鋼の魂と共に   作:宵月颯

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説明無き行動。

誤解を招き、不快感を滲み出させる。

憤怒の化身が背後から忍び寄る。

ジリジリと。


遊郭編
どうみても人攫いです


無限列車事件から三か月が経過。

 

春の芽吹きが見え始め、梅の花が咲き誇る頃。

 

鬼殺隊は変わらず鬼狩りを続けている。

 

上弦の鬼の情報が入らず右往左往の状況だった。

 

だが、ある事件が始まる一か月前に打ち消された。

 

 

******

 

 

「クジョウ、君も任務帰りか?」

「炎柱。」

 

 

炎柱こと煉獄杏寿郎に話しかけられた私ことハスミ。

 

鬼殺隊本部へ帰還しお館様に大阪、京都方面で起こった事件の詳細と帰還道中で接触した巨躯の鬼二体についての詳細を話し終えたばかりだった。

 

一体はアルマジロと犀、もう一体はスカンクと超高温ガスを噴出させる蟲の合成鬼。

 

一体は四方への突撃攻撃を回避すれば難なく倒せたが、後者は体内で精製される超高温ガスによる火炎攻撃を繰り出してきたので厄介であった。

 

 

「そうよ、事件解決の帰還道中で巨躯の鬼と遭遇したから追加報告もして来た所。」

「また出たのか?」

「ここの所、出現していなかったから油断した所を…一息にでしょうけど。」

 

 

だが、あのひじき芋がこんな手で巨躯の鬼を出現させるのは不自然だ。

 

何か大きな前触れの様な…そんな気がしてならなかった。

 

 

「それよりも他に何か用事でも?」

「ああ、今度の潜入任務先に上弦の鬼が潜んでいる可能性があると報告があり…その場合に対し柱三人での合同任務が決定した。」

「例の吉原の件かしら?お館様も思い切った事を。」

「次の任務では、その吉原の遊郭を担当している宇髄を中心に君と俺が合流し捜査に当たって欲しいとの事だ。」

「他の担当地区は?」

「君のお陰で隊士達の練度が上がってきている、試験的に柱不在の担当地区へ隊士を増員して対処するそうだ。」

「…(お館様、最初からそれが狙いだったんじゃ。」

「兎も角、君が拒否しようともお館様の指示に従ってくれ。」

 

 

別に拒否はしていない。

 

只、人選に少し問題があると思っただけである。

 

 

「…所で炎の呼吸は熟練したの?」

「どういう事だ?」

「前に貴方の父親へ追跡劇を二度やったけど、貴方と元炎柱の動作に大きな差があった。」

「そんなに違っていたのか?」

「酒浸りで碌に刀を振るってなかった期間があったと言う割に…アレは隠れて鍛錬していたと思うけど?」

「…」

「それに今のままじゃ貴方の呼吸は長期戦に向かない……最悪、短期決戦型で終わるわ。」

 

 

ハスミの見解に対して杏寿郎は問質した。

 

 

「その理由を聞きたい。」

 

 

やる気があるや癖を直す意欲があるなどを彷彿させた前向きな発言に対してハスミは理由を話し続けた。

 

 

「貴方は呼吸を使う際に一撃一撃に全力を掛けているでしょ?」

「確かに…」

「どんなに全力でもいずれは力尽きる、いつの日か無惨の拠点に殴り込みを入れる予定なら猶更よ?」

「つまり?」

「解りやすく言うなら火加減ね、貴方は常にどんな料理でも火力を最大限にしている状態よ。」

「ふむ…そう言われれば。」

「癖を直したいなら、だし巻き玉子(・・・・・・)を一人で造れる事から始めるべきかな?」

「何故、だし巻き玉子?」

「もっともな理由なら貴方の弟さん…千寿郎君に聞くといいわよ?」

 

 

後は自力で悟る事と告げるとハスミは話を切った。

 

 

「所で炎柱、貴方も蝶屋敷に?」

「うむ、定期検査を受けてくれと胡蝶からきつく言われているのでな。」

「ま、怒らせるよりは素直に行くのが吉よ。」

「う、うむ…」

「…(あの表情から察するに以前にやらかした系ね。」

 

 

杏寿郎の真っ青な表情を察したハスミは特に問う事はしなかった。

 

その後、単独任務の間の情報交換をしつつ私達は蝶屋敷へ足を運んでいた所…

 

更に単独任務帰りだった炭治郎君とも合流し蝶屋敷へと向かった。

 

 

「む、何やら騒がしいな?」

「あれは音柱とアオイちゃん達かしら?」

「まさか…」

 

 

蝶屋敷まですぐ其処と言う所で何やら騒いでいる声が聞こえてきたのである。

 

屋敷の住人であるアオイとなほが連れて行かれそうになっていた。

 

それをカナヲとすみ、きよ達で止めている状況だった。

 

一足先にその場へ直行する炭治郎。

 

 

「ど、どうしたの!?」

「人さらいです~!たすけてくださぁい!!」

「こんの馬鹿ガキ…」

 

 

傍から見ても音柱が女の子を二人担いで拉致る構造しか見えない。

 

そんな姿から杏寿郎とハスミが静止に入った。

 

 

「年端も行かない子供にそれはないと思うぞ、宇髄?」

「女の子達に何をしているのかしら?暴徒鎮圧用のゴム弾と電気ショックのテイザー銃…どちらをその無駄な筋肉に撃たれたいか選びなさい?」

 

 

ちなみにハスミは片手にゴム弾を装填した銃とテイザー銃を構えて威嚇している状態である。

 

 

「お前らも人の話を聞けー!!」

「拒否権はないわよ?」

「特にクジョウ、お前はその物騒な奴を下ろせや!!」

「音柱の説明か何かが足りないからこうなっているのでしょうがー!!!」

「任務だ!任務!遊郭に連れて行く女子隊士を探しに来ただけだ!」

「だったら本人の意思表示を確認しなさいよ!なほちゃんとアオイちゃんが怯えているでしょうが!!」

「俺は上官だ!上官の命令は絶対だろう!」

「それはしのぶさんの許可を貰った上でしているのかしら?」

「やべ…」

「…(してないんかい!」

 

 

しのぶに見つかった後の事を想像しつつも敢えて何もフォローするのを止めたハスミ。

 

本人が身を持って知った方が二度とやる気も起きないだろうと判断した為である。

 

そんな事を考えていたハスミを余所に杏寿郎はある事を宇髄に告げた。

 

 

「そう言えば、君の鎹鴉から伝達は届いていないのか?」

「どういう事だ?」

「貴方が受け持っている調査地区に上弦がいると発覚したのよ。」

「!?」

「今回から上弦が潜む地区には柱同士が合同で調査する事になった、勿論…君の調査に俺達が同行する様にとお館様の指示だ。」

「俺達って…」

「君に同行する柱は俺とクジョウの二人、他は担当地区から離れらない事から任務帰りの俺達に白羽の矢が立った訳だ。」

「そう言う事だからアオイちゃん達は必要ないわよね?」

「待てよ、遊郭に忍び込ませる隊士が…」

 

 

以前、炭治郎君が話した通りなら遊郭に潜入するのは炭治郎君、善逸君、伊之助君の三人だ。

 

それならば、その通りに動いた方が得策だろう。

 

私は丁度いい隊士が居る様な形で提案した。

 

 

「それなら炭治郎君は?」

「は?」

「え?」

「よもや?」

 

 

見事に素っ頓狂な声と顔芸を披露する音柱、炭治郎君、炎柱の三人。

 

本当に見てて飽きない顔芸だわ。

 

 

「年齢的に丁度いいでしょ?後、人数不足なら善逸君と伊之助君も追加するし。」

「成程な…こいつとアイツらに女装させるって訳か、面白い案だな?」

「アオイちゃん達を危険な目に遇わせられないし、ある程度の自衛が出来る三人なら適任と思っただけよ。」

 

 

そして私は炭治郎君に了承するかを確認した。

 

 

「と、言う訳だけど…炭治郎君は引き受けてくれる?」

「勿論です、アオイさん達を危険な目に遇わせられないですから。」

「後は二人を探して了承を得るだけかな、今後の打ち合わせもかねて何処かで詳しい話を…」

「なら、お前の屋敷で。」

「はい?」

「うむ、クジョウの屋敷は過ごしやすいし会議にうってつけだ。」

「…(アンタらね。」

 

 

年中快適と言う経緯から柱達のたまり場と化した我が鋼屋敷。

 

今回の話し合いもしなければならないので仕方がなく来訪に関しては了承した。

 

 

「時に音柱。」

「何だ?」

「背後で物凄い笑みを浮かべているしのぶさんに事の次第を説明した方がいいと思うけど?」

「…」

 

 

無言でくるりと背後に向き直る宇髄。

 

そこには背後から般若のオーラを出したニコニコ顔のしのぶの姿があった。

 

 

「どうも宇髄さん、先程聞きましたが…私の了承も無しにアオイとなほを勝手に連れて行こうとしたとか?」

「…胡蝶。」

「何をそんなに怯えているんですか?別に何もしませんよ?」

「…」

「ハスミさん、私の代わりに先程のゴム弾とテイザー銃でしたっけ?この脳味噌まで筋肉で出来ている人のお尻にでも撃ってあげてください。(そうでもしないとこの人は何度でもやりそうなので。」

「…音柱、悪く思わないでね。(あれは凄まじくお怒りの状態だわ。」

「うぉい!?」

 

 

しのぶのある意味で凶悪な圧に逆らう事は出来ない。

 

諦めた視線でハスミは音柱の筋肉尻にテイザー銃とゴム弾入りの銃を発射。

 

テイザー銃で動きを止めた後に尻に数発ほどゴム弾を直撃。

 

晴天の日中に音柱のド派手な悲鳴がド派手に木霊したのだった。

 

 

=続=




<だし巻き玉子の理由>


ある日の炎柱邸にて。

台所で弟の千寿郎と話す杏寿郎の姿があった。


「だし巻き玉子を?」
「ああ、クジョウから癖を直すなら自力でだし巻き玉子を作れと言われてな?」
「それは…兄上にとってかなりの難題ですね。」
「そうなのか?」
「はい、理由は多くあります。」


だし巻き玉子は簡単に見えて実際は繊細な料理です。

火加減も大事ですし、だしを入れた卵液を焦がさずに水分が逃げない様に加熱する必要があります。

また、だしを多く入れるので厚焼き玉子より崩れやすく簀巻きで形を整えるまで気が抜けません。

それらの工程を注意し丁寧に行う事でだし巻き玉子は完成します。


「そんなに奥深い料理だったのか?」
「はい、ある有名な料理店ではだし巻き玉子を如何に繊細に作れるかでその料理人の技術が解るそうです。」
「ふむ。」
「クジョウさんの言う通り、だし巻き玉子の工程や火加減は兄上の悪い癖を直す為のいい修行なのかもしれませんね。」


千寿郎は兄である杏寿郎が如何にどんな事にも全力過ぎて力加減を失敗する姿を多々見て来た。

これにより米を炊くだけで台所を数回爆発させる事も多々あり、入室を禁止していた位である。

今後の事を踏まえて、兄の修行の為に人肌脱ぐ事を千寿郎は心に決めた。

しかし、この修行の為に煉獄家では暫くの間…玉子料理が続いたとの事。


=終=

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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