鋼の魂と共に   作:宵月颯

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器を無くしても帰りたい。

見えなくても傍に居たい。

幼い魂達は御山に存る。


覚悟を持って刀を持ち戦う者。

一つの願いを叶える為に。

花は散ってもまた咲くのだ。


願う霊と散らない花

狭霧山に来て早数か月。

 

今日も炭治郎が油断して滝壺に落ちる音が響く。

 

 

「大丈夫?」

「へ…平気です。」

「それならいいけど風邪を引かない様にね?」

「ふぁい。」

 

 

私は近くの川岸に辿りついた炭治郎の元へ行き、拭きものを手渡して話しかけた。

 

本人は慣れていると話すが季節が春を迎えても山の水はまだ冷たい。

 

無理をしない様にと告げて私は自分の修行に戻った。

 

 

「…(流石に大人げない位に絶対&必ず殺す気満々で罠仕掛けているよね。」

 

 

これには訳がある。

 

炭治郎君が鱗滝さんに用意された最初の罠をいともたやすく避けてしまったからである。

 

これに対して何が何でも罠に掛からせたいと鱗滝さんの修行魂に火を点けてしまった。

 

その為、日々難易度が上がりまくっているのである。

 

 

「はぁ…(これが俗に言う…いともたやすく行われるえげつない修行法ですかね。」

 

 

ちなみに私は普通に歩いている場所に向けて飛び出してくる刃物や竹槍を避けながら竈門家の人達が生活する麓近くの山小屋まで釣瓶型の桶に入った水を運んでいた。

 

 

******

 

 

一方その頃、山小屋の近場に作った畑に種植えをする竈門家の人々の様子を見ながら縁側付近で末っ子の六太を寝かしつけている鱗滝の姿があった。

 

 

「…」

 

 

 

>>>>>

 

 

 

略啓、鱗滝左近次殿。

 

 

寒村の山小屋に住む一家が鬼舞辻無惨と思われる鬼の襲撃を受けました。

 

しかし、その一家はその家族の長男と細工師と名乗る女性によって守られましたが…

 

残念ながら一家の長女と細工師の女性は鬼舞辻無惨の血を受け鬼にされました。

 

所が、その長女と女性は人を襲わず女性に至っては自我を保っていました。

 

この事もあり半日程、この家族を監視していましたが長女と女性が人間を襲わないと判断致しました。

 

鬼にされた二人には何か他と違うものを感じます。

 

そして一家の長男と女性は鬼殺の剣士になりたいとの事で家族共々そちらに向かわせました。

 

少年の方は貴方と同じく鼻が利き、女性に至っては異国の鉄砲で鬼を退けた手練れです。

 

驚く事は双方共に俺の初撃を退けた点です。

 

もしかしたら“突破”して“受け継ぐ”事が出来るかもしれません。

 

どうか育てていただきたい。

 

手前勝手な頼みとは承知していますが何卒御容赦を。

 

御自愛専一にて精励くださいますようお願い申し上げます。

 

 

怱々、冨岡義勇。

 

 

 

>>>>>

 

 

竈門家が狭霧山を到着する数日前に送られた文の内容を思い出す鱗滝。

 

横で眠る六太を撫でながら呟いた。

 

 

「義勇、恐らくお前が指摘した通りあの者達は兆しやもしれん。」

 

 

人を喰らわず、今も日光に晒さない様に奥の部屋で眠り続ける禰豆子。

 

旅の細工師と名乗り異国の知識と技術に鉄砲を操るハスミ。

 

まっすぐな意思と揺ぎ無い意思で修行を続ける炭治郎。

 

それはまるで石を落とした水面に浮き出る波紋の様に広がっているやもしれん。

 

 

「鱗滝さん、六太の面倒を見て頂いて有難うございます。」

「構いませんよ、それよりも子供らを育てるにも何かと物入りだろう。」

「はい、生まれた場所であんな事があってもあの子達は懸命に生きようとしています。」

 

 

六太の様子を見に葵枝が鱗滝の元へやって来た。

 

鱗滝と話をし自分は食べ盛りの子供を六人も抱えていようと母親してしっかりと育てねばと決めていた。

 

その願いも届かず残酷に。

 

息子であり長男の炭治郎が妹の禰豆子を元に戻す為に今も鬼狩りに入る為の修行をしている。

 

何故、止めなかったのかと鱗滝は葵枝に尋ねた。

 

 

「止めようと思わなかったのか?」

「ええ、炭治郎が禰豆子を元に戻す為に必要な戦いに出る事を…あの子が決めたのなら私は止める事は出来ません。」

「…」

「きっと何時かこうなると思っていましたから。」

「どういう事ですか?」

「夫が亡くなる前に夫の祖先が花札の耳飾りを付けた侍に救われた事をきっかけに竈門家は代々の長男…今は炭治郎が付けている耳飾りと神楽を引き続いだと話を聞いた事がありまして。」

「ふむ…」

「日の出を模した耳飾りと一夜を掛けて舞う神楽…伝承したヒノカミ神楽は鬼を退治する為の神楽だったのでは?と思うのです。」

「そうか。」

 

 

修行の合間に炭治郎が夜な夜な練習しているヒノカミ神楽は何処か呼吸にも似た動作がある。

 

炭治郎が父親に『疲れない呼吸』があると話していた。

 

ハスミは『それは恐らく全集中の呼吸に似た体内の血をより効率よく全体に巡らせる為の方法。』であり『ヒノカミ神楽は鬼殺隊が使う呼吸と何処か繋がりがあったのでは?』と推測した。

 

それが本当であれば、何処かの時代の鬼狩りが竈門家に謎の呼吸を教えたと言う事になる。

 

そして呼応する様に鬼の首魁・鬼舞辻無惨による竈門家の襲撃。

 

話を聞いたハスミは『あくまで予測ですが、竈門家は無惨の弱点となる何かをヒノカミ神楽として伝承していた可能性がありそうですね。』と推測している。

 

異国の知識と技術そして歴史と民謡に関する考察と推測に古き伝承を紐解く解読術。

 

これが兆しでなければ何だと言うのだろうか?

 

運命ではなく必然的に炭治郎とハスミは出会う為にあの日に出会ったのだ。

 

鬼舞辻無惨と言う鬼を倒す為のこの世に持たされた一つの希望として…

 

 

 

******

 

 

<一年後>

 

 

狭霧山の中腹に位置する巨石の前。

 

炭治郎は最終選別と呼ばれる鬼殺隊へ入る為の試験に行く為の課題を終えても修行を続けていた。

 

理由は巨石の前で出会った錆兎と真菰の事である。

 

二人の正体はハスミが『あの子達は残留思念……云わば幽霊の様な存在よ。』と看破した。

 

二人は過去に最終選別でとある鬼によって殺され、その魂は今も縛られている。

 

 

「よく俺達の正体が判ったな?」

「うん、私も驚いた。」

「ハスミさん、どうして二人が幽霊だと?」

「何時も黄昏時と丑三つ時にしか姿を現さないからよ。」

 

 

その二つは一番この世とあの世の境が曖昧になる時間帯。

 

狭霧山は清浄で浄化に優れた霊山である事。

 

炭治郎が二人の事を見えたのは大人に成りきれてない段階の世代だから。

 

 

「最も私はこの手の厄介事を仕事にしていたから見分けがついただけよ。」

「もう何でもアリですね。」

「人間、慣れるとどうとでもなるの。」

「ハハ、面白い弟妹弟子達だな。」

「フフッ本当だね。」

 

 

右頬に傷を持つ錆兎と小柄な真菰は久し振りに笑い合っていた。

 

死して尚もこの山で自分達の願いを叶えてくれる存在を待ち続けた末に漸く出逢えたのだから。

 

 

「最終選別、頑張れよ。」

「私達もここから応援しているからね。」

「解った。」

「大丈夫、何時か願いが叶う時が訪れるから。」

 

更に一年後、数々の想いを背負って私達は最終選別の地。

 

藤襲山へ赴くのだった。

 

=続=

 




=竈門家襲撃から一ヶ月後の事=

ある町で鉄扇を持った鬼と少女と言っても可笑しくない女性の剣士が戦っていた。

だが、何者かの介入により双方の戦いは中断した。

夜明けを迎えた後、女性剣士は深傷を負うが死ななかったものの昏睡状態に陥り、二年後になっても一向に目覚める気配がなかった。

この状況を崩す兆しが訪れるのはもう少し先の事。

花は散ってもまた咲くのだ。

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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