鬼滅の刃:大正探偵録   作:madamu

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鬼滅の刃:大正探偵録

「何哀しくて、日の日中にここなんですか」

大伏弥次郎は中肉中背で袴姿の書生風といった身なりだ。

右手はやや太めの杖を持ち、左手には風呂敷包みを抱えている。

 

数歩先を行くスーツ姿の男性。弥次郎よりも20歳は年上で身なりはしっかりしている。

「そりゃそうだろう、弥次郎。発見は本日早朝、場所は浅草のカフェーだ」

カフェ―、女郎屋よりも手軽で店にいる女給と交渉して遊ぶ店。

後に飲食のみの喫茶という意味合いではなく、より性風俗的な意味合いが強い時代だ。

男性は鼻歌とまでは言わないが、気軽な様子で話を続ける。

 

「殺されたのは女給でお白。年は20歳。3年前に群馬から出てきて浅草のカフェーで仕事を始めて、店でも名うての女給になる。

親類縁者は東京にはおらず、ここ最近は男の食いつきも悪かったそうだ」

進む道の喧騒は大きくなり、大都会帝都東京の遊興を担う浅草へと踏み入れたのが弥次郎も肌身で感じる。

男の言葉にすれ違う人々で耳に届いた人たちはぎょっとするが、男の身なりが一般人のそれではなく、とっさに「警察」と想像させる。

 

「伯父上。それは警察の仕事で本屋の亭主の仕事ではないですよ」

弥次郎は困った顔をして言葉を返す。

数年前までは別の働き口で仕事をしていたが今は正真正銘の本屋である。

「ここまでなら久々にとった客がゴロツキで殺された、ともなるが次が問題だ」

伯父と呼ばれた男性はある店の前で足を止める。そこには門番代わりに二人の警官が立っていた。

「医者の話じゃ、首が引き千切られているらしい」

男は首をさする。

「これじゃまるで、桃太郎の鬼だな」

弥次郎も苦笑いで返すしかない。

「たしかに、鬼退治は警察じゃなくこちらですね」

「では中へ。開けてくれ」

立ち番の警官に命令すると店の扉が開く。

中には充満する血の匂い。

 

弥次郎も10年以上嗅いできた匂いだ。

伯父と一緒に店に入ると誰もいない。

片づけは中途半端。死体発見のまま。

「伯父上としては鬼退治が必要だと」

「言って癪だが警官だと相手にならん。民間人とはいえ専門家がいるなら任せたい」

「熊退治はマタギに。鬼退治は桃太郎に」

そう言いながら弥次郎は店の奥はいり、血のシミが残る部分に屈みこむ。

まだ、血の色は明るい。確かにそれ程前の血ではない。

「必要があれば警視庁も便宜を図る。まずは見て、必要であれば産屋敷の屋敷に話をしてくれ」

この伯父としては若身空で本屋にとどまる甥にそれなりの仕事をしてほしい。

そういった気持ちもあり時折こういった過去の経験が必要な仕事を回してくる。

 

鬼殺隊の出番かどうかもわからない。

その出動要請を見極めるのも藤の家の仕事だ。

 

大伏弥次郎。元鬼殺隊隊士。

帝都東京の警視庁では「鬼退治の探偵」と呼ばれる。

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