鋼の魂と共に   作:宵月颯

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迫る大群。

駆け抜ける鋼の騎馬。

新たなる戦いの予兆。

兆しはすぐそこに。


駆け抜ける騎馬と夜明け

炭治郎が禰豆子と共に下弦の伍を倒した頃。

 

善逸ら毒に侵された隊士達の応急処置後。

 

しのぶは西から南南東へ向かっていた。

 

そこでとある物を発見する。

 

 

「これは…繭でしょうか?」

 

 

南南東の木々で日を通さない洞穴。

 

そこに無数の巨大な繭を発見した。

 

数は三十程度。

 

中身は既に無く、内側から這い出した様に繭が切り裂かれていた。

 

そして繭の数の三倍位の白骨死体の残骸。

 

蜘蛛の習性に酷似している為か、肉体の中身を搾り取られた様な遺体も存在した。

 

 

「洞穴の主は出て行った後、では…何処へ?」

 

 

しのぶの呟いた疑問と同時に山の各所で地響きが発生する。

 

 

「これは、地震!?」

 

 

ただ揺れるのではなくある一定の間隔を開けて起こっている。

 

これは何かが通過していると認識するしのぶ。

 

 

「あれは…!」

 

 

しのぶは揺れが一瞬収まったのと同時に洞穴から出て洞穴の上へと向かう。

 

見晴らしのいい場所へ出ると南南東へ向かって移動する何かを目視する。

 

月明かりと土煙で上手く認識出来ないが、動く物体である事は理解出来る。

 

このまま放置すれば大きな被害が出てしまう事も悟った。

 

 

******

 

 

時は戻り、累を倒した炭治郎と禰豆子。

 

二人はヒノカミ神楽の反動と傷を負った影響で動けずにいた。

 

禰豆子に関してはある程度止血したのが解ると箱の中へ戻っていた。

 

 

「…(呼吸を整えろ、ゆっくり血の巡りを均一に。」

 

 

前回よりも修行の回数を増やしていた為に全身への負担はある程度軽減されているものの…

 

ヒノカミ神楽の反動は大きかった。

 

理由は前回よりも技の強さが増している為である。

 

刀の切れ味、技の速度、振り下ろす筋力、それらが前回よりも強くなった。

 

威力が強くなれば、代償として肉体への反動も大きくなる。

 

炭治郎は技を出す事は出来なくても行動は可能なまでに体力を整えた。

 

 

「…」

 

 

やっぱり、ヒノカミ神楽の反動が強くなっている。

 

呼吸をより安定させて次に繋げる様に修行しないと…

 

 

「おーい、紋次郎っ!!」

「伊之助!ハスミさん…ってぐへ!?」

「伊之助君、炭治郎君の名前を間違えてるし腹に突撃しないの。」

 

 

考え事をしている間に伊之助、ハスミと合流したが…

 

猪突猛進な伊之助の頭突きを腹部に喰らう事となった炭治郎である。

 

 

「白い鬼の少年の着物…無事に倒したのね。」

「はい、何とか…」

 

 

炭治郎は頭突きされた腹部を摩りながら先程の着物を畳み直して地面に置いた。

 

そして祈りを捧げた。

 

ハスミもそれに続いた。

 

 

「こんな少年まで鬼にされていたなんて。」

「…この鬼は下弦の伍と名乗っていました。」

「十二鬼月そして無惨に反逆した鬼、か…」

 

 

残っていた下弦の伍の衣服からジ・エーデルの気配は感じられない。

 

この子は奴の改造を受けていない、となると受けたのはあの二鬼だけか…

 

 

「!?」

 

 

突如、発生した地震。

 

 

「な、何だぁ!?」

「地震?」

「いや、これは……!」

 

 

揺れが一瞬収まったのと同時にハスミは何かを察し近くの木の上に上る。

 

天辺まで上ると双眼鏡を取り出して周囲を見渡す。

 

 

「そう言う事か!」

 

 

南南東へ向かって迫り来る土煙。

 

先程の姉鬼と呼ばれた巨躯の鬼の子供らしき異形の鬼が山を下っていたのだ。

 

 

「ハスミさん、何があったんですか!!」

「炭治郎君、伊之助君、さっき倒した巨躯の鬼の他の個体が大群で南南東に下ってる!」

「えっ!?」

「マジか!?」

「このまま南南東に下ったらあのおばあさんの居た藤の家紋の家が破壊されるわ!!」

「どうすれば…!」

「…一か八か止めるしかない。」

 

 

日の出まであと数刻ある。

 

あの速さから換算して戦うなら…

 

 

「叙荷!」

「はいよ、お嬢!」

 

 

私は上空で待機していた鎹鴉に声を掛ける。

 

 

「救援に来た隠に台車で入山場所に置いてある荷物をここに持ってくる様に頼んで。」

「あのでっかい包みか?」

「そう、大至急で!」

「よっしゃー!俺様に任せて置けって!!」

 

 

叙荷は高速で救援先の隠に伝達しに行った。

 

ハスミはそのまま木の下に降りて炭治郎達と合流する。

 

 

「ハスミさん、どうするんですか?」

「そうね…」

 

 

ハスミは近くにあった枝で地面に簡単な図面を書く。

 

 

「私達が居るのはココ、現在も大群は南南東へ下っている。」

 

 

ハスミは続けて大群が通過するルートにある開けた場所に印を付ける。

 

 

「この開けた場所で大群を迎え撃つ。」

「無茶ですよ!」

「炭治郎君、出来るから提案しているのよ?」

「ま、まさか………アレですか?」

 

 

炭治郎、悟りすぎて久々の顔芸が炸裂。

 

 

「そ、炭治郎君達は応援に来ている隊士と合流してこの開けた場所の更に南南東…場所の区切りに集合させて欲しいの。」

「判りました。」

「伊之助君も一緒に行ってあげて。」

「何でだよ!」

「炭治郎君は下弦の鬼との戦いで消耗が激しい、子分を守るのが親分なんでしょ?」

「ちっ、しゃあねえ!」

 

 

私は隠達から超特急で届いた荷物を確認した後、炭治郎君らを救援に来た隊士達の元へ行かせた。

 

合流は一刻後。

 

それまでにお膳立てをすればいい。

 

 

「久々に飛ばそうか。」

 

 

私は届いた荷物の保護カバーを外して中のバイクに搭乗した。

 

月夜に響く爆音と唸る音。

 

エンジンが掛った所で目的地まで木々の間を私は駆け抜けた。

 

 

>>>>>>

 

 

別れてから半刻後。

 

鎹鴉と隠の案内で救援に駆け付けた隊士と他の隠が集まっている場所へ辿り着いた炭治郎達。

 

場所は兄鬼と交戦した善逸が居た場所。

 

その善逸は全身に包帯が巻かれて処置済みの名札が張られていた。

 

 

「善逸~無事だったのか!」

「何だ?その恰好!」

「…」

 

 

毒の影響で声の出せない善逸は伊之助の態度に苛立ちを覚えたが反論できる状況ではないので無視した。

 

炭治郎は階級が上の隊士を探し出し、指示を出している義勇の姿を発見する。

 

 

「冨岡さん!?」

「炭治郎、お前も来ていたのか…?」

「あの…実は!」

 

 

炭治郎は義勇にこれまでの経緯を話し、南南東へ下っている大群をハスミが一人で抑えている事を告げた。

 

 

「彼の話している事は本当ですよ。」

「胡蝶か…」

「その子の言う大群が居たと思える洞穴を先程発見しました。」

 

 

しのぶは『もぬけの殻でしたけど。』と付け加えた。

 

引き続き炭治郎より状況を聞き、話し合う義勇達。

 

 

「…数が不明な大群、頸を斬るにしても手が足りない。」

「そうですね、隊士の殆どが負傷している状態ですし…」

「今もハスミさんはたった一人で…俺。」

「…行こう。」

「冨岡さん。」

「もう冨岡さんは相談も無しに決めてしまうんですから…」

 

 

しのぶは隠に指示し護衛と負傷者と共に山を下山する様に命令した。

 

炭治郎を始め、戦える隊士は柱と共に南南東の開けた場所へと向かった。

 

因みに伊之助は腕の負傷もあり、義勇に紐でグルグル巻きにされた後に強制離脱させられた。

 

 

*******

 

 

同時刻、現場に到着したハスミは大群に目掛けてグレネードランチャーで閃光弾と炸裂弾を交互に分けて大群に発射。

 

動きを止めて怯んだ隙にバイクで突撃し破片手榴弾と菫外線手榴弾をばら撒きダメージを与えていく。

 

足を負傷した鬼はすかさず頸をバイクの突撃を利用し日輪刀で切断していく。

 

これにより五体の巨躯の鬼が倒されたが残り二十五の鬼が残っている。

 

日の出まで時間が長いのもあり、長期戦を強いられる事を覚悟した。

 

 

「こうなったら大盤振る舞いしかないか…」

 

 

バイクのコンソールを起動させミサイルランチャーのボックスと機関銃を稼働させる。

 

既に弾薬は対鬼用に切り替えているので怯ませる事は可能だろう。

 

ハスミはハンドルを握りしめて再度の突撃を行った。

 

 

「これだけの火力なら再生すら出来ないでしょうね。」

 

 

大群の中心に向けてミサイルランチャーと機関銃を発射。

 

先程の閃光弾と手榴弾の影響が続いているらしく大群の多くは頸や肉体を削り取られる様に爆散、四散した。

 

 

「焼き蜘蛛の盛り合わせの出来上がりってね。」

 

 

だが…

 

 

「あれが大群のボスか…」

 

 

最後に残っていた色違いの巨躯の鬼。

 

他の鬼よりも一回り大きくボスの役割を担っていると予測した。

 

しかし、肝心の大群は先程の爆撃で壊滅し動けるものはいなかった。

 

一鬼対一騎の戦い。

 

知恵が回ると思われる鬼もハスミの行動に危険視し間合いを取っていた。

 

 

「早い所、終わりにしようか?」

「…」

 

 

鬼は糸束を吐き出し拘束しようとしたが、ハスミはバイクを素早く移動させて回避する。

 

そして…

 

 

「これにて御終い。」

 

 

隠し持っていたグレネードランチャーを鬼の口に目掛けて発射し爆発で怯んだ所で頸を断ち切った。

 

ハスミが蜘蛛が完全に沈黙したのを確認する為に菫外線手榴弾を投げつけた。

 

爆発を確認し完全な無力化を察した後、バイクを停車させて降りた。

 

 

「救援、無駄にしちゃったな…」

 

 

爆撃と銃撃で焦土と化した場所でハスミは呟いた。

 

鬼の家族は消え去り、那田蜘蛛山は本当の意味で夜明けを迎えた。

 

 

=続=




武装可変バイク・疾駆(しっく)
(モチーフは某未来からの暗殺者を開発した会社が作成した対人戦用バイクと5が3つ付く作品に出ていた可変バイクを合わせたもの。)

過去に主人公が白兵戦で使用していたバイク。
巨躯の鬼の大群と交戦した際に使用。
武装としてミサイルランチャーと機関銃、各二丁。
バイク各所にアーミーナイフ数本と手榴弾、使用重火器の弾倉が仕込まれている。
自動追尾モードと操縦モードがあるので故障がなければ誰でも運転は可能。
本人は通常マニュアルで動かしている。
電動式でバッテリーは三日分の日光で完全充電が可能。
定員は操縦者を含めて二名まで。


炭治郎も一度乗車した事があるが余りの速さと轟音で放心状態になった事がある。
後に伊之助が破壊しそうになり主人公の逆鱗に触れたのは言うまでもない。

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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