誰がどの特性に秀でているか?
そして伸ばしていけるかを?
前回の柱合会議から翌日の事、検査を含めて蝶屋敷に一晩お世話になった。
私ことハスミは炭治郎君と共に善逸君と伊之助君が入院している病室へと足を延ばした。
何か叫びまくって屋敷の女の子達に迷惑をかけていたので二人を締め上げて置いた。
困っていた女の子達の一人である傷病者の看護をしていた神崎アオイと言う少女から目から鱗状態の眼差しで見られた。
「怪我をしているのなら安静にして処方された薬をしっかり飲む事、判ったわね?」
「は、はいー!!」
「…!!(コクコク」
「…(この二人を一気に黙らせるなんて。」
同じ様に屋敷に通院していた村田さん達にも再会。
那田蜘蛛山で救出した人達の中で軽傷の人もいれば重傷を負った人もいるので致し方ない。
ついでに下弦の伍にサイコロステーキにされそうになった奴もね。
私が半分鬼で柱に就任した事を隠の一人に説明され吃驚させたのは申し訳ない。
ある程度の挨拶周りが終わった後、既に用意された私の屋敷に移動。
お館様は初めから私を柱にする気だったようで手回しが早いと思った。
屋敷の手入れは隠の人達が行ってくれていたので直ぐに入居が出来る状態。
有難く使わせて貰う事にし、そこで炭治郎君と秘密の話し合いを始めた。
「肺の強化を中心とした身体強化をしたいって?」
「はい、何かいい手段はないでしょうか?」
「あるにはあるけど……かなりキツイわよ?」
「それでも俺は……後悔したくないんです。」
「例の炎柱を救う為、だったわね?」
「そうです。」
「覚悟が出来ているのなら私は止めはしないけど…本当に厳しく行くわよ?」
「お願いします。」
私は炭治郎君の決意が固い事を確認した後、修行場の準備が必要なので数日待機して貰う事にした。
当の炭治郎君は暇だからと屋敷の掃除から家事全般をやり始めてしまったので申し訳なく思う。
取り合えず、私は炭治郎君の為に修行に必要な演習場の作成に取り掛かった。
まあ簡易的なものにしろ設置には二日位掛かる。
この鋼屋敷の周辺は修行するのに適した場所が多いので軽く加工したものを設置するだけで十分だろう。
「さてと、本格的な修行なんて何時振りかな…」
私は炭治郎君用の修行メニューを構築し準備を進めた。
炭治郎君は肺の強化と長期戦に耐えられるようにする為の身体強化の修行。
何時ものヒノカミ神楽は空いている時間でして貰う事にして…
この希望に沿ったメニューとすれば、あれだね。
うん、あれしかない。
>>>>>>
二日後。
特に鬼討伐の指示が入ってこないので他で上手く回しているのだろう。
この辺は有難いが、新たな情報が入らないのは正直困る状況だ。
取り敢えず、今出来る事として修行に専念しよう。
「まず、これを渡して置くね。」
「これは何ですか?」
「工場とかで使われるマスクよ、修行以外の日常生活中はそれを付けておいてね。」
「判りました。」
衛生マスクの正式な普及は1934年頃に発生したインフルエンザの流行が切っ掛け。
今の時期は工場や採掘所で使われるものが相場になっている。
炭治郎君に渡したのはガーゼと紐で造った簡易的なもの。
不織布マスクなんて便利なものは、この時代にないので致し方ない。
修行内容を説明した後、炭治郎君と共に基礎ランニングから開始した。
「まずは走り込みから、走れるだけ走って行くわよ。」
「はい!」
まず、炭治郎君に指定したルートの走り込みをさせた。
高地トレーニングは肺活量を増やす為に必要な要素の一つ。
その後は水中トレーニングと管楽器を吹かせる修行も行った。
色々やって数時間後。
「ご苦労様。」
「うへぇ…」
「食事休憩したら次の修行をするわよ。」
「は、はい。」
休憩時、手軽に食べられるように梅のおにぎりと筋力を付けるおかずを準備した。
日々の食事も筋力増加に影響し、中でもタンパク質と野菜のビタミン類が筋力増加に繋がる栄養素の為。
良く肉ばっかり食べる人もいるが食べ方を失敗すると筋力ではなく体重を増やすだけとなる。
要はバランス良く食べる事が大事って事ね。
「所でどうして山道で走り込みなんですか?」
「炭治郎君は雲取山や狭霧山で修行した時、呼吸がしづらいのを覚えている?」
「は、はい。」
「山って高い所に登れば登るほど呼吸に必要な酸素濃度が減っていくの。」
「…息がしづらいって事ですか?」
「そうそう、毎日高地での走り込みを続けていけば…少しの呼吸で済むし持久戦にも耐えられる様になるって事。」
「成程。」
「それと平行して筋力増加の食事や運動も取り入れていくから頑張ってね。」
「判りました。」
食事休憩後。
「ハス!ミさん~!これって!何か!意味が!あるん!ですか!?」
「あるから大丈夫、そのまま布の上で飛んでて。」
後半の修行メニューは巨大トランポリン。
現在、炭治郎君に丸腰で飛び跳ねて貰っている。
慣れてきたら帯刀した状態で飛んで貰うつもりだ。
「これ!何て!言う!んですか!?」
「それはトランポリン、躰全体の筋力強化と体幹を鍛えられるの。」
「そう!何です!か!」
「更に下半身の筋力もより強化出来るし慣れれば跳躍力が上がるわよ?」
「が!頑張り!ます!」
「話してる所、悪いけど舌噛まない様にね?」
「はい!」
傍から見れば遊んでる様に見えるが、れっきとした修行である。
まだ序の口だが、ある程度慣れたらトランポリンしている状態で銃弾を斬る訓練も入れていく予定だ。
今は修行に慣れましょうレベル、慣れたら順次バージョンアップしていこう。
「…(これでも軽い方なんだけどね。」
真面目に頑張っている炭治郎君の為にも出来得る限りの助力はするつもりだ。
「なのに、貴方達…何へばっているの?」
「「「「そんな事言われても…」」」」
「貴方達は、まだ山道の走り込みしかしてないでしょ?」
私は炭治郎君の修行と平行してお館様の指示で違反者のお仕置きメニューを行っている。
職務怠慢の末、減給処分の下った隊士達。
鬼討伐を偽り、虚偽申告を行った隊士達。
そう言った者達が集まっている。
「…グダグダ言う暇があるなら丸太を担いで後五往復してきなさいよ。」
私は『サボったら判っているわね?』と答えた後、再開合図としてP90で威嚇射撃して置いた。
「もしも…逃げ出したら全身蜂蜜まみれにした後、毒蛇を放った特製の養蜂場に吊るすわよ?」
ハスミの宣告に対し、この場に居る隊士達に『逃げる』と言う選択はゼロに等しかった。
理由は該当隊士達の違反判明の後、お仕置きと称して強制訓練に全員参加させられているのである。
ここ二日間の間に修行場の制作を始めとした活動に奴隷の如く馬車馬の様に働かされていた。
逃げようものなら重火器装備で地の果てまで追跡され、最終的には投げ網でドナドナされる始末。
別口で風柱とどっちがヤバいかと賭け事をしていた連中すら黙らせていた。
文字通り、敵に回したら最厄の存在が降臨したのである。
「…(鬼よりこえぇ。」
「…(いや、半分鬼だし。」
「…(もう勘弁して。」
この場の違反隊士達は『こんな事なら違反なんてするんじゃなかった。』と後悔していた。
それ位にハスミのお仕置きメニューは過酷なのである。
心根を折る発言から自尊心すら砕く毒舌が披露され、柱レベルの修行を酷使し心身共に疲弊させた。
それでも逃げようものなら全身負傷を覚悟の上で逃げ出すしかない。
その結果、約一名が見せしめとして全治二か月の負傷を負って蝶屋敷送りとなっている。
これに関しては逃走ルートに設置されたハスミの罠に引っかかった末の自業自得な末路なのだが…
「…(本当に便利よね、これ。」
ハスミが持っている資料にはこう書かれている。
『マオ姉さんの海兵隊式罵り手帳・新兵訓練編。』
『相良曹長流、陣代高校ラグビー部・訓練項目一覧書。』
敢えて言うなら取り扱い注意のものであるが、旨く利用すれば鬼なんて目じゃない位の気力と根性が付く代物。
精神面と体力的に質が落ちてると他の柱達が愚痴っていたので成果を出してみようと思った次第である。
「…(そもそも言い出しっぺがするべき事でしょうよ。」
隊士の質が落ちているのは隊士に定期的に訓練をさせていないからである。
試験場の藤襲山の管理に関してもお館様に放逐した鬼の進化の危険性に関して抗議文で送った位だ。
何処かで流れや改革を行わなければ、鬼殺隊そのものの存続に関わる。
育手の中で指南役を務められる者は居ないのかと進言もしたが、首を横に振られる始末。
で、結局…こっちに振られた訳である。
「…(まあ、使える程度には心身鍛えましょうか。」
私は錘を付けた鉄の棒で素振りしながら修行とお仕置きの監督を行った。
******
修行開始から一か月が経過。
当初の目的通り、炭治郎君の肺活量の強化と体幹トレーニングに成功した。
これで無防備になった空中でも体の位置をずらしたり防御態勢を取る事が出来る。
少し遅れて、伊之助君、善逸君の順に修行に参加。
各自任務もあるので全員の行動はバラバラであるが、要所要所の強化は出来たと思っている。
お館様に提出する報告書には各々の成長速度は違うが、継続して鍛える事は可能だと記載して置いた。
が、お館様の返信と指示書にて追加人員の修行を見て欲しいと仕事を増やされた。
「…そろそろ模擬戦でもさせてみるかな。」
隊士同士の戦闘はご法度であるが、修行と訓練に必要だと進言したらあっさりとOKされた。
よっぽど隊士の質に関して悩んでいたのだろう。
他の柱達も自分らの修行で手一杯らしく手が回っていない。
上司としてそれはどうかと思ったが、放っておく事にする。
今は結果と実績を出して云々言わせない事が大事。
これで覆せれば、彼らも変わるだろう。
「これより模擬戦闘による対戦をします。」
引き続き、鋼屋敷近辺の修行場に集まった炭治郎君ら修行中の隊士達。
話の内容に関して炭治郎君から質問された。
「あの、具大的には?」
「模擬戦だから木刀による一対一形式、相手が戦闘不能か気絶したら終了よ。」
「成程。」
「これは自分に足りないものを自分自身で発見する為のものである、なのでしっかりやる事!」
ハスミは『少しでも手を抜いたら…判っているでしょうね?』と後光に鬼神様を降臨させて注意していた。
その様子に他の隊士達は高速で首を縦に振っている。
この一か月間、修羅場とも言える修行を行ったので『逆らったら容赦ない恐怖』が身に沁みしていた。
「…(皆、ハスミさんの恐ろしさが身に染みてしまったんだな。」
この光景に炭治郎はホロリと涙を流した。
「ちなみに今回の対戦で成績の悪かった人は私が直々に相手をしてあげるから………死ぬ気で頑張ってね?」
やるか、やられるか?
守ったら負ける、攻めろ!
死ぬ気で反撃するんだ!
と、言う三つのフレーズが隊士達の脳裏を駆け巡った。
「早速、対戦相手はくじ引きで決めるから選んでね。」
事前に準備してあった紐のくじ引きで各自の対戦相手が決定。
「じゃ、準備が出来次第…順次対戦を開始するわね?」
後にこの模擬戦闘はいずれ行われる訓練に取り入れられた事は誰も知る由もない。
後の現代に遺される鬼殺隊・公式記録の一説に伝説の修行とその地獄の光景を綴った記録となる事も誰も知らない。
=続=
無限列車事件まで後、一か月。
刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?
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