二周目提督あふたー   作:ベリーナイスメル/靴下香

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あらあら龍田さんあふたー①

 あぁ、私は、どうしようもなく提督が好きなんだ。

 

 あのプロポーズが自分だけに向けられたものではないとわかってるわ。

 それでも、それでも。

 提督が笑う度に、名前を呼んでくれる度に。

 鼓動が、気持ちが抑えられなくなる。

 

 けれど残念なことに、残念過ぎる私だから。

 

「ご、ごめんにゃはい!!」

 

「うおっ! ちょ!?」

 

 この距離は不味い、ダメ過ぎるのよ……近い、近いのよ……!

 

 我ながらとんでもないスピードが出たと思う。

 執務室から出て、自室へ一目散。そうしてベッドに飛び込む。

 

「だめだめだめ、提督、だめですだめ」

 

「……はぁ、またかよ龍田」

 

 う、うるさいわよ天龍ちゃん。仕方ないじゃないちょっと好きが止まらないのよ。

 

「き、昨日は天龍ちゃんがこう(・・)だったじゃない」

 

「いやまぁそうだけどよ。流石に部屋以外じゃもうちっとマシなつもりだぞ?」

 

 うー……呆れたように言わないでよ、ほんとに仕方ないんだから。

 

 あの作戦の後、あのボトルレターの後。

 提督は、本当に近い存在になった。っていうのも少し変なんだけど、あれだけ踏み込んでくれなかった一歩を容易く踏み込むようになった。

 十分に、十分すぎるほどに提督は私達へと愛情を示そうとしてくれる。

 

 元から近かった提督。

 物理的にも精神的にもそう。

 その距離でさえあわあわ言っていたんだ、それが更に近くなってしまえばお察しなのかも知れないわ。

 うん、知ってた。

 私のことながら、分かってた。

 望んでいたはずの一歩が叶ってしまえば無様な私が絶対にいるって。

 

「どっちにしろこうなるなら、マシも何もないじゃない」

 

「う……い、いやオレはもう大丈夫だ。慣れた、慣れたはずだ」

 

 嘘ばっかり。

 今日の朝だってそうじゃない、挨拶と同時に肩を叩かれただけで、ひゃん!? とか言って飛び上がってたじゃない。

 

「その目は止めてくれ龍田よぅ……わぁったって、オレの負けだよ。お前のこと馬鹿に出来ねぇ」

 

「よろしい」

 

 まったくもう天龍ちゃんは。

 

 まぁ私達だけじゃないんだけどね、こうなっちゃってるのは。

 時雨ちゃんは言うに及ばず、鳳翔さんと古鷹ちゃんなんかも結構ひどい。

 羨ましいと思えるのは夕立ちゃんで、前と変わらず自然体で提督と向き合えている。

 

 自然体、かー。

 

 もしも提督が今まで何かに抑圧されていたのなら、今がきっと自然体なんだろうね。

 変化と言えば小さすぎるけれど、提督は変わった。

 本当に、時雨ちゃんが言っていたけれど一歩近くなったのよ。

 

 今朝の天龍ちゃんで言うのなら、提督は最初に声をかけてから肩を叩いていたはずだ。それが今は同時。

 この間の鳳翔さんで言うのなら、あーん事件だろう羨ましすぎるわ……。

 

 元から提督のことを異性的に捉えていた人は如実に。ただそれだけの変化で、こうも簡単に一杯一杯となってしまった。

 

「異性、か」

 

「んあ?」

 

「んーん。今更ながらに提督は男の人で、私達は女なんだなって」

 

 本当に今更よね。

 元は軍艦だった私達は今、女の人の身体を持っている。

 (ふね)は女に例えられているから、なのかしら? それはわからないけれど。

 

 自分でも少しどうかと思うのだけれど、提督から伝わってくる絶対に離さないっていう空気。

 かつて絶対に沈めないっていう言葉で示されていたそれは、きっと男女って関係に置き換えてみればそうなんだろうね。

 そしてそれを嬉しく思ってしまうなんて、まるっきり私らしくない気がする。

 

「まぁ、な。オレも……きっとお前や他の奴らも、そういうことを望んでる部分があるだろうよ」

 

「……だよ、ねー」

 

 割合の問題、なのかな。

 慕情、親愛、友愛……色々な形が好意にはあるけれど、取り分け私は慕情が強いって自覚があるわ。

 

 幸せを守りたい。

 今も強く、当たり前に想っている。

 そして提督は私の、私達の幸せを創る人。

 

 だからこそ噛み合う、カチリとそう決まっていたかのように。

 

 私は、提督と一緒に幸せを創りたいんだって。

 

「けどオレは……やっぱそういうのは後だわ」

 

「え?」

 

「AL/MI作戦……ありゃ奇跡って言っていいだろ。そして二度と起こらねぇモンだ。オレ達墓場鎮守府艦娘の弱さってやつが際立った作戦でもあった。まだまだ提督の意志を担うには足りてねぇもんが多すぎる」

 

 弱さ、か。

 そうね、それも、よく分かる。

 

 あの後私達の雰囲気が悪くなったりすることは無かったけれど、もっと私達が色々な意味で強くて、結束していたのなら。

 そんな風に反省もしていた所で。

 

「だからよ、そういうの(・・・・・)は一旦龍田に任せるわ」

 

「……ひゃい?」

 

「何だよその返事は……ったく、分かってんだろ? 提督、結構必死だぜ?」

 

 ……分かってる。

 提督は、自然に近くなったんじゃない。

 何かを振り切るように、負けないように、私達へと手を伸ばそうとしているって。

 

「情けねぇことによ、オレはまだそういう所であいつの支えになれる気がしねぇ。なってやりたい、なってやるって思ってるけどよ。まだオレの刃は海に必要とされすぎてら」

 

 苦笑いしながらそういう。

 きっと、なれるなら今すぐそういう人になりたいんだろうな天龍ちゃん。

 けど今そうなってしまったら、提督にうつつを抜かしてしまう。そんなことを考えているってわかる。

 

 それはやっぱり、私達も同じなんだろうね。

 今までが必死だったから、提督の何かになろうと、一生懸命だったから。

 きっと、奥底で願っていた関係になってしまったら、提督の何かにすらなれなくなってしまう。

 

「だからこそ」

 

「あぁそうだ龍田。お前がなってやれ……いや、なってくれ。お前は盾なんだろう? だったら提督の気持ちも、守ってやってくれ」

 

 自分でも制御できないこの気持ち。

 艦娘としての私は守ること一辺倒。

 

 他に、何が出来るんだろう?

 天龍ちゃんが言うように、提督の気持ちはどうすれば守れるのだろう?

 

 そんなことを、考える。

 

「けど……」

 

「あぁ、まずは」

 

 今の提督に何とか慣れないと、ダメだよね。

 力の入らない脚と腰を眺めながら、そう思った。

 

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