鋼の魂と共に   作:宵月颯

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本来であれば交わる筈のない人物達。

だが、未来史を変えた事によって引き起こされた。

新たな戦いの幕開け。


襲撃の知らせ

 

上弦の鬼による里の襲撃の知らせを受けた鬼殺隊・本部。

 

お館様は襲撃の様子に違和感を感じ取り…

 

定期報告に訪れていた柱達二名に緊急の派遣を行った。

 

 

******

 

 

刀鍛冶の里へ向かう道中の事。

 

里への道を知る鎹鴉鴉の案内で移動する二名の柱。

 

本来であれば、里への道順は複雑な経路となっているのでそう簡単には辿り着けないのだが…

 

現在、道案内をしている鎹鴉は緊急時に置ける里への移動手段として里への道順を全て熟知していた。

 

 

「…」

「煉獄、親父さんの事でも考えていたのか?」

「ああ…」

 

 

派遣された煉獄と宇髄は里へ疾走しながら話を続けた。

 

 

「安心しろよ、クジョウの鎹鴉の話じゃアイツん所の大将が付き添っているんだろ?」

「だが、父上はその…」

「ったく。」

 

 

溜息を付いた宇髄は煉獄の前に一度立ち止まってオデコにデコピンをかました。

 

 

「な、何をするんだ!」

「お前、クジョウに諭されてから随分大人しくなったが…心配し過ぎなんだよ。」

「そうなのか?」

「自覚無かったのか?」

「う、うむ。」

「親父さんは元柱だぞ?息子であるお前が信じなくてどうするんだ?」

「宇髄……そうだな。」

 

 

煉獄の曇りがちな表情が元に戻り、何時もの調子を取り戻したのを確認し歩みを戻そうとしたが…

 

 

「カァアアアア!」

 

 

別の鎹鴉が訪れると二人に緊急連絡を告げた。

 

 

 

「鋼柱の絡繰りと隠によって里の住民の避難完了、里内で鋼柱が上弦の参を捕獲!霞柱が上弦の伍を討伐するも負傷!現在は恋柱、庚隊士・竈門炭治郎並びに不死川玄弥と鬼の竈門禰豆子が上弦の肆と交戦中!!」

 

 

その緊急連絡に対しての二人の反応は…

 

 

「ハァアアアアア!!!!?」

「よもや!?」

 

 

何時もの顔芸込みでド派手に声を上げたのであった。

 

 

「アイツ、この俺様を差し置いてまたド派手な事を!?」

「まさか上弦の参を捕まえるとは…!」

 

 

鎹鴉は続けて連絡内容を答える。

 

 

「更に里へ巨躯の鬼が出現し鋼柱が対応、炎柱と音柱は至急救援に向かえ!!」

 

 

危機的状況である事は間違いない。

 

だが、異常過ぎる程の戦いに遭遇しているので二人は動じなかった。

 

 

「…クジョウから猗窩座の事を聞かなければならない。」

「だな、馬鹿デケェ鬼の相手を俺らもしてぇしな。」

 

 

常識的な人物なら避けたい相手だ。

 

だが、それすらも慣れてしまうこの状況。

 

常識を超えて非常識になってしまうとこうなるのである。

 

 

「うっし、さっさと里に向かうか?」

「うむ!」

 

 

だが、二人を妨害する様に周囲に地響きが唸った。

 

 

「宇随…!」

「どうやら、あの糞ひじき芋野郎ってのも俺らを行かせたくないらしい。」

「うむ、確か…爺塩田だったか?」

「じじえんでんじゃねぇし!ジ・エーデルだっての!!」

「そうか!!」

 

 

素で新手の巨躯の鬼を嗾けた相手の名前を言い間違える煉獄。

 

それに対してツッコミを入れる宇随。

 

本人が目処前に居れば、余りにもウザい位にツッコミを入れていただろう。

 

 

「問題は…クジョウの奴がいない以上、下手に殲滅って訳にはいかなそうだぜ?」

「どうやらその通りみたいだ…」

 

 

地響きの音は近く。

 

接近しつつあるのは理解出来る。

 

目視出来る所まで現れた巨躯の鬼。

 

それは巨大な鎌爪を背に持つ大猿。

 

最悪な事に奴が通過した周辺には異様な光景。

 

現在の季節は夏。

 

その真逆の光景が広がっていたのである。

 

 

「見ろよ、奴が通った場所が派手に凍ってやがるぜ?」

「っ!宇随!?」

 

 

大猿型の巨躯の鬼が大口を開くと放たれたのは冷気の息吹。

 

奴の息に触れた木々は瞬く間に凍結し…

 

奴の歩みによる振動で崩壊する脆さへと変貌している。

 

あの攻撃を喰らえばひとたまりもないと二人は理解した。

 

瞬時に息吹の放たれた方向から離脱し体制を整える。

 

 

「あんのデカ猿っ!!」

「宇髄!次が来るぞ!」

「ちっ!」

 

 

大猿型の巨躯の鬼は息吹で標的を仕留められないと悟ると次の行動へと移る。

 

それは柔軟な巨躯を生かした高速スピン体当たり。

 

背に生えた鉤爪は標的を逃がさず抉る為の武器でありストッパー。

 

動きの速い体当たりに接触すれば、柱であっても一溜りもないだろう。

 

 

「接近すれば体当たり、後退すれば氷の息吹…」

「デケェ図体の癖に知恵が回りやがる!」

「これまでの巨躯の鬼とは違うらしい…」

「ひじき芋も本腰を上げて来やがったって訳か。」

 

 

これまでの巨躯の鬼はハスミが対応しその多くが駆逐されていた。

 

だが、静けさの後に現れた巨躯の鬼は更なる進化を経て現れた。

 

巨躯の鬼は体当たり攻撃が避けられると認識した後、攻撃方法を切り替えた。

 

息吹で作り出された巨大な氷塊を幾つも生み出し雪合戦の要領で宇髄らに投げつけたのだ。

 

 

「その位の氷塊!俺様が叩き割ってやるぜ!!」

「待て、宇髄!?」

「!?」

 

 

何か様子がおかしいと悟った煉獄だったが時すでに遅し…

 

 

「くそっ!?」

「宇髄っ!!」

 

 

巨躯の鬼より放たれた巨大な氷塊。

 

それを砕いて攻撃を回避しようとするも内部より飛び散った液体でそれは罠と発覚する。

 

破壊された氷塊の内部から飛び出た液体は宇髄の身体へ付着し瞬時に凍結させていく。

 

同じく煉獄もその液体が降りかかり身動きが取れなくなっていく。

 

 

「何だよこりゃ…」

「…体の熱が奪われる。」

 

 

徐々に肉体を凍結させ肉体の体温を奪っていく。

 

硬直の時間が長引けば低体温症からの凍死へ繋がる。

 

全身に凍結が広がり切ると次第に二人の唇が紫色へ変質し呼吸をするのも辛くなっていく。

 

万事休す。

 

絶体絶命の中でそれは聞こえた。

 

それは一瞬の中の走馬灯の様に。

 

 

「これは?」

 

 

『本当にそれでいいのか?』

 

 

「?」

 

 

『嫁達はどうするんだ?』

 

『父上と弟を置いて行けるのか?』

 

 

「…何だ、こりゃ?」

 

 

真っ暗な空間に相対する様に自分自身が立っていた。

 

それは口々に答える。

 

 

 

『命を賭けるのか?』

 

『自分を捨てても?』

 

『戻れる一線を越えようとしている。』

 

『戻るなら今しかない。』

 

 

 

現時点は二人はそれを拒絶した。

 

ここで戻れは後悔すると…

 

 

「んなの知ったこっちゃねえ!!」

「その通りだ!」

 

 

絶対的な絶望の中でも諦めない意思。

 

 

「んな所で逃げたら…この宇髄天元様の名が廃るわ!!」

 

 

天を目指す派手を司る漢の叫び。

 

 

「此処で逃げれば煉獄家の恥!御先祖様達に顔向けが出来ん!!」

 

 

前を向く事を選んだ炎の漢の覚悟。

 

 

『そう…』

 

 

自分自身の姿をした存在は幼い洋装の少女へと変化した。

 

 

『嫌な質問してゴメンナサイ。』

 

 

謝罪の言葉を伝えてから少女は答えた。

 

 

『でも、大丈夫だから。』

 

 

大丈夫と言う言葉と共に。

 

 

『私とお姉ちゃんが護るから。』

 

 

ニッコリと少女が笑うと二人の意識は現実へと引き戻された。

 

 

「今のは?」

「俺にも…訳判んねぇわ。」

 

 

二人は自分自身の身体の異変に気付く。

 

先の巨躯の鬼の凍結攻撃を喰らって身動きが取れない状況に陥っていた。

 

だが、その拘束の原因だった氷塊は何時の間にか砕かれている。

 

そして…全身に湧き上がる灼熱の熱さ。

 

 

「煉獄!行けるな!?」

「うむ!!」

 

 

滾る熱さは刀すら燃え上がらせる。

 

だが、その代償たる痣が二人の顔にくっきりと刻まれていた。

 

揺らめく炎と音を奏でる譜面。

 

 

 

=続=

 




※大猿型巨躯の鬼

背に無数の鉤爪を持つ全長五メートルのゴリラ型巨躯の鬼。
肉体を覆う体毛も鋭い棘で出来ており触れればダメージを負う。
体内に摂氏-2000℃の凍結ガスを生成し同時に凍結液を作り出す事が可能。
巨体の割に柔軟な造りになっており、高速スピンアタックを可能としている。
生み出したジ・エーデルはイエティやウェンディゴをイメージして作ったと思われる。
刀鍛冶の里へ放ったのは紅霧村での雪辱と新兵器の試験運用が目的らしい。
もしも上弦の肆と伍が対峙したとしても巨躯の鬼の馬鹿力と凍結攻撃で結果的に敗北している。

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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