鋼の魂と共に   作:宵月颯

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刀は酷使し続ければ折れる物。

だが、丹念に打った刀が破壊される。

それはある意味で新たな脅威。


日輪刀破損騒動

紅霧村事件から数週間後。

 

現在、鬼殺隊存続に関わる大事件が発生していた。

 

 

******

 

 

前回の柱合会議から数週間しか経過していない状況。

 

事は急を要するとの事で緊急招集を受け、柱が集結した。

 

 

 

「「お館様の御成です。」」

 

 

鬼殺隊本部のいつもの場所。

 

御子息達からの声に始まり、お館様の言葉が続いた。

 

 

 

「引き続き、多忙な所を呼び寄せてしまって済まないね。」

「お館様におかれましてもご壮健で何よりです、益々のご多幸をお祈り申し上げます。」

「ありがとう、ハスミ。」

 

 

お馴染み、お館様への長寿を願う言葉の後に会議の本題に入った。

 

 

「鎹鴉から聞いてはいると思うが、新たに鉄の装甲で覆われた鉄の鬼が出現した。」

「鉄の鬼ですか?」

「うん、討伐先で遭遇したハスミと炭治郎から説明して貰えるかな?」

 

 

「「御意。」」

 

 

ハスミは鰐と亀の巨躯の鬼との戦闘中に現れた鉄の鬼こと『鉄鬼』の奇襲を受けたと答えた。

 

彼女は巨躯の鬼と対峙していたので炭治郎が交戦したものの…

 

鉄鬼の頸は斬れず、皮膚から跳ね返って刀が折れてしまったとの事だ。

 

 

「この有様です。」

 

 

炭治郎は折れた自身の刀をお館様と柱に見せた。

 

刀は刃毀れし真っ二つに刃先が折れてしまっている。

 

その破損した刀に対して宇髄と煉獄が感想を告げた。

 

 

「こりゃまた…派手に折れたな。」

「うむ…見事な折れ具合だ。」

「鋼鎧塚さんに何て言えば…」

「炭治郎君、今回…刀が折れたのは貴方のせいじゃないわよ?」

「ハスミさん。」

「ジ・エーデルがあの金属を生成したみたいだから。」

「あの金属って?」

 

 

炭治郎の言葉にハスミは静かに告げた。

 

 

「超弾性金属…私が知り得る限りで対処が厄介な金属よ。」

 

 

超弾性金属とはイベント戦闘よる烈風正拳突き・改でお馴染みのアレである。

 

 

「超弾性金属って言うのは、打撃、斬撃、銃撃、爆撃が一切通じない金属の事…文字通り、攻撃が跳ね返る事から命名されたそうよ。」

「そんな金属があるのか?」

「複雑な工程が必要な金属で自然界にはない金属……まさか、私もアレを復活させるとは思わなかったわ。」

「あの糞ジジイ、余計なモン作りやがって!」

「風柱、それは同感よ。」

 

 

伊黒の質問と不死川の癇癪に応対するハスミ。

 

 

「クジョウ、これに対する対処法はないのか?」

「あるにはあるけど、現状では準備に手間が掛かる。」

「準備?」

「超弾性金属はその特性から急激な加熱と冷却で一気に脆くなるの。」

「急激な加熱と冷却…」

「私の場合はグレネードランチャーによる燃焼弾と冷却弾の交互撃ちで対処したけど…手持ちの弾薬が無くなるし冷や汗が出たわ。」

 

 

冨岡の質問に返答し感想を告げたハスミ。

 

本人も所持弾数がギリギリで冷や汗が出たと話した。

 

 

「今は鋼屋敷の工房で弾薬を生成しているけど、冷却弾に関しては薬剤の精製に時間が掛かるから大量生産が出来ないのが難点ね。」

「対処方法が判っても制限があるのか…」

「ややっこしいね。」

 

 

悲鳴嶼と時透からもしょうがない感じて答えられた。

 

 

「後は武装バイクの紅蓮と氷桔による連携攻撃位かしら。」

 

 

目立つので極力遠距離移動用に使用して貰っている武装バイク。

 

砲撃戦用の紅蓮と奇襲戦用の氷桔は文字通り火炎攻撃と凍結攻撃が行える。

 

だが、双方共に一台ずつしかないので極力被害が多い地域に回すしかないだろう。

 

 

「それでも対処方法があるだけ救いでしょうか。」

「うん、私達でも切れない相手じゃ助けられないもの。」

 

 

胡蝶と甘露寺も刀で対処できない脅威に対して不安の声を上げていた。

 

 

「お館様、鉄鬼の出現地域には引き続き私が赴きます…手薄になる地域への配置転換を願えますか?」

「判ったよ、ハスミ…配置転換の件は他の柱達と話し合いで決めて貰っていいかな?」

「御意。」

「それと炭治郎。」

「は、はい。」

「君は刀鍛冶の里へ向かって刀を修復して貰っておいで。」

「御意。」

 

 

新たなる脅威。

 

それは新たな戦いの兆しであり新たな脅威が迫る暗示の様でもあった。

 

 

>>>>>>

 

 

お館様の退出後。

 

他の柱と話し合いをし鎹鴉達から鉄鬼の出現率が多い地域をハスミが担当。

 

巨躯の鬼は他の柱が共同で対処する事になったが、何らかの理由で倒せない場合はハスミが対処する状態が続いていた。

 

一方で炭治郎はお館様からの宣言通り、刀鍛冶の里へ向かう準備を進める。

 

善逸と伊之助は割り振られた任務に当たっているので不在。

 

炭治郎は戦力が乏しい状況で隠の案内の元、一足先に刀鍛冶の里へと向かうのだった。

 

 

「炭治郎君。」

「ハスミさん…」

「刀鍛冶の里での件は先んじて炭治郎が対処して欲しい、私も出来得る限り其方へ向かう算段を考えるわ。」

「判りました。」

「玄弥君と甘露寺ちゃんが刀の修復で先に移動していると思うから多分大丈夫だと思うけど…」

「いえ、俺も出来得る限りの事をします。」

「無理をしないでね。」

「はい。」

 

 

炭治郎はハスミとの会話の後、鋼屋敷を後にし案内役の隠と共に移動を開始した。

 

 

「さてと、私もそろそろ出発しますかね。」

 

 

ハスミもまた、武装バイクを引き連れて出発の準備を進めた。

 

=続=

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)

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