お弁当を食べている最中だった。
「結城さんって、テニスをやっていた時、
そんなに凄い選手だったの?」
と、奏が龍馬に質問した。
「あぁ。そりゃ、そうだ。眩しい位には」
「中学時代は、アメリカに住んでいて、
全米のテニス大会、総なめしていた位の実力者だったって、
雑誌で書かれていた」
「昔の話だろ?だが、今の俺には、そんな栄光に浸りたくねーし。
だが、嫌でも無かったな」
「龍馬くんのテニスの先輩は、よく特製ドリンクを作っていたんだよね?」
「あれは、ヤバいぞ?味の中には、ゲテモノまであった」
「ゲ、ゲテモノ…!?」
と、奏が怯えていた。
「だが、栄養価がたっぷりで、間違いなく疲労回復には、
役に立つがな」
「それなら、飲んでみたいかも」
「止めとけ。まず、あの先輩の特性ドリンクは、
死を覚悟しねーといけねーくらい、マズイ」
「そんなに、マズイの…?」
「あぁ。本当にだ。命を懸けて、覚悟がねーと飲めたもんじゃねー」
「そうなんだ…でも、いつか飲んでみたいかも…」
「奏…」
「そう言えば、結城さんって、テニスを始めたきっかけは?」
「親父だな。俺の親父もテニス選手で、
それなりに活躍していた。だが、今は親父もお袋も、
病で倒れて、もういねーんだ。俺は失ったんだ。
大切な人も。大切な存在も」
「大切な人…?」
「それに、ネコもだ」
「あっ、龍馬くんの飼い猫の、ペロちゃん?」
「あぁ、最近は俺のところで遊ぶようになった。
あの黒い飼い猫、ペロ、俺は可愛いと思う」
「いるじゃん。大切な人も存在も、それに猫も」
「俺もまだまだだな」
「龍馬くんは、テニス以外に何趣味とか、ある…かな?」
「そうだな…テニスのアニメを観ることだな。
あのテニスのアニメはタメになる。
アニメからテニスの技を習得して、
実践して、スゲー目で見られたことなら、何度もあったとやら…」
「テニスのアニメがあるんだ…知らなかった」
「あのアニメの原作はマンガだから、マンガでも案外、タメになるぜ?」
「そっか。いつか、読んでみたいな」
「あぁ、いつかは…な」
「それじゃあ、休憩したら、練習再開しましょうか」
「そうだね」
「水分はしっかりとするんだ。
それに、汗は必ず拭くんだ。頑張るのは良い事だが、
やり過ぎは、よせよな」
「龍馬くん、心配しすぎなんじゃないかな…?
「そ、そうか…?」
「昔の龍馬くんだったら、そんなこと、絶対に言わなかったのに、
人の事、心配するようにしている、龍馬くんって珍しいなって」
「そうか」
こうして、練習試合を再開した。