これはIFの物語。
平和的解決は二木市の魔法少女によって否定される。
神浜市を代表する魔法少女と二木市の魔法少女の合意による決闘。
その結末は……

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抗争の決着

二木市の魔法少女らとの抗争に決着がついて数年。

ある日、私は十七夜に誘われて彼女と一緒に北養区へ向かった。

電車を使わず敢えて徒歩で向かったのは気分を少しでも晴らすため。

抗争は最悪の形での決着となってしまい、今も心の整理がついていないのだ。

 

「こうして七海と外を歩くのは、あの時以来になるのだな」

「そうね。あれからめっきり外出の機会減らして、仲間との交流も断ったから」

 

あの日から私を取り巻く環境と生活に大きな変化が生じた。

私生活では買い物は近場で済ませるようになり遠出をやめた。

同じ魔法少女仲間との交流を極力断ち、家の中で一人で集中出来る趣味を作った。

こうして私生活で誰かと外を歩く感覚は懐かしくさえ思える。

仕事は量を増やして私生活の時間が減るように現在進行形で調整を続けている。

仕事仲間からは仕事熱心と言われているが、私は何かに集中できる時間が欲しいだけだ。

 

「まだ…なのか?」

「…………」

「……すまない」

「気にしていないわ」

「あの場に居た私が尋ねるのは野暮だった」

「十七夜の言う通り、引きずり続けたままだから」

 

今も忘れえない抗争の日々。

平和的解決の道を模索し続けた私たちだったが、ついにそれは見つからなかった。

二木市の魔法少女たちは最期まで戦い続ける道を選んだのだ。

話し合いが決裂した私たちを待っていたのは、お互いの合意の下による決闘。

場所として選ばれたのは皮肉なことに、神浜市南凪区の海浜公園。

 

そこは、ワルプルギスの夜を倒すために神浜市の魔法少女が集まった場所。

みんなが明日への決意を新たにした場所。

 

神浜市が決闘の場として選ばれたのは自動浄化システムがあるため。

南凪区海浜公園が選ばれたのは見晴らしのよさと大人数が一度に集まりやすいこと。

そして、一般人に見つかりやすい場所であることだった。

 

戦いの理由上、双方に死亡者が必ず出る。

ならば、せめて死亡理由を明らかにしておこうということになった。

一生行方不明のままでいれば遺族に迷惑が掛かり続ける。

迷宮入り事件も多い昨今、原因不明の大量死など世間も納得しないだろう。

当時、神浜市では他の街から来た学生が地元学生と争っていることが市全体に周知されていた。

その上で希望的観測で決めたことだった。

そんな私たちの身勝手な理由から世間にもたらされた結果は―――

 

決闘当日。

二木市の魔法少女との最後の戦いに臨んだのは神浜市を代表した九名。

ういちゃんを除いたみかづき荘のメンバー五名、ももこのチーム三名、十七夜だった。

あの場にういちゃんを連れてこなかったのは、彼女に血生臭いことをさせたくなかったからだ。

 

一方、二木市は街の魔法少女全員。

彼我兵力差は相手が上だったが、戦の経験値は私たちに分があった。

 

「どのような結果になったとしても恨まない、次世代に怨嗟を持ち越さない。ですよね?」

「その通りよぉ」

「それが聞けてよかったです」

「なら、これ以上言葉は不要よぉ……かかりなさい!!」

 

言葉を交わしたのはそれが最後。

互いに殺意を全身にまとい、全力でぶつかり合った。

自ららの得物で相手の肉を裂き、四肢を切り落とし、首を跳ね飛ばし、体を貫いた。

倒れたところを確実に仕留めるために絶命するまで追い打ちを繰り返した。

穢れが溜まればドッペルを繰り出して既に死んでいる相手も巻き込んで仕留めた。

 

だが……その最中、仲間もまた死んでいった。

私たちは優位ではあったが一方的ではなかった。

 

最初に死んだのはかえでだった。

笠音アオの繰り出したマギアからももこを庇った。

だが、その隙を突かれて煌里ひかるに突かれた。

 

次にレナ。

ひかるを仕留めてかえでの仇を討った。

けれど、激昂のあまり紅晴結菜の奇襲に気づけなかった。

 

その次は…みふゆだった…。

みふゆは力が衰えている中で善戦していた。

でも、私を庇って敵の集中攻撃を受ける中でソウルジェムが砕けた。

 

その後は、フェリシアを、鶴乃、二葉さんを失った。

フェリシアは笠音アオを仕留めたが、彼女の操っていた”プレイヤー”に隙を突かれた。

 

鶴乃はその”プレイヤー”を仕留め、続けてドッペルを繰り出したが、樹里の特攻と相打ちになった。

 

二葉さんはいろはを結菜の攻撃から庇い続けたが、盾が砕けて体を貫かれた際にソウルジェムを砕かれた。

 

直後に私は結菜の右足を貫いて文字通り足止めすることに成功。

動けなくなった結菜をいろはが至近距離から仕留めて命を絶った。

 

逃亡を図った智珠らんかと鈴鹿さくやは十七夜とももこが追撃した。

しかし、二人の悪あがきによってももこが道連れにされた。

 

主だったメンバーが倒れた二木市の魔法少女は指揮系統が乱れて混乱、各個撃破して決着した。

二木市の魔法少女は全滅、神浜市の魔法少女は九名中、三名が生き残った。

 

……いろはは戦いの後、砕かれた仲間のソウルジェムの修復を試みた。

けれど、完全に砕かれてしまっては修復は不可能であることが判明した。

現在は迷宮入り扱いになっているが、決闘翌日は大騒ぎになったことは言うまでもない。

私たちの身勝手で起こした一件で二つの街が注目を浴びたが、事件の嫌疑を向けられたのは二木市だった。

神浜市で過去に散々起こした事件が理由で二木市に非があると世間は判断したようだ。

 

生き残った私たちは神浜市と他の街の魔法少女への説明に追われることになった。

決闘の決着に至るまでの経緯と事後対応についての説明、その他様々な対応に苦労した。

神浜市に潜伏していた他の街の魔法少女は事件後、私たちを畏怖するようになり、徐々に街を去っていった。

同じ地元の魔法少女たちさえも今回の一件は堪えたようで、大多数から距離を置かれるようになった。

 

苦労の最もたるのは、海外に出張中のいろはたちのご両親からの電話だった。

結論を言えば、神浜市は危険な街だから娘たちを置いておけないとの苦言を浴びせられた。

なにせ、人目に付く場所で十代の少女が大勢死んでいるのが発見されたのだ。

騒ぎにならないはずがなく、海外でも大々的に事件は報道されることになった。

それどころか各国でトップニュースを飾ってしまったらしい。

いろはたちのご両親はみかづき荘を訪れるのに時間はかからず、二人は今、元居た宝崎市で両親と一緒に暮らしている。

学校も以前通っていた学校へと戻り、姉妹で通っているらしい。

隣町なのでこちらから会いに行ける距離ではあるが、私はいろはたちに会っていない。

そこについては、ご両親は特に何も言っていなかったのだが、会えばあの日のことを思い出してしまう。

もう二度と会ってはならないのだ……

 

 

「久しぶりね、みんな」

 

到着したのは、里見灯花の計らいで特別に用意された仲間の墓。

フェリシア、鶴乃、二葉さん、ももこ、レナ、かえではここに眠っている。

お墓には新しい花が添えられており、おそらく、里見灯花によるものだろう。

ここに眠る仲間のために、彼女は毎日ここに来てくれていると聞いている。

 

フェリシアの死に彼女と交流のあった人物全員がショックで涙を流した。

 

鶴乃の父は事件のショックから心身を病んで亡くなり、中華万々歳も既に無い。

海外にいる鶴乃の他の家族はそのことを知らないだろう。

 

二葉さんは死後に能力を喪失して一般人にも再び姿が見えるようになった。

彼女の家族は二葉さんの死を気に留めていないようだった。

 

ももこ、レナ、かえでの家族は事件後に同じ時期に神浜市から引っ越した。

以来、行方は分からない。

 

時間が解決するというのは嘘。時間はすべてを押し流すだけ。

だが、今の私はそれに頼るしかない。

 

「十七夜」

「なんだ?」

「私、時々夢を見ることがあるのよ。仲間たちと二木市の魔法少女の」

「……どんな内容なんだ?」

「私たちは、お互いに非を認め合って、起きてしまったことの責任を負いながら未来に向かうの。

夢の中ではレナとかえでが二木市のひかるとアオと一緒に遊んでたりすることもある」

「あれだけのことがあった後では想像するのも難しい光景だな」

「私の願望か、あるいは自己満足が見せる幻なのかもしれない」

「…………」

「でもね、私は……私はそれでも、あの子たちに生きていてほしかったのよ……」

 

 

 

 

 

たとえそれが、夢の中でもいいから―――

 

 

 

 


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