鋼の魂と共に   作:宵月颯

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鬼狩りの間で騒ぎが起きた頃。

ここでも一つの騒動が起こっていた。

矛先は更に広がる。

そして…


矛先は広がる

とある雨の日。

 

帝都内のとある屋敷にて。

 

 

「では、商談成立で。」

「こちらこそ、有意義な商談が出来ました。」

 

 

どんよりとした厚い雲が覆う雨の日。

 

月彦は表向きの立場での商談を行っていた。

 

太陽が出ていなければ鬼も活動範囲を広げられる。

 

その為、天候が悪くなる雨期や日の落ちる時間が早い冬場を中心に活動している。

 

 

「そちらがお探しだった苗木ですが、次の貨物船で届く予定です。」

「それは朗報ですな。」

 

 

商談相手の初老の男性は商業相手としては信頼出来る相手であり、何度か商いの件で話し合いをしていた。

 

この時代に置ける義を重んじた相手だからだろうか。

 

そんな彼らの談笑を遮るような報告が起こってしまった。

 

 

「社長、失礼します!」

「どうしたんだ?」

「それが…明日到着予定の貨物船が事故で沈没しまして。」

「何だと!?」

 

 

速達で届いたのだろう電報を持って室内に入室した社長秘書。

 

内容確認の末、急ぎ知らせに来た様だ。

 

 

「事故の詳細は犠牲者は?」

「乗組員多くは近くの漁村で助けられましたが、甲板に出ていた何人かは海に投げ出されたとの事で…」

「…何と言う事だ。」

 

 

この時代の航海にも危険が伴う。

 

現代の様に空からの救助や海からの救助がスムーズに行える訳ではない。

 

今回の場合は陸に近かった為にその多くが難を逃れたが、数名の犠牲が出た事に変わりはない。

 

 

「事故の場所は何処だったのだ?」

「それが…」

 

 

社長秘書が口ごもる様に伝えた場所。

 

 

「馬鹿者!あの海域はどんな事が在っても通るなとあれ程…!」

「申し訳ありません、進路を変えたのは船長らの独断だった様で。」

「まさか異洲磨沖の海域に入ってしまうとは!」

「社長、異洲磨沖とは?」

「海での商いを行う者なら誰でも知る呪われた海域と呼ばれる場所です。」

「呪われた?」

「ええ、海流は激しく多くの船が座礁し転覆する事で通る者はいない海域…現地の漁村を除いてはですがね。」

「漁村?」

「異洲磨沖に繋がる入江には異洲磨村と呼ばれる村がありまして、その村の漁師達だけは何故か事故に遭わないのですよ。」

「…」

 

 

社長の言葉に月彦は静聴しつづけるが…

 

社長は『呪われた海の血筋』や『死の海域』、『化け物が住まう場所』と一人ぼそぼそと呟いていた。

 

 

「故に商いを行う我々の間では異洲磨沖に立ち入ってはならない暗黙の了承があるのです。」

「そうでしたか…」

「月彦さん、例の品をお渡しする事が出来ずに申し訳ありません。」

「いえ、命あってのモノです…犠牲となられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。」

「ありがとうございます。」

 

 

月彦は商談の件を済ませ、社長の屋敷を後にした。

 

 

 

~その夜~

 

 

無限城にて。

 

上下左右が複雑に反転した空間にて。

 

 

『全ての鬼に告げる、現在の任を中断し異洲磨村の情報を集めよ。』

 

 

月彦こと鬼舞辻無惨の意思の元で命令が下される。

 

 

「鳴女、貴様は現状のままだ。」

「仰せのままに。」

 

 

暫くすると無惨の元に集まる情報。

 

それは人の世では到底出てくる情報ではないものが多かった。

 

 

『魚顔の男だけの村民。』

 

 

『消える娘子。』

 

 

『新月と満月の時に現れる魚神の化身。』

 

 

『彼の異国より来訪した異形の血筋。』

 

 

余程の怪異に詳しい者でなければ理解が出来ない情報。

 

それらを元に無惨は言葉を零した。

 

 

「異形の者達よ、この私の求める物を失わせた償いはして貰うぞ。」

 

 

古き世からこの地に住まう者へ手出しをした異国の怪異。

 

それは一つの戦いでもあるが…

 

手を出してはならない存在達に手を出してしまった事に怪異達はまだ知らない。

 

知れば最後、恐怖の底に落ちるだろう。

 

 

=続=




IFルート・異洲磨村編その二。

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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