それは凶と出るか吉と出るか?
誰にも判らない。
前回から三日後。
私ことハスミは任務で骨折し入院中の炭治郎君と炎柱より先に退院した。
二人は残り半月程の入院が必要なので仕方がないが…
命があるだけまだマシな方だろう。
私は特に大きな任務はなかったので引き続き他の隊士達の修行を見る事となった。
*******
鋼屋敷近郊の修行場にて。
ハスミを筆頭に鬼殺隊の修行を行う隊士達が集合。
二か月前の修行で精神的にも屈強な隊士に変貌した者達。
何か判らんが罵られたい眼差しで見る一部の隊士達。
今回から修行に参加する隊士達が集合しているが、少々場の空気に慣れないのかオドオドした雰囲気が残っていた。
「数日であるが、長らく修行の場に居られず申し訳ない。」
前線に立つ者として謝罪と共に修行者達にハスミは話を続けた。
「聞いての通り、無限列車事件で上弦の鬼が出現した事もあり…今回より修行難易度を上げて行く!」
全体の七割が『『『ガンホー!ガンホー!』』』の掛け声と『『『おっしゃー!』』』の掛け声が響いた。
残りの三割が『『『えっ!?』』』な表情で掛け声組を見ていた。
「いいか豚共!我々の目的は何だ!!」
「「「悪鬼抹殺!!」」」
「我々の理想の強さは何だ!!」
「「「鬼の天敵!!」」」
「柱を超える覚悟はあるか!!」
「「「あります!!」」」
「ならば結構!これより修行を開始する!急ぎ配置に付け!!」
「「「イエス・マム!!」」」
掛け声と共にそれぞれが行っている各修行場へと移動する。
残ったのは初回の隊士達のみ。
「これが私の修行を耐え抜く事が出来た二か月後の君達だ。」
余りの光景に唖然とする初回の隊士達。
「私は他の柱とは違う、個々にそれに似合った実力を伸ばせる者を見捨てたりはしない。」
今までの行動で他の柱と一線を画す行動を起こしているのは事実である。
「お館様の指示により新規参加者への修行を行う。」
ハスミは修行内容を説明しつつ続けて新規参加者達に話す。
「…この中に尻尾巻いて逃げようとする根性無しは居ないと思うけど。」
逃げたらただじゃ置かないわよ?と付け加えた。
早速、新規参加者は用意された丸太を担いで指定ルート内の往復マラソンを開始。
丸太の重量と往復マラソンに指定された山道ルート。
それらを毎日こなす事で肺活量と筋力を付けさせる。
定番の修行から始まった。
これは鋼柱監修の修行の始まりに過ぎず、次のステップから凶悪性が増してくるのである。
炭治郎達はやった連続トランポリンで銃弾を斬る修行や川へ接触ギリギリバンジージャンプなど数えたらキリがない修行が待ち受けている事を新規参加者達は知らない。
現在、更なるステップに移った他の修行中の隊士達は…
落下する岩石を刀で斬ったり避けたりしながら頂上に向かう修行。
滝から落下する河水を全て刀で打ち返す修行。
鋼柱が対鬼用に飼育している元闘犬で鬼殺犬のゴンタ君とゴンゾウ君の襲撃から罠が満載したエリアを逃走する修行。
等々、傍から見れば死亡一歩手前の修行が行われている。
「先ず先ずか…暫くはこれで様子見。」
とまあ、言っても上弦の壱と参を相手にするには実力が足りない。
上弦の壱は炭治郎君が話していた通り、呼吸を使っていたし…
参は殺気対応の体術使いだから…垂れ流し状態の殺気をどうにかしないと荷が重いわね。
…戦力上、他の柱も修行が必要かもしれない。
このままだと永久ループ地獄になりそう。
「おうおう、派手にやってるな!」
「…」
ハスミが考え事をしている矢先に修行場に現れた宇髄天元と伊黒小芭内。
修行の様子を見に来たようだが、他にもある様子だった。
「音柱に蛇柱……何?野次馬かしら?」
「…そんなんじゃねえよ。」
「ああ。」
「なら、何の様?」
二人は顔を見合わせると話を続けた。
「お前…一番重症だったのに煉獄の事、守ってくれたんだろ?」
「…その事を言いに来た。」
「その事なら礼の必要はないわ、私は上弦の壱を足止めしていただけで炎柱を守ったのは炭治郎君よ。」
「それは胡蝶からも聞いている。」
「だが、上弦の鬼が二体も出た戦場で無事に戻れたのは奇跡だ。」
「そうね。」
「…ありがとな。」
「俺からも礼を言う。」
「受け取って置くわ………所で二人は炎柱と親しいの?」
「まあな。」
「…」
二人の話を聞くとこの場に居ない甘露寺ちゃんを含めて柱の中で付き合いが多い方だそうだ。
特に蛇柱は幼少期に前炎柱…あの酒浸りジジイこと煉獄父に救われたらしい。
病死した奥方がまだ存命だった頃の事なので今と比べ物にならない位に熱意のある人だった様だ。
そんな彼らでも炎柱の心の闇に寄り添う事は出来なかった。
「無限列車事件での炎柱は死に急いでいたわ。」
「やっぱりな…」
「知っていたなら相談する事も出来たでしょうに。」
「人の家の厄介事に首を突っ込む訳にはいかなかったからな。」
「それでも死んでしまったら本音で話す事は一生出来なかったと思うわよ?」
「その為に鬼殺隊の隊士は遺言書を書いている。」
「本音は隠したままって事もあるわよ?」
「何故、そうだと?」
「ああ言う性格の人って自分で伝えたい最後の想いを…隠して持って行ってしまう事もあるのよ。」
自分の言葉でいつか言おう。
それでも拒絶されてしまう。
いつしか拒絶される事を恐れてしまう余りに心の内に隠してしまった。
「炎柱は父親と腹を割って本音を話していれば良かったのよ、盛大な親子喧嘩でもする位に。」
「それ、周囲がとんでもねぇ事になるぜ?」
「…同感だ。」
「周囲が止めればいい事よ、何の為の鬼殺隊で柱で仲間なの?」
ハスミは一息置いてから伝えた。
「貴方達はそれぞれが自分自身で一杯一杯で周囲に無関心すぎるのよ。」
「…」
「貴方達は腹を割って話を聞いてあげる仲間じゃないの?」
「言われてみりゃ…そうだよな。」
「仲間を信じて手を取り合う事も必要だと思うけど?」
「ただ居ただけで余り考えた事は無かった。」
「それに鬼殺隊の生存率が少ないのは隊全体の修行と訓練不足に…個々の精神的な治療が必要だからよ。」
「治療だと?」
「そうね、例えば…鬼に襲われた後でも悪夢を見続ける隊士とか居なかった?」
「ああ…胡蝶の所にそんな隊士が居た。」
「そう言った人達への対応も今後必要になっていくわ。」
ハスミは修行を続ける隊士達の様子を見ながら話を続ける。
「彼らも自分の恐怖と向き合って戦おうと立ち上がった、それが出来たのなら心の強さを伸ばして行けばいい。」
「心の強さか…」
「伸ばせない、戦えない、そんな隊士達には別の方法で戦う意味を与えてあげればいい。」
「別の意味?」
「隠に入ったり、拠点を帰る場所を守る、刀鍛冶の様に戦う力を作る、それは様々な方法よ。」
命ある者にとって衣食住は大事だ。
そのバランスが取れなければ戦い続ける事は出来ない。
「私は命ある限り生き続ける事が戦いだと思っている。」
私にとって命を投げ捨てる犠牲はこの世に生まれてきた事に対する冒涜だと思う。
もしも軽蔑されたり拒絶されても自分に恥じぬ行動で胸を張って生きればいいと…
あの人は私に教えてくれた。
「あ。」
「どうした?」
「?」
ハスミは双眼鏡でとある方向を見ると何処からかRPGを取り出し、距離を確認してから発射。
盛大に上空で爆発し爆発で飛び出た網が脱走者を捕らえた。
続けて拡声機を出して指示を出す。
「ゴンタ!ゴンスケ!脱走者が出たから噛み付いてこい!!」
掛け声の後に響く二匹の犬の遠吠え。
同時に上がる土煙と脱走者の悲鳴。
『ぎゃぁああああーーーーーー!!!』
そして犠牲者の捕獲に成功した声が響いたのである。
「聞いていた以上にえげつねえな。」
「ああ…」
音柱と蛇柱はこの光景を白い眼のドン引き顔芸で見ていた。
=続=
<とある裁縫係の災難>
鬼殺隊服縫製係の前田まさお。
通称ゲスメガネと呼ばれている。
ある日、彼はとある人物の逆鱗に触れる事となった。
「…」
彼は全裸(下着アリ)の状態で木に吊るされていた。
その顔はメガネは破損し全身青痣とタンコブだらけと言う悲惨な状態。
彼の頸に吊るされた看板にはこう書かれていた。
『この者、超が付く変態の豚なので日没まで吊るす。by鋼柱』
『注意・日没まで弄らない様に。』
と、書かれていた。
これに関して女性陣からは軽蔑の眼で見られ、男性陣からは『あーあーやっちまったな。』で鋼柱の修行でドMに目覚めてしまった一部の隊士達は『ゲスメガネ!!テメェだけズルいぞ!!』と『俺らも鋼柱様に罵られたいのにー!』と『羨ましいぞ!糞野郎が!!』などドン引き発言をしていた。
ゲスメガネを発見した風柱は『自業自得だ。』とスルー。
後にゲスメガネは誓う。
懲りずにもっとスケベな服を作ってやると…
「あのメガネ、懲りずに…」
鋼柱、再び谷間を強調した隊服を支給され…ゲスメガネフルボッコ・ループへ。
刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?
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木乃伊事件(不死川、伊黒)
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集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
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船舶沈没事件(宇随、煉獄)
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不在担当地区防衛(時透、甘露寺)