鋼の魂と共に   作:宵月颯

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相手が誰であろうとも戦わなければならない。

それが目処前の障害であろうとも。

銃身を鈍らせるな。


ただ銃を握り撃つだけ

 

ハスミから語られた言葉は上弦の陸・堕姫へ怒りを買わせるには十分な言葉だった。

 

 

「貴方、他の上弦よりも弱いでしょ?」

「アタシが弱いですって!?」

「貴方の血鬼術は帯、それを獲物の収納と武器にしているだけ。」

「だから何なのよ!」

「ハッキリ言えば、それらは補助支援向きの能力であって上弦にするには戦闘力が足らない。」

「!?」

「そこから推測し感じ取った気配から察するに…上弦の陸は二体存在する。」

 

 

ハスミの語った考察と推測に堕姫は表情を変えた。

 

 

「…(何此奴…お兄ちゃんが隠れているのを見破ったの?」

「最初は二重人格で攻防の血鬼術でも使っていると思ったけど、今までの様子から察するに空っぽの貴方にそこまでの器用さはない。」

 

 

己の力を過信し血鬼術を完全に生かし切れていない。

 

恐らくは遊郭と言う縄張りから出た事がない為。

 

井の中の蛙大海を知らずとは良く言ったモノね。

 

貴方が上弦に上り詰めたのは足りない部分を補う何かがあった。

 

それが本来の上弦であり貴方は只のオマケ程度だと理解した。

 

 

「アタシがオマケですって…?」

「奴の性格上、あの無惨が何故貴方を切り捨てなかったのか理解出来ないけど。」

「あの方を…」

「黙って聞け、お前は既に無惨に捨てられても可笑しくない立ち位置に居る。」

「っ!」

「自らの喰い場を失い、鬼である事が身バレし、遊郭と言う安全な潜伏先を失った以上…貴方は逃げ場のない崖の上に立たされているのと同じなのよ?」

「ふざけるな!アタシはこれまでに柱を七人仕留めて来た!それを弱いと言わせないわよ!!」

「私にとっては弱いけど?」

「な!?」

「正直に言うなら上弦の壱や参を相手にした方がまだ手応えがある。」

 

 

ちなみに弐は氷の血鬼術さえ気を付ければ、全然…苦でもないわ。

 

 

「…(嘘でしょ、上弦を馬鹿にしているの?」

 

 

堕姫は更なる混乱に陥った。

 

目処前の成り損ないの女は上弦が弱いと告げた。

 

単に馬鹿にしているのではい。

 

対策する事が出来るからこその発言であると理解した。

 

上弦が弱いと言うのなら女にとって鬼よりも強い存在が居たのか?

 

そう考えてしまう。

 

 

「元軍人を舐めて貰っては困る。」

 

 

クジョウ・ハスミは元軍人。

 

詳しい理由は明かせないが、事情があり脱走兵の汚名を被っている。

 

それなりの軍属経験を積んできた彼女にはこの程度の修羅場は慣れていた。

 

若しくは戦場に慣れ過ぎて感覚が鈍っているとも言える。

 

戦場と戦うべき相手を把握し対応策を練って攻撃するのはいつもの事。

 

鬼達は圧倒的な戦闘能力と限定的な不死の力で戦っているに過ぎない。

 

上弦の壱や参の様に武道を極めているのなら苦戦は強いられる。

 

だが、血鬼術や鬼の特性に頼り過ぎて戦術すら構築出来ない相手に彼女は負けない。

 

状況を把握し打開策を構築し標的を仕留めるだけだからだ。

 

 

「話は終わり、貴方はその足りない頭で目処前の力に敗れるといいわ。」

 

 

ハスミは宣言した通り、堕姫の相手を先程まで静観していた宇髄らに任せた。

 

 

「音柱、炎柱、炭治郎君達、宣言通りそっちは任せる。」

「祭りの神に任せな。」

「承知した。」

「ハスミさんも気を付けて。」

「もうどうにでもなれーーーー!!!」

「おっしゃあ!ぶった切ってやるぜ!!」

 

 

戦う価値もないと判断したまま、戦うべき相手が迫っているのを感じ取りながらその方角へと向かった。

 

 

「何なのアイツ…」

 

 

あの女、こっちを見向きもしなかった。

 

馬鹿にしているの?

 

私は上弦の陸よ?

 

弱いから相手にする必要もないですって?

 

ふざけるな。

 

ふざけるな。

 

ふざけるな!!

 

ふざけるな!!!

 

アタシは上弦の陸、最も美しい鬼よ!!

 

あんな不細工に負けてたまるものか!?

 

あの方を侮辱し上弦の鬼を舐めた態度は許さない!!

 

アイツはアタシが仕留める!

 

 

「待ちなさいよ!!」

「ハスミさん、後ろっ!?」

 

堕姫は腰に巻いた帯を操り、移動を開始したハスミの背後を狙った。

 

だが…

 

 

「だから詰めが甘いのよ、貴方は?」

 

 

ハスミから冷たい言葉が語られた。

 

 

「え?」

 

 

自身の身体に付けられた無数の穴。

 

ハスミはP90を二丁取り出すと堕姫の帯ごと撃ち抜いたのだ。

 

振り向かず、腕を交差させて背後に迫る堕姫の帯を狙った。

 

精密射撃…いや、余りにも駄々洩れの気配を感じ取ってその先に反撃したに過ぎない。

 

 

「警告はしたわ、但し貴方が先に攻撃した…ま、そんな弱い攻撃なんて弾いてやったけど。」

「そんなアタシが…何で?何で?」

「だから貴方はオマケなのよ。」

 

 

足りない頭を全回転させて答えを見つけてみる事ね。

 

 

「アイツ、派手にえげつねえな?」

「う、うむ…胡蝶の言葉に何処か似ている様にも思える。」

「つか、上弦の鬼がボロクソに言われまくって初手を完全に反撃されてるってどうよ?」

「竈門少年、彼女はいつもああなのか?」

「えと…物凄く怒っている時はさっきの通りです。」

 

 

「「…」」

 

 

「やっぱ…あの人怖い。」

「ナンカゴメンナサイ。」

 

 

妙な所で顔芸を披露する羽目になった一行。

 

解りやすい表現なら駄々をこねたおこちゃまの相手をしている様な状況。

 

それを第三者目線で宇髄達は見せられていたのである。

 

 

「…派手に流されちまったが、仕切り直しだ!!」

「うむ、敵が混乱している今が好機!」

「行くぞ!!」

「俺ら勝てるのかな?」

「勝てるじゃねえ!勝つんだよ!!」

 

 

宇髄の言葉通り、仕切り直しをし堕姫へ切り掛かった。

 

ハスミの忠告通りに堕姫の内に潜むもう一人の上弦の陸に注意しながら…

 

 

「こっちにも蚯蚓ですか?」

 

 

堕姫の戦闘区域から離れて遊郭の単発地震の要因となった巨躯の鬼と対峙するハスミ。

 

その正体は蚯蚓にサナダムシや複数のワームを合体させた生物だった。

 

遊郭区域の地盤が緩んだ場所から這い出て鎌首を上げる巨躯の鬼。

 

 

「…愛しのカオリちゃん18歳のきしめん事件を思い出しちゃった。」

 

 

ハスミは顔を青褪めさせた後、仕切り直しをして迎撃行動に移った。

 

 

「さて、虫退治と行きましょうか?」

 

 

=続=

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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