鋼の魂と共に   作:宵月颯

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一つ目の流れを変えた。

それなりの負傷をした。

だが、周りは黙っていなかった。


安静第一なのに周りが騒がしい

前回の汽車での一件後。

 

汽車に同化していた下弦の壱を討伐し事件は解決。

 

汽車の名札に『無限』と記されていた事から『無限列車事件』と本部に記録が残された。

 

世間一般では移動中に起こった落石によるトラブルと言う事で片付けられた。

 

あの協力者達も人命救助に協力した事もあり、鬼殺隊側からのお咎めはしなかったが…

 

私個人から外部協力者として各地へ点在して貰い、不可解な情報の提供をして貰う事で落ち着いた。

 

何か『この世の終わり。』の様な顔をしていたが、気にしない。

 

その内の一人は肺の難病だったので手持ちの複合ナノワクチンを打って置いた。

 

時間は掛かるだろうが、徐々に回復に向かっていくだろう。

 

先に負傷で運ばれた炭治郎君と炎柱は互いに骨折と裂傷等で済んだので致命傷にはなっていない。

 

しのぶさんも陰湿オーラ醸し出して『貴方が一番致命傷なのに何をやっているんですか?』と言われたが…

 

私は『二人は裂傷に骨折もしていたし、早く運んだ方がいいと思っただけよ。』と話して置いた。

 

多分、心配されたっぽいが念の為…静かに謝って置いた。

 

鬼に対する怒りは何処へ行った?な感じだったが、彼女にも何か変化があったのかもしれない。

 

話は変わり、現在の問題は上弦の鬼が出現した事と柱が二名も戦闘不能の負傷を負った事である。

 

恐らく柱が二人いなければ、事件関係者全員の全滅はほぼ決まった様なものだった。

 

それだけの戦闘能力を持っていたと柱二人の証言もあり緊急柱合会議が開かれたそうだ。

 

偶然の偶然が重なった事による生還。

 

出現した上弦の鬼の戦闘能力と驚異的な再生能力。

 

問題はまだまだ山積みである。

 

 

******

 

 

数日後、私も刺された傷は塞がったが…出血量が多かったので頭痛を伴う貧血に陥っている。

 

ぶっちゃけ言うなら月ものが来たのと同じ位に物凄く機嫌が悪い。

 

 

「何で俺まで…」

「…ス、スイマセンデシタ。」

 

 

炭治郎君達の見舞いに来ていた善逸君と伊之助君が余りにも五月蠅かったので脳天に三段拳骨を喰らわせて窓側に吊るしてある。

 

うん、某う〇せ〇わ!のノリの如くね。

 

ついでに『病室では静かに!!』と看板も付けて置いたわ。

 

何か通りかかったアオイちゃん、遠い眼で吊るされた二人を見ていたな…

 

 

「次、余計な事で起こしたら銃弾が飛ぶからね…?」

 

 

無言かつ鮮やかに事を済ませたハスミの発言に対し同じ病室で寝ていた炭治郎君と炎柱が二人で青褪めた表情で静かに答えた。

 

 

「「ア、ハイ……。」」

 

 

ハスミは自分のベッドに戻るとそのまま横になった。

 

本来なら部屋を変えて貰えば済む事だが、生憎…何処かの馬鹿が個室で暴れた上に破損させてしまったので使えないのだ。

 

その為、相部屋にタコ詰め状態なのである。

 

暫くすると声を小さめに話している二人の会話が聞こえてきた。

 

 

「竈門少年、あの時は済まなかった…」

「煉獄さん。」

 

 

未だ、点滴やギプスが取れず動けない状況が続く二人が動かせるのは口位だ。

 

煉獄は隣で横になっている炭治郎に対して伝えた。

 

 

「…あの時の俺は君達に後を託して死ぬつもりだった。」

「そんな、どうして?」

「列車で話しただろう、俺の家族の事を…」

 

 

前炎柱として誇り高く家族思いの父が母の死を切っ掛けに酒に溺れるようになった事。

 

それと同時に何かの書物を破り捨てて刀を置いてしまった。

 

母の死と何かを知った事が重なっての行動だと思う。

 

俺は母の遺言通り、柱を目指した。

 

俺を慕ってくれる弟の為に、全てを投げ出し叱咤しかしなくなった父に認められたい為に。

 

その結果、自分を追い込んでしまった。

 

 

「クジョウに言われた通りだった。」

 

 

列車で彼女に言われた言葉。

 

 

『自分の思いを偽り、ただ刀を振るい、全てを投げ出したくて…死に急いでいる様にしか見えない。』

 

 

図星だった。

 

 

『勝手に死ぬのは構わないけど、それは託した者と残された者の思いを踏みにじる様なもの……後を託した貴方の母親があの世で悲しんでいるでしょうね。』

 

 

その通りだった。

 

死を予期した時に見えた母の顔はとても悲しそうだった。

 

 

『責務を全うする事も大事かもしれないけど、母親なら自分の子供の命を心配するのは当然だと思うわよ?』

 

 

子を持つ親なら当然の願い。

 

恐らく死を予期していた母上が託した言葉の中に俺や父上、弟の命を大事にと想いも込められたんだと…

 

 

「ハスミさんは自他共に厳しい所はありますけど、それは誰かを思っての行動なんです。」

「そうだと思った。」

「俺もハスミさんの全てを知っている訳ではないんですけどね。」

 

 

そう言えば、二年近く一緒に居るのにハスミさんの事を聞いた事がないな…

 

いつか聞く機会があったら聞いてみよう。

 

 

「あの、煉獄さんはまだ…」

「君や彼女に救われた命だ、もう無謀な事はしないさ。」

「はい。」

 

 

長々と二人の話を聞いていると廊下が軋む音が聞こえる。

 

音から察するに二人分の軋む音。

 

どうやら見舞いの人?らしい。

 

 

「…」

「兄上、お加減はどうですか?」

「父上、千寿郎、久しぶりだな。」

 

 

横でチラ見した所、炎柱をショタにしたかの様なクリソツの男の子と同じく壮年にした様な男性が訪ねてきた。

 

本当に遺伝って凄いね。

 

マトリョーシカかよ?っと思ったのは気のせいと思いたい。

 

 

「竈門少年、紹介しよう…父の槇寿郎と弟の千寿郎だ。」

「…そ、そっくりですね。」

「うむ、皆からよく言われる。」

 

 

炭治郎君、君の発言は間違っていないよ。

 

誰だって見たら言うと思う。

 

 

「上弦と戦ったそうだな。」

「はい。」

「負傷したと文を預かったが、この体たらくか……才もない凡人が余計な事をするからだ。」

「申し訳ありません。」

「その程度の力量なら柱など辞めてしまえばいいものを…」

「父上、それは…」

「千寿郎、お前は黙っていろ!」

 

 

成程、これが炎柱の心の闇の原因か…

 

これで良く性根が曲がらなかったものだわ。

 

正直、某ジャンクフード好きの次元将とジ〇リ&宮〇ア〇メ好きの傭兵の方が遥かに性格がマシだと思う。

 

 

「ふざけるな!いくら父親でも言っていい事と悪い事があるだろう!!」

「何…?」

「酒の匂いをさせた貴方よりも煉獄さんの方が柱にふさわしい!煉獄さんに謝れ!!」

「下位の隊士が知った様な口を聞くな!」

「煉獄さんに謝れーーー!!!」

 

 

炭治郎君、良く言ってくれた。

 

頭突きするのは良いが、それ以上は身体に悪い。

 

後は私がするよ。

 

 

「…」

 

 

私は枕元に隠した拳銃を取り出して酒の匂いを漂わせた煉獄父に威嚇射撃をした。

 

千寿朗に関しては驚いて尻餅を付いている。

 

 

「!?」

「い、今のは…」

 

 

一撃の銃弾は煉獄父の耳元を掠める様に壁に風穴を開けた。

 

 

「「あ…………」」

 

 

この時、炭治郎と杏寿郎は先程とは打って変わって顔を青褪めさせた。

 

ギリギリと絡繰り人形の様に音のした方向へ頸を曲げる。

 

 

「…さっきからピーチクパーチク五月蠅いんだけど?」

「な、何だお前は!?」

「五月蠅いって言っているのよ……こんのー酒浸りジジイっ!!」

 

 

ハスミは目覚めの悪い苛ついた表情で起き上がった。

 

同時にベッドマットの下に隠して置いたP90で煉獄父の周囲に人型を作る様に射撃を開始。

 

それと同時に顔面キックをお見舞いした。

 

 

「へぶっ!?」

 

 

余りの出来事と酒精が回っていたせいで回避行動を取れなかった煉獄父。

 

文字通り、撃ち抜かれた壁ごと二階から一階へと転落する事となった。

 

転落時に受け身を取ったのでダメージは少ないが突発的な行動を起こしたハスミに対して反論していた。

 

 

「さっきから聞いているが、何だお前は!?」

「鬼殺隊・鋼柱、クジョウ・ハスミだ。」

「鋼柱だと?」

「人が横で眠っている時にグダグダと五月蠅いんですけど?」

「俺のせいではないだろう!」

「黙れ、酔いどれジジイが………少しお話ししましょうか?」

 

 

続けてどっから出したのか不明なミニミガンを取り出し襲撃体制に入るハスミ。

 

この時、煉獄父は悟った。

 

逃げなければ命はないと…

 

 

「な、何だそれはーー!!!???」

「あら~只の携帯式自動機関銃ですわw」

 

 

その場から逃走する煉獄父とミニミガンを発射させながら怒りを通り越したウフフな天国表情で後を追っかけて行った。

 

 

「…兄上、あの人は一体?」

「彼女は鋼柱のクジョウ・ハスミと言う女性だ。」

「柱なのですか?」

「ああ、二か月前に就任したばかりのな……」

「凄い人ですね。」

「うむ…鬼に対してあの様に銃や爆薬で戦う有望な隊士である事は間違いない。」

 

 

杏寿郎は静かに『あの様に怒らせると後がとんでもないがな。』とボソリと告げた。

 

 

「…そうですね。」

 

 

千寿郎は納得した様に怯えながらも父親の逃走劇を穴の開いた壁から覗いていた。

 

 

「これは一体!?」

「神崎さん、実は…」

 

 

点滴の様子を見に来たアオイが病室の惨状を見て大声を上げてしまっていた。

 

経緯を炭治郎が説明し『ああ、成程。』と納得した。

 

ちなみにハスミの居たベッドの上にはご丁寧に壊した壁代と書かれた用紙と代金(色付き)が置かれていた。

 

 

******

 

 

その後、蝶屋敷より…かなーり離れた森から銃撃の音と爆撃の音が半日中響いていたとの事。

 

目撃した隊士や隠からはドン引きの光景だったらしく口々にこう語っていた。

 

 

『鬼を超えた何かが通り過ぎて行った。』

 

 

『ウフフ~wwアハハ~wwと笑い声が聞こえてきて怖かった。』

 

 

『鋼柱様考案の新修行だと思います。』

 

 

『めっちゃ楽しそうでしたよ。』

 

 

『一瞬、御褒美か何かだと思いました。』

 

 

『俺も鋼柱様に尻をバンバンしばかれたい///』

 

 

『鋼柱様、多分サラシ巻いてなかったせいですっげーたゆんたゆんしてたわ…眼福乙。』

 

 

後にズタボロになった煉獄父が発見されたが、その姿は哀れな状況だったらしい。

 

文字通り、服はボロボロ、顔面と右目に複数の青痣と両頬に張り手跡が刻まれていたとの事。

 

 

『この根性の曲がった酒浸りジジイ!』

 

『亡くなった奥さんに顔向けできるのか!?』

 

『そんな情けない姿を草場の陰から奥さんが軽蔑の眼で見ているぞ!!』

 

『文句があるなら父親らしい事をしてみなさいよ!!』

 

『そんなのだから息子達ににも愛想付かされるのよ!』

 

『態度と考えを改めないとその内…本気で絶縁されるわよ?』

 

 

と、ハスミに襲撃から駄目出しとボロクソに言われた事もあり、煉獄父はお館様に抗議文を送ったらしいが…

 

 

『気持ちは解らなくないけど、もう十分休んだよね?』

 

 

『いくら父親でも杏寿郎に対する暴言は良くないと思う。』

 

 

『反省の意を込めて打診していた指南役の件宜しくね。』

 

 

とさらりとスルーされたとの事。

 

流石の煉獄父もお館様の命令には背く事は出来ず、後日指南役として鬼殺隊・本部に顔を出したとの事。

 

なお、煉獄父に頭突きをかました炭治郎はその時の衝撃で治りかけていた骨折のヒビが戻ってしまったので退院が先延ばしとなった。

 

 

=続=

 




<裏話>


とある深夜。


「本当によろしいのですか?」
「うん、私としても槇寿郎には立ち直って欲しいからね。」


『あのままでは杏寿郎や千寿郎が可哀そうだからね。』と告げるお館様。


「事と次第に寄っては容赦出来ませんが?」
「大丈夫、遠慮なくやってしまいなさい。」


と、煉獄父の指南役へ引っ張り出す件が密かに行われていたのはお館様とハスミの秘密である。

※ 教訓、策士と策士が合わさると地獄を見る。

余談、主人公の体型はB91・W58・H84である。

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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