鋼の魂と共に   作:宵月颯

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美と醜。

どちらも切り離せないもの。

それは対義語の様に。




二人で一つ

前回、ハスミが花街に現れた巨躯の鬼を討伐し上弦の壱と参の乱入を受けて交戦をし始めた間の事。

 

遊郭に潜んでいた上弦の陸と対峙し戦闘を開始。

 

同時にハスミが警告したもう一人の上弦の陸の出現に注意しつつ戦闘を続けていた。

 

 

******

 

 

「何よ、この筋肉馬鹿と戦闘馬鹿は!!」

「俺様のド派手な肉体美に恐れをなしたか?」

「うむ、宇髄のその返し方は見習いたいな。」

 

 

上弦の陸・堕姫が繰り出す帯の攻撃を躱しつつ攻撃を加える宇髄と煉獄の二名。

 

炭治郎らは二人の死角から攻撃を繰り出す帯の動きを遮っていた。

 

 

「…(もう一人の上弦の陸が出てきていない今は迂闊な行動は出来ない。」

「なんなのもー!!このうねうね帯はー!!」

「蚯蚓帯は俺様が全部ぶった斬ってやるぜ!!」

 

 

炭治郎は前もってハスミに上弦の陸との戦闘に関して相談をしていた。

 

それに関してハスミはこう告げた。

 

 

『前提として炭治郎がやるべき行動は…』

 

 

上弦の陸が二体一組の鬼である事を忘れないこと。

 

頸切りは二体同時が必須なので柱の援護をすること。

 

もしも戦闘の配置が換わったり柱に何らかの危機が起きた場合は炭治郎君が頸を取る事。

 

相手の毒攻撃はすぐに話さない事、何かの拍子で見つけた様にすること。

 

長期戦が予想されるので周囲の状況や自身の状態を注意しつつ戦闘を行う事。

 

相手の毒攻撃の頻度が上がってきたら禰豆子ちゃんの血鬼術で毒を浄化させる事。

 

絶対に柱や自分達を欠損させる攻撃を受けない事とさせない事。

 

状況を把握し冷静な判断で行動をする事。

 

 

『私も巨躯の鬼を仕留めたら援護に回るけど、もしも来られない場合は別の上弦の乱入があったと思って頂戴ね。』

 

 

炭治郎はハスミとの約束を守り、同時に目処前の柱を守る事に専念した。

 

 

「竈門!」

「はい!」

「デケェ鬼の音とクジョウの鉄砲の音が消えた!何か匂うか!?」

「駄目です!目処前の鬼の匂いが強すぎて!」

「ちっ、アイツが予想した通り…他の上弦の鬼が来たのか?」

「ならば、ここは早期に仕留めるしかない!」

「応よ、アイツにばかりド派手ないい恰好させられねえからな!」

 

 

過去の情報から上弦の鬼に対して柱三人が対応するのが好ましい。

 

だが、戦闘を続けている柱は二人、その内の二人が庚の階級隊士。

 

そして秘匿されている柱見習いだけだ。

 

十分な戦力を回した以上、負ける訳にはいかない。

 

 

「宇髄!今だ!!」

「任された!!」

 

 

柱二名による猛攻。

 

上弦の陸の頸は煉獄の援護によって宇髄によって切られた筈だった。

 

 

「うぁあああん!頸…切られちゃったよ!!!」

「…(何だこいつ、頸を斬ったのに消えてねえ。」

「宇髄さん、その鬼から何かが出てきます!!」

「っ!?」

 

 

炭治郎の言葉で危険を察知し上弦の陸から離れる宇髄。

 

それと同時に上弦の陸の周囲に放たれる技。

 

彼女から出てくるもう一人の上弦の陸が現れた。

 

 

「しゃあねえなぁ、頸位…自分でつけろよなぁ。」

「うぇえええん、お兄ちゃぁあ!!」

 

 

その言葉によって確信した。

 

あの鬼こそ真の上弦の陸。

 

本来の戦いはこれから。

 

 

「宇髄さん、煉獄さん、あの鬼達は恐らく…」

「ああ、頸を同時に斬るしかねえ奴らって事だな。」

「よもや、クジョウの読み通りになった。」

「つか、アイツ…どんだけ考察に優れてんだよ。」

「宇髄と同じ忍では?」

「いや、元軍人って本人が言ってただろ?」

「軍人か、女子の軍人は初めて見たぞ。」

「異国だと女の徴兵があったんじゃねえか?」

「それは悲しいな…」

「ああ。」

 

 

彼らの会話の後に新たに現れた上弦の陸は名を告げた。

 

兄の妓夫太郎と妹の堕姫。

 

二人で一つの鬼であり最強を名乗った。

 

此処にハスミが居れば彼らの行動から戦術を組めただろう。

 

更なる長期戦を強いられると思ったが…

 

 

「な?」

「え?」

 

 

無駄口の間に二体の頸は斬られたのだった。

 

一つは爆撃音、一つは紅蓮の炎、一つは太陽の輝き。

 

 

音の呼吸・肆ノ型 響斬無間。

 

炎の呼吸・伍ノ型 炎虎。

 

ヒノカミ神楽・幻日虹。

 

 

宇髄が上弦の陸の周囲を混乱。

 

煉獄が堕姫、炭治郎が妓夫太郎の頸を切り裂いたのだ。

 

 

「何で、何で、何で!?」

「恨めしぃな!俺はまだ何もしてねぇえ!!!」

 

 

頸を同時に斬った事で上弦の陸達の肉体が消失を始める。

 

 

「いや、いやよ!助けて!助けてお兄ちゃん!!」

「梅っ!?」

 

 

相向かいに転がった二つの頸は空しく叫び。

 

そして死の淵で己の生涯を思い出した。

 

 

「どうして…俺らは奪われなきゃなんねえんだよ。」

「奪われる前に鬼に成っちまう前にどっか遠くにでも妹を連れて逃げれば良かったんだよ。」

「…」

「兄であるなら妹を守るのも当然だ…だが、君は妹に大切な事を教えられなかった。」

「何だよ…!」

「誰かを思いやれる言葉、きっと鬼になる位に貴方達は酷い仕打ちを受けたと思う。」

「…」

「今度、生まれ変わる時はまた兄妹で幸せになって下さい。」

「幸せか…そんな世界があるなら。」

 

 

堕姫の次に消えて行く妓夫太郎は宇髄らの言葉に答えつつ言いかけた言葉を最後に消えた。

 

炭治郎は消えた二人に対して合掌し祈りを捧げた。

 

 

「さてと、苦戦してるクジョウの援軍にでも行くか。」

「うむ、そうだな。」

 

 

二人の柱は先にその場を去ろうとするが…

 

 

「何だろう、この匂い?」

 

 

炭治郎は嗅ぎ慣れない匂いに反応した。

 

石油に似た匂いと機械油の匂いだ。

 

そして…

 

 

「宇髄さん!煉獄さん!逃げっ!?」

 

 

時遅し。

 

その場に居た四人は光に巻き込まれた。

 

同時に別行動中だった善逸と伊之助もその光に巻き込まれていた。

 

花街の至る所に光る閃光。

 

それはある視点から見れば爆撃によるものだった。

 

 

>>>>>>

 

 

上弦の陸討伐後、他の上弦の鬼を相手にしていたハスミ。

 

夜明けが近くなった頃、二体の上弦の鬼は撤退。

 

ハスミ自身も無事とは言えない怪我を負っていた。

 

 

「…っ!」

 

 

片足を引きずりながら炭治郎らと別れた場所へ向かっていた最中だった。

 

腕は複雑に折れた事で機能しにくくなり腫れ上がり、所々に斬撃よる出血が目立っていた。

 

酷いモノは片方の肩の肉が抉れてボタボタと失血している事である。

 

自身が起こした爆撃音とは違う音を聞きつけ、出来得る限り早く歩みを進めた。

 

漸く辿り着いた時には朝日が見え始める頃だった。

 

 

「炭治郎君?」

 

 

爆撃によって吹き飛ばされた家屋。

 

所々で壊れた家屋が燃え始め、黒い煙を放っていた。

 

そして爆撃と爆風で吹き飛ばされた炭治郎達を発見したのだ。

 

 

「そんな…」

 

 

再会した一行は所々から出血。

 

炭治郎は顎の骨を折ったのか口元から出血し所々の裂傷で気絶。

 

煉獄は左目と腹部に家屋の破片が突き刺さっており出血が止まっていない。

 

宇髄は右目と左腕を破片で切ったのか出血し腕は使い物にならない程に千切れかけていた。

 

善逸は家屋の破片で両足を挟まれた状態、伊之助は爆風の火傷と切り傷が酷かった。

 

 

「早く鎹鴉に…」

 

 

ハスミは連絡を取る為に鎹鴉を呼ぼうとしたが、自身も限界を迎えてその場に倒れ込んだ。

 

声を上げようにも既に声も大きく出せない位に疲弊していた。

 

 

「…」

『ひょひょひょ!大当たりだったねぇ!』

「!?」

『おっひさ!ジエー博士だよ?』

 

 

何処から聞こえるか不明な放送音。

 

その声の主にハスミは反応するも声を出す気力も失いかけていた。

 

 

『いや~君達、随分と勝敗上げてたから…この辺でワシから絶望をプレゼント!』

 

 

この世界の理によって起動兵器は使えない筈だった。

 

だが、これは紛れもなく爆撃の痕跡。

 

 

『制限もあるけど、1.5m位の起動兵器なら難なく起動出来たんだよね?』

「!?」

『そのテストも兼ねてこの辺一帯を爆撃したんだよW』

「…」

『ま、君にも仕返し出来たしさっさと野垂れ死にしてね?』 

 

 

 

放送音はそこで途切れ、残されたのは燃える音と只の静寂。

 

唯一無事だろう禰豆子は日の出を迎えた事で出てくる事が出来ない。

 

誰も助けを呼ぶ事も出来ない状況でハスミは静かに涙を流した。

 

巨躯の鬼と上弦を二体相手にした負傷が響いており、尚も続く出血で意識が朦朧とする中。

 

 

「…(お願い、誰でもいいから誰か彼らを助けて。」

 

 

願う言葉は祝福か呪いか?

 

気を失い出血が続くハスミの血液が自らの意思で動き始めた。

 

その血は気絶し倒れた五人の元へと移動を開始。

 

彼らに触れた血は銀色の膜を形成し損傷部分に纏わりついた。

 

それは無数の六角形を形成し定着し保護していた。

 

知る者はそれを禁忌の産物であると理解する。

 

それは彼女の中に眠っていた悪魔の力が目覚めた瞬間だった。

 

 

=続=




<蝶屋敷での異変>


遊郭での戦いが激戦を迎えている頃。

任務を終えて帰還したばかりのしのぶにカナヲはあるモノを見せた。


「カナヲ、どうしたの?」
「師範、これ…急に壊れてしまって。」


カナヲが見せたのはハスミから送られた花の髪留め。

大きな花の飾り部分が急にヒビ割れて壊れてしまったとの事。


「…後でハスミさんに相談しましょうね。」
「あの…師範、皆は無事ですよね?」
「ええ、宇髄さんや煉獄さんも同行していますから」
「…」


しのぶは不安に陥ったカナヲに対して大丈夫と告げるしかなかった。

本当は不吉な予感がすると告げたい位に。

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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