鋼の魂と共に   作:宵月颯

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ヒノカミは太陽の様に巡る。

全てを浄化する炎の様に。

鋼の志は全てを薙ぎ払う。

行く手を阻むものを切り裂く為に。




一騎当千の鋼と日ノ神の神楽

那田蜘蛛山で戦闘が繰り広げられている頃。

 

ここ鬼滅隊本部の産屋敷邸では鎹鴉が息を上げながらお館様に伝言を伝えていた。

 

 

「よく頑張って戻ったね。」

 

 

情報を伝えた鎹鴉に対し労いの言葉を掛ける黒い着流しを纏う男性が告げた。

 

 

「そうか、私の子供達はやられてしまった者も居れば…少なからず生き残れたものもいるんだね。」

 

 

男性ことお館様…産屋敷耀哉は那田蜘蛛山に十二鬼月が居ると判断し柱を向かわせる決断を下した。

 

 

「柱を向かわせなければならない。」

 

 

お館様は屋敷の奥に控えていた柱二名の名を告げた。

 

 

「義勇、しのぶ。」

 

 

座敷に刀を置き、控えていた二人は了承の言葉を返した。

 

 

「「御意。」」

 

 

しのぶと呼ばれた小柄な女性は了承を得たい様子で義勇に声をかけた。

 

 

「人も鬼も皆仲良くすればいいのに…富岡さんもそう思いません?」

「…」

「だんまりですか?」

「それが本当にお前の本意で在ればな…胡蝶。」

「相変わらず、失礼な人ですね。」

 

 

義勇はしのぶを名字で呼び、深意を尋ねた。

 

それが『お前の本意なのか?』と。

 

優しい笑みを浮かべるしのぶだが、自身の上辺だけの言葉を読み取った義勇に苛立ちを隠していた。

 

 

「人を喰らう鬼は斬る、だが…人を喰わない鬼や鬼であり人でもある存在が現れたらどうする?」

「…人を喰わない鬼に鬼でも人でもある存在ですか?」

 

 

義勇が語ったその言葉の真意をしのぶが知るのはもう少し先の事。

 

 

******

 

 

時は戻り、那田蜘蛛山の山中にて。

 

月明かりに照らされた開けた場所。

 

白い鬼の少年と己の家族と称する異形の巨躯の鬼が二体。

 

それらに対峙する炭治郎、伊之助、ハスミの三人。

 

 

「あの少年の鬼以外、二体の鬼に自我は無い様ね。」

「ハスミさん、どうします?」

「炭治郎君はあの少年の鬼を、伊之助君と私で巨躯の鬼を引き受けるわ。」

「判りました。」

「おう、デケェ鬼は俺に任せな。」

「なら、牛の顔の方の鬼をお願い。」

「俺様に不可能はない!」

 

 

先程の糸で操る鬼との戦闘ダメージが少ない分、二人の戦う余力は十分にある。

 

巨躯の鬼は様子を見ながら頸を切るとして…

 

ジ・エーデルと接触したあの少年を問い詰める為にも炭治郎君の力が必要。

 

 

 

「父さんと姉さんを見ても逃げないなんて。」

「普通の思考なら逃げているでしょうね。」

 

 

死地を潜り抜けてきた私達にはこの程度の恐怖は如何とでもない!

 

まあ、一人例外がいるけど…

 

 

「…(あれはあれで自分に自信を持てば凄い馬力を出せるんだけど、その辺は本人の問題だからね。」

 

 

戦闘中であったが絶賛行方不明中の善逸の事を考えていた。

 

私は気を入れ直して相手の状態を観察する。

 

 

「やっぱり、蜘蛛の瞬発力と蟹の防御力を併せ持っているのか…」

 

 

世界には大雑把に三種類の蜘蛛が存在する。

 

一つは木々の間や狭い空間などに巣を形成する見慣れた蜘蛛。

 

一つは水の中で生活するミズグモ。

 

最後は土の中に穴を掘って袋状の巣を形成するジグモである。

 

元となった生物を辿るとすればオオツチグモだろう。

 

地球上でもっとも大きいとされる蜘蛛はオオツチグモ科に分類される蜘蛛と調べた事がある。

 

南米に13㎝程の大きさの同じ分類の蜘蛛が居る位だし、目安とすれば350ccの空き缶位の大きさだね。

 

問題は相手がコモリグモの習性も持っていると非常に厄介なのだが、戦いながら調べるしかない。

 

 

「毒性は兎も角、この馬力…トリクイグモって呼ばれる肉食蜘蛛に近い能力に似ている。」

 

 

私は炭治郎君と伊之助君と別れて、姉と呼ばれた巨躯の鬼と交戦を開始した。

 

糸での拘束攻撃から巨躯の鬼に似合わない跳躍力に少々驚いていた。

 

 

「ちっ!」

 

 

前世上で見た某パニック系映画のジャンピングスパイダーを思い出した位である。

 

手段がない限り、あの巨体に捕まったら逃げる術がない。

 

 

「蟹の手も邪魔だけど、隙だらけ。」

 

 

私は一旦刀を上空に高く放り投げた。

 

そのまま密着型の機雷を取り出し、鬼の攻撃を避けながらスライディングで鬼の下に滑り込み腹の殻に接着させた。

 

これはガンヲタ皆さんご存知のチェーン・マインの小型版。

 

この後の展開は御覧の通りである。

 

 

「柔軟性を保つには何処かの殻が柔くないといけない、腹を弱点にしたのは不正解だったわね。」

 

 

私は落下する刀をキャッチしてから起爆スイッチを入れた。

 

同時に機雷が連鎖爆発を引き起こし、鬼にダメージを与えた。

 

相当のダメージだったのかかなりの奇声を上げる鬼。

 

 

「…(博識な隊士なら腹を斬る弱点に気づいたでしょうね。」

 

 

ハスミは刀を構え直し、呼吸を行う。

 

足元が爪先から少し沈んだ瞬間。

 

その瞬間で巨躯の鬼を十字に切り裂いた。

 

巨躯の鬼の頚と肉体は押し潰された様に潰れ斬れた。

 

 

「鋼の呼吸、壱ノ型・裂鋼。」

 

 

その様子を戦いながら観察していた伊之助。

 

 

「…(アイツ、刀の一撃がクソ重てぇのか。」

 

 

それは回避不可の一撃必殺の剣技。

 

相手を圧倒しその重圧で切り裂く。

 

元を辿れは自身もまた危険に晒す剣技でもある。

 

最大を十とすれば防御が零と化す諸刃の戦闘方法。

 

 

「戦闘中に余所見をしない!」

「おわっと!?」

 

 

ハスミが姉鬼を始末すると伊之助が相手を務めていた父鬼の猛攻が一層激しくなった。

 

 

「クソッ、牛蜘蛛野郎の頚も硬てぇが拳の一撃も速ぇ!」

「成程、鉄柱を鋸で斬るのと同じ状況か…」

「どうするんだ!」

「伊之助君は奴の注意を!私が頚を斬る。」

「癪だが頼んだぜ!」

「…(こっちは牛の突進力と蜘蛛の柔軟性を利用した近接型。」

 

 

だが、攻撃の動きに法則性はなく出鱈目に馬鹿力を振るっている事が解る。

 

ハスミは刀を構え直し頸を刺すように両断し肉体を切り裂いた。

 

 

「鋼の呼吸、弐ノ型・突鋼、参ノ型・覇鋼、合わせて穿鋼。」

 

 

自身が苦戦した頸をハスミはいとも簡単に切り裂いた事に伊之助は腹を立てていた。

 

力の差、技量、そう言ったものが自分に足りないと改めて実感させられたのだ。

 

 

「伊之助君、大丈夫?」

「ああ…」

「腕の出血が酷いから止血はしておくわよ?」

「…」

 

 

父鬼をかく乱させる為に無茶をさせ過ぎた。

 

調子に乗っていた部分もあるだろうが、自分の驕りに気づけたのならそれでいい。

 

私は止血剤と包帯を取り出して伊之助の腕に応急処置をしていく。

 

 

「紋次郎は?」

「さっきの戦闘で離れ離れになったみたい。」

「道理でアイツの気配が移動続けてる訳だ。」

「ねえ、気づいていると思うけど…戦闘中、何処かで落雷の落ちる音がしたわよね?」

「ああ……もしかしてあの泣き虫か?」

「善逸君よ、あの子もあの子で頑張った様子ね。」

「…」

「伊之助君があの鬼の注意を引き付けてくれたお陰で頸を切れたわ、ありがとう。」

「お、おう。」

 

 

誰かに褒められる事になれてない伊之助はほわほわな気分になり、なんとなく悪くないと感じていた。

 

 

「止血はしたけど、無理はしないで。」

「判ったぜ。」

「…(判っているのかな?」

 

 

止血箇所である両腕をブンブン振り回している伊之助に対して私は少々呆れた感じもしなくもなかった。

 

 

「炭治郎君の場所は?」

「白い奴の居た場所からもっと奥の方だ。」

「…行きましょう。」

 

 

炭治郎君達なら大丈夫と思うが、何か嫌な予感がする。

 

私は伊之助君に移動を促して跡を辿った。

 

 

>>>>>>

 

 

一方で那田蜘蛛山に柱二名が到着し二手に分かれた頃。

 

行方不明だった善逸は人を蜘蛛に変える血鬼術を駆使する兄鬼と交戦。

 

無事倒したものの兄鬼が使役する蜘蛛に手を噛まれた事によって毒に置かされていた。

 

口と鼻から出血し息が荒くなり、手足に痺れが回っていた。

 

兄鬼曰く使用した毒は人を蜘蛛に変える物。

 

 

「…(せっかく、生き延びたのに。」

 

 

毒で声を発する事が出来ず、ヒューヒューと息が漏れていた。

 

走馬灯の様に自身の育手の幻影が見える中、凛とした声が聞こえてくる。

 

 

「もしもーし、大丈夫ですか?」

 

 

蟲柱・胡蝶しのぶの到着によって善逸の安全は保障されるのだった。

 

 

そして…

 

 

先程の異形と化した父鬼と姉鬼の残骸を発見した水柱・冨岡義勇。

 

 

「どれも頸を一撃…」

 

 

普通の刀なら在り得ない切断面を観察する義勇。

 

現時点で柱が苦戦している頸を一撃で切り裂く隊士。

 

姉鬼の残骸に関しては爆薬を使用した形跡があった。

 

 

「…ここに来ているのか?」

 

 

義勇は移動した跡と思われる足跡を辿り、追跡を再開した。

 

 

更に那田蜘蛛山の最奥にて。

 

白い鬼こと累と対峙する炭治郎。

 

 

「ねえ、訂正してよ。」

「しない、お前のやっているのは家族でもない…ただの恐怖と暴力で纏め上げた偽物の絆だ。」

 

 

自分は正しいと答える累の問いに憐みの表情を向ける炭治郎。

 

忘れてしまった家族の絆と愛情を手探りで求める累。

 

求める事は誰にも止められない。

 

ただ、やり方が間違っていると気づかせたいと願う炭治郎。

 

 

「もういいや、十二鬼月の僕にそんな言葉しか出来ないのなら…」

 

 

累が瞳に刻まれた下弦の伍の証を見せつけても怯まない炭治郎。

 

累の糸と炭治郎の日輪刀が火花を散らす。

 

そして糸の一撃が炭治郎の目元を掠めようとした時。

 

 

「グ、ウウウゥ!?」

「禰豆子!?」

 

 

炭治郎を庇う為に箱の中から禰豆子が飛び出し防いだのだ。

 

 

「兄ちゃんが油断したばっかりに…ゴメンな。」

「ム…」

 

 

禰豆子は首を振って否定し大丈夫であると手探りで教える。

 

累は目処前で起こった兄妹の絆に感化し欲しいと切望した。

 

僕に妹を差し出せと…

 

 

「お前に禰豆子は渡さない!」

 

 

炭治郎の息が燃える。

 

熱く、赤く、輝くように。

 

それは日輪の様な熱さ。

 

 

「ムウ!?」

 

 

炭治郎の日輪刀に禰豆子の血が付着し爆炎を纏った刀へと変貌する。

 

禰豆子の血鬼術『爆血』の覚醒。

 

そして疑似的な熱を帯びた刀の発動。

 

 

「ヒノカミ神楽!肆ノ型 灼骨炎陽っ!!」

 

 

累の頸を瞬時に切り裂き、灼けるような痛みを負わせる。

 

原初の鬼を滅する為の呼吸の剣技。

 

それは複雑に枝分かれした鬼の眷属を滅するには十分な威力だった。

 

 

「僕が…」

 

 

頸を切られた累は走馬灯の様に思い出した。

 

自分が家族の絆を断ち切ってしまった事を。

 

願わくはもう一度、本当の家族に会いたいと。

 

自分を迎えに来た家族の抱擁の中で泣きじゃくりながら謝罪の言葉を告げた。

 

 

「ゴメンナサイ…」

 

 

=続=

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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