魔法少女遊撃隊   作:黒助さん

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息抜きに書いてます。


魔法少女、遊撃戦

 

 

魔法少女、遊撃戦

 

 

『貴女が、日本の魔法少女?』

 

 白に近いクリーム色の長髪に、目尻の高い碧眼と、すっと通った鼻筋に小さく赤らむ唇。まさに美少女という言葉を体現した女の子がいた。

 服装はしかし、きらびやかなドレスではあるがもふもふ感マシマシである。見た目のスラッとした美形には少々合わなさそうな魔法少女チックな魔装ではあるが、それを難なく着こなしている。帽子はあのウシャンカと呼ばれるものであり、首元ももふもふであたたかそうである。 

 そう、ロシア美人型魔法少女がそこにいたのだ。

 

「えっと……ヴァ!?」

『ふぅん……? まぁ美しい、わね。貴女も』

 

 ちょっと? 急に頬に触れられると私の中のオタク君が縮こまっちゃいますよ! というよりも、女性に対する耐性が皆無な私にとっては、刺激の強い先制攻撃となる。これはかなり焦る。

 私はその頬に触れる手を見てから、相手の瞳を見つめた。うわ、宝石のような瞳だ。あれはビー玉でも詰めてるのだろうか。

 

『何か?』

「へ? えっと、あはは?」

 

 無難に笑っておく。何を言ったのだろうか、第二ヶ国語の単位を落としかけている私にわかるはずもなく、頭の中でその単語がぐるぐると巡る。

 

『何笑ってるのよ。まぁ良いわ。さっきの人たちもそろそろ元に戻りだすから、ここから移動するわよ』

「あはは? ないすとーみーちぅ?」

 

 何もわからん。はやくきてマイホープ連さん! 心の中で助けを求めながら、とりあえず外国語を喋る私。よくよく考えればこれは英語なのではなかろうか。

 案の定、言葉が通じず視線は体感温度よりも下がっている気がした。申し訳ない。謝るからちょっとその突き刺さるような目をやめてっ

 

『あー……ほら、来て』

「ぁわ!? な、なになに、どこへ連れてゆくのですか……!?」

 

 強引に引っ張られる私は、そのまま彼女についていく。少し進んだ先の路地に隠れるように入ると、彼女は何かをつぶやいた。

 すると、彼女は先程までの服装とは打って変わって、ワインレッドを基調としたドレス形の服にふわふわの白いコートを身にまとう、所謂普段着へと変身した。どうやら変身を解いたようである。

 

『ふぅ。あのカッコ、もう少しセンスのある服にならないのかしら』

「……おー……」

『何で拍手なの?』

 

 呆れた表情で見られるが、何を言っているのかは良くわからない。まぁたぶんこのタイミングでの拍手はおかしいのだろう。しかし、こう見ると更に美人に見える。少しどぎまぎしそうではあるが、言葉が通じない今としてはそれよりも異国の地にいるという恐怖感のほうが勝る。そんな私は腕を組んで仁王立ちする彼女をただ眺めていた。

 そんな動く美しき絵画は口を開いた。

 

『とりあえず、変身を解除して』

「んーと、なんて?」

『はぁ……日本語で何ていうのかな……む』

 

 どうやら悩ませているようで申し訳無さを感じる。すまねぇ、日本語しかわからねぇんだ。

 そんな折、車のタイヤがアスファルトに擦れる音がした。急ブレーキをかけた車が、路地の入口付近で止まり、中から何人かの男が出てきたのである。何となく屈強そうだ。

 私の面倒くさいレーダーがビンビンに反応していることから、これはもはや避けられようのないひと悶着が起こるだろう。勘弁してほしいのである。

 

「えぇ……何なの今度は……」

『チッ、逃げるわよ、ついてきて』

「あ、上着ありがぉ!?」

 

 どうやら、今の目立つ格好を隠すために上着をかけられた私。感謝するも、手を掴まれたうえに引きずられるように私も走ることを強要された。待ってほしい。心と理解だけがおいてかれてわけがわからないまま駆け出している。これが青春なのか?

 

『逃げた! 追え!』

『絶対に何か秘密を隠してる! 真相を話せ!』

『嫌よ! 絶対捕まらないから!』

「助けてぇええええええ!」

 

 絶対こんなの青春ではない。もはやこの中で一番の被害者は私である。拉致に襲われにと海外に行くのがトラウマになるレベルのてんやわんやに私は涙を流して助けを呼ぶことしかできない。マイホープ連さん、早く来て!

 いやしかし、美少女に拉致されると考えると割とありかも知れない。しかし、こんな怒号聞こえる青春があってたまるか。

 と、そこに黒い高級そうな車が停まった。なんとも荒っぽいのに丁寧な停車をするそれは自動で扉が開くと、運転席のおじいさんが叫んだ。

 

『お嬢様、こちらに!』

『えぇ、ありがとう爺や』

「なになになになに今度は誰!?」

『いいから、乗って!』

「押し込まないでってどこ触ってあわわわ!?」

 

 どさくさにまぎれて何か色々触られた気がするが!? などと余計なことを考えつつも押し込められた私は完璧に拉致された。扉を締めると車は勢い良く発車し、私の体は遠心力によって座席に叩きつけられた。何だこの映画みたいな展開は。見ている分にはハラハラドキドキの展開に拍手を送りたいものだが、当人になってみるとたまったものではないな。

 どうやら、先程の連中も車には追いつけないらしく、私達はなんとか彼らを巻いたのであった。助かった……のだろうか? まだ安心ができない私は冷や汗いっぱいに周囲を見回すに至る。車内である。どうしようもなさそうだった。

 

「……えっと、これからどこに向かわれるのですかね……?」

『……』

 

 物凄く心細いのですが。何か一言くらい答えてくれてもいいのではなかろうか。そうは思いつつも言葉が通じないのだから仕方がない。非常に縮こまりながら私は隣に座る美女をチラ見していた。直視は難しいでしょ。彼女は答えることなく、自身の手を眺めている。何となくだが、先程体を触られてからそうしている気がするのは考えすぎだろうか。

 などとくだらないことを考えていると、いつの間にか大きな宮殿のような建物が視界に入り、大きな門がゆっくりと開いた。おいおい、私は今どこに連れ去られているのだ?

 

『ついたわね。お父様はまだ?』

『はい。本日の会議が終わり次第来られるとのことですが』

『わかったわ。日本のエージェントとは?』

『既に連絡済みです。先に到着していますのでご安心を』

「はい?」

 

 なんだか私に対して微笑んでくれたが、どうしたのだろうか。まさか私この人の友人として招かれてる……は無いだろう。状況的にきっと、何もしなければ何もしないから座ってろと言っているに違いない。誘拐犯のその微笑みに騙されんぞ!私は!

 

『停車よし。どうぞ、お降りになられてください』

『ありがとう爺や。早々にエージェントに会いましょう。言葉が通じないのは中々厄介よ』

『ははは、そうですね』

「あはは?」

 

 しかし、円形の道より入り口の近くで止まると、私は促されるままに建物内へと足を進める他なかった。だってこの子の目つき凛としすぎててちょっと怖いんだもん。女性への耐性がへなちょこな私が、ついて来いと言わんばかりの行動に反旗を翻すことはできるはずもない。

 荘厳な建物内へと入ると、そこには一人の男性がいた。私はそれを見かけた瞬間脚がフル回転する勢いで回りだし、その男へと近寄った。そう、マイ☆ホープ・連さんその人であった!

 心細かったんだからね!

 

「連さんっっっ!」

「あ、ミキ君、どうしてたんだい?」

「どうしたもこうしたも! 今し方何者かに襲われ、彼女たちに拉致されてここに来たんです!」

「拉致って……」

 

 苦笑する連さんに私はしかし、涙目で抗議する。あれはどう考えても拉致であり、なんなら襲われもしたのだ。その主張をよそに、彼女たちは連さんに話しかけてきた。

 

『エージェント連、新しく魔法少女の派遣を日本は始めたと言っていたけど、まさかその子?』

『ええ、そうです。彼が魔法少女、幹之助です。今回は―――』

『ちょ、ちょっとまって? 彼?』

 

 名前が出たあたりで彼女は狼狽えていた。一体何なのだろう。もしかして、女の子だと思ってるのだろうか? いやまぁ、魔法少女なのに男ってそりゃありえないでしょうけれども。

 

『彼女は女の子よ? 言葉には気をつけることね』

『いや、あー、うん。見ていただいたほうが早いでしょう』

 

 キッと睨みつける彼女に、苦笑する連さん。怒られてるのだろうかと心配になった辺りで、連さんは私に話しかけてくれた。やっと会話に混ざれるのだ。

 

「幹之助くん、わるいけれど変身解除してくれるかい?」

「え? いや、別にいいですけど……」

 

 そうして、私は変身解除の呪文を唱える。すると、今回はすんなりと変身が解けた。おい、なんでタイミングよく解けるんだお前。前回134回位呟いたあれは何だったんだ。

 そう考えている間に、私は男の姿に戻った。いやー、いつ見てもフツメン、モブ顔である。イケメンに生まれたかったぜ。

 

『なんと……!!』

『な、な、な……』

 

 爺やさんは静かに驚いたが、どうやら彼女の方は心穏やかでないくらいに驚いた様子であった。無理もない。あんた車に乗せるときにどさくさにまぎれて変なとこ触ってたもんね。

 その正体が明らかになったがゆえに、男のお尻を撫で回した彼女はその事実に顔を赤らめていた。というより、トマトのようになっていた。

 

『なーーーッ!!』

 

 そう叫んで、そしてぷしゅうと音を立てて崩れ落ちた。それを私は優しく受け止めた。フ、イケメンムーブが似合わなさすぎる。しかしだ、美人のこんな姿は恐らく、一生見られないだろう。腕の中にいる気絶した彼女にしかし、私はふっと微笑んだ。

 その時である。

 

『ただいま! 我が愛娘よ、父が帰って……き……』

「あっ」

 

 そこには、ゴツゴツとした風貌に軍人のような凛々しさと厳つさを兼ね備えた素敵なおじさまがいた。若干細めなその眼光は鋭く、先程までの笑顔が嘘のように無表情となっている。

 非常にまずい状況である。

 無表情というよりも更に厳つくなる表情とその眼光の先から察するに、娘さんを抱きかかえたどこぞの馬の骨への怒りがわかる。そう、私だ。

 私は誤解を解くために0.1秒の計算を頭で行い、言葉を発した。

 

「あー……日本語で話せますか?」

「コロス」

 

 わあ。

 物騒な単語は覚えていらっしゃるようで。

 そうして私は爺やさんと連さんの様々な説得によりその場が収まるまで、この美女の父君に10分間程度追いかけっ子を行ったのであった。




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