分けるべき物は分けましょう。
早朝、お世話になった藤の花の家紋の家の旅館を後にした。
切り火と出立の挨拶に出てくれた家主から移動道中で食事を取れる様にとおにぎりの入った包みを手渡された。
気を使って貰い申し訳ないと思う。
逆に物足りなさそうな顔をしている伊之助君とちょっと量が足りないけど我慢している炎柱には残念だが我慢して貰おう。
後で私の持参した携帯食も追加しとこう。
流石に任務中に腹の虫で抗議じゃ洒落になりません。
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夜明けを迎えて暫くした後、一度休憩を取ってから再出発。
例の如く、おにぎりの取り合い合戦が開始。
人数分を横取りし余計に食べようとした伊之助君に私ことハスミは雷を落としました。
「伊之助君、ちょっとそこでオハナシしようか?」
「ア…」
背後に閻魔オーラを醸し出したハスミに片方の肩をポンポンされる伊之助。
その様子を見た善逸と炭治郎は表情を青褪めた後に硬直した。
「ひっ!?」
「ハスミさん。」
普段はオハナシ程度で済ませているが流石に堪忍袋の緒が切れました。
私は近場の道の端に伊之助君を正座させ私も相向かいに正座をした。
久々に説教タイムを開始。
「さて、伊之助君…言いたい事は解るよね?」
「ハイ。」
「おにぎりは人数分用意されています、人の断りもなく余分に食べる事は出来ません。」
「ハイ。」
「それでも貴方は強制的にかつ無理やり強奪して食べようとしました。」
「ハイ。」
「何で怒っているか判っているよね?」
「ハイ。」
一言、一言の圧が凄すぎて時間が止まったかのように宇髄を含めた四人は動きを止めていた。
「伊之助君、前に教えた事を復唱して。」
「勝手に人のメシを取らない、食べたい時は相手に言う、皆で均等に分ける。」
「まだあるわよね?」
「すぐに怒らねえ事。」
「はい、良く出来たね?」
「…ハイ。」
「いい事?次もやったら………洗濯板で尻叩き以上のお仕置きよ?」
「ハイ…」
「…返事はハッキリよね?」
「ハイ!?」
ハスミの洗濯板で尻叩きの発言に四人は顔芸で白目を剥いていた。
伊之助は先程の勢いが消えて意気消沈の真っ白に燃え尽きた状態。
そんな状況に対して四人はボソリと心境を吐露した。
「何か伊之助への躾がかなりヤバい事になってるぜ。」
「…う、うん。」
「…うむ、尻に洗濯板は痛いな。」
「…クジョウと結婚した奴は絶対に地獄を見るぞ。」
「それは同意する、元柱である父上に自棄酒すると襲われる恐怖を植え付けたのも彼女だからな。」
「煉獄の旦那はクジョウの逆鱗に触れた結果じゃなかったか?」
「それもあるな。」
「元柱から恐怖の対象にされるって…」
「ちなみに竈門少年の頭突きも恐怖の対象らしい。」
「…その節は済みません。」
「炭治郎の頭突きって普通の鬼なら怯ませられるもんな。」
クジョウ・ハスミ、後の未来で騒動を起こした結婚相手となる相手に鉄拳制裁の腹パンをお見舞いするのだが…
そのダメージが軽いじゃれ合い程度にしか効いていない強靭な存在である事を炭治郎達は知る由もなかった。
「さてと気を取り直して朝御飯取っちゃいましょうか?」
そんなハスミは四人の呟きをさらりとスルーしたのだった。
「移動経路から察するに大分距離を縮められたから…昼過ぎには目的地に到着出来そうね。」
「ハスミさん、そのまま目的地へ向かうんですか?」
「いえ、目的地手前の集落に向かって待機中の隊士と合流する。」
「そうだな、また情報が入っているかもしれない。」
「音柱の言う通り、今回は距離が距離だから鎹鴉からの情報の行き違いがある可能性は否定できないわ。」
ひと騒動の後に遅めの朝餉を取る一行。
ハスミは自身で作図した地図を見ながら炭治郎と宇髄に説明をしていた。
「それと敵の総本山に計画も無しに突っ込む事はやらないから。」
「う、済みません…」
「なら、どうする?」
「一度、周辺の偵察をした方がいい。」
「だな、向こうが俺達の侵入に気が付いている可能性もある。」
ハスミは少し考えてから偵察メンバーを伝える。
「偵察に行くのは私と音柱、炭治郎で。」
「あの…どうして俺?」
「能力は申し分ないけど、善逸君と伊之助君じゃ騒がしくてすぐに見つかるからよ。」
「ついでに言えば煉獄は二人の足止めだな?」
「そう言う事です。」
「成程…(デスヨネ。」
柱二名からの最もな意見に対して納得する炭治郎。
「それに敵が消息不明の風柱達を捕らえていても不思議じゃないわ。」
「えっ!?」
「考えてみなさい、鬼狩りの精鋭である柱が二人も消息不明になると言う事はそれなりの危険が起こったって事。」
「確かに…」
「実力は申し分ないのだから、恐らく二人にはどうする事も出来ない状況が続いている。」
目的地へ近づくに連れて嫌な気配を感じる様になった。
ジ・エーデルは人を嘲笑し人を貶める手腕を持つ。
だからこそ用心しなければならない。
最悪の場合、風柱達は奴に洗脳されている可能性もある。
油断は出来ない。
「クジョウ、アイツらも喰い終わったしそろそろ行くか?」
「もう少し休ませておいて、乗っている間に車酔いで吐かれても困るから。」
「車酔い?」
「食事を取った後に十分な休憩を取らずに急激な揺れや運動をすると起こる胃の拒絶反応よ。」
「電車とは違うんですか?」
「そうね、電車は兎も角…単車は結構揺れるからその反動でなりやすいわよ?」
ハスミは『考えて見なさいよ、乗車中に自分の背中に吐かれたくないでしょ?』と静かに告げた。
「そりゃ困る。」
「そうですよね。」
「そう言う事だから、もう少し休憩取りましょう。」
=続=
刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?
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木乃伊事件(不死川、伊黒)
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集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
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船舶沈没事件(宇随、煉獄)
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不在担当地区防衛(時透、甘露寺)