鋼の魂と共に   作:宵月颯

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謎時空。

それは突発的な行為を行う時に使用される世界。

それは時に楽観的に時に窮地に陥る世界。

要はご都合主義である。



鬼殺隊の日常編
笑ってはいけない爆笑耐久訓練


ある日の事。

 

鬼殺隊に置ける正月の行事を終わらせた翌日の事である。

 

お館様より、とある訓練が柱一同に架せられた。

 

 

「そう言う訳で君達には笑いに対する耐久訓練を行って貰うよ?」

 

 

柱合会議に呼ばれた柱一同は理解不能の顔芸込みで声を一斉に上げた。

 

 

 

「「「「「「はい?」」」」」」

 

 

 

新年早々から素っ頓狂な声を上げるのも無理はない。

 

お館様が何時もの儚げな表情ではなく何かを企んでいる表情だったからだ。

 

柱の代表として悲鳴嶼がお館様に質問した。

 

 

「お館様、何故その様な催物を?」

「そうだね、私の…思いつきかな?」

 

 

 

「「「「「…(思いつき!?」」」」」

 

 

 

「これは隊士達への身稽古も兼ねているんだ。」

「身稽古を?」

「うん、柱の修行がどんなものなのかを見て貰うには丁度良い機会だと思わないかい?」

「は、はぁ?」

「そう言う訳だからよろしくね。」

 

 

こうしてお館様の思い付き催物が開催される事となった。

 

 

******

 

 

お館様からの催物開催宣言から三日後。

 

ここ、産屋敷一族が管理する無人島に柱達が集結させられていた。

 

 

「お館様は何を考えて柱の修行を…」

「身稽古と言ってはいたが、どうやって隊士達に見せるのだ?」

「それに関しては大丈夫だと思うけど?」

「どういう事だ?」

「お館様から『遠隔でその場の状況を撮影出来るカメラは造れないか?』って申告されたの。」

「んで、造ったと?」

「そう言う事ね、凝りに凝って画質や色彩も鮮明に出る様にしたから…かなり高価な出来になったわ。」

「何でもアリだな、お前。」

 

 

冨岡の発言から始まり、煉獄の疑問、ハスミからの説明で宇髄から納得の声が続いた。

 

 

「ただ、ある問題が浮上した事は確かよ。」

「問題?」

「この修行…恐らくは私がお館様に進呈した強化訓練案の一つで訓練島の修行よ。」

「訓練島?」

「そうよ、日輪刀がない状態で何処まで活動出来るかを想定した修行。」

「そりゃ随分と過酷じゃねえか。」

「なら言うけど、もしも日輪刀が何かしらの条件で奪われたり紛失したら…貴方達は戦えるの?」

 

 

悲鳴嶼と伊黒の疑問、不死川の訓練に関する評価に対してハスミは辛口発言で答えた。

 

その発言に胡蝶は少し考えてから答えた。

 

 

「無理でしょうね……刀があってこその鬼狩り、柱である私達でも撤退を第一とした行動が求められます。」

「…そう言った状況を想定した訓練がこの訓練島なのよ。」

「成程、君らしい考えの訓練案だな。」

「流石の私も無人島を用意出来る程の財力はないから、案件だけお館様に進呈して置いたのだけど…まさか、実行に移すとは。」

 

 

心の中で『お館様、どんだけ金持ちやねん。』と思ったハスミだった。

 

 

『あー、あー、聞こえているかな?』

「お館様?」

「ど、何処から!?」

『吃驚しただろうね、ハスミに頼んでカメラに電話機能も付けて貰ったんだ。』

 

 

島の至る所からお館様の声が響いた。

 

時透は?マークを浮かべ、甘露寺は吃驚して慌てている。

 

ハスミは装置の設計者なので驚かず、お館様に言葉を返していた。

 

 

「お館様、無事に聞こえて何よりです。」

『うん、それじゃあ耐久訓練を始めようか。』

「お館様、難易度はどの程度に?」

『そうだね、柱なら完全に攻略しなければならないから…地獄で行こうか?』

「…ご自由に。」

『では、開始するよ。』

 

 

島にアラートが鳴り響くのと同時に待機していた鎹鴉達から小包が届く。

 

各自、小包を開封し中身を確認。

 

判子を押す枠が数か所に配置された島の見取り図と小刀が入っていた。

 

 

「これだけで島を攻略するの?」

「クジョウ、この修行はどうすれば合格だ?」

「地図通りに移動して見取り図に掛かれた枠全てに判子を押す…それがこの修行の合格条件よ。」

 

 

現代風に言えばサバイバルゲームを兼ねたスタンプラリー方式である。

 

 

「ハスミさん、そう言えばお館様に難易度って言ってましたね?」

「あれは、簡単な順に梅、竹、松と最高難易度の地獄の四つに分けているの。」

「その難易度で一般隊士が合格出来るのは?」

「良くて竹まで、松からは一気に難易度を上げているから。」

 

 

松から一気に難易度が上がり、地獄は言葉通りに地獄の訓練が待ち構えている。

 

一般隊士が合格出来る範囲が竹なのは、そこまでが実力を引き出せる限度だからだ。

 

松を合格したければ、自力で全集中の呼吸の常中をこなせなければならない。

 

これは無惨討伐の為の地獄の訓練なのだ。

 

 

「常中が出来ている炭治郎君達でも松はギリギリって所かしら?」

「どんだけ難易度上げているんだよ。」

「死に物狂いでやらなきゃ死ぬのはこっちよ……それ位、耐えて貰わなきゃね。」

「そいつは同感だぜ。」

「で、全部の判子を押すまでの道程に不特定多数の罠が大量に仕掛けてある…文字通り五感を駆使しないと合格出来ないわ。」

「あらあら、地獄と言うに相応しい修行なのですね。」

「ちなみにアウストラリスが喜んで何百回もやっている合格不可能難易度の閻魔ってのもあるわよ?」

 

 

「「「「「…」」」」」

 

 

「用意するのは良いけど、あの人…仕掛けた罠全部破壊しちゃうから準備するのが大変なのよね。」

「…お前ん所の大将は脳筋かよ。」

「前向きに挑戦精神が強いって事で。」

 

 

そんなやり取りをした後、一行は出発地点から最初の判子がある場所へと移動を開始した。

 

一行の装備は各自の日輪刀と羽織がない状態で支給された小刀と島の地図だけである。

 

因みに伊黒の鏑丸は本部でお留守番。

 

だが、一つ目の判子がある場所へ辿り着く頃には柱が全員精神的がへばっていた。

 

 

「どう云う罠だよありゃ…!」

「尻が痛い。」

「つか、脳天に金タライが派手に痛てぇだろ!」

「連続の銅鑼鳴らしで耳が痛いです。」

 

 

爆笑耐久訓練なので罠が全て地味に響くものが設置されている。

 

本来なら死ぬ一歩手前の罠が仕掛けてあるのだが、爆笑耐久訓練なのでこの配置なのだ。

 

因みに罠に嵌った柱の受けた罠は以下の通り。

 

不死川は顔面に生クリームの皿が直撃。

 

伊黒はゴム製のバットで尻殴打。

 

宇髄は脳天に金タライ落下。

 

胡蝶は偽の罠を避けた先に連続銅鑼鳴らしを受けていた。

 

 

「お前らはまだマシだ。」

「うむ、これは地味に効くぞ!」

「うぇえ、これベトベトするわ…」

「ああ…涙が止まらゲホッ!?」

「…取れない。」

「お館様、エグイ罠を…ううっ。」

 

 

冨岡は網に引っかかった後に墨汁を掛けられる罠。

 

煉獄は焼き芋の匂いがする落とし穴に嵌った。

 

甘露寺はヌタウナギが満載された沼に落下。

 

悲鳴嶼は顔面に唐辛子の粉が入った紙袋が激突。

 

時透は背中に無数の玉蒟蒻が入り込み。

 

ハスミは藤の花の香水液の噴射を受けた。

 

 

「…(初回からこれって、強烈な罠を考えましたね。」

 

 

先程の香水液で少々吐血気味のハスミは罠の立案者達を密かに呪った。

 

 

「いくらお館様でも、んなエグイ罠を思いつくもんかよ?」

「不死川の言う通り何かの悪意を感じる。」

「ぶっちゃけ派手に言うとそうだよな?」

「ハスミさん、大丈夫ですか?」

「何とか…」

「血吐いているし無理しちゃだめよ。」

「少し休めば、戻るから大丈夫よ。」

 

 

第一の判子を各自押し終えた一行。

 

先程の罠から状態が回復するまで休憩を取っていた。

 

 

「目が見えぬとは言え、これは痛い。」

「僕も背中が気持ち悪い。」

「墨が取れない。」

 

 

これは笑い所ではない。

 

寧ろ怒りのボルテージを上げている状態である。

 

 

「…何か可笑しくない?」

「可笑しいとは?」

「さっきの罠道を考えると笑いと言うよりも怒りしか彷彿しないのよ。」

「確かにそうですね。」

「多分、これってやる側より見る側の方が笑うと思うのだけど…」

 

 

「「「「「…」」」」」

 

 

「お館様、聞こえていますか?」

『ハスミかな、聞こえているよ?』

「まさかとは思いますが、これ…耐久訓練をしているのは柱では無いのでは?」

『君の推測通り、耐久訓練を受けているのは一般隊士達だよ?』

 

 

「「「「「「…(やっぱり。」」」」」」

 

 

「てぇ事はつまり?」

「お館様と一緒に観戦している一般隊士達が耐久訓練中って事。」

『そう言う事、初回から失敗者が多くてね…数が多いから各自の失敗回数を数えている所だよ。』

「なら、俺らは?」

「俗に言う見世物状態よ。」

「お館様…」

「これはこれで地味に響きますね。」

「これが後、何回あるの?」

「判子の数は全部で八個、残り七個ね。」

 

 

「「「「「…」」」」」

 

 

『そう言う事だから引き続き頑張ってね。』

 

 

そこで途切れる島内放送。

 

一行はどんよりな表情で各自の想いを答えた。

 

 

「これが後七回。」

「地味に効くぜ、コレ。」

「お館様、何考えているんだよ!!」

「うむ、俺もこれ以上続くと耐えられそうにない!」

「煉獄、ハッキリ言わないでくれ。」

「私も冷静で居られなくなりそうです。」

「しのぶちゃん、気持ちは解らなくないけど抑えようね。」

「…」

「ああ、柱の団結力が欠如していく。」

「岩柱、それは言ってはいけないお約束です。」

 

 

その後、柱による判子巡りが再開。

 

地味に効く罠の数々を受けて最終地点の判子を押す頃には柱達の精神は限界値を超えており、手が付けられない状況に陥っていた。

 

これは鬼なら数百体斬れると言える程の気力が高まり切っていた。

 

後に島から帰還後、鬼が出現した報告を受けた柱達は現場に急行し余りの殺気に任せて鬼の頸を刈り取ったとの事。

 

 

ある意味で修行は成功したと言っても良いが、精神面によろしくない効果もあったので後日、この案件は却下された。

 

同時に罠発案者が一般隊士達に掛けた募集だったとの事で立案者達は後に展開される柱による合同訓練で地獄を見るのだった。

 

 

=続=

 

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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