鋼の魂と共に   作:宵月颯

32 / 78
遺された品々。

それが指し示すもの。

奴らは捨て置けない。

存続の為に滅ぼさなければならない。


狂気の記録

引き続き、異洲磨村・教会の地下にて。

 

捕らわれた娘と恋柱・甘露寺を発見した私達だったが…

 

娘達と甘露寺ちゃんに異変が起きていた。

 

 

******

 

 

教会の地下。

 

その中は幽閉の為にいくつかの牢屋と医薬品が置かれた医務室らしき場所。

 

気配と中の状況から何かの実験を行っていたらしい。

 

 

「…」

「クジョウ、何か判ったか?」

「室内の棚の薬品は殆ど医療用のだけど、こっちの箱の薬は劇物よ。」

「劇物?」

「解りやすいのなら毒薬、例えとしてトリカブトの粉末とか。」

「マジか…」

 

 

伊黒が室内の端に置かれた瓶に触れようとした所、ハスミはそれを静止させた。

 

 

「蛇柱、その瓶には触れるな!」

「っ!?」

「その瓶は水酸化ナトリウムに苛性ソーダ…どちらも人体に付いたら瞬く間に溶ける代物よ。」

 

 

室内を調べるハスミ。

 

その状況を宇髄と伊黒の二名に告げた。

 

薬品の中に危険な代物が含まれていると…

 

 

「奴らは、この村で一体何をしていたんだ?」

 

 

気絶したままの恋柱を介抱する伊黒が答える。

 

その疑問を解く可能性がある記録書を本棚の隅にこっそりと隠されていたのを発見したハスミは宇髄らに伝えた。

 

 

「ここに古い記録書があったわ、これで少しは…」

「異国の言語か?」

「巧妙に内容を隠す為に英語、イタリア語、ラテン語に…これはキリル文字だからロシア語も組み合わせて文章を作っている。」

「…判るのか?」

「所々にかすれている部分もあるから何とも言えない、判る範囲は読めると思う。」

「なら、そっちはお前に任せて俺らは甘露寺達を逃が…」

「…それは止めて置いた方がいい。」

「何か分かったのか?」

「恋柱達は何かの薬品を打たれた跡が残っている、その薬品の正体を調べないと鱗の症状を止められない。」

「下手に動かすのは出来ねえってか。」

「そこで気になったのが、この瓶の薬品。」

「…!」

「光っているのか?」

「…瓶の名札には『人魚の涙』って書いてあるわ。」

「人魚?」

「昔話に出てくるあの猿の上半身と魚の尻尾がくっ付いた化け物だったか?」

「こちら側ではそうね…でも、西洋のデンマークって国では全く違う扱いよ。」

「?」

「そちら側の人魚伝承は美しい女性の上半身と魚の尻尾を持った絶世の美女とされているわ。」

「他には?」

「銅像や絵画の場合だと服なんて着てないから上半身ほぼ全裸を髪の毛で隠している描写で描かれている事が多い。」

 

 

伊黒、不謹慎だが人魚になった甘露寺を想像。

 

 

 

 

 

 

『きゃっ!?伊黒さん…そんなに見つめたら恥ずかしいです///』

 

 

 

 

 

妄想の後に僅か数秒で鼻血を暴発。

 

その様子に宇髄とハスミは静かに見ていた。

 

 

「おーおー、派手に妄想でぶっ飛んだな。」

「…(この甘露寺ちゃん限定のヘタレが。」

 

 

中の人的に言えばラッキースケベ。

 

その遺伝は平行世界を跨ぐのか?

 

本当にご都合主義な因果律…容赦ないわ。

 

鏑丸もどうしよう?って首元で混乱しているし。

 

 

「まあ、本来は相手を誘惑する為の姿で気性は鮫と同じって事かな。」

「鮫と同じだと?」

「ある一説では人魚は本来精霊の一種だったけど、人間に仲間を殺された事によって復讐した後…海辺の漁師や船乗り、男性を好んで襲って喰らう妖怪に成り果ててしまったとされているわ。」

「ある意味で鬼と同じって事か。」

「ただ、人魚にもいくつか種類があって人間と良好な関係を結んでいる人魚や人間と一切関わらずに生きている人魚もいる。」

「お前曰く色んな人魚がいるから一区切りにするなってか?」

「そう言う事よ。」

 

 

ハスミはボロボロの記録書を解読した部分を暗唱しながら会話を進めていた。

 

解読する事に判明する村で行っていたとされる行為。

 

異形と化した為に女子が生まれない。

 

異形の根源で女子の生贄を欲する魚の神。

 

種族繁栄の為の人間の女子を同族へと転化させる行為。

 

変化に対応しきれなかった女子達の遺体処理方法。

 

総合的に纏めれば、村全体で女子を使用した人体実験を行っていた。

 

全ては異形と化した自分達の繁栄とこの世を支配する為の力を得る為に…

 

記録者は人間の医者で自身の命の保証に女子達を犠牲にしていたようだが、何時しか耐え切れなくなり…この記録書をここへ隠して自殺した様だ。

 

 

「あの糞野郎共が…」

 

 

ハスミはボソリとドスの効いた声で呟いた。

 

 

「奴らはネギトロ程度じゃ生易しい……細胞の隅から隅まで消し炭にしてやる。」

 

 

共に居た伊黒と宇髄はハスミの殺気に驚きを隠せなかった。

 

宇髄自身は以前にハスミの本気の殺気を目の辺りにしているので耐性がある程度出来るが…

 

伊黒と彼の相棒である白蛇の鏑丸の方はそうはいかない。

 

彼女の殺気を始めて感じ取り、額から冷や汗をかいていた。

 

鏑丸に関しては伊黒の服の中へするりと入って引っ込んでしまった位である。

 

 

「…」

「伊黒、アレがアイツの隠していた殺気だ。」

「…あれがか?」

「ああ、俺も不死川も最初は刀を抜きそうになっちまったけどな。」

 

 

甘露寺が意識を失っていなかったら真っ先に恐怖し気絶していただろう。

 

それだけの殺気をハスミは放っていたのだ。

 

 

「とりあえず、恋柱達を戻す方法は見つかったわ。」

「…本当か!」

「但し、材料は兎も角…解毒剤の調合には蟲柱の協力が必要よ。」

「んで、猶予は?」

「……彼女達の投与記録のカルテから計測して早期投与者は明日の夜までが解毒可能時刻よ。」

「不味いな…。」

「ええ、今は深夜…つまり、最終時刻は本日の夜一二時。」

 

 

明確にされたタイムリミット。

 

一刻も早く、薬の調合法と甘露寺達を本部若しくは薬の調合が出来る場所へ移動させなければならない。

 

話し合いの結果、他の三人と合流し捕らわれた娘達の避難を優先する事となった。

 

 

「問題は相手の規模ね。」

「ああ、人質を守りつつてぇのが入っているしな。」

「…ここに居る人質は恋柱を入れて九人。」

 

 

見た所、恋柱達は監禁と薬の影響?でやせ細っている。

 

岩柱が三人、音柱が二人、蛇柱が一人、水柱が二人、炭治郎君で一人で何とかなるかな。

 

 

「今は岩柱達と合流の後…恋柱達を連れて撤退するしかないわね。」

「…お前は?」

「殿やるわ…単独で巨躯の鬼を殲滅している私だから適任と思うけど?」

「そりゃそうだな。」

 

 

岩柱達と合流後、恋柱達を引き連れて撤退。

 

後に近くの集落へ向かい、鎹鴉に文を持たせて蟲柱と合流と言う方針で固まった。

 

撤退の殿は私、確実にネギトロの後に殲滅…駆逐じゃ。

 

 

「可愛い恋柱にここまでやってくれたのだから遠慮は要らないわよね?」

「…同感だ。」

「お前ら、ものすっげー派手に悪人顔になってるぜ?」

 

 

容赦なく策略を張り巡らせる顔芸も程々に。

 

魚人共よ。

 

覚悟は出来たか?

 

……撤退だけどネギトロ案件で駆逐開始する。

 

長ネギ背負って待っておれ!

 

 

=続=




IFルート・異洲磨村編その五。

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。