次なる地は人食い蜘蛛が住まう山。
それは偽りの家族が支配する。
私は全てを燃やして灰燼と成す。
藤の家と蜘蛛の山へ
前回の浅草の一件から二か月が経過した。
私ことハスミは炭治郎君と禰豆子ちゃん、三人の鬼を狩る旅を続けていた。
その最中、鼓を扱う元十二鬼月の鬼と交戦。
討伐と血の採取を終えるが、珠世さんからの報告はまだ上がっていない。
そして…
「フハハハハハ!!」
「はぁ…またやってるし。」
とある屋敷の敷地内。
走り回る猪の被り物をした少年とそれを見て呆れているタンポポ頭の少年。
鼓の鬼が住まう屋敷で知り合った我妻善逸と嘴平伊之助と言う二人の少年。
その彼らが道中で旅の仲間に加わった。
偶然か必然か?善逸は聴覚、伊之助は触覚と炭治郎君と同様に五感の一部が優れている。
私も五感の先の第六感…思念に関する能力を扱えるので不思議な取り合わせとも言えた。
話は戻るが何度目か後の鬼との交戦で三人の蓄積した負傷を癒す為に近場の『藤の家』に留まっている。
ほぼ無傷で疲労程度の私はその後も指令を受け、引き続き鬼の討伐を行っていた。
だが、弾丸の消費がここ最近激しいので自力での増産に勤しんでいる。
ついでに日課になった日光浴を縁側で実施中。
「こら、ハスミさんが弾薬関係を弄っている時は静かにするんだろう?」
「いいわよ炭治郎君、もう終わりだから…」
私は弾丸をケースに収納し道具を片付け終えると次の道具の整備に移った。
銃のメンテは終わっているので追加で仕上げたある道具の試験テストの準備を進めた。
「何をしているんですか?」
「火炎放射器の点検。」
「…」
「害虫駆除にも使用されたけど、これも戦の道具に使われたモノよ。」
現時点では必要な薬品が高価な為と運用に難があったので使用される事が少なかったが…
後の発展で活用方法が増えた。
そして第二次世界大戦末期に日本でも使用された…
どう使われたかは調べれば解るだろう。
「他にも空気中に薬を散布するモノもあるわ。」
「ハスミさん、どうして…」
「今後の戦いで敵がどう出るか解らない、少しでも手数を増やす為よ。」
炭治郎君の話通りなら那田蜘蛛山に出現する鬼は蜘蛛=虫を利用している。
なら、特製の殺虫剤か燃やすしかないだろう。
「こっちの散布用の道具には藤の花の成分を濃縮したものが入っている、普通の鬼なら嗅いだだけで肺をやられる代物よ。」
「もしかして…」
「そうね、成分上は人には無害で濃いめの香水に近いから…まあ、炭治郎君が嗅いだら暫くは鼻が利かなくなるわね。」
流石の私も試験的に嗅いだだけで暫く吐き気が止まらなかったし。
念の為、禰豆子ちゃんにはガスマスクでも持たせて置こう。
「この可燃性粘液が入った薬弾が数回分しかないから火炎放射器は使用出来て十回が限度。」
「可燃?」
「要は物を燃えやすくする為の薬で火炎放射器はその溶液を利用して対象を燃やす。」
「つまり。」
「天候や風向きの関係もあるけど、雑魚を一掃するか強敵との目晦まし程度にしか使えない。」
火炎放射器は元々戦場で使う場合、最も狙われやすく寿命の短い武装とされている。
逆にジャングルや森林地帯に逃げ込んだ敵を追い詰めるのに効果的な武装だ。
「…(もう少し特殊弾薬を補充して置くべきだったわ。」
雨が降っていても燃やせる試薬が在れば別だが、今は所持していない。
以前、植物を操る鬼との交戦で使い切ってしまった為だ。
通常弾なら兎も角、他の弾薬となると限りがある。
弾薬を安定的に作れる場所を確保しても技術が発展途上な為に数回分しか確保出来ない。
薬莢は刀鍛冶の里で磨鋼さんに無理を承知で試作して貰っている状態。
確実に鬼を殺傷し貫通させるには日輪刀と同質の金属を使ったフルメタルジャケット弾が有効である事が判明した為だ。
その為、使い所を注意しながらホローポイントや破片侵襲弾、ピストン・プリンシプル弾と組み合わせて使用している。
薬莢への火薬詰めは日中で時間がある限り、自力でやっている始末だ。
「…(ジ・エーデルの行方は掴めていないし、今頃ややこしい事に手を出していそう。」
一部の能力を封印されている今、奴に空白事件当時の大軍を出されたら元も子もない。
あのバカにも何かしらの制約が掛かっている事は確かなので様子見状態が続いている。
その代用品が例の改造された異形の大型鬼達だ。
最終試験時の一体、北東の町の一体、珠世さんの屋敷に現れた一体で三体。
ここ最近の別行動時に現れた四体で合計七体を処理している。
そろそろ奴的に嫌味な戦術を考えて来そうな気もしなくもない。
「ハスミさん、大丈夫ですか?」
「ああ、ごめんね。」
話を途中で切って考え事をした私に話しかける炭治郎君。
私は謝罪した後に大丈夫と告げた。
「あんまりにも異形の巨大鬼の出現率が多いのと尻尾巻いて逃げる隊員が時々いるからイラっとしちゃって…狩猟用の麻酔弾を逃げる輩のお尻に撃ってもいい?って思ったわ。」
「ハスミさん!それ駄目ですって!!?」
「表情は美人なのに言ってる事が物騒って…」
「流石は俺様の子分!度胸が違うぜ!!」
私は炭治郎君達かまぼこ隊の何時もの顔芸を目処前で披露された後、屋敷の塀を超えて飛んできた鎹鴉を発見した。
「お嬢、本部から人食い鬼が出るって噂の山に調査に出てくれって依頼だぜ。」
「噂の山、場所は?」
「北北東にある那田蜘蛛山って山だ、今日中に出発すれば夜には到着するぜ?」
同じ様に鎹鴉達から伝令を受けた炭治郎君達も同様の命令らしい。
「夜の山か……あれの出番ね。」
早速、準備を進めていた武装の出番であると私は予感を感じた。
*******
私達は伝令を受けた後に出立の準備を各自で進めてから門の前に集合。
屋敷の主であるおばあさんから火打石で切り火を受けて藤の家を後にしようとしたが…
伊之助本人がが意味が解らずおばあさんに向かって憤慨していたので私が優しく絞めてから出発した。
横で善逸が『こえぇえ…』と青ざめていたいた事に突っ込みは入れていない。
「どの様な時でも誇り高く生きてください…か。」
出発の際に話したおばあさんの言葉は『どんな時でも諦めずに前に進んでください。』と言う意味合いを込めて答えたのだろう。
この戦いは時には挫折するものも少なくはない。
そう言った隊士達を見てきたあの人なりの気遣いの言葉だった。
私はおばあさんの言葉の意味が解らず怒っている伊之助に解り安く説明。
そんなやり取りを進めながら私達は北北東に向かった。
因みに浅草へ移動する際に使用したアレは限定的になっている異空間に収納している。
山の中での戦闘なので使い所はないだろうが念の為だ。
夜間活動様に人数分の暗視ゴーグルに菫外線手榴弾や設置型地雷も準備して来たので安心です。
「なあ、炭治郎…」
「善逸、どうしたんだ?」
「あの人、周囲に拳銃ぶっ放すつもりかな?」
「うーん、かもしれない。」
「やっぱこえぇえよ、あの人。」
「怒らせなければ、ハスミさんは優しい人だよ?」
「そうだけどさ…」
「それよりも善逸。」
「ん?」
「任務先で勝手に逃げたら後が怖いし止めて置いた方がいいよ。」
善逸の脳内回想・鼓屋敷にて。
『まずは落ち着いてから人の話は聞く、判らないからと言って人を手当たり次第に殴らない、これ常識だからね?』
『スイマセンデシタ。』
何処からか取り出した鎖で伊之助を縛り上げて締め上げたハスミ。
その表情は笑っているが後光から真っ黒い怒りが見えていた。
これにより伊之助がハスミに逆らう事は一切無くなったが態度は相変わらずである。
引き続き、元の現実に視点を戻す。
「鬼より怖い人っているんだな。」
「うん、あの人…情状酌量の余地がない鬼に対して容赦ないから。」
炭治郎は青ざめた善逸に対して静かに告げた。
そして夜も更けて那田蜘蛛山への山道に近づくと隊士らしき人物が倒れているのを発見した。
「あれは…!」
「ちっ!」
道端に倒れた男性の隊士が顔を上げて助けを乞うが、その背中に薄っすら見えた糸の様なモノを見つけたハスミはすかさず火炎放射器を取り出して糸を焼き切った。
「頭を伏せろ!」
「ひっ!?」
糸らしき物体が焼き切れた事で体の自由を得た隊士。
ハスミは隊士に対して質問した。
「何があった!」
「それが…」
隊士の話によると私達よりも先に一個隊数の隊士達が山へ入山。
山中へ入って暫くしてから隊士同士で切り合いが発生し、命からがら逃げてきたとの事。
「成程、逃げて正解だったかもね。」
「ハスミさん、一体何が…」
「これよ。」
説明を受けた一行、ハスミの発言に質問する炭治郎だったが…
ハスミは先程の隊士の背中に残っていた糸の様な物体を見せる。
「糸?」
「恐らく血鬼術の一種でしょうね、対象を糸で操ってから見えない位置で切り合いをさせて自滅させる。」
となると山全体が鬼の棲み処であり罠の密集地帯。
先に入山した隊士達は既にやられているだろう。
「炭治郎君達、ちょっと準備しようか?」
私は入山前に炭治郎君達へ藤の花の抽出液を隊服に噴霧。
禰豆子ちゃんには気化した薬液を吸い込まない様にガスマスクを付けさせた。
倒れていた隊士には鎹鴉に経過報告の伝令を頼んで下山して貰った。
「ここが北北東側だから、今は南南西への風か…」
風向きが悪いので火炎放射器の使用には注意が必要。
さっきは風が吹いていなかったので糸を燃やす事が出来たが…
倒れていた隊士に付着した糸は蜘蛛の様な粘着性の強い糸だったので燃やすしかないだろう。
日輪刀で切ると言う事も考えたが、夜で見えにくい上に糸は頑丈で切りづらい。
ここに潜んでいる鬼は蜘蛛を媒介とした血鬼術を使用しているだろうし。
「行こう、炭治郎君達。」
「はい!」
「ひぃい…」
「おっしゃあ!」
私達は倒れた隊士と別れて入山する。
さあ、始めよう。
過激で大胆な火祭りを?
=続=
刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?
-
木乃伊事件(不死川、伊黒)
-
集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
-
船舶沈没事件(宇随、煉獄)
-
不在担当地区防衛(時透、甘露寺)