そして新たな戦いの兆し。
争いは終わる事はない。
これはねじ曲がった事で起こった戦乱。
前回の紅霧村での一件。
紅霧村の周辺で死者を模した人形が徘徊すると言う噂が本部に持ち込まれる。
鬼殺隊の柱、風柱・不死川実弥と蛇柱・伊黒小芭内、庚の隊士・不死川玄弥の三名による偵察の任が与えられた。
紅霧村に先行した風柱と蛇柱の両名はジ・エーデルの罠によって囚われ行方不明。
その三日後に後続で音柱・宇髄天元、炎柱・煉獄杏寿郎、鋼柱・クジョウハスミ、庚の隊士・竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助の六名を派遣。
紅霧村に近い集落を拠点に音柱、鋼柱、竈門隊士、不死川隊士の四名による偵察を開始。
調査の結果…
紅霧村の全住民はジ・エーデルの生み出した巨躯の鬼によって全滅。
ジ・エーデルの実験施設として改装され、巨躯の鬼の製造場と化していた。
風柱、蛇柱の両名はジ・エーデルによって洗脳され音柱らと交戦。
鋼柱はジ・エーデルの後を追い、追い詰めるも血鬼術を暴走させる投与剤を打たれて拉致される。
その後、鋼柱の仲間によって窮地を脱する。
ジ・エーデルを再度追い詰めるも逃走され、紅霧村は奴の手によって崩落。
一行は拠点とした集落への脱出を余儀なくされた。
ジ・エーデルの置き土産である巨躯の鬼と対人兵器群の強襲を受けるが、一行で壊滅に追い込む。
しかし、巨躯の鬼の腐食毒によって不死川隊士、風柱、蛇柱が重傷を負う。
鋼柱の血鬼術による緊急措置により、一命を取り留める。
その後、ジ・エーデルの行方は不明のまま本部の指示により帰還の形となった。
以上が紅霧村で起こった出来事の経緯である。
******
紅霧村での出来事から五日後。
ここ鬼殺隊本部では事後報告を行う為に臨時の柱合会議が行われていた。
因みに風柱、蛇柱の二名は蝶屋敷で現在も療養中に付き不在である。
先程の経過報告書を読み終えたお館様よりお声を掛けられた。
「ご苦労だったね、天元、杏寿郎、ハスミ、炭治郎。」
名を呼ばれた一行は一礼を行う。
続けてハスミは発言の許しを得た後に謝罪の言葉を告げた。
「お館様、此度の件に関して申し訳ありません…こちらの不手際で柱負傷の失態を犯してしまいました。」
「ハスミ、君が危険視しているジ・エーデルの拠点を失わせた事は有利に働くはずだよ…負傷した実弥達の解毒や傷も血鬼術で早期治療が行えている。」
「…」
「私からもありがとう、彼らの命を救ってくれて。」
「いえ、これ以上…柱も隊士も失わせる訳にもいけませんので。」
ジ・エーデルの本格的な介入によって死に陥る隊士も少なからず出てくるだろう。
一番の問題は水棲型の巨躯の鬼と対人兵器群の導入。
無惨の鬼討伐以上の苦戦を強いられる。
「ハスミから聞いていた以上にジ・エーデルとは危険な人物なのだね。」
人を操る術、鬼を改造し巨躯の鬼と化す技術、近代兵器に関する科学力。
ハスミが常に危険視し警告をするのも無理はない。
対人兵器群の残骸を見させて貰ったけど、人の世に現れれば鬼以上の最厄と化すだろう。
「無惨の介入がなかった事だけは救いと言うべきか。」
「おっしゃる通りです。」
「ハスミ、君の仲間と言う…そちらの御仁に付いて紹介して貰ってもいいかな?」
「御意。」
ハスミはお館様と会議参加者達にアウストラリスの紹介を行った。
「彼の名はアウストラリス、私が本来所属する組織の当主です。」
筋骨隆々しい異国人。
自身同様に組織を束ねる物。
そして当主でありながら自ら出陣し前線で戦う変わり者。
「当主自ら戦場に出るとは変わった人なのだね…」
「部下ばかりに任せて置けんからな、こちらの方が性に合っている。」
「貴方のその前向きな姿勢は…とても羨ましく思う。」
「ハスミから事情は伺っている、この組織は人の世に隠れ…鬼舞辻無惨と呼ばれる鬼の始祖と奴が生み出した鬼と戦っていると?」
「アウストラリス…」
「本来であればハスミは俺の同志だ…早々に除隊を願いたいが、ハスミに掛けられた呪いを解く為にもそちらに属している方がいいだろう。」
「その件に関してはハスミから説明を受けている、そちらの組織に多大な迷惑を被る事も…」
「ジ・エーデルの件は標的の一つに過ぎん、俺達が追うのはその者よりも強大な敵。」
「強大な敵?」
「異常な異能の力を駆使し人類をも操る存在……俺達が追う者はそう言う存在だ。」
アウストラリスの語っている事は間違いではない。
傀儡の皇帝としてサイデリアルを纏め上げ、いつの日か『御使い』を打倒する為の組織である事。
私は彼の意思に賛同し付き従う事を選んだ。
「アウストラリス、君が良ければ鬼殺隊に協力して貰えないだろうか?」
「断る。」
「…(デスヨネ。」
お館様の誘いをあっさりと跳ね除けるアウストラリス。
彼は誰かの下に就く性分ではない。
それにお館様の人を掌握する声に彼は囚われる事はない。
どんな相手だろうと抗う力を持ち得ているからこそ出来得る事。
そして許容範囲を超えた勧誘に対して口を濁す様にお館様へ答えた。
「此方からは優秀な同志を協力者として其方に属させている……其方としても十分な利益に繋がっていると思うが?」
アウストラリスは『俺は自ら前線に出る事もあるが、部下を蔑ろにする事はない。』と付け加えた。
「……失礼した、貴方にも守るべき者達がいる事を失念していた。」
「…」
「ハスミの事は引き続き此方で預からせて貰っても構わないだろうか?」
「それはハスミ自身が交わした契約だ、俺が如何こうする事でもない。」
「アウストラリス、私は…」
「ハスミ、お前は交わした契約を果たせ。」
「っ!」
「…二言はないぞ?」
「承知しました。」
アウストラリスとハスミの間に交わされた約束。
そして引き続き彼女が鬼殺隊での活動を許可する意味でもあった。
「産屋敷殿、ハスミを引き続き其方に預ける。」
「責任を持って預からせて貰います。」
アウストラリスと産屋敷耀哉と交わされた契約。
それは新たな戦乱を呼び込む兆しでもあった。
>>>>>>
更にその後。
アウストラリスはハスミとの情報交換を含めて一週間程の滞在の許可を貰い、鋼屋敷での滞在を始めた。
彼と腕試しを求めて柱が数名程対戦をしたものの、参加者全員が見事に完敗。
そもそも体術で人外レベルの領域越え戦闘能力を秘めた彼に挑むのは自殺行為に等しい。
これにより筋肉に自信を持っていた宇髄が一本取られて落ち込んだり、鬼殺隊最強と謳われた悲鳴嶼ですら同じく目隠しした状態で戦い一本取られている。
更に負傷から回復した不死川が噛み付く位に何度も組み手をしたが、此方も一本も取れずに敗北していた。
「くそっ!」
「不死川と言ったか、今のままでは何度やっても同じだぞ?」
「どんな反射神経してんだよ!」
「宇髄と悲鳴嶼は己の殺気を押し殺す事が出来ているが、煉獄と貴様に関してはまだまだだ。」
「面目ない。」
「うぐっ。」
改善出来ていない点をストレートに言われて図星となる煉獄と不死川。
ハスミは二人の状態に対して助言を入れた。
「アウストラリス、既に二人はその事を自覚しています……ただ適した修行が足りないだけです。」
「成程な…それが先程の組み手の結果か?」
「欠点は誰にでもあります。」
「半鬼女、テメェは一言多いんだよ!!」
「文句があるなら彼から一本取ってから言いなさいよ?」
「んだと!?」
「そう言えば、クジョウ…君はアウストラリス殿と組み手をした事は?」
「あるにはあるけど…」
「「長引き過ぎて引き分けになっている。(わ)」」
「うぉい!?」
「つまり、何度やっても決着が付かないと?」
「そう言う事ね。」
「よもや。」
と、言うやり取りが在ったり…
ハスミが進めていた強化訓練の更に上を行く修行を行ったり等のやらかしを起こした。
更に胡蝶と甘露寺から恋バナ目線での押し問答がハスミに対して展開される事件も発生。
珍しい事はアウストラリスが煉獄槇寿郎と酒を酌み交わす姿が炎柱邸で見られたとの事だ。
目まぐるしく一週間は過ぎていき、アウストラリスは宣言通りに鋼屋敷を去って行った。
彼曰く、潜伏しているジ・エーデルの動向を探る為に単独行動へと移るとの事だった。
こうして紅霧村事件は災厄の一端と再会を齎して終結したのだった。
=続=
刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?
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木乃伊事件(不死川、伊黒)
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集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
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船舶沈没事件(宇随、煉獄)
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不在担当地区防衛(時透、甘露寺)