鋼の魂と共に   作:宵月颯

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思い出せない。

すぐに忘れてしまう。

それでもいつかは蘇る。

大切なナニカ。


霞を晴らすのは?

鬼殺隊・本部で新たな上弦の鬼の出現とそれに伴う被害情報が確認されている頃。

 

ここ刀鍛冶の里では、とある修羅場が展開されていた。

 

 

******

 

 

里に点在するの林の中にて。

 

 

「ねえ、鍵を渡してよ?」

「絶対にダメです!」

 

 

言い争う二人の少年。

 

片方は独特の長い髪の霞柱の時透無一郎。

 

もう片方はひょっとこの仮面を付けた八歳くらいの少年で名は小鉄と言った。

 

 

「何で、もうすぐ壊れるのなら最後に使われた方が本望でしょう?」

「それが嫌なんです!絶対に誰にも渡しません!!」

「そう、なら勝手に持っていくよ?」

「うっ!?」

 

 

無一郎によって衣服の首元を持ち上げられ締め上げられる小鉄。

 

無一郎はそのまま片手で持ち上げたまま小鉄に問う。

 

 

「壊れたならまた作れば?」

 

 

無一郎は続けて話す。

 

君がそうやって下らない事にぐだぐだしている内に何人死ぬと思っている訳?

 

柱の邪魔をするってそう言う事だよ?

 

柱の時間と君達の時間は全く価値が違う。

 

少し考えれば解るよね?

 

刀鍛冶は戦えない。

 

人の命を救えない。

 

武器を作るしか能がないから。

 

 

「ほら、鍵。」

「っ!」

「自分の立場を弁えて行動しなよ、赤ん坊じゃないんだから。」

 

 

その時、無一郎の手を叩き倒す存在が現れた。

 

 

「配慮が全然ない、間違っているのは君の方だろう……時透君。」

「誰?」

「俺は竈門炭治郎、階級甲で鋼柱の継子だ。」

「ああ…柱見習いの?」

「君は刀鍛冶の人達を侮辱している……訂正してくれ。」

「どうして?」

「確かに柱は重要な存在だ、だけど刀を打つ人達を侮辱するのは許さない!!」

「?」

「それは…俺達は刀が無ければ戦えないからだ!!!」

 

 

ハスミさんも話していた。

 

前衛で戦う柱や隊士達に戦う力と想いを託すのが刀鍛冶達や隠の人達。

 

後衛で刀鍛冶の人達と隠の人達が傷ついた柱や隊士達を癒し補助する。

 

そう言った関係性は対等である。

 

柱や隊士は刀がなければ戦えない。

 

刀鍛冶や隠の人達は刀があっても戦えない。

 

互いに手を取り合って鬼殺隊は成り立っているって。

 

そんな扱いをすれば、戦う力を失う。

 

 

「無一郎君、もしもだけど刀鍛冶達が…刀を打つ人達が居なかったら君はどう戦うの?」

「それは…」

「彼に謝るんだ、俺は柱見習いだけど…間違っている事は見過ごせない。」

 

 

後方支援が如何に大事かをハスミに叩き込まれた炭治郎。

 

日頃の行い次第でその人の人望が薄れて隊律を乱す一因となる。

 

部隊を纏めて戦うのなら柱としてあるべき姿を見せなければならない。

 

無一郎が小鉄に行った事は正にそれである。

 

 

「下らない話に付き合っていられないよ。」

「っ!」

 

 

無一郎は一瞬の隙を突いて小鉄から鍵を抜き取って去って行った。

 

 

「ごめん、俺が余計な事をして鍵を取られちゃって。」

「いえ、見ず知らずの俺を庇ってくれて…」

 

 

炭治郎は小鉄と改めて自己紹介を済ませた後、鍵について話をした。

 

 

「そう言えば、さっきの鍵って?」

「絡繰人形です。」

 

小鉄の先祖が作ったもので百八の動作が行え、人を凌駕する力を持ち合わせているので戦闘訓練にも利用しているとの事。

 

その人形は戦国時代に造られたもので老朽化が進んでいる事。

 

小鉄の父親が管理していたが、早逝し小鉄自身が技術を学んでいた最中だった事もあり完全に直す事が困難になってしまっている。

 

 

「…ハスミさんが使っている形を替えられるオートバイみたいなのかな?」

「炭治郎さん、そのハスミさんって?」

「鋼柱のクジョウ・ハスミさん、俺に戦術指南を教えてくれているんだ。」

「まさかあの噂の…!!」

「噂って?」

 

 

小鉄の話では異国の絡繰りと銃器を操り、自身よりも巨大な刀を振るって鬼の大群を斬っては捨てて斬っては捨ててと化け物の様な女傑だと里に噂が流れていた。

 

仮面越しであるが、キラキラと眼を輝かせているだろう小鉄を余所に炭治郎はこの時思った。

 

 

『間違っていないけど、本人の前で言わない方がいい話だ。』

 

 

青褪めた表情で冷や汗を掻く炭治郎だった。

 

 

「!?」

 

 

林の奥で刀同士が弾かれる様な音が響き渡った。

 

 

「何だ!?」

「さっきの人がもう…こっちです!」

 

 

小鉄に案内されるまま炭治郎は後を追った。

 

 

>>>>>>

 

 

林の奥へ辿り着くと無一郎と人の形を模した人形が戦い合っていた。

 

互いの見えない剣戟が林を揺り動かし、その光景は凄まじいモノだった。

 

 

「あれが…俺の祖先が作った戦闘用絡繰人形の縁壱零式です。」

 

 

小鉄の説明の後に炭治郎は思い出していた。

 

 

「…(縁壱さんを象った人形、あの中に。」

 

 

あの六本腕の人形の中に無惨を倒す為の刀が眠っている事を…

 

 

「何で腕が六本なの?」

「腕ですか?」

 

 

亡き父親から聞いたと言う小鉄の説明によると…

 

人形は実在した剣士を模して作られた絡繰。

 

腕を六本にしなければ、その剣士の動きを再現出来なかった。

 

絡繰が作られたのは戦国の世の事であり、既に三百年余りが経過している。

 

古い時代に作られたとは言え、その技術は凄まじく今となっても解読が不能との事。

 

修理の為の設計図は残っているものの、同じものは二度と作り出せない。

 

目処前で動いている絡繰も壊れてしまったら直す事も出来ない。

 

小鉄は自分には兄弟はいない、父親が生きている内に技術を学ばなければならなかった。

 

刀鍛冶や絡繰整備の才に恵まれなかった何も出来ない自分に打ちひしがれていた。

 

 

「わずか二か月で柱になった理由もわかるな…(確かに無一郎君の才能は凄い。」

 

 

この時、無一郎の鎹鴉である銀子が自慢げに話しかけて来た。

 

無一郎は日の呼吸の使い手だった子孫である事を自慢し高飛車に答えていた。

 

その様子に炭治郎は真実を答える事は出来なかった。

 

無一郎は日の呼吸の使い手だった双子の兄の子孫。

 

その兄は無惨の鬼として今も生きている事を…

 

自分は日の呼吸の剣士から日の呼吸をヒノカミ神楽にして先祖代々から受け継いでいた。

 

受け継がれた呼吸は『血縁』だけではなく『人の思い』も繋がっている。

 

今は言えないと悟って炭治郎は銀子の話を淡々と聞いていた。

 

 

ガキン!

 

 

そうこうしている内に無一郎は縁壱零式の腕を斬り落として沈黙させた。

 

 

「僕の刀、使い物にならなくなったから貰っていくね。」

 

 

斬り落とされた腕が持っていた刀を一本強奪し銀子と共に去って行った。

 

 

「…(無一郎君の記憶が戻らない限り、あのままが続くんだな。」

 

 

記憶を取り戻す切っ掛けが出来ず、炭治郎は悲しい視線を去って行った無一郎に向けた。

 

そして木に登って落ち込んでいる小鉄にデコピンを一撃やった後に声を掛けた。

 

 

「小鉄君。」

「ううっ…俺がしっかりしなきゃなのに、俺の代で終わるなんて。」

「小鉄君、君には未来がある…十年後二十年後と時間はあるんだ。」

「炭治郎さん…」

「君はまだまだ学べるんだ、だから…頑張ろう!」

 

 

その後、雨が降り始めた中で縁壱零式が動くかの点検後に再稼働。

 

小鉄は復活し、本来の毒舌をかましながら炭治郎に縁壱零式での修行を言いつけた。

 

有無言わさず即時開始。

 

これが約一週間ほど続いたのである。

 

休憩は無し、絶食、絶水、絶眠のオンパレード。

 

因みにハスミも似た様な修行をやらせていたので耐性が付いていた。

 

この極限状態で炭治郎は一度だけ三途の川を渡りかけた。

 

そして当初の予定だった動作予知を獲得したのである意味で修行にはなっている。

 

無一郎がやった修行よりも遥かに効率が良かったので、無一郎は罰が当たる様に時間を無駄にした。

 

 

「うまぃいいいいいいいい!!!」

 

 

炭治郎、七日目に縁壱零式を破壊し修行を完遂。

 

一週間振りの梅干しおにぎりと玉露のお茶にありつけたのだった。

 

 

「お疲れ様でした、炭治郎さん。」

「うん、修行に付き合ってくれてありがとう。」

 

 

その時、人形の頭部が崩れ落ち中から刀が出てきたのである。

 

出て来た刀は戦国時代に作られたもので質の良い鉄で作られていると推測された。

 

二人は好奇心で刀を抜いてみるが、残念ながら錆びていた。

 

そこへムキムキマッチョと化した鋼鐡塚が登場。

 

発見した刀の取り合いになり、自分が研ぎ直すと言って鋼鐡塚が持ち去ろうとした。

 

その時、茂みから鉄穴森が登場し鋼鐡塚が折れない刀を打つ為に体力強化を行っていた事を説明。

 

回りくどいやり方に小鉄が愚痴ると小鉄は鋼鐡塚より頸から持ち上げられるわ、止める為に炭治郎と鉄穴森と共に鋼鐡塚の弱点である脇をくすぐるなどの茶番劇の後…

 

鋼鐡塚は三日三晩掛かると言って刀を持って自身の工房へと去って行った。

 

 

「と、言う事があったんだ。」

「何かお前の所って…表現出来ない事が起こるよな?」

 

 

その夜、煎餅を齧りながら滞在中だった玄弥に一連の出来事を愚痴る炭治郎だった。

 

同時刻、刀鍛冶の里にある温泉から里に下る道にて。

 

 

「ちょっとのんびり長湯し過ぎたな、明日も早朝から作業だってのに…」

「…」

「あの…何をしているんですか?」

 

 

下り階段に置かれた壺を見つめる女性の姿があった。

 

里の男性はその女性に声を掛けるが…

 

 

「…」

 

 

女性は壺の中に謎の物体を数個入れた後、何処から出したのか不明な鉄箱に壺を密閉。

 

 

「急いで里に行って、鬼が現れた。」

「え!?」

「早く!警報鳴らす!!」

「は、はい!!」

 

 

男性は駆け足で里へと戻って行った。

 

 

「そろそろかな?」

 

 

カップ麺の様な言い方で鉄箱の様子を伺う女性。

 

同時に鉄箱から悲鳴が響き渡った。

 

 

「ぎぃやあああああああああ!!!?!?!!!!?!?」

 

 

女性が先程の壺の中に投げ入れたのは超濃縮藤毒の粉末、シュールストレミングの粉末、温泉水である。

 

程良く溶けた薬剤が壺の中で鬼への毒液を化して猛威を振るっていた。

 

鉄箱で出口を塞いでいるので出る事も叶わず、壺の中に潜んでいる鬼は悲惨な目にあっていた。

 

何とか鉄箱を破壊し血反吐を吐きながら壺から這い出る軟体生物を思わせる鬼。

 

 

「き、貴様…おぇ…一体、なにwおぶぅ…」

「こんな所に壺があったら不自然でしょ?予防よ予防。」

「お、お前は…!?」

 

 

壺の鬼こと上弦の伍・玉壺。

 

彼の目処前に現れた女性は無惨から捕らえろと命令されていた存在だった。

 

 

「まだ、試したい道具があるのよね…付き合ってくれる?」

 

 

冷酷な表情をしたハスミは小型のUVライトを構えると玉壺に照射。

 

玉壺はこの時、まだ知る由もなかった。

 

目処前の相手が途轍もなく凶悪存在であった事を…

 

 

=続=

 




=没ネタ=

※玉壺の壺の中に入れようとしたもの。

C4爆弾、ダイナマイト、破片手榴弾、閃光手榴弾(紫外線版)。


※玉壺の壺をフルスイングしようとしたもの。

アイアンのゴルフクラブ、鉄バット、棘付き棍棒(いずれも日輪刀と同材質)

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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