物事を有利に進める為の段取り。
相手は上弦である事を忘れてはならない。
前回の件から一時間後。
尻にえぐいダメージを負った音柱の協力の元。
単独任務帰りの善逸と伊之助を拉致し鋼柱邸へと連行。
祭りの神とか山の王とかめんどくさいキャッチフレーズのある各自の自己紹介を済ませた後。
段取り通りに会議が行われようとしていた。
******
私ことハスミは任務帰りの善逸君と伊之助君にお茶と山盛りの茶菓子を出した後、次の任務の詳細と人手が足りない事から協力を要請。
何時もの事ながらギャーギャー喚いていたが、
「具体的にはどうすれば?」
「炭治郎君、善逸君、伊之助君には女装して貰って遊郭へ潜入して貰うわ。」
「え、女装?」
「年頃の女子隊士達は殆ど出払ってて顔と背丈に問題ない三人を集めたのよ。」
「それで俺達が遊郭に潜入する事になったんだ。」
「うぇええ…まさか女の子の恰好をする羽目になるなんて。」
「音柱、潜入させる店の目星は付いているの?」
尻のダメージが地味に酷いのかごろ寝した状態で宇髄は答えた。
身長の事もあり、長座布団二枚使いである。
「ときと屋、荻本屋、京極屋の三つだ。」
「理由は?」
「足抜けが不自然に出ている事と遊郭で一、二を争う有名な店だからだ。」
「切見世は?」
「そっちには碌な情報は無かった。」
「足抜けに関係した人は?」
「不明だ、大体が『好いた人と一緒になります。』で足抜けした花魁達の日記に締めくくられている。」
「成程、なら…遊郭は大当たりね。」
「何故、そうだと断言できる?」
横で伊之助と共に
既に二缶目が空を迎えていた。
「胡散臭さが多すぎるのと調査が雑過ぎる。」
遠い眼でハッキリと断言したハスミに対して宇髄が更に質問する。
「なら、お前ならどう調査する?」
「日記から筆跡鑑定、室内の指紋鑑定、遊郭で秘匿されている裏話を探す。」
「筆跡に指紋だと?」
「人の筆跡は個人個人で癖が出る、前の筆跡と最後に書かれた筆跡を調べれば別人が書いた事が判るわ。」
「指紋は?」
「指紋も個人個人で違いがあって最も解りやすい目印とされている、専用の粉で指紋を調べれば本人と別人が区別出来る…今回は捜査対象が不在だから筆跡鑑定と遊郭だけに伝わる話を調べる方向で行くわ。」
「…」
「足抜けも不特定多数の人間が出入りしているから顔見知りじゃなければ見分けがつかないし発見しにくい。」
ハスミは続けて意味深な事を告げる。
「足抜けなら遺体が何処で転がっているか判別出来ないし誰も探さないから喰われていても不自然じゃない。」
ごろ寝する宇髄もその言葉に反応し視線を変えた。
「それに喰った形跡が発見されていないから大事にされていない…そうでしょ?音柱。」
「成程な、お館様がお前を柱にした理由が何となく解ったぜ。」
余りにも不自然さが残る失踪に関するハスミの考察に対して宇髄は納得の答えを告げた。
「遊郭は歴史が古いし鬼が潜んでいても不自然じゃない、恐らくは遊郭に紛れてもバレない立ち位置に鬼は居る。」
「…お前が鬼ならどの立ち位置から人を襲う?」
「花魁、若しくは
「その二つに絞った理由は?」
「花魁ならある程度の期間を遊郭で過ごした後で身受けで遊郭を出る…自身が知る人間が亡くなった頃に新規の花魁として忍び込めば喰い場を失わずに済む。」
「もう一つは?」
「幇間なら宴会やお座敷にいても不自然じゃないし補助の役割だからちょっとの間に抜けても本番の花魁で時間を稼げる。」
炭治郎君が遊郭で遭遇した上弦の鬼は花魁に化けていた。
ただ、花魁が鬼だと言う確証も証拠もない。
だからこそ、最もらしい証拠を掴まなければならない。
「最後は遊郭にある鬼の隠れ処…喰い場の捜索ね。」
「喰い場?」
「遊郭と言う場所で人を捕らえて喰らうなら、人目に付かない安全な場所を確保してから喰らうと推測する。」
血鬼術を使用する事を想定すれば、そう言った行動が出来る知恵者が潜んでいる。
血鬼術が使えなければ、騒ぎになるしすぐに討伐されているわ。
京都で討伐した陰間の鬼が答えた吉原の上弦の情報と音柱の情報を照らし合わせると遊郭に上弦の鬼が潜んでいる事は確定すべきね。
「柱三人での合同捜査は妥当な判断よ、相手の血鬼術が判らない以上は下手に動く事は出来ないけど…調査は行える。」
それにそう言う奴をぐうの音も出ない位に攻めまくって『今、どんな気持ち?』って煽るのも楽しそうだし。
「ハスミさん、何だか怖い匂いが漂っています。」
「俺も聞こえてる。」
「お黙り、相手が上弦である以上は他の上弦が援軍で呼ばれる可能性がある。」
「他の上弦?」
「私達は負傷しつつも上弦を退けた、あの無惨も策を練ってくるわ。」
遊郭と言う地形で騒ぎを起こさずに行動しやすい上弦がね。
「クジョウ、もしや上弦の参か?」
「若しくは上弦の壱か弐が動くと推測しているわ。」
「もしもそうなったら厄介だな。」
「弐と参の対応はギリギリ出来るけど壱を相手にするとなるとそっちの援護はほぼ出来ないわね。」
「いや、上弦の参が現れたら俺が対処しよう。」
「炎柱…」
「奴との決着は俺が付けなければならない。」
「……一言言っていいかしら?」
「何だ?」
ハスミは杏寿郎の発言に溜息を付いてからネチネチと告げた。
「あのね…上弦の参は殺気対応の血鬼術を使っているから戦闘になると殺気垂れ流し状態になる炎柱には対処しづらいの!!」
「なぬ!?」
「なぬもマヌルネコもない!それで危うく死に掛けた癖に自信あり気に対処するって言わないの!!」
「しかし!」
「兎に角、乱戦になる確率が高くなる以上……上弦の参が出てきた場合の戦いは炭治郎君と一緒に応戦する事!以上!!」
「ハスミさん、あの…」
「いい?炎柱の暴走を止められるのは炭治郎君だけよ、判った!?」
「は、はい!!」
「それと炎柱!奴と対等に戦いたいなら、だし巻き玉子を自力で作れる様になってから言いなさいよね!!」
「…ぜ、善処する。」
先程の様子を見ていた宇髄はボソリと告げた。
「流石に四人目の嫁には無理だな。」
「え、四人目の嫁ってアンタ何言ってるんですか?」
「俺には嫁三人いるからな?」
「はぁあああああああ!!!!嫁が三人も!三人もいるの!?」
「文句あっか?」
善逸、宇髄に対して口答えをした為に腹パンを喰らって自滅。
その横で茶菓子に集中し貪っていた伊之助も参戦するが余計な事を言って更に自滅。
キリがないのでハスミは決定事項で締めくくった。
「話がかなり離れたけど…最初の段取り通りに私と三人は遊郭に潜入、炎柱は夜だけ客を装うのと切見世の調査、音柱は連絡役と独自目線での調査でいいわね?」
「年齢的にお前にはド派手に無理があるけ…」
「何か言ったかしら?」
宇髄の余計な発言に対し、ハスミは室内の押し入れに隠していたガトリング砲を取り出しながらニッコリと告げる。
「…」
「会議終了って事で…音柱、遊郭までの案内宜しく。」
=続=
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