予期せぬ介入者。
それらを相手にしよう。
攻め手の全てを出し終えるまで。
夢から目覚め、現在の状況を確認する一行。
鬼の協力者である四人の男女と車掌の話によると…
鬼は夢を見させる鬼である事。
列車に乗車した乗員乗客は全員喰われた事。
自分達は鬼狩りを行動不能にする為に夢に入り込む術を教えられた。
これによって事件に関わった隊士全てが鬼に喰われた。
と、ハスミの説得(銃器で物理)によって判明した。
******
「炭治郎君、この鬼に慈悲は要らないわよね?」
「…勿論です。」
「…(炭治郎もそうだけどハスミさんもマジギレしている。」
善逸は二人の様子にふと思った。
人の弱みに付け込み、他者を陥れるやり方。
他者を思いやれる炭治郎なら怒るのは当然だ。
ハスミさんに関してはいつもの修行の時の様な怒り方じゃない。
何処までも鋭く真冬の水の様に冷たい眼だ。
それはまるで鍛え上げられた鋼の様に。
「炎柱、この列車は汽車を除いて客車が八両編成で合っている?」
「ああ、事前の情報の通りなら間違いない。」
「なら、炭治郎君と伊之助君で列車に取り付いた鬼を残りで乗客を守ると言うのでどうですか?」
「何故、その分け方なのだ?」
「炭治郎君と伊之助君は鬼の探知する能力に優れている…善逸君は狭い所でも動きが制限されないから乗客の守りに呈して貰う。」
「…」
「勿論、禰豆子ちゃんもね。」
「ムー。」
「他の三人は解るが、何故竈門妹まで…」
「証拠が必要なのでしょう?禰豆子ちゃんが人を襲わないと言う生き証拠をね。」
お館様が話していた通りの人物だな。
『彼女は任務を全うするが理に合ってない理不尽な行動は取らない。』
『彼女は標的を逃さずに必ず捕らえる、何処へ逃げようともその足取りを追う。』
『彼女は認めてもなくても事を進める、また相手の能力を見定める眼が鋭い。』
『そして状況を見極める決断力も早い。』
『だからこそ必要だった…炭治郎と同様に彼女の存在が鬼殺隊にね。』
もう少し、少年達や彼女の様子を見る事にしよう。
「炎柱、聞いてたのかしら?」
「ああ、済まない。」
「もう一度、説明する…前方の二両を炎柱、三、四車両目を善逸君、五、六車両目を禰豆子ちゃん、最後尾の二両を私が担当するわ。」
「何故、その布陣に?」
「…ここ暫くの鬼の動きが妙だったからよ。」
「妙とは?」
雑魚鬼ばかりで十二鬼月階級の鬼が出現していない。
それはまるで嵐の前の静けさに様にも思える。
今回の他者の夢に介入する血鬼術を操る鬼は十二鬼月階級と仮定。
現在の戦場は移動中の汽車。
この状況を鬼側から見たとして思う事は…
「鬼は全て無惨と繋がっている、禰豆子ちゃんや私と言う例外を除いて。」
「…もしや。」
「鬼側からも戦闘を監視されている以上、別の伏兵が出てくる事も視野に入れただけよ。」
「その為の布陣なのだな?」
「そう言う事です。」
無惨ではなく、あの糞芋ヘッドが巨躯の鬼を出す可能性も否定出来ない。
奴はこちら側が窮地に陥った際にここぞとばかりに手を出してくる。
もしも…の状況に対応出来る布陣が先に述べた通りだ。
場合によっては客車自体を何両か破棄する必要が出てくる。
「…(列車と言う孤島、乗客と言う人質、逃げ場のない密室が揃った以上は向こうは必ず仕掛けてくる。」
ハスミは少し息を整えてから縛って置いた協力者達を威嚇射撃で叩き起こし話しかけた。
「起きろ。」
「「「「ひっ!?」」」」
「縄を解く、代わりにこっちの命令に従って貰う……妙な真似をしたら判っているな?」
「わ、判りました!!」
「「「「…(脅し方が酷すぎる。」」」」
炭治郎達は先程のお話を見ている為、ハスミの話し方はそっち系の言葉にしか聞こえなかった。
拳銃で威嚇射撃をし、ぐうの音も出ない程に言葉攻めをしている。
その姿は到底、正義の味方とは思えない姿であった。
「こう言う輩は下手に放置すると碌な事にならない。」
その時、縛られていた一人で三つ編みの女が答えた。
「何よ、アンタは……何も知らない癖に!」
「そうよ、私は貴方の事なんて知らないし逆に貴方も私の事も知らない……お互い様でしょ?」
「それは…」
「何が遭ったとか詮索する気はないけど、人は誰しも何かを抱えて生きているのよ。」
「…」
「それでも生きている以上は前を向いて生きて行かなければいけないのよ。」
ハスミは最後に『自分がこの世で最も不幸だと言う考えは捨てろ!』と冷たい眼で答えた。
「ハスミさん…」
「炭治郎君、嫌な場面を見せちゃったわね。」
「いえ、ハスミさんはハスミさんなりに伝えてくれたんですね。」
「そう言う事になるかな、戦場で戦争孤児とか家族を失った人を見続けてきたから…」
「…」
「話は御終い、さっき話した通りで鬼狩りを始めるわよ?」
私は話を切り上げて炭治郎君達に任務の続行を告げたが…
予測していたその時が訪れた。
ガキョ!
突如、響く金属同士が擦れ合う音。
音に反応したハスミは現在居る五両目から最後尾に移動する。
急ぎ、六両目と七両目を移動し最後尾に到着すると…
「…」
最後尾の八両目の天井を破壊し侵入してきた存在。
「巨躯の鬼…蠍と百足の混じり物か!」
肉体は百足に近いが手足の部分は全て蠍の手と同じ鋏状の物に置き変えられている。
背中に存在する毒針の尻尾も複数存在し油断出来ない。
最後尾は乗員乗客共に不在だったのが幸運だったが、七両目からは僅かながら乗客が居る。
後を追って来た炭治郎達にハスミは指示を出す。
「炎柱、炭治郎君達、前言撤回!乗員乗客全てを一両目と二両目へ移動させろ!!」
「判りました!」
ハスミは琴箱からP90を二丁取り出し囮となる行動へ移る。
「お前の相手は私だ!」
******
「善逸、伊之助、急いで乗客を前の車両に移動させるんだ!」
「ひぃいい!!何であんなのが居るんだよ!」
「うるっせえぞ!とっとと運べや!?」
「むー!」
先程の巨躯の鬼の出現により眠ったままの乗員乗客を全て前方車両へと移動させる一行。
鬼と協力していた車掌に乗車している人数を聞き出した所。
乗車した乗員乗客合わせて65人。
前方車両にその多くが乗車していたので残りの乗員乗客を救出するのに時間は掛からなかったが…
未だ、鬼の姿は見えず最後尾に出現した巨躯の鬼の存在がある限り逃げ場はない。
炭治郎は全員の確認が済んだ後、客車の外へ出て最後尾に届くように声を掛けた。
「ハスミさん!!全員救助しました!!」
その言葉を聞いたハスミは銃撃で甲羅部分を損傷し内部が飛び出ている巨躯の鬼の頸を斬り、お土産に菫外線手榴弾と複数の炸裂式グレネード弾を数個放置し最後尾から脱出した。
同時に七両目の客車と最後尾の客車の連結部を破壊してである。
凄まじい爆発音と共に爆風が各車両を揺らすが、一時的な事で列車は走行を続けていた。
「炭治郎君!伊之助君!鬼の居場所は!?」
「伊之助…」
「ああ、ここより前の所だぜ!」
「なら、頼むわよ!」
ハスミは琴箱にP90を収納し拳銃を取り出す。
同時にとある起爆スイッチを起動させてから外へ出て前方車両へと移動する。
「…(ああ言う手合いにはこれが一番ね。」
同時刻、客車内の至る所に仕掛けられた小型の装置が何かを噴霧し始めた。
「妙に騒がしいと思ったら彼らが失敗したんだね。」
引き続き、客車の上にて。
汽車の失踪事件に関わっていると思われる鬼を発見した炭治郎と伊之助。
「お前が夢を操っていたのか?」
「そうだよ、人は脆い。」
洋装の優男風の鬼…下弦の壱は告げた。
夢の中では人は誰しも脆く崩れやすいと。
今までに汽車で失踪した乗員乗客や鬼狩りに夢を見させて、最後に絶望する悪夢で締めくくり食い殺す。
それは滑稽で愉快だったと話した。
同時に鬼の眉間に銃弾が突き刺さる。
「この変態サイコパスが。」
「痛いなあ…あれ?君は無惨様が言っていた眼帯の女かな?」
「だとしたら?」
「そこに居る花札の小僧と一緒に僕が始末してあげるよ。」
「…上手く行くかしら?」
「!?」
突如、血反吐を吐く下弦の壱。
「恐らく、先程の巨躯の鬼はお前の仲間だろう?」
「どうし…」
「だと、すればアレは囮。」
見抜かれていた?と苦しみながら頸元を押さえる下弦の壱。
「そこから推測して、一気に乗員乗客を纏めて喰らうなら客車自体に同化していると踏んだだけよ。」
「げぇ…」
「予め、各車両に藤の花の毒を機械で散布して置いたのよ。」
ハハ、手の上で転がしていたのは自分じゃなくて…
彼女…の方だったんだ。
これじゃあ、無惨様も危険視するよね。
「炭治郎君、伊之助君、奴はもう動けない。」
その合図と共に汽車の機関部に同化していた下弦の壱の頸を二人が切り裂いた。
石炭をくべていた乗員が錐を出して炭治郎君に刺そうとしていたので遠慮なく錐を撃ち落としておいた。
下弦の壱が倒された事で横転の危機が迫る汽車。
私は空となった三両目以降の客車の連結部の破壊し切り離した。
少しでも横転の衝撃を減らす為である。
そして客車の重心を安定させる為に乗客を左右に偶数になるようにバラけさせた。
未だ、血鬼術の影響で目覚めない乗客乗員が外に投げ出されないように縄で固定して貰った。
汽車の緊急ブレーキも使用し、後は運に任せるしかない。
その後、揺れる車体は徐々に速度を落として開けた場所で停止した。
今回、ブレーキを使用したので横転の危機は避けられた。
停止したのを確認してから周囲を見る。
予期せぬトラブルで夜明けはまだ遠い。
「「た、助かったぁ。」」
「二人ともご苦労様。」
「煉獄さん達は?」
「無事よ、客車で乗員乗客が投げ出されないようにしてくれたから。」
「よかったぁ。」
先程の乗員はさっきの衝撃で気絶し泡を吹いていた。
うん、大丈夫だろう。
後、髪毟ろうとしている伊之助君。
遠慮なく、やってよし。
「…炭治郎君、来たみたいよ。」
「!?」
高速で接近し土煙を上げる物体
土煙が静まると現れた存在。
曇っていたが僅かに照らされる月明かりで見えた奴の眼。
その刻まれた数字にハスミは答えた。
「…上弦の参。」
=続=
無限列車編・その3
刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?
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