鋼の魂と共に   作:宵月颯

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君は誰?

朧気な記憶の中。

君は微笑んでいた。




花火の名残

 

刀鍛冶の里、崩落しつつある長屋で分裂した上弦の肆と交戦を開始した炭治郎、禰豆子、玄弥。

 

一方で分裂した上弦の肆の一体。

可楽によって吹き飛ばされた無一朗はある場所へと落ちていた。

 

 

「霞柱…!?」

「あ、半鬼の…」

「さっきの様子といい、向こうにも鬼が出たの?」

「うん、ここに飛ばされた。」

「あらまあ…霞柱って身軽だから仕方がないわね。」

「あんまり考えた事ないや。」

 

 

上弦の伍をほぼ一方的に絞めていたハスミ。

 

その最中に無一朗がその場へ落下。

 

現在に到る。

 

 

「何か、すごい事になってるね?」

「あーこの上弦の足止め?と言うより拷問中。」

 

 

引き続きモザイク要の状況に追い込まれていた上弦の伍こと玉壺。

 

その玉壺は妙な呻き声をあげていた。

 

 

「ハァハァ…(よく分からんが、もっと弄り攻めて欲しいと思うのは気のせいか?」

 

 

ハスミ、更にMを増産。

 

本部で訓練を行っている一部の隊士達がM化している要因の一つでもある。

 

 

「コイツ、何か悦んでない?」

「そう?」

「うん、気持ち悪いくらいに。」

「…じゃ、始末しよう。」

「僕もそう思った。」

「あら、珍しい…何時もならどっちでもって言うのに。」

「相手は上弦の鬼なんでしょ?さっさと始末した方がいいと思う。」

「正直…奴らの情報を吐かせようとしたけど、収穫ないしそうするわ。」

「異議なし。」

 

 

情報が得られないと判断したハスミは玉壺にトドメを刺そうとしたが、予期せぬ乱入者によって阻まれた。

 

 

「っ!霞柱、左に避けて!」

「!?」

 

 

ハスミの指示で乱入者による攻撃を避ける無一朗。

 

その攻撃は地面を抉り大穴を空けていた。

 

 

「まさか貴方が派遣されるとはね…久しぶりと言うべきかしら?」

 

 

ハスミは土煙の中にいる人影の正体を察して答えた。

 

 

「上弦の参…猗窩座。」

「…久しぶりだな、なり損ない。」

 

 

土煙が引くと同時に姿を表した猗窩座。

 

拳を構える前に後ろで壊滅的な状態にされている玉壺に答えた。

 

 

「玉壺、里の襲撃に失敗した様だな?」

「ヒッ!?」

「あの方からの言伝だ、鬼狩りもろともその命を持って滅ぼせとの事だ。」

「それは…!」

「命があったとしても数字剥奪は覚悟しておけ。」

「ああ…」

 

 

ハスミは猗窩座の言葉で状況を察した。

 

 

「…」

 

 

成程、長年の部下を切り捨てる方向に方針を変えたのか。

 

ここまで追いつめた以上は奴も本気でかかってくる。

 

だとすれば、やる事は決まった。

 

 

「霞柱、上弦の伍の相手を頼める?」

「そっちは?」

「参の相手をするわ、どのみち対処方法が判っている私の方が分がある。」

「…判った。」

 

 

戦う相手を決めた私達は二手に別れて対処。

 

ハスミは猗窩座に殺気を利用し、その場から誘導させると開けた場所で止まった。

 

 

「猗窩座、貴方の相手は私よ。」

「女の相手は俺は…」

「前にも言ったが、戦場に出れば性別は関係ない…戦士に侮辱を重ねるのなら容赦しないわ。」

 

 

侮辱の言葉。

 

その言葉にハスミは反論と殺気で返した。

 

 

「そうだったな。」

 

 

猗窩座はその殺気に答える様に構えを取った。

 

 

「貴様もまた強者である事を失念していた。」

「…」

「俺が勝ったらお前をあの方の元へ連れていく。」

「逆に貴方が負けた場合は?」

「…」

「ま、言わずとも結末は理解したわ。」

 

 

ハスミは別の場所で控えていた武装バイクの一体に指示を出し、背負っていた絡繰箱を投げ渡した。

 

その手に持つのは己の日輪刀のみである。

 

 

「ここで貴方を含めた上弦達を仕留めさせて貰う。」

 

 

ハスミもまた刀を構えた。

 

 

「遊郭での決着をつけさせて貰うぞ!」

「あの時は二人同時だったものね…勿論そのつもりよ。」

 

 

一迅の風の夜風が吹く。

 

木々のざわめきの後に二人の姿はかき消えた。

 

所々で土煙を上げ、金属が弾かれる音が響く。

 

ハスミは身の丈程の太刀を猗窩座は己の拳で戦い合っていた。

 

素手と大剣では隙の差が出てしまう。

 

更に大剣は一度振るう度に大きな隙が生じる。

 

相手がスピードを生かした戦法を使うなら尚の事。

 

その隙を逃す筈はない。

 

 

「貰った!」

 

 

至近距離に入り込み拳を撃ち込もうとする猗窩座。

 

しかし、それは風に乗って防がれた。

 

 

「貴方程のインファイターは数多く見てきた、なら…対策案も構築せずに戦う阿保はいないでしょ?」

 

 

風に乗って響く車輪の様な音。

 

ハスミは太刀を振るうと同時に戦輪を上空に逃がしていた。

 

それと同時にわざと隙を生み出したのだ。

 

至近距離と遠距離に入れば戦輪の餌食に、拳が届く範囲の間合いを取れば太刀による斬撃の猶予を与えてしまう。

 

 

「私は拳だけの相手に銃は使わない、相手に失礼だからね。」

 

 

正直、当たらない相手には弾が無駄が本音だけど。

 

 

「…杏寿郎と同様に貴様も強者だ、認めよう。」

「それはどうも。」

「だが、女…何故そこまで戦える?」

 

 

猗窩座の疑問。

 

何故、ここまで熟練した戦いを行えるのか?

 

見目から察するに鍛練に打ち込める年月は十年そこそこだ。

 

だが、感じ取れる殺気は何十年も鍛練した熟練者に近い。

 

 

「そうね、しいて言うなら…それだけの相手と戦ってきた。」

 

 

人と鬼の戦い以上の戦い。

 

その戦いの渦中に身を置いてきた。

 

軍人として人同士の戦争に、時には侵略者と、時には異形の存在と戦ってきた。

 

染み付いた殺気はそのせいかもね。

 

 

「人と鬼の戦い、私はそれも戦火の一端だと思っているわ。」

「…」

「逆に聞くけど、貴方は強者と延々と戦ってどうする気なの?」

「戦い続けられるからだ。」

 

 

鬼になれば死ぬ事も老いる事もない。

 

永遠に鍛練する事が出来る。

 

 

「…虚しいわね。」

 

 

ハスミは呆れた様子で答えた。

 

その様子に反応する猗窩座。

 

 

「何だと?」

「なら、強者の存在しない世界になったらどうする気だったの?」

「強者の存在しない世界だと?」

「言葉通りよ、そんな世界にあるのは渇きだけ。」

 

 

戦う事もその力を振るう相手も存在しない世界。

 

知り合いの四本腕の剣士が話していたわ。

 

 

『高みを目指した結果、辿り着いたのは渇きだけの世界だった。』

 

 

虚しさだけの世界に辿り着いただけだった。

 

何故だか判る?

 

終わりが在るからこそ人生は尊いのよ。

 

 

「人生が尊いだと?」

「命と同様に限り在る人生もまた尊いのよ、終わりが在るからこそ人の命も人生も一瞬を輝く。」

「…」

「老いはその果ての達成、もしくは次代に繋げる意思を渡せる。」

 

 

鍛練は一世一代では終わらない。

 

限り在る命が志…意志を繋いでいくのよ。

 

 

「それを理解せずにただ戦うだけの人生…いや、鬼生なんて虚しいわね。」

「…(何の為に戦う、か?」

 

 

ズキリと猗窩座に頭痛が襲う。

 

 

「っ…!?(何だ?これは?」

 

 

猗窩座の脳裏に浮かんだもの。

 

痩せ細り病で床に伏した丁髷の男性。

 

笑顔で話し掛ける胴着の男性。

 

申し訳なさそうに赤面状態の少女。

 

少女と共に夜空に打ち上がる花火を見る光景。

 

 

『また一緒に見ましょうね、狛治さん。』

 

 

その少女の笑顔は己を縛る支配者によって遮られた。

 

 

『猗窩座、あの女を喰らえ!!』

 

 

強制命令に背けず、獣の様な勢いでハスミの肩に喰らい付く猗窩座。

 

 

「っ!?」

 

 

一瞬の隙で回避の遅れたハスミはそのまま押し倒され左肩の肉を持っていかれた。

 

頸に近かった為に頸動脈の血管を傷付けてしまい出血が止まらない。

 

呼吸で止血するが、血鬼術で応急処置が済むまで暫くは片腕が使い物にならないだろう。

 

 

「その気配は無惨か?」

「女、貴様の事を侮っていた。」

 

 

猗窩座の様子と気配が変わった事で無惨によって猗窩座の主導権が握られたと察したハスミ。

 

だが、彼女が気にしている問題はそこではなかった…

 

 

「…」

「ここで貴様を…!?」

 

 

先程、ハスミの肉を喰らった猗窩座に異変が起きた。

 

大量の血反吐とのたうち狂う様に地面を地団駄し始めた。

 

まるで藤の毒を喰らった鬼の様に。

 

 

『猗窩座…どうやらお前の命運もここまでの様だな。』

 

 

無惨は猗窩座の様子から使い物にならないと判断し数字剥奪の末に放逐した。

 

呆気ない最後。

 

ハスミは苦しみ抜いた末に動きの止まった猗窩座を見つめた。

 

 

「?」

 

 

ピクリと動く猗窩座の指先。

 

異形化していた髪の色から皮膚の色が人の色に戻っていたのだ。

 

 

「…」

 

 

一通りの変化を終えた後に目覚めた猗窩座。

 

片目だけは鬼化のままで上弦の文字には✕の跡が刻まれていた。

 

 

「猗窩座?」

 

 

ハスミが告げた名に対して彼は否定した。

 

 

「違う!」

 

 

彼は全てを思い出した上で答えた。

 

 

「俺の名は狛治…鬼舞辻無惨は俺の敵だ!」

 

 

来るべき史実は再び狂い始めた出来事だった。

 

 

=続=





<猗窩座が狛治に戻った理由>


ハスミの中に定着しているDG細胞が無惨の鬼化を解いた。

但し、呪いの部分は解呪されていないので半人半鬼のまま。

纏めると科学的には治療済み、呪霊的には不完全な状態。

他の鬼でも半鬼化は可能かもしれないが、結果的に無惨を倒さなければ人間には戻れない。

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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