鋼の魂と共に   作:宵月颯

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流れは変わった。

物事が上手く行かず。

期待から失望へと変化した。

用済みの秒読みは始まったのだ。


刀鍛冶の里編
失望と転落


遊郭事件後の翌日。

 

ここ無限城に上弦の鬼達が集結していた。

 

それは例外の覗いて実に百三十年ぶりの招集である。

 

 

 

べベン!

 

 

 

複雑に展開された無限城の内部。

 

琵琶を掻き鳴らす琵琶鬼こと鳴女。

 

無惨の命により、琵琶を鳴らして上弦の鬼達を集めていた。

 

 

 

「ヒョ。」

「…」

 

 

猗窩座は茶室の様な造りの場所に置かれた壺を見る。

 

その壺から出てきたのは目元が口で口が目の異形の鬼。

 

 

「これは、これは、猗窩座様。」

 

 

彼の名は玉壺、上弦の伍の鬼である。

 

 

「いやはや、お元気そうでなにより…九十年振りでございましょうか?」

「…」

「おそろしい、おそろしい。」

 

 

同じ様に階段の間で手すりに隠れて答える老骨の鬼。

 

 

「暫く会わぬ内に玉壺は数も数えられなくなっておる。」

 

 

老骨の鬼の名は半天狗、上弦の肆。

 

彼は玉壺の間違えた年数を訂正した上で告げた。

 

 

「呼ばれたのは実に百三十年振りじゃ、割り切れぬ数字、不吉な丁、奇数。」

 

 

半天狗は『おそろしや、おそろしや。』と怯えて手すりに隠れ続けた。

 

 

「…(妓太郎と堕姫の二人は来ていないのか?」

 

 

同じ様に騒がしい二体で一体の上弦の陸が姿を見せていない事に猗窩座は心の中で頸を傾げた。

 

だが、一番虫唾が走る相手から話しかける事が鬱陶しいと思っていた。

 

 

「やあ、やあ、猗窩座君、ひさしぶりだねぇ?」

「…」

「え~無視かい?つれないなぁ…」

「琵琶女、無惨様はいらっしゃらないのか?」

「まだ、御見えになられていません。」

 

 

猗窩座は上弦の弐の童磨を無視し鳴女に状況を聞いたが、呼び出しをした本人が不在であると彼女は告げた。

 

逆に上弦の壱の黒死牟は既に謁見の間の様な造りの座敷に鎮座している。

 

彼女の話では一番最初に呼び寄せたらしい。

 

 

「黒死牟殿、お久しぶり。」

「…」

「えー猗窩座君と同じ?」

 

 

気を取り直して玉壺に話しかける童磨。

 

壺の美しさを称賛されるが、扱い方が余りにも人にとっては非道なので良い評価ではないが味わいがあると玉壺は告げた。

 

そんな雑談を行っていると黒死牟から一声かけられる。

 

 

「無惨様のお見えだ。」

 

 

べべん!!

 

 

琵琶の音と同時に天井部分に出来た実験室様な造りの場所で液剤をピュレットで試験管に入れている無惨の姿があった。

 

上弦の鬼達は姿を認識するとその場で跪いた。

 

 

「妓太郎が死んだ。」

 

 

実験台のシャーレに薬剤が数滴落とされた。

 

 

「上弦の月か欠けた。」

 

 

百十三年近く変動しなかった上弦の月が欠けた事。

 

それは無惨の逆鱗に触れるには十分な事実だった。

 

その様子に童磨が自身の目玉をほじくるなどで謝罪の意思を見せたが、無惨は興味なく答えた。

 

 

「必要ない貴様の目玉など、妓太郎は負けると思っていた…案の定堕姫が足手まといだった。」

 

 

癪に障るが、あの成り損ないの女の言葉通りだ。

 

あ奴の卓越した状況判断と戦術構築、出来得るものは欲しいモノ。

 

 

「くだらぬ、人間の部分を多く残していた者から負けていく…だが、それもいい。」

 

 

無惨は上弦の鬼達に告げた。

 

 

「私はお前達に期待しない。」

 

 

現代で言えば、失望の意思でありリストラされる社会人に向ける言葉に聞こえる。

 

童磨はそれに対して返答するものの…

 

 

「また悲しい事をおっしゃいなさる、我々が貴方様の期待に応えなかった事があったでしょうか?」

「産屋敷一族を未だに葬っていない、成り損ないの女を捕らえていない。」

 

 

ビキリと無惨の顔が歪んだ。

 

 

「そして『青い彼岸花』を見つけていない、何故何百年も見つけられぬ?」

 

 

私は貴様らの存在理由が判らなくなった。

 

私は劣化を齎す変化が嫌いだ。

 

 

「ヒイィイイ。」

「返す言葉もない。」

「申し訳ございません。」

「俺も探知探索は不得意だからな…」

 

 

四人の上弦が言葉を返すと玉壺だけは情報を掴んだと叫ぶものの…

 

それが不確定な情報である事を無惨は見抜き、玉壺の頸を捻じり切った。

 

自らの手にその頸を乗せて全員に答えた。

 

 

「これからはもっと死に物狂いでやった方がいい。」

 

 

私は上弦だからと言う理由でお前達を甘やかしすぎたようだ。

 

そこで考えた。

 

 

「お前達にある変化を与えよう。」

 

 

無惨は告げた。

 

 

「私の命令で別行動をしていた鬼達を新たな上弦の鬼として選別した…お前達が今後失敗を犯せば即座に称号を剥奪する。」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

「そして選別した鬼達が新たな上弦の鬼と成り替わる……精々精進する事だな?」

 

 

上弦達は新たな上弦の鬼候補の宣言によって己の地位が揺らいだ。

 

 

「玉壺、情報が確定次第…半天狗と共にその場に向かえ。」

「は、はいいぃい!!」

「ヒィイイ、しょ…承知いたしました!!」

 

 

その言葉を最後に無惨は鳴女の琵琶で姿を消した。

 

 

「序列の乱れ…精進せねば。」

 

 

黒死牟は独り言を告げると一目散にその場から去った。

 

 

「…」

 

 

引き続き童磨に絡まれるのを嫌った猗窩座もまた早々に姿を消した。

 

 

「あ~あ、黒死牟殿も猗窩座君も帰っちゃったか……ねえ、玉壺。」

「な、何でしょうか?」

「僕も一緒に連れてってよ。」

「それは出来ませぬ、無惨様の指示は私と半天狗殿と…」

「俺暇だし、戦力位にはなるよ。」

「鳴女殿!ワタシを。」

 

 

無惨の命令に逆らえない玉壺は鳴女に自身の身体と一緒に半天狗を同じ場所に飛ばして欲しいと告げる。

 

 

 

べん!

 

 

 

琵琶の音と共に玉壺と半天狗も姿を消した。

 

 

「あれ…」

 

 

ぽつーんと一人だけ残された童磨。

 

 

「おーい琵琶の君、良かったらこの後俺と!」

「お断りします。」

 

 

残っていた鳴女を誘うも拒否の言葉で一括され、極楽教の自室へと戻された。

 

現・上弦の鬼はその場から全員去ったが、ある鬼達が残っていた。

 

 

 

「あれが今の上弦?」

「ふむ、随分と時代錯誤な者達が多いですな。」

「…」

「放って置けよ、あいつらの誰かが居なくなれば…晴れて俺たちが上弦の鬼だ。」

「それよりも、皆様ったら誰も上弦の陸の座を欲しがりませんね?」

 

 

一言ずつ言葉を残す鬼達。

 

順に中国の民族衣装を着た少年。

 

英国の紳士風の初老の男性。

 

絡繰り人形を持った性別不明の人形師。

 

胴着姿のガラの悪いおっさん。

 

羽毛の扇子で口元を隠しながら話すドレスの女性。

 

誰もが現・上弦の鬼に対して酷評を告げ、ドレスの女性は誰も空席の称号を欲しがらない事に対して周囲に話した。

 

 

 

「誰も一番最後の称号なんて欲しがらないよ。」

「それもそうですわね、失言でしたわ。」

「ホッホッ、マドモアゼルはユーモアがあっていいですな?」

「あら、ミスターったらお上手ですわね。」

「はぁ、どうでもいいっつうの。」

「…」

 

 

彼ら事、新たな上弦の鬼達は高みの見物をしながら己に与えられた命令の為に表の立ち位置へと戻って行った。

 

史実では現れなかった新たな上弦の鬼達。

 

それは継続の証であり兆しでもあった。

 

 

=続=

 

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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