めぐみん、彼のカードに『敵感知』みたいなスキルが載ってないよ?というか、1個も<アクティブスキル>を持ってないわよ、彼!」

 

 

 

 「え???……ほ、本当です!じゃ、じゃあ彼は一体、どうやって探索隊を撒いていたのでしょうか?……私、非常に気になります!」

 

 

 

 

 

 

 「■■……■」

 

 

 私達が彼の『冒険者カード』を見てワイワイと騒いでいると、蚊帳の外に置かれた大男が困ったように声を上げた。

 

 

 「あ、ご、ごめんね?あなたも見たいよね、『冒険者カード』。ほら、みんな!彼にカードを渡してあげようよ!」

 

 「ちょっ!ちょっと待って下さい!!まだ、もう少しだけ、じっくりと見たいです!」

 

 「そうだぞ、ゆんゆん!こんな面白……もとい、不思議なことはない!見ろ!このレベルの低さで持っているステータスやスキルの多さは不自然だ!これは何か秘密が」

 

 

 「めぐみん?お父さん?」

 

 「「…………ハ、ハイ」」

 

 

 ……全く2人とも、もっと彼のことを考えてあげなきゃダメじゃない。

 

 ほら、こっちを寂しそうに彼が見ているじゃない。

 

 

 

 めぐみんと父から『冒険者カード』を預かり彼に渡してあげると、説明を受けずにカードを操作していた。

 

 

 ……『冒険者カード』は持っていなかったのに、使い方は分かるの?

 

 

 ますます私は、彼のことが分からなくなった。

 

 

 

 

 

 「……あのスキル欄に載っていた『怪力』や『自己回復』はかなりレアなスキルですが、それ以上にあのスキルは一体何なのでしょうか?」

 

 

 「さぁな?俺の店も『冒険者ギルド』の真似事を長いことしているが、あんなスキルは初めて見たぜ?」

 

 

 「もしかしたら、あのステータスの高さだけじゃなく、彼が言葉を話せないこととか、彼の身体が異常なほど筋肉が発達しているのは、そのスキルのせいなのかもしれないね……。スキル名からして、ちょっと嫌な予感がするし」

 

 

 「「「「………………」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 「■■■■■ーーー!!」

 

 

 「「「「ッ!?」」」」

 

 

 

 私達が大男の『冒険者カード』に書いてあったスキルについて話し合っていると、カードの操作が終わったのか彼が声をかけてきた。

 

 

 彼が見せてきたカードを見てみると、職業やスキルポイントを使った割り振りを決めていたみたいだ。

 

 彼の職業の欄には、さっきまで記されてなかった『バーサーカー』の文字が。

 

 

 「……まぁ、あのステータスやスキルなら、最初から上級職である『バーサーカー』が選べても不思議ではありませんね」

 

 「つってもよぉ、『バーサーカー』を選ぶなんてお前さんも変わり者だなぁ……」

 

 「…………■■■■」

 

 「あ、いや、馬鹿にしてるわけじゃないのよ?だから落ち込まないで!ね?」

 

 

 めぐみんとぺぷちどさんが言ったことにショックを受けたのか、ちょっと悲しそうな雰囲気が彼からしたので慰めてみる。

 

 

 さっきから彼を観察しているけど意外と感情豊かなのだろう。

 

 ……ちょっと可愛いと思ってしまった。

 

 

 

 「いろいろ彼には聞いてみたいことはあるが、まず先に決めないといけないことがある」

 

 「……名前、だよね。お父さん」

 

 「あぁ、彼の本名が『冒険者カード』で分からない以上、とりあえず仮の名前を決めないと。いつまでも『彼』と呼ぶのは不便だからね。……すまないが、名前をここで決めていいかな?」

 

 

 

 「■■■!」(コクッ)

 

 

 彼の了解も得られたので、ここにいる私達で名前を決めることにした。

 

 

 彼の見た目からして、カッコいい名前がいいな……。

 

 カッコいい名前……カッコいい名前……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……『らんらん』」

 

 !?

 

 「め、めぐみん?そ、その名前は、いくらなんでもあんまりじゃ……」

 

 

 「お、いい名前じゃないか、めぐみん」

 

 「あぁ!筋肉美に溢れるお前さんにピッタリだぜ!」

 

 「えぇぇぇぇー!?」

 

 

 私がおかしいの!?私の感性がおかしいの!?

 

 

 

 

 バッと『らんらん』なんて名前をつけられそうになっている彼を見ると

 

 

 「…………■■■■■」

 

 

 誰が見ても分かるくらい、露骨に嫌がった顔をしていた。

 

 

 「ほ、ほら!彼も嫌がってるみたいだし、別の名前にしようよ!?ねっ!?」

 

 

 「そういうゆんゆんは、何か案はないんですか?文句だけなら誰でも言えますよ?」

 

 

 「え?私!?」

 

 

 めぐみんの質問にまだ彼の名前の案が出てこない私は、必死になって考えた。

 

 

 カッコいい名前……カッコいい名前……。

 

 あっ!

 

 

 

 

 「シンプルに、『バーサーカー』、とかどう!?ほら、彼って本名があるわけだし、あんまり変な名前はつけれないじゃない?それならいっそ、『バーサーカー』って職業は珍しいんだし、それを名前にしてみるとか!!」

 

 

 「おや、ゆんゆんにしては上出来な名前じゃないですか。何だか複数いる『バーサーカー』の職業を選んだ人の中でも唯一無二って感じがしますしね。この名前でどうです?」

 

 

 

 「…………■■■■■!」(コクッ)

 

 

 ちょっと悩んでいた気がするが、気に入ってくれたみたいで良かった。

 

 

 

 「よし決まりだ!それじゃあ大男くん。今日から君は、バーサーカーだ。よろしく。君は家がないからね、しばらくは私の家に泊まっていきなさい」

 

 

 「■■■■!」(コクッ)

 

 

 2人は握手を交わし、これからバーサーカーさんがどうするかはまた明日以降に話し合うことになった。

 

 

 

 ぺぷちどさんにお礼とお別れの挨拶をして、私達は今日はもうそれぞれの家に帰ることになった。

 

 

 私のベッドで寝ているこめっこちゃんを起こさないようにめぐみんが背中に背負って、彼女の家に帰るのを見送る。

 

 

 途中、こめっこちゃんが寝言で『かくれんぼ……楽しいね……』と言っているのを聞いて、まだ遊び足りないのかと、私とめぐみんは苦笑いした。

 

 

 手を振ってめぐみんを送った後、家の中に入り、お風呂を済ませた後。

 

 『今日はすまないがリビングに毛布を敷いて寝て欲しい』と頼んだ父に従い、いそいそと寝床を準備している彼に向けて

 

 

 「……おやすみ、バーサーカーさん」

 

 

 と一声かけてから、自室へと戻った。

 

 

 

 

 

 ーーーこの数日は、いろんなことがあったなぁ…………

 

 

 ここしばらくのドタバタした、もう二度とこんな大変な目には遭いたくないと思いながら。

 

 

 けれど、どこか楽しかった日々を思い出して。

 

 

 明日からまた始まる、全く新しい日々が幸せでありますようにと、祈りながら、私はベッドに入って、そのまま目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 




 


 この作品のオリ主こと『バーサーカー』くんのセリフですが、割とフィーリングで会話シーンを決めております。


なので、セリフの中の「■■■!」みたいな■に入る文字が何かとか、そんな細かくは決めてないので、皆さんも勘でどんなことを言っているのか、想像しながら読んで頂けると助かります。

それでは、長文失礼します。

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