鋼の魂と共に   作:宵月颯

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時に毒は使い方次第では薬にもなる。

但し、これは毒ではない。

とある細胞の話。


細胞を以て毒を治めよ

前回の会議の場を後にしたハスミ。

 

蝶屋敷に戻る道中で咳き込み口元を抑えた。

 

 

「少し無茶ぶりが過ぎたか…」

 

 

ハスミは口元を抑えた手を見ると鮮やかな色の血痰が付着しているのを確認した。

 

血鬼術で負傷した臓器の中の肺を先に修復したものの…

 

切断された片腕と内臓の一部は傷ついたままである。

 

無茶は程々にするべく、蝶屋敷内の病室へと移動した。

 

 

「クジョウ、起きていたのか?」

 

 

病室に戻ると目が覚めたばかりの冨岡に声を掛けられた。

 

 

「…水柱、漸く目を覚ました様ね?」

「俺はどの位寝ていた。」

「今日で三日目よ、私の血鬼術でも負傷した臓器や刀傷の完治にはもう暫く掛かるから安静にして貰える?」

「そうか。」

 

 

ハスミは軽く応対した後、ベッドに入り横になった。

 

 

「今、他の柱にあの上弦の情報を伝えて来た。」

「鎹鴉は?」

「叙荷はまだ使いに出している、だから直接話に行ったのよ。」

 

 

叙荷は現在アウストラリスへ情報共有させる為に飛ばしたままだ。

 

現在は移動先である帝都に向かっているだろう。

 

 

「クジョウ、奴を…あの上弦の零をどう見る?」

「危険な鬼…文字通りと思ったわ。」

 

 

あの間合いで柱の肺を一瞬の内に貫いて細切れにした。

 

技量の異常さは上弦の壱を超えている。

 

例え、今の柱が総出で戦っても勝てる見込みはない。

 

 

「…」

「対抗策とすれば、お館様が秘匿していた情報…痣者への覚醒位でしょうね。」

「痣者?」

「但し、痣者になった場合…その人は二十五まで生きられない。」

「!?」

「寿命の前借、命を燃やし尽くす、文字通り命を懸ける必要がある。」

「だが、必要なのだろう?」

「無惨を倒す為にも必要な処置であるけど……自身の命を捨てる覚悟はあるの?」

「可能性があるのなら…!」

 

 

話し合う中でハスミはお館様から資料整理と痣者の考察を纏める様にと命令された事がある。

 

その調査結果で判明した痣者に関する情報を冨岡に話した。

 

命を捨てる覚悟があるのか?とハスミは冨岡に質問し冨岡は覚悟があると告げるが…

 

 

「この馬鹿タレ。」

 

 

遠い眼をしたハスミはベッドから起き上がると冨岡のオデコに三撃デコピンを炸裂。

 

一気に三本の指を冨岡のオデコに弾いたので本人はベッドから転落しオデコを抑えながら悶絶。

 

 

「自分の命を軽んじるな、このヘタレ。」

「っ~~~~~~~~!!?」

「本当に錆兎の言う通り貴方は馬鹿よ、また鱗滝さんを泣かせる気?」

「!?(グサッ!」

 

 

冨岡義勇、久しぶりの図星突かれた白目顔芸を披露。

 

 

「言って置くけど、柱や可能性のある隊士を不完全な痣者にさせる気はないから。」

「不完全だと?」

「言葉通りよ、このまま伝承通りの痣者の覚醒を行えば命はないわ。」

「…お前にはそれを覆す事が可能なのか?」

「理論上の事で確証はないけどね。」

 

 

正直に言えば、賭けだ。

 

血鬼術と誤魔化しているDG細胞が自己進化、自己再生、自己増殖の三大理論を持っている以上。

 

使い所を間違えなければ、痣者の前借となる命の消費を抑える事が出来る。

 

感染し定着が進んでいる柱は兎も角、問題は感染していない柱をどうするかだ。

 

本来は余り感染させたくない代物、それでも戦う為の補助が必要ならば致し方ない。

 

 

「私の血鬼術は負傷した部位を修復するもの、それを応用する事が私の提案する手段よ。」

「…」

「この事はお館様に進言はしてあるけど、お館様がどう判断を下すかは不明ね。」

 

 

DG細胞、使い所を間違えれば危険な代物。

 

感染経験がある私からしたらこんな感じだった。

 

それはまるで酒で泥酔を起こす様な、異常な力を得た高揚感に呑まれる。

 

精神的…心に弱さがあれば一気に狂気へ染まる。

 

今回はそれを制御するコアがない事が救いだ。

 

そして私に残留していた細胞は密かに増殖を繰り返し他者へ感染するまでに力を取り戻した。

 

遊郭事件は偶発的に紅霧村事件では緊急措置として使用したが、油断は出来ない。

 

紅霧村での一件で自身と他の感染者が細胞で繋がっていると判明した。

 

あの一件以来、ある程度は制御と把握は出来る様にした。

 

今後もこの細胞を拒絶はするつもりはない。

 

この子はただ怖がっていただけ、あの事件の時も助けを求めていた。

 

 

『ずっと一緒だよ。』

 

 

この子はほんの小さな微粒子になりつつも私と居る事を選んだ。

 

もう一人のこの子と切り離され、DG細胞としてのこの子が私の中に残った。

 

戦場に出始めたばかりでヒヨッコだった頃の…三年も前の話。

 

 

「おーい、お嬢っ!!」

 

 

冨岡との話し合いの中でハスミが一人考えに耽っていると鎹鴉の叙荷が窓の縁に着地した。

 

 

「叙荷か、どうだった?」

「お嬢に言われた通り、旦那には伝えて置いたぜ……まぁちっと問題もある。」

「問題?」

「炎柱の親父さんが単独行動してるって話……お嬢の旦那と合流して帝都の青山霊園に向かったぜ?」

「それはお館様も容認しているの?」

「勿論、お館様が直々に極秘指令を与えたってさ。」

「そう、アウストラリス達が追撃中の鬼が壊滅するのも時間の問題ね。」

「どう言う事だ?」

 

 

ハスミと叙荷の会話を聞きつつ最後の言葉に対して質問する冨岡。

 

 

「アウストラリスは私よりも強い……あの人、異国の戦艦も素手で軽く解体しちゃう人だから。」

「…は?」

「因みに一隻や二隻の話じゃないわよ?」

 

 

「「…」」

 

 

「機会が合ったら見せてあげたい位だわ?」

 

 

ハスミの発言に開いた口が塞がらない状態の冨岡と叙荷。

 

 

「問題は青山霊園が地図上から消失する可能性がある事ね。」

 

 

ハスミは遠い眼をしながら更なる爆弾発言をしたのだった。

 

 

=続=

 





<とある手紙>


=拝啓、クジョウ・ハスミさん=


禰豆子さんと貴方の血を受け取り、日々調査しておりました。

今回は貴方の血液に変化があった事をお伝えしようと思います。

例の遊郭の一件以降、貴方の血が無惨の血を徐々に無力化している事が判明しました。

何かしらの変異と思いますが、これは鬼と成った人を戻す切っ掛けになると思います。

同時期に禰豆子さんの血も同じ様に変化を見せています。

二つの血が無惨に対抗しうる武器になる日も近いと思います。

今は確証が取れませんが、引き続き血液の譲渡をお願いします。


珠世より

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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