証拠と言う概念に辿り着けなかったから。
可能性を見いだせなかったから。
全ては『鬼』のせい。
それはただの偽りの方便。
夜会が行われていた場所から移動した私ことハスミ。
別行動中だった炭治郎君と合流し彼が出会った鬼の医者である『珠世』の元へ向かう事になった。
道中、使いの『愈史郎』と言う鬼に案内されるが…
「君、今…禰豆子ちゃんに何て言ったかしら?」
「醜女と言ったが?何が悪い。」
「醜女ねぇ…ふーん。」
「お前な、禰豆子は醜女じゃ…!?」
「!?」
愈史郎の顔擦れ擦れにサイレンサー付きの拳銃より一発放たれる。
その一撃は夜の街に何の障害も残さずに解き放たれた。
「もう一回言ってくれるかな?誰が?何ですって?」
「お、お前…な、何てモノを…!?」
「君、鬼でしょ?頭の一回や二回位吹っ飛ばしても平気だよね?」
「冗談にも程があるぞ!?」
「知らないわよ、初対面の女の子に醜女なんて発言も失礼だと思うけど?」
「ぐぬぬぬ…」
「それとも貴方の教養と礼節はその程度なのかしら?」
「醜女を醜女と言って何が悪い!」
「そう、残念ね…だったら少しお遊びと逝きましょうか?」
「お前、禰豆子とハスミさんに謝れ!」
「誰が謝るか!」
「ハスミさんが怒ったら俺でも止められない!あの人は鬼相手に鉄砲と手榴弾で反撃する人だぞ!!」
「な!?」
「そうなったらお前の体が挽き肉になっても止まらないぞ!!」
「もう、炭治郎君ったら私だって加減するわよ?」
「…(無惨の逃げた先に手榴弾を投げ入れていたのは誰でしたっけ?」
そんなやり取りをしつつ禰豆子ちゃんに不細工と発言したのでちょっと絞めて置きました。
炭治郎君も妹を侮辱された事に憤慨していたが私の絞めシーンでドン引きしている。
うん、気にしない。
この愈史郎君には、たーっぷりとお説教をして置いたのでしばらくは大人しかったです。
本日の教訓は『発言は良く考えて言いましょう。』です。
******
日光を通さない様に加工された和室。
その一室で待っていた黒い振袖の女性と私達は対峙した。
「初めまして、私の名は珠世と申します。」
「ご丁寧にすみません、私はクジョウ・ハスミと申します。」
「炭治郎さんからお聞きしましたが、貴方が例の鬼ですね?」
「はい、これを見て頂ければ判ると思います。」
私は自身の眼帯を外すと伏せていた眼を開けた。
鬼特有の切れた眼孔。
珠世はその眼を見て驚きを隠せなかった様だ。
「本当に片目だけが鬼化しているのですね、そして人を喰らう事もなく日光を恐れない体質。」
「…異質と思いますか?」
「いえ、どちらかと言えば奇跡と思えますね。」
「奇跡か…」
「ハスミさん、炭治郎さんにもお伝えしましたが貴方と禰豆子さんの血を調べさせて貰えませんか?」
「血を採取して調べる事とは?」
「鬼を人間に戻す薬を作る為です。」
「…(炭治郎君が話していた通り、禰豆子ちゃんを元に戻す為と無惨を倒す為の薬であり武器となる代物。」
完成すれば禰豆子ちゃんは人に戻れる。
だが、その完成には長い時間とサンプルが必要だったと炭治郎君から聞いている。
今回は私と言う異質な鬼の血がある以上はそれなりの変異は起こるだろう。
「分かりました、私としても自分の血の事を調べて欲しいと思っていましたので。」
「ありがとうございます。」
私は珠世さんへ了承し血を採取して貰った。
年代が年代なので注射針がかなり太いのと強烈な痛みがあったのは言わないで置く。
「珠世さん、一つお聞きしたい事があるのですが…」
「何でしょうか?」
採血を終えた珠世に対して私はある疑問を告げた。
「森羅と言う魑魅魍魎対策を行う組織と逢魔と言う妖を中心とした組織をご存じでしょうか?」
「!?」
ある組織の名を答えると珠世は驚いた顔で声を上げた。
どうやら面識がある様だ。
「何故、その名を?」
「…」
ここで私が抱えていた疑問が一つ解決した。
その名を知る事はここが大正時代の物質界である事を指す。
炭治郎君達との旅の道中で時折見かけた紅い羽織を付けた集団。
森羅の隊服である紅いジャケットの前身だろう。
そして鬼とは別に遭遇した鎌鼬などの妖も存在していた。
双方共に組織間抗争で疲弊していたらしく大規模な活動はしていない。
彼らが本格的に動いていれば無惨ですら立場は危うくなっていただろう。
「ややこしい事になったわ…」
「あの…ハスミさん?」
「ああ、ゴメンね…ちょっと個人的に関係を持っていた所だったから。」
頭を抱えるハスミを心配して声を掛ける炭治郎。
関係者と言う言葉に反応した珠世が質問をして来た。
「ハスミさん、貴方は森羅若しくは逢魔の一員なのですか?」
「正確には違います、一時期森羅の方に協力していた間柄なだけです。」
「そうでしたか…」
「…それも先の時代での話ですし。」
「っ!?、どう言う事ですか?」
ハスミは炭治郎との出会いから自身の出身について説明した。
並行世界、物質界、森羅と逢魔の争い、九十九事件と必要なキーワードだけを告げた。
「では、貴方は別の世界における後の時代の人間なのですか?」
「そう解釈して頂いても構いません。」
「…」
「私がここへ来た理由は炭治郎君の声が聞こえた事に関係があります。」
「ハスミさん。」
「逆行の輪廻に囚われた炭治郎君を救う事……それが解決に繋がると思っています。」
何度も同じ悲しみと痛みを繰り返す事。
それは耐え難い苦しみ。
どんなに変えようとしても何処かで失敗してしまう。
それを嘲笑うかの様に願いは届かない。
だからこそ終わりを告げる兆しは訪れた。
「貴方は炭治郎さんと同じで他人の為に動けるのですね。」
「状況によっては…ですよ。」
「そんな事はありません。」
「珠世さん…」
珠世さんは『それが貴方の優しさなのですね。』と告げた。
一部の人から見れば善行に見えても、これは独りよがりの偽善。
褒められる様な事じゃない。
「さてと、炭治郎君…もう気づいているよね?」
「はい。」
「どうかされました?」
「貴方達以外の鬼が敷地内に潜入した様です。」
「えっ!?」
「馬鹿な、俺の血鬼術が発動している…」
「その無惨に加担していた人間の置き土産と思われます。」
「!?」
「それが私が彼と同行している理由にして私が倒すべき相手です。」
炭治郎君が箱を背負ったのと同時に私達は部屋を後にした。
「炭治郎君、予定通りに二匹の鬼をお願い。」
「ハスミさんは?」
「紛れ込んでいる大型を仕留めてくる。」
「判りました、禰豆子もいいな?」
炭治郎君の問い掛けに禰豆子ちゃんは箱の中で爪をカリカリさせて了承の意を送る。
「屋敷を出たら別れるわよ?」
「判りました。」
炭治郎君の言う流れ通りなら進行方向…ベクトルを操る鬼と鉄球並みの鞠を操る鬼が仕掛けてくる。
二匹の能力は理に適っている。
科学知識に洞察と瞬発力を会得していなければ防ぎようがないだろうが…
透き通る世界を会得している炭治郎君なら対処は可能だろう。
問題は紛れ込んでいる大型の鬼、今度はどんな合成鬼?
まあ、出てきても倒すだけよ。
>>>>>>
「おる、おる、ここに花札の付けた人間が…!?」
一瞬だった、屋敷から出てきた二つの人影。
鉄砲の音が二つ。
最後に剣戟。
目を瞑ったままの鬼の両手が射貫かれ、頸を落とされた。
「そんな…矢琶羽!?」
十二鬼月に召し上げられる筈だった自分達が何故?
「ごめん。」
カランと花札が揺れる。
その剣戟は水の様に清らかで心地良いものだった。
「今度生まれ変わる時はまた人間になれますように。」
炭治郎は切った鬼の頸の瞼を閉じさせると静かに祈った。
同時に屋敷の敷地内に落ちてくる巨大なナニカ。
「ふう…」
「え、えーーーーもう倒しちゃったんですか!?」
「いや、この大型鬼…攻略方法が簡単だったし。」
だって、この蝙蝠と梟の合成鬼。
目元に閃光弾撃ってから背中に飛び乗ってグレランの焼夷弾撃って火だるまにして、開いた口に菫外線放射の破片手榴弾入れて差し上げました。
で、怯んだ所で両翼切って落下を利用して頸を切断致しましたが…何か?
「…」
「対処方法が判っていると始末し易いわよね?」
「ソウデスネ。」
炭治郎がカタカナ言葉になっているのは気にしない。
流石に騒ぎを起こしたので屋敷を手放す事になった珠世一行。
浅草で鬼にされた男とその奥さんを連れて屋敷を離れると告げた。
引き続き、猫の茶々丸を通して連絡をする手筈になった。
先程、倒した鬼から血を採取したが無惨に近い鬼ではないので薬の調査には使えないだろう。
「炭治郎君、ちょっと気になる事があるんだけど…」
「どうかしましたか?」
「ここに来る前に少し調査してみたけど犯人は鬼ではないのに鬼に襲われたって案件がいくつか判ったの。」
「えっ?」
「恐らくは被害者側の保証金狙いと一部の隊員の怠慢ね。」
「…」
「この案件には必ず鎹鴉が近づけない場所や鎹鴉が鬼にやられたって報告があるの。」
「それって…」
「口封じね、死人に口なしって言うでしょ?」
「じゃあ…」
「本当に鬼に襲われた案件もあれば、そうではない案件もあるって事。」
そんな事が続けば本当に必要とされている場所に救いの手が届かない。
足の引っ張り合い。
職務怠慢の末の隠蔽工作。
「それが本当なら鬼殺隊は…」
「世の中正しい事だけでは成り立たない、力を持ってもそれを扱う人間の精神もまた成長しなければ意味がないもの。」
「すぐにお館様に。」
「待って、まずは証拠を集めないと……これはあくまで私の力で調べた事で在って物的証拠がないの。」
「ハスミさん…」
「大丈夫、成る様になるわ。」
さてと、職務怠慢の糞隠蔽工作をする輩様。
御覚悟は宜しくて?
=続=
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