鋼の魂と共に   作:宵月颯

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己の刀を携えて。

剣士達は旅立つ。

その先は夜の世界。

闇夜を超えて立ち向かえ。


色変の刀と旅立ち

私ことハスミは炭治郎君と共に最終選別に合格し藤襲山を下山。

 

下山と同時に私は鱗滝師匠の元へ急ぎの文を送った。

 

内容は試験中、藤襲山に出現した超大型の異形の鬼の件である。

 

もしも各地で似た様な出来事があれば情報が欲しいと内容に添えて。

 

速達でと意味を込めて自身に付いた鎹鴉に文を括り付けてから話した。

 

 

「急いで…この文を狭霧山の鱗滝師匠の元へ届けて欲しい。」

「分かったぜ!美人のお嬢さんの頼みとあっちゃあ~叶えるのが男の意地ってもんよ!!」

「…」

 

 

何この…某七色の声様ボイスのエ〇ィ・マー〇ィーみたいなノリは?

 

そもそも鎹鴉って話せるんだ、へー。

 

この世界にも人語を解せる鴉っていたのね。

 

 

「ハスミさん、大丈夫ですか?」

「うーん、少しだけ吃驚したかな?」

「えー!少しだけー!?」

 

 

炭治郎君、何時もの顔芸する気持ちは解るよ。

 

でもね…

 

世の中には人語を介する生物っているのよ。

 

戦友に猫型の使い魔と契約したり、獣人とかいたり、ちなみに私…異星人の恋人がいるからね?

 

私はその事を自分の中で留めていた。

 

 

「炭治郎君、最終選別の疲れが残っているけど狭霧山へ帰りましょう。」

「はい。」

 

 

私は炭治郎君を鼓舞し狭霧山へと引き続き帰路を向けた。

 

七日間の攻防で水色の羽織は雨と泥で汚れてヨレヨレ。

 

当然入浴などもしていないので汗臭さも漂う。

 

昔、無人島で一週間サバイバル訓練していたのを思い出す。

 

 

「…よく頑張ったね。」

「俺は長男だから父さんの分まで皆を引っ張っていかないと…」

「炭治郎君。」

「はい?」

 

 

私は労いの言葉を炭治郎君に掛けるも、いつもの口癖が出たので覆させた。

 

 

「長男は関係ない、貴方は貴方で頑張った…それは誇っていいし時には甘えていいの。」

「ハスミさん。」

「貴方の様に親を無くして背伸びして無理に大人になろうとしていた子を何人も見てきた。」

「…」

「貴方位の子はまず一杯悩んで沢山考える事が大事、何度失敗したっていい…自分が正しいと言う答えを出せばいいの。」

「俺っ…俺。」

 

 

私は同じ師の下で修行した同期でも年上だから炭治郎君の事を放ってはおけなかった。

 

この時代の長男はどうしても古い因習に…言葉に縛られてしまう。

 

気持ちは解る、それでも少し位は甘えてもいいと思うのだ。

 

涙を堪えてずっと我慢していた炭治郎君を私は抱き締めた。

 

今いるルートには人気はないし泣くなら十分泣けるだろう。

 

一杯泣いて、一杯思いを吐き出して、前へ進めばいい。

 

私もまた記憶を持ったまま転生を繰り返す運命を知るからこそ支えたいと思うから。

 

同じ人生と記憶を繰り返すと言う事は経験した喜びの他に怒りや苦しみ、悲しみをまた繰り返す事だから。

 

 

******

 

 

数日後の夜、私達は狭霧山の山小屋へと辿り着いた。

 

夜も更けていたので時代が時代なだけに灯りが乏しい地域は提灯がなければ視界を確保出来ないだろう。

 

幸いにも私は鬼化の影響で夜目が効くし今宵は月が出ているのである程度は明るい。

 

木の棒を杖替わりにする位に炭治郎君の疲弊は凄まじい。

 

山小屋が見えてくると足蹴で戸が蹴り飛ばされたのを目視する。

 

その正体はずっと眠り続けていた禰豆子ちゃんだった。

 

炭治郎君は倒れながらもこちらに気が付いた禰豆子ちゃんを抱き締めていた。

 

 

「禰豆子ぉお…やっと目が覚めたんだな、俺と母さんや竹雄達も心配したんだぞ。」

「…」

 

 

禰豆子ちゃんはそのまま抱きしめたまま炭治郎君の頭を撫でていた。

 

こちらの様子に気が付いたのか竈門家の人達や鱗滝師匠も出てくると帰還の言葉と抱き締め合った。

 

 

「炭治郎、ハスミさん…お帰りなさい。」

「只今、母さん。」

「葵枝さん、無事戻りました。」

 

 

竹雄君達も口々に『お帰り。』と告げていた。

 

その夜の夕餉は賑やかだった。

 

囲炉裏の前で炭火焼きの川魚や吊るされた鉄鍋からは山菜と野鳥の肉がグツグツと煮込まれていた。

 

寒村の山小屋に居た頃よりも竈門家の顔色は良くなっている。

 

ここ二年間の食生活の変化だろう。

 

食事も終わり、竹雄君達が安心して眠りに就いた後で私と炭治郎君は藤襲山で起こった出来事を鱗滝師匠に告げた。

 

 

「内容は先に送らせて頂いた文と同じです。」

「ふむ…弟子達を喰らった鬼の他に巨体の鬼か。」

「はい、無惨の気配の他に炭治郎君が鬼と幾つもの獣の匂いを感じ取りました。」

「ハスミ、直に見たお前の意見を聞きたい。」

「では、こちらで分かった範囲からで宜しいでしょうか?」

 

 

ハスミは藤襲山に出現した巨体の鬼について改めて説明した。

 

一つ、その鬼は余りにも巨大で一例として山小屋二つ分の大きさ。

 

二つ、その鬼は自我がなく一つの鬼に複数の獣が合わさっていた。

 

三つ、掛け合わさっていた獣は狼と猪でどちらもこの国の種ではなく外来種。

 

四つ、無惨の気配があったので何らかの関りがあるのは確実。

 

五つ、一体なら兎も角…複数が現れたのなら柱が出なければ勝ち目がない。

 

六つ、一体の頸取りは最低でも手練れが二人以上で力に秀でた剣圧が必要。

 

七つ、今回の鬼の姿は西方の国の伝承にある伝説の魔物…キメラに酷似している。

 

 

「以上が私が得た情報です。」

「…」

「奴の遺体は死亡を確認した後で遮光布に巻いて戦闘場所へ放置してあります、最終選別で来訪していた使者の方に話を通して置いたので今頃は本部へ引き渡されていると思います。」

「相変わらず手際が良いな。」

「敵がより大きな戦力を出してきたのであれば、対抗する為の絡め手繰り手を増やすだけです。」

「それが剣技と並行して扱う銃や爆薬も含まれているのか?」

「はい、そして私が編み出した呼吸についてですが…」

 

 

私が編み出したのは水の呼吸ではなく鋼の呼吸。

 

鱗滝師匠の話では始まりの呼吸から水・炎・風・岩・雷の五つの呼吸が生み出された。

 

枝分かれする様に水から蛇・花、花から蟲の呼吸。

 

炎から恋、風から霞、雷から音の呼吸が生まれた。

 

鋼の呼吸と呼ばれる呼吸を扱う剣士は存在せず、新たな派生だろうと推測された。

 

また、剣術の型を見て貰ったが示現流に酷似していると指摘されました。

 

私に剣術指南の基礎を叩きこんだ師が示現流の使い手だったので似るのもしょうがない。

 

その為、『貸し与えた打刀では本領を発揮できなかったのでは?』とハッキリ言われた。

 

 

「示現流?」

「江戸時代に薩摩藩を中心に広まった一撃必殺の剣術の事よ。」

「この流派は主に刀は太刀や野太刀を使用し幕末にその流派と戦った武士の中には、自分の刀の峰や鍔を頭に食い込ませて絶命した者がいる。」

「えーえええええ!!!?(相手の頭を食い込ませるって…どれだけ力が掛かっているんだ!?」

「呼吸も相まって日輪刀も太刀の大きさにしたら鬼の頸ごと潰すかもしれないわね?」

 

 

もはや潰れたトマトですわ。

 

元隊長なんて冷凍マグロの解体ショーをやろうとして舞台ごと切ったお茶目様ですから。

 

もはや炭治郎君が脳内混乱状態で話が進まないと悟られたのでそのまま就寝。

 

体力の回復や修行を続け、作成された日輪刀到着日の十五日目を迎えた。

 

 

「お前が竈門炭治郎か?」

「は、はい。」

 

 

この炭治郎の刀を打った刀鍛冶の鋼鐡塚さんと私の刀を打ってくれた磨鋼さんが到着した。

 

二人ともかなりの曲者で片方は人の話を聞かないし、もう片方はエグイ位に肉体美を見せつけてくるので唖然だった。

 

で、問題の日輪刀は別名色変わりの刀とされ持ち主によって色が変わるとの事。

 

炭治郎君は黒刀、私は紺と藍色が合わさった刀だった。

 

鋼鐡塚さんは子供かよって位に暴れまくり、磨鋼さんは歓喜でボディビルダー張りのポーズを披露した。

 

もう何でもアリだね。

 

 

「カァアア、北西、北西の町で若い娘が行方知れずとなる、階級・癸の炭治郎、ハスミ両名は北西へ迎え。」

 

 

刀も到着し、炭治郎君の鎹鴉からの任務を受けた後。

 

私達は隊服に着替えて出発の準備を進めた。

 

竈門家の人々は本部から下働きの仕事があるそうで紹介先に移動する事が決定。

 

後で使いを寄越すそうだ。

 

 

「では、行ってきます。」

「落ち着いたら時々、顔を見に行くから!」

 

 

炭治郎君は禰豆子ちゃんの入った木箱を背負い、私は片目を隠す眼帯と外套を羽織って鱗滝師匠と竈門家の人々に見送られながら狭霧山を再び下山した。

 

 

 

=続=

 




※主人公の鎹鴉
間違った意味で西洋文化に染まりまくった鴉。
前に仕えていた人が西洋文化に興味を持っており、その関係からである。
前任者は生きているが左足を失う負傷で鬼滅隊を除隊しており、横浜方面でその手の仕事に着手している。



=最後にさよならを=


最終選別が終了し狭霧山へ帰還した当日の深夜。

私達は竈門家の人達に留守を頼み、例の巨石が置かれた場所へ移動した。

そこにはもう一人、文を受け取って現れた人物が待っていた。


「ぎ、義勇さん!?」
「久しぶりだな。」
「一体どうして?」
「…私が呼んだの。」
「ハスミさん。」
「俺を呼んだ理由は何だ?」
「そろそろかな?」


丑三つ時、月明かりに照らされた巨石の前に現れた狐の面を付けた少年少女達。

その中に彼らの見知った相手が居たのだ。


「錆兎…なのか?」
「真菰、お前達…」


鬼に食い殺され亡くなった者達が生前の姿のまま現れた。

これは幻か奇跡か?


「皆、貴方達と最後に話をしたいと願っていました…私はほんの少し力を貸しただけです。」


私と炭治郎君は別れの言葉を告げる彼らの邪魔をしない様に姿を消した。

手鬼を倒した事で霊と化した彼らがここに居られるのは今晩だけ…

最後に伝えたい事があるのなら伝えてと念を押して置いた。

彼らが二人に対して何を語ったのかは秘密にしておいた。

内容は似たり寄ったりだったし…


「私達はもう行くね…きっとまた会えるから。」
「義勇、俺の思いを継いでくれてありがとう。」


一人、また一人と姿を消していった。

遺恨は怨霊と化す要因、憂いなく彼らを行かせる為に必要な事だ。


「錆兎、真菰…皆、見守っててくれ。」
「俺達は必ず無惨を倒す…失った命の為に生きる為に。」


願いは紡がれる。

いつか大きな形となって支えられるだろう。

その後、鱗滝師匠達から私の力の事について質問攻めにあったが正直に話して置いた。

理解できる範囲までだが、隠す必要はないので。


=終=

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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