踏み込んだ先は奴の手中。
前回から数時間後。
夜も更け月がくっきりと見え始めた頃。
私達は紅霧村へ向かって疾走し辿り着いた所だった。
******
「ここが紅霧村。」
直に見た事ではっきりした事がある。
紅霧村は自然に出来た地形を生かして作られた村ではない。
人為的にそれらしく作られた村だ。
今は月明かりのお陰で見やすくなっている。
「凄い光景ですね。」
「普通、滝の水で円形に削られるか?」
「正直無理がある。」
「あれは出入口の橋?」
玄弥が指差した方向に可動式の橋らしき物体が見えていた。
だが、その周辺には例の人形が徘徊していた。
宇髄と炭治郎が人形の造形を確認、確認出来たハスミは断言した。
「あれが例の人形か?」
「人形と言うよりも五月人形の様な甲冑を着けていますね。」
「間違いないわ、あれはジ・エーデルの生み出した対人兵器よ。」
「て、事は予測通りか?」
「ええ、ここはジ・エーデルの研究所ね。」
最悪の事態は的中しているだろう。
満場一致で様子を確認する為に中へ潜入する事になった。
今から潜入する事を集落にいる待機組に鎹鴉に伝えて貰った。
「し、死ぬかと思った。」
「…同じく。」
「お前ら情けねえぞ。」
「…(真夜中の渓谷でフックショット渡りはキツかったかな?」
渓谷の間、紅霧村側の崖に内部へ侵入出来そうな孔を発見。
静音タイプのフックショットで渡ってきたのである。
炭治郎君と玄弥君は泣き顔状態の顔芸を披露。
呆れた表情で言葉を返す宇髄。
申し訳ない表情を心の中でしたハスミだった。
「何だこりゃ?」
「文字通りジ・エーデルの研究所…奴の拠点はこう言う作りになっているのよ。」
「よく判らない素材で天井から壁と床を埋めていますね。」
「鉄の扉ってのも珍しいよな。」
物珍しそうに通路内を見渡す宇髄達。
「炭治郎君、風柱達の匂いは?」
「微かですか、この先からします。」
「急ぎましょう、潜入した以上はもう気付かれているわ。」
ハスミは炭治郎らに動く様に促すと炭治郎の嗅覚を頼りに移動した。
時には下層へ通じる昇降機も利用。
その道中で監視用の機械や対人兵器が出てこなかった。
まるで此方を誘う様に下へと向かっていった。
>>>>>>
それから更に数時間が経過。
外は既に深夜を迎えた頃。
一行は長い探索の末に広い空間へと辿り着いた。
「随分と派手に広い場所だな?」
「匂いもここで途切れています。」
「兄貴…」
「構えて、何か来る。」
ハスミは空間内の殺気を感じ取り、抜刀を促した。
宇髄も気配を感じ取ったのか既に臨戦態勢。
炭治郎と玄弥も得物を抜いて構えた。
「っ、全員散れ!!」
宇髄は此方に仕掛けられた攻撃に見覚えがあり、急ぎ回避を指示した。
「今のは…」
「あれは間違いない、兄貴の呼吸だ。」
「何だって!?」
「こっちは蛇柱の呼吸ね。」
「クジョウ、お前の推測が当たっちまったな?」
「ええ、残念だけど。」
攻撃の跡から最悪の光景を予測した柱二名。
「不死川!伊黒!隠れてねぇで出てきたらどうだ!!」
宇髄の言葉に反応し出てくる二名。
その眼はハイライトを失い、機械的に動いている様子だった。
「兄貴…どうして?」
「ハスミさん、二人は一体…」
「二人は恐らくジ・エーデルに操られているわ。」
「そんな!?」
「奴はこう言った技術も持ち合わせている、相手を油断させて楽しむ為にね。」
「クジョウ、この二人を戻すには?」
「気絶させるか、若しくは頭の何処かに小さな装置が付いていると思う、それを壊すしかないわ。」
「んじゃ、ここは俺らに任せろ!」
「音柱…」
「俺達が食い止めます!」
「兄貴達をこんな目に遇わせた奴に一泡吹かせて下さい!」
「判ったわ。」
ハスミは三人に促されて空間を後にした。
目指すはジ・エーデルの居る部屋。
階段を見つけると下へ下へと走り続けた。
******
紅霧村の最下層。
そのメインルームらしき空間に侵入したハスミ。
扉は重火器で爆破された後に蹴り飛ばされ、見事にひしゃげていた。
そして『待ってましたw』と言う表情でジ・エーデルが出迎えた。
「ジ・エーデル!望み通りに来てやったわよ!!」
「おっひさーw元気だった?」
「お陰様で、久しぶりに三途の川に片足突っ込んだわ。(流石に安駄婆様にはお会いしなかったけど。」
「あらーそうなの?まあ君なら生還出来ると思ってたけど。」
「無駄な話はいい、それよりもよくもやってくれたわね?」
「何の事かな?」
「とぼけるな!お前が風柱達を洗脳した事よ!!」
「えー楽しかったでしょ?」
「っ!」
煽りに煽るジ・エーデルの表情。
ハスミは奴の足元に威嚇射撃を行った。
必死に逃げる反面、嬉しそうに回避するジ・エーデル。
「いやん、コサックダンスなんか踊っちゃったじゃない♪」
「何処までも悪意の塊であるのは変わりないわね……いや、前回を通り越してそれ以上よ。」
「ヤダもうハスミたんってば、そんな君の侮蔑の眼も好きよ?」
「…」
「さーてと、本題に入ろうかな?」
「お前の狙いは判っている……言わずともね。」
「そうだね、君がDG細胞なんてメッチャオモロイ物を持っててくれた事は感謝するよ。」
「狙いはそれか?」
「そうそう、それが在ればもっと面白いお遊びが出来るもん♪」
「ふざけるな!」
「君も判っているんでしょ?その力がどんな影響を齎すかを?」
「っ…」
「ま、油断してくれた事には感謝よ?」
「何!?」
足元に伸びて絡まる金属製の物体。
振りほどこうとするも時既に遅し。
構えていた銃器を弾かれ拘束された。
「まさか…これは!?」
「ピンポーン!お察しの通りDG細胞だよ?」
「どうやって…」
「遊郭に残っていた君の血痕跡からちょちょいのチョイってね。」
「…(あの時の!?」
「DGのコアは流石に再現出来なかったけど、君が居れば別だよ?」
「…」
「冷静な君でも判ったようだね。」
DG細胞を動かせる存在をコアにする。
それによってDG細胞を操ると言う事か…
想定していたとは言え、酷い失態だ。
「それに偶然とは言え、君の眷属?になった野郎共にもかなりの影響が出るだろうね?」
ジ・エーデルの言葉でハスミの脳裏に炭治郎らの顔が浮かんだ。
「ジ・エーデル…!」
「じゃ、君の体にあんな~事やこんな~事をしてあげるからね?」
「!?」
ジ・エーデルはコンソールを操作し注射器型のマニピュレーターを起動させる。
そして無防備となったハスミの首筋に何かを投与した。
「何を……!?」
「うひょ?効いてきたかな~♪」
謎の薬剤の投与後、ハスミの身体に異変が生じていた。
「…(息が。」
呼吸が熱くなり、息が出来なくなる。
全身が捲れる様な痛みと苦しみが引き起こされていた。
徐々に皮膚を浸蝕する銀色の膜。
「………皆…逃げ、て。」
ハスミは薄れゆく意識の中で発した言葉を最後に意識を失った。
=続=
紅霧村付近にて。
村へ流れる河川近くに現れた存在。
「ここか、とうとう見つけたぞ。」
月明かりに照らされた銀色の髪。
彼は独り言を答えた後、一直線に村へと向かった。
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