鋼の魂と共に   作:宵月颯

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その境を超えてはならない。

人と鬼の戦いだけではない。

これは人類存続の為の戦い。

境界はその為にある。


境界を超えるな

前回、爆破される紅霧村から脱出した一行。

 

ジ・エーデルを捕縛する事は叶わず、奴は再び行方を眩ませた。

 

情報は手に入らず仕舞いかと思いきや…

 

ハスミはジ・エーデルの潜んでいたメインルームこと研究室に移動する道中。

 

通りかかった電算室と呼ばれる場所に小型の機械を放って取れる情報は根こそぎ取っていたとの事。

 

その為、紅霧村で起こった出来事はある程度判明出来たらしい。

 

炎を所々に吹きながら崩落していく紅霧村を後にし拠点の集落へと向かった。

 

 

******

 

 

紅霧村での出来事から数時間後。

 

一行は集落へ一心不乱に向かっていた。

 

 

「…」

 

 

行方を眩ませたジ・エーデルの次の標的が拠点にした集落である可能性が高い。

 

奴はやられたらやり返す時の度合いが地味に酷い。

 

下手をすれば、紅霧村で製造され破壊されていない対人兵器の一部を差し向ける事も可能だからだ。

 

奴があの兵器プラントを一纏めにする事はない。

 

元の世界でも何が遭っても出撃させられる様に巧妙に隠している事もあった。

 

一筋縄ではいかない。

 

それがジ・エーデルのゴキブリ並みのしぶとさなのだ。

 

私ことハスミはそんな考え事をしながら他の仲間と共に集落への移動速度を合わせた。

 

移動道中で風柱に集落が狙われる話について問われたが、私は確定事項であると告げた。

 

 

「半鬼女、さっきの話は本当なんだろうな?」

「奴の事よ、奴の砦を一つ潰したのだから報復があっても可笑しくないわ。」

「ちっ、あの糞ジジイ…次遭ったら切り刻んで潰してやる。」

 

 

無事に集落へ到着した一行。

 

集落はまだ攻撃を受けておらず、丑三つ時の静けさを保っていた。

 

 

「んで、煉獄達は何処だ?」

「…あの一番大きな家です。」

 

 

炭治郎が滞在先の家屋を指差して案内する。

 

中に入ると禰豆子がオロオロしながら困ってる状態と例の如く倒れた三人が痛みと発熱で苦しんでいた。

 

 

「禰豆子!」

「ムー!」

「ごめんなぁ、遅くなって。」

「うー。」

 

 

炭治郎は困っている禰豆子に駆け寄り、頭を撫でて落ち着かせると待機していた煉獄達の様子を見る。

 

 

「酷い…さっきの俺と同じだ。」

「クジョウ、どうだ?」

「大丈夫、今…落ち着かせる。」

 

 

紅霧村で倒れた炭治郎らと同じくハスミは倒れた彼らに駆け寄り、暴走した血鬼術に触れて沈静化させていく。

 

徐々に白銀の膜は消えていき、痛みと熱も同じ様に無くなっていった。

 

他の二人よりも先程の状態から回復した煉獄が意識を取り戻した。

 

 

「…ううっ。」

「煉獄、無事か?」

「宇髄か…俺達は一体?」

「紅霧村でひと悶着あってな。」

 

 

宇髄らは紅霧村で起こった出来事を説明した。

 

ジ・エーデルがハスミに血鬼術の暴走を引き起こす薬を打った事で血鬼術の影響を受けている自分達にも異変が起こった事。

 

ハスミの仲間が駆けつけてくれた為に最悪の状況を打破出来た事。

 

奴によって紅霧村が爆破され崩壊した事を全て。

 

 

「あの村にクジョウが追っている奴が潜伏していた。」

「半鬼女の血鬼術の暴走もそれが原因だ。」

「伊黒、不死川、無事だったか!」

「煉獄、迷惑を掛けて済まない。」

「俺らも…ドジ踏んじまったぜ。」

 

 

何時もの調査の筈が、ここまでの大事になってしまった事に二人は謝罪した。

 

なってしまったものは仕方がない、こういう事もあると言う事で互いに場を収めた。

 

 

「ハスミ、奴が動き出した。」

「…今、行きます。」

 

 

家屋の外で待機していたアウストラリスに声を掛けられたハスミ。

 

予測通りの事が起こったと説明を受け、様子を見に外へと出た。

 

 

「…」

「いつも思いますが、奴のお遊びは度が過ぎますね。」

「だが、敗北する様な規模ではなかろう?」

「はい。」

 

 

集落に迫る対人兵器の群れ。

 

その奥に紅霧村で倒したのとは違う個体の巨躯の鬼。

 

ハスミ達の様子を察して家屋から出てくる宇髄達。

 

 

「随分と派手な進軍だな?」

「よもや、よもやだ、話に聞いていたがこれ程までとは…」

「炎柱、集落の人達は?」

「君達が偵察を行っている間に隠経由で避難させた。」

「なら、問題ないわね。」

 

 

ハスミは偵察に向かう前に集落の住人を避難させるように手筈を行っていた。

 

結果として襲撃を受ける事になったので骨折り損のくたびれ儲け的な行為にはならなかった。

 

 

「随分と手際がいいじゃねぇか?」

「どんな戦でも被害に遭うのはいつも一般人よ、私は出来得る限りの事をしただけ。」

「…そうかよ。」

「戦う相手は一般人の命を考慮しない、目処前の障害は全て消す事しか指示されていない。」

 

 

ハスミは実弥に『心を持たない戦う機械とはそういう物よ。』と付け加えた。

 

 

「…(アレは何時もの怒り方じゃねえな。」

 

 

これは道具にされる奴らへの慈悲って奴か?

 

いや、道具にする奴らへの怒りの方が合っているな。

 

アイツなりの感情ってやつか…

 

 

「奥の巨躯の鬼は音柱達が仕留めて、集落に向かってくる対人兵器は私と彼で片付けるわ。」

「たった二人でか?」

「戦い慣れしている私達の方が分がある。」

「しかし…」

「…なら、そっちは任せるぞ?」

「宇髄!」

「煉獄、適材適所って言うだろ?」

「宇髄の言う通りだ…俺達は巨躯の鬼を仕留める。」

「何故、そう思える?」

「テメェもアレを見れば解る。」

 

 

煉獄はハスミがたった二人で大群を抑えると告げた事に対して反論するが…

 

宇髄、不死川、伊黒の三人は何かを悟った様な判断で告げた。

 

 

「炭治郎君達も巨躯の鬼の方へ行って頂戴。」

「ハスミさん…」

「大丈夫、私と彼は慣れているから。」

「足が鳴るぜ!」

「それを言うなら腕だよ!?腕!」

「緊張感がないよな、お前ら。」

 

 

玄弥とかまぼこ隊のやり取りを聞いた後、ハスミは彼の元へ移動した。

 

 

「作戦は決まったか?」

「はい、私達で対人兵器群の相手と一直線に巨躯の鬼への道を切り開きます。」

「成程、敵の質より量を取ったか。」

「お気に召しませんか?」

「いや、大分訛っていた所だ……圧倒的な数を潰すのも悪くない。」

「…(まあ、鬼狩りの刀じゃ対人兵器の装甲を斬れない可能性を考慮しただけなのですけどね。」

 

 

ジ・エーデルの対人兵器。

 

奴がジエー・ベイベルとしてカイメラ隊に製造提供した兵器群の事だ。

 

サイズダウンさせたモノでコルニクス、レオー、アングイス、カペルの四種類。

 

レムレースを出してない所を見ると切り札扱いか制御出来ていないと見ている。

 

遊郭事件で爆撃を行ったのは、恐らくアングイスとコルニクスの二体だろう。

 

これだけの戦力を出せば勝てるとでも思っているのか?

 

本来の機体に乗れれば済む事だが、この世界の制約で出現させられない。

 

寧ろ、出した場合の周囲への被害が不味い。

 

今はEF方式で戦うしかないだろう。

 

その為の武装バイクを数台持って来たのだから。

 

 

「疾駆、紅蓮、轟天、神風、薙蛇は集落の守りを!アリの子一匹逃すな!!」

 

 

私は待機状態の武装バイク達に指示を出した。

 

ちなみに神風と薙蛇は風柱達に貸した武装バイクの名である。

 

 

「集落の防衛を第一として状況に応じて各々の行動を任せる!」

 

 

機械仕掛けの単車達は創造主の指示に従う。

 

単車から人の形に変化し各々の得物を抜刀した。

 

それはEFと呼ばれる世界で再生されたPT達の様な風貌だった。

 

 

「は?」

「よもや?」

「信じられん。」

「おい!」

「えーーーーー!!?」

「はいーーーー!!?」

「何だと!?」

「む?」

「考えが追い付かないと言うかなんと言うか。」

 

 

そう言うモノに耐性がない一行の発言は以上である。

 

 

「説明は後、今は大群を押さえる。」

 

 

ハスミは驚愕顔芸をしている一行を放置し続けて武装バイク達に攻撃の指示を与えた。

 

 

「各機、前方の大群に一斉掃射!前衛が崩れた後は巨躯の鬼への道を切り開け!!」

 

 

武装バイク達は各々の重火器を駆使し前衛を総崩れにさせ、一直線に集中攻撃を加える。

 

巨躯の鬼への道を文字通りに切り開いた。

 

 

「今よ!」

「行け!」

 

 

ハスミとアウストラリスが合図の様に叫んだ。

 

同時に突き進む鬼狩り達。

 

相手はコモドオオトカゲとコブラを合わせた合成鬼。

 

どちらも毒性の強い生物の掛け合わせであり油断ならない相手だ。

 

 

「アウストラリス、私達も続きましょう。」

「承知。」

 

 

アウストラリスは指を鳴らした後に拳を握り締め、ハスミは琴箱から手榴弾一式とガトリングガンを取り出す。

 

互いに合図した後、右陣と左陣の兵器群に突撃。

 

武装バイク達は指示通りに集落の守りに呈し、倒し損ねた敵機を倒していった。

 

 

「ド派手に馬鹿デケェ蜥蜴だな!」

「うむ、強敵である事は確かだ!」

「尻尾は異国の蛇か、虫酸が走る。」

「ケッ、ぶった斬っちまえ雑魚と同じだ!!」

「動きが速い!」

「もうイヤーーーーー!!」

「フハハハ!ぶった切って黒焼きにしてやるぜ!!」

「イモリと間違えてるだろ!?」

「うー!」

 

 

巨躯の鬼に群がる攻撃を仕掛ける一行に遠方から射撃攻撃を仕掛ける玄弥と彼を援護する禰豆子。

 

止まない攻撃は巨躯の鬼を疲弊させていく筈だったが…

 

巨躯の鬼は動きが鈍くなる所か余計に攻撃を強めていた。

 

ここで酷い反撃を受ける事となる。

 

尻尾の毒蛇が毒液と共に無数の毒針を発射。

 

その一端が玄弥と禰豆子に向かった。

 

 

 

「駄目だ!」

「玄弥!?」

 

 

玄弥は咄嗟に禰豆子を庇う為にその背に毒針を受ける事となった。

 

実弥の叫びも虚しく響いた。

 

「大丈夫か?」

「う。」

「…良かった。」

「禰豆子、玄弥に解毒を!」

「むー!」

 

 

禰豆子による血鬼術の解毒を行うが、毒針は消えず毒素は玄弥に広がり続けていた。

 

 

「解毒が出来ていない!?」

 

 

炭治郎はその光景に驚愕し判断が鈍ったのと同時に毒針を受ける事となった。

 

だが、ハスミの血鬼術による守りでそれは防がれた。

 

 

「竈門少年!」

「俺は大丈夫です、それよりも玄弥が!」

「竈門妹、君は不死川弟を連れて集落に行くんだ。」

「うー。」

 

 

煉獄の指示で禰豆子は玄弥を担いで集落へと移動を開始した。

 

 

「不死川、伊黒、お前らは下がってろ!」

「んだと!」

「俺達はまだ戦える。」

「馬鹿か!奴の毒を受けたら解毒方法がねぇんだよ!」

「ちっ!」

「俺らはクジョウの血鬼術で解毒出来ているが、お前らは違うだろ!」

「だが…」

「不死川さん!伊黒さん!逃げて下さい!!」

 

 

動きの鈍りは死地への道。

 

実弥らは蜥蜴の牙と毒蛇の牙を受ける事となった。

 

ミシリと肉が裂け、骨が砕ける音が響いた。

 

 

「不死川!伊黒!?」

「くそっ。」

「しくじっ…た。」

 

 

咬まれた同時に体内に侵入する毒素。

 

徐々に変質する皮膚。

 

肉体が溶けて腐っていく臭い。

 

後数分の命かと思いきや…

 

 

「無事か?」

「いえ、間に合いはしましたが…」

 

 

跳び蹴りで圧倒され、巨刀で頚斬られる巨躯の鬼。

 

アウストラリスとハスミが駆けつけたのだ。

 

 

「クジョウ!」

「奴らは蹴散らしたわ、それよりも…」

 

 

頚を切った事で消し炭となっていく巨躯の鬼。

 

解放された不死川達だったが毒の影響は消えていなかった。

 

 

「畜生…!」

「うっ!」

 

 

毒の影響で血反吐を吐き、肉体が腐りつつあった。

 

 

「緊急措置よ、血鬼術を使うわよ?」

「いらねぇ…」

「お館様の命令でも?」

「ちっ。」

「不死川、ここは…」

「…先に弟を頼む。」

 

 

ハスミ達はここへ来る道中で合流した玄弥達を連れて巨躯の鬼を仕留めた。

 

不死川は先に毒を受けた玄弥の治療を優先してくれと告げた。

 

ハスミは『素直じゃないわね。』とボソリと呟いた後に玄弥から治療を始めた。

 

夜明けを迎えた戦場。

 

周囲には鉄屑と化した対人兵器の残骸と消え逝く巨躯の鬼の亡骸が転がっていた。

 

 

>>>>>>

 

 

その後、アウストラリスの件は鬼殺隊本部に持ち込まれ色々と騒動が起こったが…

 

それを語るのは次回に続くのだった。

 

 

=続=




一週間後の夜明けを迎える少し前。

鋼屋敷では衣服を整えたアウストラリスが室内を後にし屋敷を去ろうとしていた。

ハスミは少しの音でそれに気づき、乱れた身なりを整えてから準備をする彼の近くで控えていた。


「…行かれるのですね?」
「ジ・エーデルの行方は俺の方でも探ろう、お前はお前が交わした約束を果たせ。」
「ご命令通りに。」


ハスミは静かに屋敷を後にするアウストラリスの背後に控えた状態で答えた。


「寛大なご配慮ありがとうございます…陛下。」
「ハスミ、前に答えた筈だ……俺はあの玉座に戻った訳ではない。」
「…心得ています。」
「ならばいい、今はお前は俺の片腕……それを忘れるな?」
「了解しました。」


淡々と語られる言葉。

理由を知る者はこの言葉の意味を理解しただろう。

陛下と言う言葉の意味を。


「アウストラリス、ご武運を。」
「ハスミ、お前も武運がある事を。」
「はい。」


ハスミは鋼屋敷周辺に散らばっている隠達が居眠りをしているのを確認した後。

アウストラリスに監視が手薄な位置を伝えて本部から離脱させた。


「片腕か…」


判っている。

私はあの人の背を守る事を選んだ。

それは共に戦う同志である事を自覚させる意味で。

それでも互いを繋ぎ合う事を止める事は出来ない。

愛している事を真の敵に悟られない為にも今は同志であればいい。

=終=

明けましておめでとうございます。

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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