そして敵の実力。
真似ていても脅威である事に変わりはない。
前回から半月後。
炎柱と炭治郎君が機能回復訓練を行っている頃。
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「よぉ、半鬼女。」
「風柱か、何の用?」
「ちぃとばかし、お前とやり合う為に来た。」
「…お館様の許可は?」
「んなもんは取ってある、木刀とは言え容赦はしねぇぞ?」
「そう…」
私ことハスミは修行場での訓練中の最中、鎹鴉からの指令書にて。
この人相クソ悪い度Maxの風柱こと不死川実弥との模擬戦をお館様に依頼されたのだ。
別に構わないと思った。
風柱の怒りで敵をたたっきる癖をどうにかしないと今後に響いてくると理解していたので…
遠慮なく、ぶっ飛ばす事にしました。
テヘッwっとしたい気分で。
「さてと…」
ハスミは拡声機を取り出し、修行中の隊士達に指示を出す。
「豚共!屑虫共!本日の修行は一時中断!今から十分後に柱同士の模擬戦を執り行う!!見稽古としてその眼に焼き付けろ!!」
「「「イエス・マム!!!」」」
「急ぎ、闘技場へ移動!!遅刻した者はその尻に銃弾をぶち込むぞ!!!」
「「「イエス・マム!!!」」」
指示を出された隊士達は修行道具を素早く片付け、修行場から闘技場へ移動を開始。
ハスミは拡声機を仕舞ってから唖然としている風柱に静かな声で答えた。
「…」
「風柱、言ったからには………本気でやらせて貰うわよ?」
「おう、上等だぁ…吠え面かかせてやるよ。」
風柱、正直に思う。
貴方の殺気は全然恐怖を感じない。
私は…それ以上の恐怖を感じた事があるから。
私はあの恐怖を忘れないし忘れてはならないと思っている。
それは憎しみにも似た感情である事は理解していた。
~十分後~
鋼柱が筆頭に無限列車事件前に設営した闘技場。
身稽古用の観客席と広々とした対戦用の敷地。
周囲には緩衝材を仕込んだ壁に囲まれている。
「随分と面白れぇ所をこさえたな?」
「元々は一人対百人の斬り合いの修行を行う為に造ったのだけど、模擬戦専用の闘技場としても使用しているのよ。」
「なら、テメェを容赦なくブッ飛ばしてやるぜ。」
「あ、ちょっと待ってて。」
ハスミは一度静止させると闘技場の隅に行き、付けていた服装以外の装飾品を全て外した。
それは一つ一つが地面へ落ちる毎に地面に沈んでいった。
「!?」
「本気でって言ってたでしょ?それと…」
ハスミは専用の木刀を投げ渡した。
「何だぁ?」
「普通の木刀でやり合うと折れるから一番強度の高いのを選んでおいたわ。」
「本赤樫か…?」
「それに油を染み込ませてあるから少し重いけど。」
「日輪刀で打ち合う方がいいが、お館様の命令もある…別に構わねえよ。」
「じゃあ、始めるわよ?」
「おうよ。」
準備が終わり、互いに木刀を構えようとした時。
「派手に面白そうだな!!」
「「!?」」
「なら…司会・進行役はこの祭りの神である宇髄天元様が取り仕切るぜ!!」
突然の宇髄の登場で両者共に息ピッタリで突っ込みを入れる。
「「宇髄(音柱)、何勝手な事をしてやがんだ(している)!!」」
その様子にドヤ顔で宇随は答えた。
「んな、面白れぇ対戦を見逃す俺様じゃねえぜ?」
「…あの野郎っ。」
「…風柱、後であの祭り馬鹿を潰していいかしら?」
「応よ、そこは同感だぁ。」
物騒な話し合いを余所に気を取り直して、二人は模擬戦を開始した。
先手必勝で不死川が木刀で突撃してくるものの…
ハスミは接触前に身体を横にずらして回避する。
「口先だけじゃねえって事か…!」
「言った筈よ、本気で行かせて貰うと?」
「上等だ!?」
「遅い…!」
ハスミは戯言を続ける不死川の予測を上回る速さで木刀を弾き飛ばした。
「な…!」
「…」
眼や感覚で追い切れない速さ。
それは鬼の体質からではなく元からの鍛錬も含まれている。
これはハスミ自身の事であるが、彼女は常時鍛錬の為に錘を常に体の至る所に付けていた。
それを外した事により、先程の様な異常な速度を出せているのである。
「言っておくけど、それ……上弦の壱と同じ速度よ?」
「!?」
「無限列車事件で遭遇した上弦の壱の速さがそれだった……その速度はあくまで目安よ。」
「てぇことは?」
「場合によってはさっき以上の速度に追いつけなければ勝ち目はないって事よ。」
「…他にもあるって顔だなぁ?」
「今の反応速度では奴の斬撃を避け切れない。」
「んだとぉ?」
「奴は一度の斬撃に無数の斬撃を組み込んで攻撃している。」
「それがテメェの知った事か?」
「その通りよ。」
ハスミはもう一度、不死川に告げる。
「これだけは言える、今の状況では柱が束になっても勝ち目はない。」
「んだと!?」
「怒りに任せた攻撃だけでは意味がないって言っているのよ?」
この人相クソ悪Maxめ。
ぶっちゃけ言うならハイパーモード取得前のキング・オブ・ハートと同じだ。
正直アレ…取得させようか迷っている。
成長はしているけど、迷いが降り切れてない今の彼では扱えない。
「…迷いがある刀では奴に届かない。」
「っ!」
「それでも打ち込んでくる覚悟はあるのかしら?」
「勿論だ、テメェに吠え面かかせる迄は何日でもぶった切ってやるよっ!!」
「…(覚悟は良いけど……正直、駄目だこりゃ。」
ハスミはため息をついた後、出来得る限りの殺気を闘技場に干渉させた。
それは一般の隊士でも発狂するレベルの殺気であり、本来の立ち位置で干渉させていたモノである。
とても重苦しく、動けば命はないと感じさせる気配。
「テメェ…何だよそりゃぁ。」
「言った筈よ、本気を出すと……普段は周囲が反応しやすいから抑えているけど、出せと言われたら出せるのよ?」
不死川は目処前の存在に冷や汗を流していた。
同じく司会進行を行っている宇髄もまた背中に収納していた刀を握りそうになった位である。
「明鏡止水。」
「は?」
「何の邪念も無く、静かに落ち着き澄み切っている心の状態の事を示す……その窮地に立った時、それは貴方の力になる。」
「それが何だって言うんだよ。」
「見せてあげる、私も学んだ……その意味を。」
ハスミは木刀を構えると先程の言葉通りの心のままに木刀を振るった。
それは不死川を通り過ぎて後ろにあった緩衝材の入った壁を細切れにしてしまう。
確かにあった斬られた感覚と何かが通り過ぎた感覚。
「今の感覚をよく覚えて置いて。」
ハスミは拡声機を取り出すと身稽古に参加していた隊士達に修行の再開を言い渡す。
そして茫然と立っている不死川をそのまま放置し身支度を済ませてその場を去って行った。
「おい、不死川…大丈夫か?」
同じく茫然としてしまった宇髄も正気を取り戻し、闘技場に遺された不死川に声を掛けた。
「ああ…」
「…煉獄と竈門達が生き残れた理由が漸く判ったぜ。」
「どういう事だ?」
「クジョウは……アイツは戦場を経験している。」
「戦場だと?」
「それも鬼狩りの規模じゃねえ方の…な?」
それも俺よりも人の死を経験しすぎている。
場慣れしすぎていると思ったが、経験の差が桁違いだった。
的確な指示と戦術に上弦と対等に渡り合える戦闘力を隠している。
お館様がクジョウを引き入れた理由に納得した。
「解り安く言うなら戦争経験者って言った方が早い。」
「…」
「もうしばらく様子見が必要かもしれねえな。」
「宇髄、もう一つあるぜ。」
「俺も同じ事を考えていた所だ。」
「俺らも本格的に修行のやり直しが必要だってな…」
「同感だ。」
不死川の言葉を否定せずに宇髄もまた頷いた。
=続=
<甘露寺ちゃんの甘味速報>
「はぅ~ハスミさん、これすっごく美味しい!」
「材料が丁度揃ってね、お気に召したかな?」
「勿論!」
本日の甘味、焼きたてワッフルの塩バニラアイス添え・蜂蜜付き。
「ハスミさんがアイスクリンの作り方を知っていたなんて…」
「海外を旅していた時に学んでね、果物が在ればもっと美味しいのが出来るけど。」
「これでも十分だよ、このワッフルもさっくりしてもっちもちでアイスと蜂蜜に合う~♡」
「…(ワッフル…既に五十枚目突入してるけど大丈夫かな?」
その後、作って置いたアイスクリン3㍑分が甘露寺ちゃんによって食べ尽くされたのは別の話。
ワッフルの大きさ:一般のどら焼きと同じサイズ。
刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?
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木乃伊事件(不死川、伊黒)
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集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
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船舶沈没事件(宇随、煉獄)
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不在担当地区防衛(時透、甘露寺)