鋼の魂と共に   作:宵月颯

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死者を冒涜する者。

燻ぶる炎は再びうねりを上げる。

その悪意を射手と共に撃ち貫け。


冒涜者を追え

煉獄槇寿郎が鬼殺隊より消息不明の扱いをされている頃。

 

当の本人はかつて現役時代に培ってきた情報収集能力を駆使し件と同様の事件を独自に追跡。

 

だが、墓荒らしの痕跡を辿る事しか出来ないので後手に回っていた。

 

 

******

 

 

消息不明扱いから三日後。

 

 

「…」

 

 

ザシュッ。

 

 

「!?」

 

 

痕跡を辿った先に現れた鬼の頸を斬る槇寿郎。

 

鬼自体が一般隊士でも相手に出来る技量しかなかったので呆気なく倒せた。

 

 

「…(瑠火。」

 

 

独自に追う事を決めた際に鬼殺隊の隊服を纏う訳にはいかず、現役時代に羽織っていた衣服で行動している。

 

羽織も目立たぬように黒地の羽織を羽織っていた。

 

死者を冒涜する者を討ち取る為の決意の証でもあった。

 

 

「こんな夜更けにたった一人で鬼狩りか?」

 

 

その時、もう一人の気配を感じ取った。

 

数週間前に酒を酌み交わした相手の声が聞こえた。

 

 

「その声は?」

「久しいな、煉獄槇寿郎。」

 

 

槇寿郎は気配の正体である存在の名を告げた。

 

 

「アウストラリス…トラか、ここで何をしている?」

「偶然ではなく、其方を探していた。」

「…そうか。」

 

 

姿を現し、淡々と事の次第を説明したアウストラリス。

 

その対応に槇寿郎もまた納得した。

 

 

「その様子では何かあったのか?」

「…」

「詮索はしない、一人で成し遂げる理由である事は理解した。」

「トラ…」

 

 

槇寿郎の追い詰めた様子に詮索はしないと告げたアウストラリス。

 

そしてある情報を告げた。

 

 

「もう一つ…関係性があるか不明だが、ある情報だけは伝えて置く。」

「?」

「数日前、磁器で造られた人形を操る鬼と遭遇した。」

「人形?」

「ああ…ハスミにその事を伝えた上で調査して貰った所、骨灰磁器と呼ばれる手法で造られた事が判明した。」

「骨灰だと?」

「本来は牛の骨を利用した白磁の磁器だそうだが、回収した欠片の一部を竈門炭治郎に嗅がせた所……抹香と人の骨の匂いがしたそうだ。」

 

 

アウストラリスと語った情報。

 

それは墓荒らしと関係性のある情報だった。

 

この時、槇寿郎は瑠火の遺骨だけではなく他の遺骨も盗まれた事を知らなかった。

 

その事を含めて追加情報として告げた。

 

 

「!?」

「ハスミも水柱と共に新手の上弦の鬼との戦いで負傷し今は動けん、故に産屋敷殿から其方の行方を含めて捜索依頼を俺が請け負った次第だ。」

「…俺を連れ戻すのか?」

「いや、その判断は此方に委ねられた……邪魔をする気はない。」

「すまん。」

「だが、無茶をせん様に監視を依頼されている。」

「お館様は俺に捜索を認めると?」

「その様だ。」

 

 

遠回し的な言い方ではあるが、追撃の任を委ねられた槇寿郎。

 

それはお館様の采配と止める事が出来ないのなら任として公式に指示を出す事にしたのだろう。

 

アウストラリスは槇寿郎にその磁器の人形を操る鬼の潜伏先を発見した事を話した。

 

「既に例の鬼の所在は掴んでいる。」

「…本当か?」

「どうやら、帝都の青山霊園近辺を中心に活動しているようだ。」

「公共墓地…二十数年前から移管された場所か。」

「ああ、ハスミの話では移管工事の最中で隠れ処を作るにはうってつけの場所だろうと推測している。」

「…」

「その敷地内に工房を構え、磁器の人形を作る為の材料に事欠かないと思ったのだろう。」

 

 

戦うべき鬼がそこにいる。

 

槇寿郎は恥を忍んでアウストラリスに話した。

 

 

「…アウストラリス、頼みがある。」

「何だ?」

「先程、お館様より俺を監視すると言ったな?」

「ああ。」

「ならば、俺と共について来てくれるか?」

「…元より、そのつもりだ。」

「済まない。」

「構わん、竈門炭治郎の願いと同様に俺も酒を酌み交わす相手を失う訳にもいかんのでな。」

「無事に戻ったら前と同じ酒を用意しよう。」

「楽しみにしている。」

 

 

二人はそのまま合流し青山霊園のある帝都へと向かった。

 

既に夜明けを迎えた事もあるので日のある内に移動し夜に備えた。

 

 

「…」

 

 

アウストラリスは連絡要員として追って来たハスミの鎹鴉である叙荷に目配りした。

 

叙荷はその相槌に気が付き、その場を飛び去って行った。

 

鬼殺隊本部に居るお館様に事の次第を告げる為に。

 

今、新たな歯車は動き出した。

 

 

>>>>>>

 

 

一方その頃。

 

炭治郎が刀鍛冶の里に滞在中の頃。

 

鬼殺隊本部では、動ける柱が集合し会議を行っていた。

 

ちなみに刀の修理で里に居る時透と甘露寺は省かれる。

 

 

「聞いての通り、新たな上弦の鬼が現れた。」

「冨岡さんとハスミさんを襲撃した鬼ですね?」

 

 

悲鳴嶼としのぶの会話から始まり、伊黒と不死川もそれに反応した。

 

 

「上弦の零、あのクジョウでさえ撤退させるのが精一杯とは。」

「半鬼女も手こずる相手か、遭遇してぇもんだぜ。」

 

 

二人の反応に対して煉獄と宇髄もそれに続いた。

 

 

「うむ、上弦の壱を超える鬼か…油断ならないだろう。」

「だな…それに冨岡とクジョウがその鬼に派手にやられたんだろ?」

「はい、冨岡さんとハスミさんは現在も療養中です。」

「ちょっと待てよ、冨岡の奴は呼吸の型に相手の攻撃に切り返す型があったろ?」

 

 

不死川の疑問に対し答える人物が現れた。

 

 

「相手はそれすらも無効にする剣技の持ち主だったのよ。」

 

 

会議に使用している広間の襖を開けて現れたハスミ。

 

本部に搬送されてから実に三日目の姿である。

 

 

「クジョウ、傷の方は良いのか?」

「肺の方は完治したけど、斬られた腕の方はそうもいかないわ。」

 

 

宇髄に返答するハスミ。

 

言葉通り、蝶屋敷で支給されている医療着を纏ったままである。

 

軽傷は完治しているが、斬られた腕の具合はまだ悪く三角巾で固定している。

 

本来なら安静しなければいけない状態である事にしのぶはハスミに注意を促した。

 

 

「ハスミさん、いくら血鬼術で回復させているとはいえ…まだ動いてはいけない状態なのですよ?」

「しのぶさん、どうしても伝えないといけない事があるからここに来たのよ。」

「伝える事?」

「上弦の零……夜天の零は上弦の壱よりも危険な相手よ、今の柱が全員総出で戦っても勝ち目はない。」

 

 

「「「!?」」」

 

 

「マジか?」

「冗談ではないのか?」

 

 

不死川と伊黒の問いにハスミは答えた。

 

 

「瞬時に肺を一突きした時に高速で内部の肺を細切れにする相手でも?」

 

 

険しい表情をするハスミの発言に納得したしのぶ。

 

 

「成程、冨岡さんの回復が遅いのはそれが原因なのですね?」

「肺は呼吸を使う剣士にとって重要な臓器、奴は鬼狩りを素早く倒す手法に慣れている。」

「では、クジョウの血鬼術がなければ冨岡は…」

「最悪の場合、呼吸困難の末に死に至ったでしょうね。」

「ちっ、鬼側も厄介な連中を出してきやがったのか。」

「…もう一つ悪い情報がある。」

「何だ?」

「前日、アウストラリスが磁器の人形を操る鬼と交戦した。」

 

 

そしてハスミは決定的な最悪の情報を答えた。

 

 

「最悪な事にその鬼の眼には上弦の陸と刻まれていたそうよ。」

「はぁ!?」

「上弦の陸は煉獄と宇髄、竈門が討伐しただろう!?」

 

 

不死川と伊黒の驚愕にハスミは推測を告げた。

 

 

「恐らくは穴抜けに新たな鬼を上弦に加えたと推測しているわ。」

「クソが!それじゃあ倒してもキリがねぇ!!」

「正直な話、隊士の訓練計画を速めた方がいいかもしれない。」

「人員は割くのは不本意だが、戦力強化は致し方ないだろう。」

「ならば、時透と甘露寺が戻り次第…話を薦めよう。」

「基礎体力の方は音柱と合同で非番の隊士に順次行っているわ。」

「だな、後は他の面の強化って所だ。」

「腐り切った気力と干物な根性を根本的に鍛え直したから、ちょっとやそっとじゃ倒れないから安心してね。」

 

 

ハスミの発言に対し納得する遠い眼をした煉獄と宇髄に張り切る悲鳴嶼。

 

 

「確かに。」

「ありゃな…」

「うむ、鍛えがいがありそうだ。」

 

 

しのぶは話す事が無くなったと思われるハスミに告げた。

 

 

「ハスミさん、話はもういいですか?」

「ええ、私は蝶屋敷に戻るわね。」

「今回は致し方ないですが、今は安静にお願いしますよ?」

「判ったわ。」

 

 

ハスミは告げる事だけ告げると安静の為に蝶屋敷に戻って行った。

 

 

=続=

 

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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