鋼の魂と共に   作:宵月颯

42 / 78
鬼の始祖は何故彼女を狙う?

それは始まりの日。

鬼との繋がりを得た時に見えたモノ。


無数の記憶を求めて

無限列車事件の翌日の深夜。

 

帝都内の富裕層の屋敷が並ぶ地区のある屋敷にて。

 

 

「上弦の鬼と在ろう者が……失態だな、黒死牟、猗窩座?」

「申し訳ございません。」

「無惨様の仰る通りです。」

 

 

屋敷の一室で書物を閲覧する少年に対して跪く上弦の鬼達。

 

身体の至る所の血管が暴発し血反吐を吐きだしていた。

 

その様子を冷ややかな目で見る少年は只の少年ではなかった。

 

人の眼から鬼の眼へと戻し、子供とはかけ離れた言葉を発した。

 

その少年は人の世に溶け込む為に擬態した無惨の姿の一つである。

 

 

「裏切り者を利用し…あの成り損ないの鬼の女を捕らえようとしたが、あの女の方が一枚上手だったか。」

 

 

上弦の鬼の眼を通して無限列車事件の経緯を監視していた無惨。

 

双方共に予期せぬ事態があったにせよ、鬼狩りはそれすらも跳ね除け上弦を退けた。

 

最悪な事に女は己と敵対する鬼狩りに属している。

 

 

「再度、成り損ないの鬼の女を発見次第…捕らえて私の前に連れてこい。」

 

 

無惨は目処前の上弦とこの場に居ない上弦に命令を下した後『あの女は青い彼岸花を知る唯一の手掛かりだ。』と告げた。

 

上弦達は指示に従い、その場を去って行った。

 

 

「あの女、クジョウ・ハスミと言ったか……あ奴には聞かねばならぬ事が多い。」

 

 

三年前のあの日、あの女に血を注いだ時に見えた記憶。

 

一度目の大きな戦乱。

 

帝都を襲った巨大な地震。

 

その後に発展した科学技術。

 

予期せぬ大飢饉。

 

二度目の世界を巻き込んだ戦乱。

 

この国に二度墜とされる死の光。

 

焦土と化した帝都と敗戦の言葉。

 

再度の復興、発展、成長。

 

 

「あれが今後訪れる未来の姿ならば、鬼狩りは自然消滅するしかないと言うのに。」

 

 

実に愚かだ。

 

人は何処まで行っても人。

 

己の過ちで滅びを迎える危機へ歩んでいると言うのに。

 

だとすれば、あの女は一体何処から現れた?

 

まるでその時を生きて来た様に記憶を持っていた。

 

 

「あの女の記憶にはまだ続きがあったな。」

 

 

得体の知れない鉄の巨人達を操る者達。

 

それらを扱う戦乱。

 

地の底からの侵略者。

 

天より現れた侵略者。

 

同族同士の争い。

 

 

「あれは先の人間が辿る未来の一つなのだろうか?」

 

 

同時に見えた過去の記憶。

 

古代文明や失われた国の記録。

 

絶滅した動植物の記録。

 

 

「何故、数十年程度しか生きていない人間がそこまで知れた?」

 

 

今の人類が到底到達出来る範疇を超えていた。

 

ならば、何処から知識や記憶を得た?

 

聞かねばならない。

 

お前は何処から現れたのだと?

 

 

「青い彼岸花すらもお前なら見つけられるのだろう?」

 

 

少年の姿に擬態したままの無惨はテラスから見える月を見上げた。

 

 

*******

 

 

時は戻り、吉原の遊郭。

 

夜は更けて、店仕舞いを終わらせた荻本屋の一室に一人の来客が訪れていた。

 

 

「どなたかしら?」

 

 

鏡の前で簪を外して髪を梳く女性の姿。

 

同時に音も無く室内に現れた帯を纏った女性。

 

 

「アンタが睡蓮花魁ね?」

「だとしたら?」

「アタシがアンタを喰らってあげるわ…光栄に思いなさい?」

「そう…」

 

 

帯を纏った女性は挑発する様に部屋の主に話しかける。

 

帯が女性を襲う瞬間、室内にチュンっと銃声が響き渡った。

 

 

「…」

「な…」

 

 

帯の女性の頬を掠める銃弾。

 

それは部屋の主が懐から抜いた拳銃によるものだった。

 

 

「愚かね。」

「よくも私の貌に傷を!?」

「この程度で癇癪とは、上弦が呆れるわ…」

 

 

部屋の主は花魁の衣装を脱ぎ捨て隊服へと変更する。

 

背に滅の文字を掲げる鬼にとって忌まわしき存在。

 

 

「…まさか鬼狩り!?」

「さあ、どうする?」

 

 

室内で銃を構える女性ことハスミ。

 

 

「ちっ!」

 

 

だが、帯の女こと上弦の陸・堕姫は室内から離脱し荻本屋の屋根へと飛び移った。

 

 

「よう、派手に待ちくたびれたぜ?」

「!?」

 

 

既に荻本屋の屋根の上には罠が仕掛けられていた。

 

二名の柱と三人の鬼狩りと言う罠を。

 

 

「うむ、待った甲斐があった!」

「出やがったな、蚯蚓帯!」

「ううっ。」

「お前の相手は俺達だ…!」

 

 

宇髄を始め、煉獄、伊之助、善逸、炭治郎が刀を構えて待ち構えていたのだ。

 

 

「くっ!」

 

 

同時に屋根へ飛び移ったハスミも合流し陣形は出来上がったも同然の状況だった。

 

 

「炎柱、民間人の避難は?」

「鎹鴉達と隠達を経由して避難させた。」

「しっかしお前もド派手な嘘を考えつくな?」

「単発地震とそれに伴う発電所の不備の事ですか?」

「君のそれらしい説明のお陰で片が付いた。」

「異国でも発電所の事故の事例があったので役立ちましたよ。」

 

 

堕姫の襲撃が予想された日、ハスミは隠達へ指示をし発電所の事故を装って遊郭の住民を避難させる計画を立てた。

 

最もらしい経緯を遊郭の人々は説明され、続々と店仕舞いと共に避難したのである。

 

 

「此処には民間人は誰もいない、互いに思う存分に実力を発揮出来る。」

「お前…あの方の仰っていた成り損ないの鬼か?」

「だとしたら?」

「お前を倒してあの方の前に引きずり出してやる!」

「残念だけど、私は貴方とは戦わない。」

「はぁ?」

「貴方と戦うのはそこにいる彼らよ、私には別の相手が居るのでね?」

 

 

ハスミは戦う価値もない様な話し方で帯の鬼に告げた。

 

 

「ふざけるな!」

「ふざけてはいない、見目を美しく取り繕っても中身が空っぽの貴方と戦う意味はないわ。」

「!?」

「図星?まあ、貴方は京極屋でも散々な言われ様だったみたいだし…」

 

 

僅かな事で癇癪を起こしてモノに当たる姿勢。

 

まるで成長していない子供。

 

身体がどんなに美しくも心は成長せずに我儘のまま。

 

そんな気配が滲み出ている。

 

 

「まあ、奴を仕留めた後も貴方が生き残ってたら彼らの加勢はするけど?」

「アタシの事を馬鹿にして……決めた!アンタの相手はアタシよ!!」

「…人の話、聞いていたの?」

「アタシが決めたならそうなのよ!!」

「ほんとーに我儘、相手をする意味がないって言っているのに。」

「アタシは上弦の陸、戦う価値があるのよ!!」

「なら、貴方に本当の事を言っていいかしら?」

 

 

ハスミは地団駄を踏む帯の鬼に溜息を付いた後、静かに告げた。

 

 

「貴方、他の上弦より弱いでしょ?」

 

 

=続=

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。