新たなるライダーたちとの出会いを求め、その瞳は何を見る。
士たちが訪れた、何番目かの世界。
そこは、道行く人々が当たり前のように『魔法』を駆使する、まるでおとぎ話のような世界だった。
そこで出会った、病弱の王子・ハルトと、彼を守護する魔法騎士・コヨミ。
彼らと関わるうちに、士はこの魔法国家の裏側に隠された恐ろしい真実に直面していく。
ウィザードの世界のみなので、あしからず。
きちんと整列をして空を飛ぶ箒。
それに跨る様々な人々。
この奇妙な光景に、仮面ライダーディケイド……
「常識ってもんを無視しすぎだろ……」
ぼやく彼の服装は、灰色の軍服に紺色のローブとを合わせた奇妙なもので、腰には木の枝のように細い杖を差している。
世界の破壊者として様々な次元を渡り歩く士は、こうして訪れる世界毎に『役割』を与えられ、故に服装も自動的に変わっているのだ。
果たして、幻想的な世界観に戸惑っている士の背後から、
「空飛ぶ箒なんて、まるで絵本の中の魔法使いだよなぁ!」
「……思いっきり現実ですよ、ユウスケ……」
二つの声が近寄ってくる。
一方は、快活で笑顔の爽やかな青年。仮面ライダークウガこと
もう一方は、長い黒髪を腰まで伸ばした、物腰柔らかそうな女性。仮面ライダーキバーラこと
二人とも、やはり士に同行して多種多様な世界を巡り歩く仲間だ。
ふと、士はユウスケの言った『魔法使い』という言葉を脳内で反芻し、
「なるほど。大体わかった」
と、お決まりのセリフを放った。
士の渡り歩く世界には、士たちとは別の『仮面ライダー』が存在する。
士が様々な次元を渡り歩く目的は、そうしたライダーの世界を『破壊』することで、ライダーの数だけある世界が一つに融合することを防ぐ……端的に言えばそういうことなのだが、まぁ、詳しく述べるのはまた別の機会とする。
兎も角。
士の記憶の中で、『魔法を司るライダー』に該当する者がいたのである。
そのライダーとは、二度ほど戦いを共にしている。
一度目は、ライダーの根幹たる部分を支える世界で。
二度目は、後悔を抱えた少年とその父親との願いによって生じた、世代をまたぐ激しき戦いの世界で。
「ウィザード、か」
士がそう呟いた時、腰に携帯していたホルダーが独りでに開き、そこから三枚のカードが飛び出してきて、士の手元に納まった。
カードには、何かのシルエットが浮かび上がっているのだが、それが白い靄のようなもので塗りつぶされており、詳細は分からない。
しかし先述の通り、士はこのシルエットがどういうものかも理解していた。
ならば、話は早い。
後ろではしゃぐ二人の仲間を置き去りに、士がどこかへ進もうとした……その時である。
「こら! そこのあなた!」
上空から、女性の声が響いた。
これに、士やユウスケ、夏海が空を見上げてみると、飛来してくるは箒に跨った女性。
フードが備わったパンツスーツに身を包んだその女性は、士の目の前まで下降してくると、
「王級の衛兵さんが街中で油売ってちゃダメじゃない! ハルト王子に叱られるわよ!?」
そう言って、士に詰め寄った。
「……ハルト王子……?」
「……なによ、その初耳みたいなリアクション」
「……いや、別に?」
「……怪しい」
「は?」
士が訝し気な顔をした瞬間。すかさず胸ポケットから手錠を出した女性は、これを手早く士の両手首にかけた。
「おい! なんの真似だよ!」
「衛兵なのに……いえ。このルビアモンド国にいながら王子のことを聞いたこともないようなリアクション……。怪しすぎるわ。ちょっと王級の牢獄で話を聞かせて貰おうかしら」
眼光鋭くした女性へ、
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「そうですよ! 確かに士君はぶっきらぼうが故に怪しく思える時もあるけど……」
などと言い、ユウスケと夏海が慌てて止めに入る。
しかし、問答無用。
女性は、そんな二人へも電光石火で手錠をかけると、右手の中指に嵌められた、宝石煌く指輪を腹部の……掌を模したバックルへと翳した。
途端、
「イエス! グラビティ! アンダースタンド?」
何やらシックな音声が響いたかと思うと、手錠をかけられた士たち三人の体が、ふわふわと宙に浮いたではないか。
「大丈夫よ。飽くまでも任意同行だから」
再び箒に跨った女性が言うのへ、
「ふざけんな! どこが任意だよ! 誰がどう見ても強制連行だろ!」
士は必死に抗議の声を上げるが、まるで無重力下にいるかの如く体の自由が効かない状況では、どうすることもできない。
やがて女性が箒を空へと滑らせると、それに引っ張られるかのように、士たちの体もその後に続いたのである。
ウィザードにおけるベルト音声は、英語表記にしようとも思ったのですが、「魔法詠唱を圧縮及び高速詠唱化した結果、そう聞こえる」という設定に基づいて、カタカナ表記にしてみました。