その力に縋る事なく自らの力で脱する事を行使するが…
彼は違った。
突如の乱入者。
それはある意味で戦局の天秤を大きく揺るがすもの。
だが、この世界の制約は彼の力を縛った。
******
前回から引き続き、ジ・エーデルのメインルーム。
隔離室の中へ侵入し意識を取り戻したものの倒れた状態のハスミを横抱きにした侵入者。
「俺の女に手を出し、この様な姿にさせた報いは受けて貰うぞ?」
「えー君だってまんざらでもないんじゃない?」
「…」
ジ・エーデルはいつもの発言でこの場を切り抜けようとしたが、彼には通じなかった。
彼はそう言った会話が不快に感じる為に虫唾が走っていた。
同時に自身の背を預ける存在に対する扱い。
それこそが彼の怒りを掻き立てていた。
「…(気を付けて、奴の施設には。」
「判っている、ここへ訪れる前にいくつか内部の施設を破壊して置いた。」
「…(お早い判断で。」
「奴の手の内はお前が良く知っているだろう?」
「…(おっしゃる通りです。」
ハスミの口の動きで会話を続ける侵入者。
問い掛けに対して回答する侵入者の行動に呆れを通り越して何時もの行動と言う事で応対した。
「ま、まさか…」
ジ・エーデルは侵入者の発言に対してコンソールを動かすと各施設の様子をモニターに映し出した。
「え、えー!?」
ジ・エーデルが驚くのも無理はない。
苦心して製造した対人兵器のプラントや地下に放った巨躯の鬼が残骸と屍を晒していたのだ。
「あのオオサンショウウオだったか、あの程度の力量で俺に勝てるとでも?」
「うそーん、あの大型水槽の中で。」
「ふん、俺には雑魚に等しい。」
侵入者が雑魚と言うのも無理はない。
彼自身がそれを成し得る異常な戦力を持っている為である。
但し、疑問が残る。
先程のオオサンショウウオ型の巨躯の鬼をねじ伏せたとしても…
核である鬼の頸を日輪刀で斬らなければ、瞬く間に再生してしまう。
それをどう防いだかと言う事だ。
「…(あの、奴をどうやって仕留めたのですか?」
「こちらに来る道中で折れた刀を手に入れた、それを奴の頸にねじ込んだだけだ。」
「…(折れた刀ですか?」
「ああ、刃先は折れていたが…刺し込む位の刃は残っていたのでな。」
「…(それ、もしかして日輪刀じゃ…」
「不明だが、その刀で化け物の頸を討ち取った時に消し炭の様に消えていた。」
「…(奇跡ですね。」
「そうだな。」
偶然とは言え、何処かに回収しきれなかった日輪刀が残っていても可笑しくない。
彼はその一本を発見し巨躯の鬼をその拳で撃ち倒し、止めを刺したのだ。
もしもその折れた日輪刀が無ければ、ある意味で連戦していたと思われる。
「すっごー。」
「無駄な話は終わりだ。」
「え、えと。」
ゴキャ!?
「まずはこの一撃を喰らって貰おう。」
侵入者はハスミを横抱きにしたまま、高速で移動しジ・エーデルの顔面に拳をねじ込んだ。
「へぶぉ!!!?」
その拳を受けたジ・エーデルの表情は涙目からの魂が抜けた状態に陥った。
そのまま数回バインドしメインルームのモニターに撃ち付けられた。
痙攣と見事までに奴の顔は拳がめり込んだ跡が残り、暫くは目を覚まさないだろう。
「ハスミ、状況説明を聞きたい所だが…」
「…(奴に体内のDG細胞を暴走させる薬剤を打たれたせいで声がまだ。」
「解毒は出来るか?」
「…(まだ少し掛かります。」
「判った、ここを離れるぞ。」
「…(待ってください、ここには一緒に潜入した仲間が。」
「…数は?」
「…(メインルームの地下に二名、上層の空間に三名です。」
「承知した。」
侵入者はハスミから状況を聞き出し、行動を共にしていた者達の事を教えられた。
「ここで待っていろ。」
「…(了解。」
侵入者はメインルームの地下に落とされた風柱達を引き上げる為に吹き抜けとなった場所から落下していった。
「…(見事な縄なしバンジージャンプ。」
ハスミは侵入者にメインルームの入口付近に下ろされ、その場で待機していた。
暫くすると不死川と伊黒を担いだ侵入者が上がって来た。
ちなみに脱出経路はなかったので側面の壁を壁蹴りして登ってきたとの事だ。
「何だよ、コイツ。」
「あり得ない力だ。」
大の男に担がれて上がって来た二人には男の威厳総崩れとなり相当堪えただろう。
凄くウンザリ顔をしていたのは突っついてやらない事にしよう。
「おい、半鬼女…どうなってんだ?」
「…」
「何か言えよ。」
「待て、今のハスミはジ・エーデルに投与された薬剤によって身体が思う様に動かせず、声も出せない状態だ。」
「半鬼女、そうなのか?」
不死川の問いにハスミは首を縦に降った。
「ったく死体取りが死体になってどうすんだよ。」
「所で打たれた薬と言うのは?」
「ハスミによると血鬼術を暴走させる薬だそうだ。」
「…そうだったのか。」
「さっき宇髄とクソガキがぶっ倒れたのはそのせいだったって訳か。」
ハスミは侵入者に代弁して貰い、話を続けた。
「あの糞ジジイはどうなった?」
「…(あそこよ。」
ハスミが僅かに動く指先で場所を指し示すと引き続き気絶しているジ・エーデルの姿があった。
「お…見事に顔面潰れてらぁ。」
「清々する。」
色々とストレスMAXになる事をやられていた二人にとっては清々しい程にざまぁwな展開だった。
「…(奴が身動き出来ない内にここを奴もろとも破壊しないと。」
「ああ、腕が鳴る。」
「…(先ずは上層の空間に残っている三名と合流し脱出を。」
「脱出の件は承知したが、破壊に関して…その必要はない。」
「…」
「この拳にかけて、この俺が全てを破壊する。」
「…(相当怒ってらっしゃる様で。」
バキバキと片手を鳴らす侵入者。
ハスミはその様子を遠い目で静観した。
=続=
刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?
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木乃伊事件(不死川、伊黒)
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集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
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船舶沈没事件(宇随、煉獄)
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不在担当地区防衛(時透、甘露寺)