鋼の魂と共に   作:宵月颯

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因果は引き寄せられる。

可能性の矛先が巡り巡って。

こちらに定まっただけの事。

この身はあの方だけと誓った。

何人たりとも領域へは踏ませない。


暗躍する者と宿敵との再会

私ことハスミは炭治郎君と共に北西の町を後にし次の任務地である浅草へと向かった。

 

秘蔵品は目立つ為、途中しか使えないので目的地に近い場所で隠した後に浅草へと入った。

 

目的の鬼が現れる兆しがなかったので日中は二年前の無惨との一戦で保存して置いた写真の現像依頼。

 

並行して東京に近い場所に住居を構える志摩崎家に訪問する事にした。

 

理由は沼の鬼との戦いで出会った志摩崎家のお嬢様である悠雨お嬢様との約束を果たす為だ。

 

 

「お…大きいですね。」

「そうね、医療器具の製造や薬品を扱う商人ともなれば規模は大きいわよ?」

「ひぇ…」

「…(軽くカルチャーショック受けてるわね。」

 

 

東京の住宅街…現代で言う豪邸や屋敷が並ぶ場所の一つ。

 

名刺の住所を頼りに志摩崎家の屋敷へ私達は辿り着いた。

 

流石に鬼殺隊の服では目立つので洋装に着替えての訪問であるが…

 

因みに禰豆子ちゃんの箱は私の方で用意したジェラルミンケースの外装を貼って偽装している。

 

屋敷の方に言伝を頼み、ようやく中に通して貰えた。

 

洋風の客間でお茶を出されてから暫く待っていると扉を開ける音と共に彼女の声が聞こえてきた。

 

 

「お久しぶりです、御二人とも。」

「悠雨お嬢様、この度はお招き頂き有難うございます。」

「そんなにかしこまらなくても…」

「いえ、私達はある任務中の為…最低限の礼儀はさせてください。」

「仕事熱心ですね。」

 

 

悠雨にもメイドの方が用意したお茶を一口飲んでから本題に入った。

 

 

「それでお礼の件なのですが…」

「どのような事がご要望ですか?」

「この写真の方に見覚えがありませんか?」

 

 

ハスミは一枚の写真を取り出した。

 

そこには一人の洋装の男性の顔が映っていた。

 

 

「この方……麗夫人の再婚相手でしょうか?」

「お知り合いで?」

「ええ、正確には父の仕事関係の方ですけど…写真の方は貿易会社を営んでいる月彦氏です。」

「…」

「この方がどうかしましたか?」

「私達はこの方に接触したと思われる人物を追っています。」

「まあ…。」

「そして潜伏先が浅草であると判明しまして…恐らく月彦氏本人は接触者と商談程度の相手で事件には関与していません。」

「月彦氏は人脈が広いですから…そうだわ!次の夜会でその商談相手の方もいらっしゃるかもしれませんわ?」

「夜会ですか?」

「ええ、主に商談や財閥のお見合いに使われる夜会なのですが…どうかされましたか?」

「ハスミさん?」

「悠雨お嬢様、差し出がましいでしょうが…その夜会である品の噂に持ち込んで頂けませんか?」

「ある品ですか?」

 

 

私はかつて無惨によって鬼にされた時に垣間見た記憶から奴の弱点に成り得る品物を取り出した。

 

 

「珍しい…青い彼岸花なんて見た事もありませんわ。」

 

 

青い彼岸花は存在する。

 

学名はリコリス・スプリンゲラーと呼ばれ、中国を原産としている。

 

ただ、この花は完全な青色ではなくピンク色の花弁の先端が青いだけの種類。

 

完全な青ではない。

 

恐らく、奴が探し求めているのはこの彼岸花の変異種ではないかと推測していた。

 

僅かに使える能力で炭治郎君を辿って彼の子孫が存在する未来を視た所、僅か一年の内で三日しか咲かず…日のある内にしか自生しないと言う条件で発見されている。

 

しかも発見者のミスで絶滅すると言うオチ付きでだ。

 

まあ、この条件では鬼である彼らに見つける事は困難だろう。

 

今、彼女に差し出した青い彼岸花は白の彼岸花に青色の水に付け込んで着色したものを押し花に加工している。

 

要はフェイク、これで引っかかれば良いのだが…

 

お嬢様には『偶然、浅草で青い彼岸花の押し花の栞を持っていた人を見かけた。』と夜会に噂を流して貰う手筈は整った。

 

炭治郎君には事前に『私は鬼殺隊の隊士である事を隠して無惨に接触する。』と告げてある。

 

今回で仕留めるつもりはない、あくまで情報収集が目的だ。

 

例の異形鬼の出所が不明な以上は下手な行動は取れないし鬼殺隊の総戦力バランスが整っていない状況では無理強いは出来ない。

 

この接触で不明確だった繋がりが明確になれば、今後の方向性を決められる。

 

お嬢様には噂を流す程度で後は首を突っ込まない様に念を押して置いた。

 

下手をすればこちらの関係性が知られ、お嬢様にも危険が迫る。

 

当人は残念がっていたが、例の件で協力して貰わなければならないので今回の事は納得して貰った。

 

一通りの作戦を立てた後、私達は志摩崎家の屋敷を後にした。

 

 

******

 

 

<数日後>

 

 

ここ帝都内の豪邸にて。

 

商談やお見合いの誘いなど財閥の黒い思惑が蠢く夜会が開かれていた。

 

立食式なのか、各々がお酒のお供と共にワイングラスを片手に各々がブラックオーラ満載の談笑を楽しんでいた。

 

 

「少し疲れてしまったので休ませて頂きます。」

 

 

談笑をしていた青年実業家の月彦氏はホールを後に豪邸の中庭に移動した。

 

 

 

「…(青い彼岸花を持った存在が浅草に滞在しているとは、好機だな。」

「見つけましたよ。」

「!?」

 

 

夜会が開かれている屋敷の中庭は人気もなく静かな場所だった。

 

だが、とある来訪者によって殺伐とした気配が漂っていた。

 

その理由は目処前にある中庭の噴水の縁に座る女性の姿だった。

 

 

「漸く会えましたね?」

「貴様は…!?」

「二年ぶりと言うべきでしょうか…鬼舞辻無惨?」

 

 

まさか、生き延びていたと言うのか?

 

あの状況で?

 

私の血を致死量以上に与えたの言うのに?

 

鬼と化したにも関わらず、私の呪いすら解除して?

 

いや、己が死の淵にいようとも私に一撃を与えた者…

 

ならば、あの女は上弦と同じ力を手に入れたと言うのか?

 

 

「おやおや、随分と驚いていますね?」

「女、お前はどうやって生き延びた?」

「意地と根性で何とか…それでも鬼としての特徴は残りましたけどね。」

 

 

クスクスと笑みを浮かべた後、ハスミは片目を覆う眼帯を外して閉じていた片目を見開いた。

 

深淵を思わせる深い蒼の瞳には鬼の特徴である切れた眼孔が刻まれている。

 

 

「ならば、完全な鬼と化す事を受け入れれば良かったものを…」

「私は他人を喰らってまで生きるつもりもないし今後もその考えは変わらない。」

 

 

ハスミは『それに私は今まで通り、人と同じ食事で事足りるので。』と付け加えた。

 

 

「あくまで人であり続けると…無様だな?」

「人の生き方は人それぞれ、自分の生き方を他人に罵られる筋合いはないですよ?」

「…」

「罵るのなら救いようのない馬鹿として放置するのが一番ですし。」

 

 

無惨はかつての己の人としての生涯で受けた差別的屈辱を思い出した。

 

赤子が死の淵より蘇った事、その後もその身を蝕む病は癒える事も無かった。

 

周囲からは死を望む声とそれに伴う暗殺者らからの攻防と権力争い。

 

今までそう言った思想の人間しか私は出会った事がなかった。

 

だが、目処前の女は根本的な価値観と考え方がそれとはかけ離れている。

 

 

「では、人と鬼の狭間に落ちたお前を受け入れる者がいるのか?」

「在るのなら共に生き、受け入れられないのなら自分で居場所を探すだけですよ。」

 

 

世界は広い。

 

受け入れてくれる地は何処かに存在する。

 

それを探し続けて見つける事を諦めないと誓った。

 

 

「それと貴方がお探しのモノはこれですか?」

 

 

ハスミはスッと青い彼岸花で出来た押し花の栞を取り出した。

 

 

「噂の者とは貴様だったのか…」

「その様子ではこの花に何か執着があるみたいですね?」

「何故、そうだと?」

「貴方の血で鬼にされた時、記憶の様なモノが流れ込んで来た…それだけです。」

「…(致死量以上の血を与えた事で私の記憶が流れ込んだのか。」

「彼岸花は薬の原料にされていますが毒性の強い球根花…当時の人は使い方を誤ったのでしょう。」

 

 

扱い方を間違った事で亡くなった人は大勢いる。

 

例えとして全身麻酔用の麻酔を完成させ更にそれを使用した術式を完成させた華岡青洲ですら奥方の眼の光を奪い実の母親を死に追いやってしまったと聞いた事がある。

 

何かの犠牲無くしてこの薬も完成しなかった。

 

それは願いの為にそれ相応の対価を求めるような…

 

場合によっては残酷な選択肢なのかもしれない。

 

 

「鬼になったのは貴方のせいじゃない。」

「…」

「もしも、あの薬が効かなければ…貴方は人のまま終わっていたかもしれない。」

「あれは奇跡に近い。」

「貴方に架せられた代償は余りにも酷いと思った……千年近くの孤独もあれば人の精神を狂わせてしまう。」

「私が孤独だと?」

 

 

孤独と言う意味を知っているからこそ語れる。

 

長い年月がどれだけ正常な精神を脅かすのかも識っている。

 

あのエゴイスト共やバアルに堕ちた者達が一例だ。

 

それでも群れを脅かす天敵が現れれば、群れもまたそれに対応する。

 

 

「貴方は自分の行った行為を天災と同様に考えているらしいけど、それは貴方にも当てはまるわよ?」

「如何言う事だ?」

「噂の鬼狩りがそうではなくて?貴方は自然の摂理の中で過剰に人を喰らい続けた…それに伴い生態系の均衡が崩れたの。」

「…」

「貴方は貴方自身の手で天敵を作り上げてしまったのよ……鬼狩りと言う天敵をね?」

 

 

千年と言う時の中で鬼舞辻無惨と言う天敵を倒す為に人は鬼狩りを生み出し呼吸を編み出し鬼を切る刀まで生み出した。

 

人の進化とは常に生きる為の戦いから生み出されるもの。

 

 

「あーあー随分と言われ放題じゃな?」

 

 

無惨とハスミの会話を割って入って来た人物。

 

白衣姿の珍妙な老人、強いて言うならジャガイモにひじきを生やした独特の顔立ちである。

 

 

「黙れ、貴様……どうやってここに来た?」

「それは、ワシの技術でじゃよ?」

「最悪の貧乏くじ引きましたね、鬼舞辻無惨。」

「…如何言う事だ?」

「そりゃーそうじゃよ、ワシとあの子はちょっとしたお知り合いだからにゃ。」

「ええ、最悪の再会よ?ジエー・ベイベル…いえ。」

 

 

ハスミは眼を伏せたまま、現れた男の真名である『ジ・エーデル・ベルナル』と答えた。

 

 

=続=

 





※ジエー・ベイベル

極度の快楽追求主義者であり、他人の事を意に介さない自己中心的・唯我独尊な性格であり、自分以外の存在全てを玩具やゴミクズとしか見ていない。
極度のマゾヒスト且つサディストでもある。「善悪」という観念的な意見は一切意に介さず、行動に一切悪びれることがなく、全てを嘲笑し弄ぶ。俗に言う「高二病」レベルの人。
更にその言動・行動は現実の人間が持つ本音の集合体であり、いわば「何気ない、無自覚の悪意の塊」。

SRWシリーズに置いて変態中の変態の烙印を押せる人物であり倒す理由が明確な人物でもある。
この物語に置ける彼の行動履歴は『幻影のエトランゼ』の第二章を参照の事。

刀鍛冶の里編後、新・上弦が引き起こした事件でどちらに向かいますか?

  • 木乃伊事件(不死川、伊黒)
  • 集団失踪事件(悲鳴嶼、胡蝶、栗花落)
  • 船舶沈没事件(宇随、煉獄)
  • 不在担当地区防衛(時透、甘露寺)
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