鋼の魂と共に   作:宵月颯

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忍び寄る気配。

それは異質な鬼の気配。

地の底より唸り上げる。

これはその前兆。


早期開戦の兆し

前回、音柱と炎柱が切見世での救助をしている頃。

 

花街の遊郭が並ぶ区域で妙な地響きが発生。

 

地響きが収まると遊郭の一部の道が崩落し所々が穴凹だらけになっていた。

 

花街に住む人々は花街を建設する際に掘った場所がいくつか残っていた。

 

それが今頃になって地響きで地盤沈下したのでは?と納得している。

 

この突如発生した地盤沈下に便乗し地下の喰い場から音柱の嫁の一人と帯の鬼に拘束されていた人達を救出した私ことハスミ。

 

救助の際、高濃度の藤毒で弱らせた長い帯を日差しに当てたら拘束されていた人達が自然に出て来たので特に苦はなかった。

 

同時にただならぬ気配を地下から漂わせている事を気付いた私は静かに次の策を練った。

 

 

******

 

 

遊郭潜入から三日後。

 

遊郭の仕事は基本夜からの為、日中は芸事の練習と教養を学んだり前日の跡片付けや当日の準備に勤しむ。

 

一通りの仕事が済むと夜を待つ間、それぞれに空き時間が出来た。

 

その合間を使って情報交換を行っていた。

 

場所は店の屋根の上。

 

 

「ううっ、何で俺の所が大当たりなんだよ…」

「…善逸。」

 

 

物凄く不安な表情でネガティブオーラを醸し出している善逸。

 

理由は彼が潜入した京極屋に目的の上弦の鬼が潜んでいると発覚した為である。

 

横で炭治郎が慰めているが変わりはない。

 

 

「ま、人質の救出をしたし本命の鬼の機嫌が悪い事は明白だからしょうがないわよ。」

「元々煽ったアンタが原因でしょうがー!!!」

「黙れ、何の為の潜入捜査と救出作戦だと思っているの?」

「そうですけど…」

「…もっぺん、二刀流・電動鋸で逃走劇でもする?」

「す、すみませんでしたーー!!!!」

 

 

鬼の懐に忍び込んでいる善逸にしてみれば、いつ襲われても可笑しくない状況。

 

そんな状況を作ったハスミに抗議するが三倍の毒舌とお仕置き発言で返された。

 

 

「兎も角、上弦の鬼が捕らえていた音柱の嫁達と行方不明だった花魁達の救助は成功したわ。」

「ハスミさん、後は…」

「炭治郎君、これで上弦の鬼を仕留めるだけの話だったけど…珍客が地面の底に控えている可能性がある。」

「地面?」

「連日の地響き…推測だけど巨躯の鬼が潜んでいるわ。」

「例の大物か?」

「伊之助君の言う通りよ、地響きから察するに標的は地面を掘り進んで移動していると思われる。」

「上弦の鬼に巨躯の鬼…もう勘弁してよ。」

 

 

善逸が絶望した格好で落ち込んでいる所を余所にハスミは気配を隠して現れた存在に告げた。

 

 

「そう言う事だから、音柱…巨躯の鬼が現れた以上は上弦の鬼の討伐はそっちに任せるわ。」

「ああ、煉獄も居るし上弦の鬼は俺らに任せておけ。」

 

 

『え?いつの間に!?』と驚く善逸と伊之助を余所に気づいていた炭治郎は普通に接していた。

 

 

「宇髄さん、お嫁さん達は?」

「三人共…怪我の方が大したことはない。」

「良かった。」

 

 

炭治郎へ軽い返答をした後に宇髄はハスミに話しかけた。

 

 

「クジョウ、後で嫁達が礼を言いたいそうだ。」

「任務が終わってからでもいいかしら?」

「そうだな、こっからが正念場だしな。」

「京極屋の蕨姫花魁そして地の底を行き来する巨躯の鬼…討伐すべき相手は大物ばかりね。」

 

 

普通の会話に聞こえているが、宇髄とハスミの表情は険しい。

 

戦いの場となるここでどれだけの被害が出るか予想もつかないからだ。

 

早期解決に持ち込めればいいが、そうはいかない。

 

それだけの相手と戦う事を自覚しているからこその表情だった。

 

 

「炭治郎君は引き続き、鯉夏花魁の護衛を。」

「判りました。」

「善逸君は蕨姫花魁の機嫌を損ねない範囲で監視。」

「…はい。」

「伊之助君は見つけた穴の他に別の喰い場がないか探して。」

「おうよ、任せて置け。」

 

 

私は三人に指示を出してから音柱らと解散、私自身もいずれ現れる蕨姫花魁いや上弦の鬼が荻本屋へ忍び込むのを待った。

 

獲物と思った相手がそれ以上の化け物である事を恐れるがいいわ。

 

 

>>>>>>

 

 

一方その頃、京極屋では。

 

 

「…」

 

 

日光を通さない北側の部屋で歯軋りをしながら、鏡の前で化粧を整える花魁が居た。

 

 

「くそ、あの鬼狩り共め……よくも私の獲物を。」

 

 

忌々しい藤の花の匂いは消えず、喰らう筈だった獲物達は奪還された。

 

残るは見目が余り良くない非常食として残していた獲物だけだった。

 

それでも喰わなければ自身の美貌を保てない。

 

京極屋の売れっ子花魁である蕨姫花魁は人払いをした部屋で地団駄を踏んでいた。

 

自身が受け持つ禿の子達はお使いに出しているので不在。

 

その為に鬱憤を晴らす相手がいないのだ。

 

 

「こうなったら…ときと屋の鯉夏花魁と荻本屋の睡蓮花魁を手に入れるしかないわね。」

 

 

美しさの中に隠れる残虐さ。

 

蕨姫花魁こと上弦の陸である堕姫は既に無惨から警告を受けていた。

 

自身の喰い場を死守出来ずに頸を斬られる無様な失態を犯せば即座に粛清されるだろう。

 

無惨は上弦の鬼達へ鬼狩りに属する成り損ないの鬼を捕らえろと指示をしていた。

 

だが、相手は上弦の壱や弐を撤退に追い込んだ強者。

 

それも自身と同じ女である事が気に喰わないのだ。

 

そんな馬の骨とも判らない輩に負けたくない。

 

その思いが堕姫を焦らせていた。

 

 

「見てなさいよ…成り損ないの鬼の女、私こそが無惨様に相応しい事を見せつけてやるわ。」

 

 

だが、堕姫は知りもしないだろう。

 

戦う相手が如何に恐ろしい存在であるかを。

 

知らない今が幸福である事を後に自覚するのだった。

 

 

=続=

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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