均衡の崩れは世界の終焉。
秒読みは始まった。
前回、飄々と現れたジエー・ベイベル。
ハスミは静観し無惨は苦虫を潰した顔で老人を見ていた。
「オッス!元気してた?」
「聞きたい事は山程ありますけど……どうやって生き残ったのかしら?」
「そうだにゃ…君とその仲間達にフルボッコにされたのは覚えてるよーw」
「…(つまり、空白事件の記憶しかないって事?」
ジエー・ベイベル…いや、ジ・エーデル・ベルナルはかつて私が居た世界で『空白事件』と呼ばれる戦乱で次元崩壊を起こそうとした人物だ。
その姿は幾多の並行世界に存在する己の同一人物と入れ代わり立ち代わりを行う事で姿を変えて逃避を続けていた。
明確に追い詰める事が出来たのは奴の愉快犯的思考に揺さぶりを掛けた事とこちらの『とある力』によるもの。
所属する部隊の仲間達と共に戦い…奴を倒した筈だった。
あの状況での生存は不可能に近い。
だとすれば、消失する前に別世界の同一人物にその意識を移し替えたのだろうか?
「いつもの姿は如何しましたか?」
「しゃーないでしょ?君らに倒された後にこの姿で復活したら強制固定されちゃったのにゃw」
「…その話し方、どうにかならないのですかね?」
「これがワシの話し方のスタイルだもん♪」
「…」
うん、『気持ちは十分理解しますよ。』と思いつつお怒りが臨界に達しそうな無惨の様子に対し。
私は『手を下すのは構いませんけど、この変態生物はそう簡単には消えないと思われます。』と遠い目をした。
「いい歳したお爺さんがぶりっ子しても気色悪いのですが?」
「いやん、もっと責めていいのよ?」
「…(駄目だ、奴と話してたら余計に吐き気がして来た。」
ジエーの姿の為、余計にキモさが増しているのもあり吐き気を覚えるハスミ。
痺れを切らしそうになっている無惨に対して、私はさり気無く忠告はして置いてあげた。
「戯言はそこまでにしたらどうだ?」
「話の通じない相手に話をしても無駄だと思いますけど?」
「…」
「但し、協力する相手を間違えた事ははっきりと伝えて置きます。」
「如何言う事だ?」
「貴方はどちらかと言えば慎重派、奴はその逆と言えば解りますか?」
「あの様子を見ればな…」
「なら、例の巨大な異形の鬼に関しては?」
「…何の話だ?」
眉を顰める無惨の疑問に答える様にジエーが己のテンションを変えずに答えた。
「それね~ワシが適当に弱い鬼を核にして改造したビッグな鬼の事を言っているんだよ。」
「貴様、私の許しも無しに…!」
「えーだって君の配下って日中は使いモンにならないし、だ・か・ら~ワシが改造してあげたのにゃ?」
「その結果、各地で大騒動になりかけてますけど?」
「ん?そうなったら君が片付けてくれてるし~別にいいでしょw」
もうあのジャガイモなフェイスにC4爆弾付けて爆破したい気分。
後、何度も草生やすな。
この世界の歴史いや秩序を壊す気がこのひじきパンマンは…
「余所様の理を持ち込むとどうなるのか…理解していると思ったのですがね?」
「いや~ここにそう言うのをぶっこんだら…どーなるのか見たかったんだよね~♪」
「…それは人だけではなく鬼も全て滅ぼすつもりですか?」
「モチのロンw」
「だ、そうですよ?」
奴は完全にこの世界で破壊と言う遊びを始めている。
この世界に生きる命すら軽んじる行為。
誰かが止めなければならない。
私がこの世界に呼ばれた理由の一つだろう。
私の考えは置いてといて、問題の無惨が止めようがない状態になっている。
「ジエー、最初から私を利用したのか?」
「それは、お互い様じゃないのかにゃ?」
「…」
「君はワシを通して青い彼岸花の所在が知りたかったんじゃろ?」
「それが貴様の命を保証する理由だった筈だが?」
「別に君に倒されてもスペアは幾らでもあるから痛くも痒くもなかったんだよ~」
「何だと…!」
「ぶっちゃけ、君みたいな陰険顔が絶望しまくった時にどう歪むのが見たかったんだよね♪」
怒りの沸点が臨界を越した無惨の異能がジエーを貫こうとしたが、幻影の様に通過し地面にクレーターを作っただけだった。
「じゃ、ワシは適当に今後も遊ばせてもらうからよろしくにゃん♪」
ジエーはいつものペースを崩さずにその場から姿を消した。
夜だったのと木々の影で気づくのが遅かったが、先の姿は立体映像…つまり、別の場所から中継していたと言う事だ。
私は『忠告はしましたよ?』と告げておいた。
「奴は誰かの下で素直に働く性分ではない……寧ろ、状況を炎上させる危険生物です。」
「奴は私が仕留める…時に女、その彼岸花は何処で手に入れた?」
「…正確にはまだ手に入っていないが正論です。」
「如何言う事だ?」
「これはあくまで見本、お探しの現物は後…百数年待たないと咲きませんよ?」
「百数年だと?」
「貴方がお探しの青い彼岸花はある条件下でしか咲かない希少種です。」
「聞かせて貰おう。」
その青い彼岸花は一年の内、三日間だけ日のある内に咲く花。
しかし、一年単位では完全な青ではなく斑な青い花弁を咲かせず数百年の間隔を開けてから完全な青色として咲く。
その年の気象条件も関わると思いますが、次に完全な青い彼岸花が咲くのが今年から百数年後。
そして確実な原生地は中国の奥地です。
「千年探し続けても見つからん筈か…まさか日中だけ咲く花だったとは。」
「それで、このまま鬼殺隊との小競り合いを続けますか?」
「いや、あの様な雑魚共など放っておく……目的の花の所在をお前は知っているのだろう?」
「交換条件になりますけどね…私としても貴方があの異形の巨鬼の出所じゃない事だけ知れた事は十分収穫でしたから。」
「敵の敵は味方とでも?」
「ええ、今後も貴方達は人間を餌にする事を止める事は出来ない、それは鬼狩り達との戦いを止める事は出来ないのと同じ。」
人も鬼も争いと血を求めてしまうから。
燻ぶった闘志は殺意になり狂気にも成り得る。
一度点いた火種が消えないのと同じ様に…
憎しみの連鎖は止まる事がない。
それでも何処かでその連鎖を断ち切らなければいけない。
「だが、お前は人にも成れず鬼にも成れず…狭間の存在としてここに在る。」
「それが可能性の一つであったとすれば?」
「貴様の言う一時的な解決策だと?」
「そう思ってくださっても結構です。」
不思議な女だ。
この女とあの少年に出会ってから状況が変わっている。
浅草で遭遇したあの花札の少年も恨みではなく悲しみの眼をしていた。
鬼に対する根本的な考えが変わったのか?
「それと一つお聞きしたい事があります。」
「何だ?」
「貴方は自然に鬼と化したのですか?それとも人為的に鬼と化したのですか?」
「それを聞いてどうする?」
「貴方の口から直接聞いてみたかっただけですよ。」
「随分と詮索が好きと見える。」
「全てを知る事で真実へと辿る…それが希望で在り絶望で在っても。」
一方的な言い分だけでは真実は判らない。
何が原因でそれに至ったのか理由は必ずある。
例外はあるがそこまでに成った要因は何なのか?
全てを識った上で私は解決策を探す。
「次に会う時までにお前が求める答えを考えて置こう、女。」
「ハスミです。」
「?」
「私の名です、一方的にこちらが貴方の名を知るだけでは失礼と思いましたので。」
「そうか…」
無惨は目元を見せないまま姿を消した。
恐らくは先の音で騒動になっている夜会に顔を出しているのだろう。
私はクレーターになった場所だけ直してからその場を去った。
「倒すべき敵は一人だけ……後は繋げなかった手が繋がるかは私の手腕次第か。」
人と鬼の夜明けは近い。
そして最厄の戦いもまた幕を開けるのだ。
=続=
刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?
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木乃伊事件(不死川、伊黒)
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集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
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船舶沈没事件(宇随、煉獄)
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不在担当地区防衛(時透、甘露寺)