星の形のお砂糖は特別だ。
そのままでもかわいいけど、お茶に沈む瞬間はもっと素敵だ。
形の崩れるまでの一瞬、カップのなかで砂糖は本当の星になる。
瓶一杯に入っている星粒を見るとわくわくして、
無くなるときが来るなんて思いもしていなかったのに、
あのわくわくがまだ新しいうちに、すぐ瓶の底は近付いてくる。
持ったときに持ってきたときより、
軽くなった瓶を棚にしまう度に、少し寂しくなる。
「何飲む?」
俺は少し考えたあと、ブルーマウンテンと、言った。
「なぁに、今日はかっこつけたい気分なの?」
あのお砂糖は、琥珀色のお茶のなかにとけていくのが
一番きれいなのになぁと思いながら、コーヒー豆の袋を開ける、
恋人の穂波は、コーヒーはあんまり飲まないけど、この香りは好き。
こんなにいい香りがあつまると、どうして、
あんなに苦くなるのかとても不思議だ。
「そういうんじゃねーよ、穂波だって、
いつもはミルクを入れるのに、今日はレモンティーだろ?」
「だって、ミルクを入れると、
お砂糖が見えなくなるでしょう?」
「随分気に入ったんだな。買ってやろうか?」
「ううん、いいの。だって、あんまり、
たくさんあるとありがたみがなくなるじゃない。
それに、龍馬くんはいつも、これがなくなる頃に、
買って来るんだもの。それが遠くなるみたいで、やだわ」
「じゃあ、もっと減らそうか?」
「だめ、そしたら使えなくなっちゃう!」
声をあげて笑う、俺を背に、お湯を注ぐとコーヒーの香りが強まる。
やっぱり良い香りだ。
「今度は、半分になる前には来るよ」
「ほんと?」
「あぁ、レモンの合う茶葉も一緒に」
「じゃあわたし、香りのいいコーヒーを探しにいくわ」
ころころと話しているうちに、紅茶は蒸してきたし、
コーヒーは待つだけになった。
昨日焼いたお菓子、いつもよりは上手く出来たと思うんだけど。
龍馬が穂波の席に、一番お気に入りの
ティーカップを出してくれてるのがすごく嬉しくなる。
淹れ終わったコーヒーの香りと
紅茶の香りが混ざって、喫茶店の香りがするみたいだ。
まだ飲みはじめてもいないのに、こんなに楽しいお茶会も、
次は、いつやるか、わからない。
始まる前から終わるのが惜しい。
「少しちょうだい」
小さなティースプーンでコーヒーを掬ってみた。
スプーンに味がつくくらいすこしだけ。
レモンの味と混ざって、不思議な味がするけど。
あんまり苦くななかった。でも、
やっぱり、あの素敵な香りの味とは違っていた。
「うーん」
「美味いか?」
「あんまり、やっぱり紅茶が美味しいわ」
「次は紅茶にするかな」
「でも、龍馬くんがコーヒーを飲まないと、
コーヒーの香りが楽しめないからたまには飲んでね」
「ミルクと砂糖を入れれば、穂波でも飲めるんじゃねぇか?」
「う、うん…そうだね」
コーヒーを飲んだ後の紅茶は、やっぱり少し甘く感じた。