魔法少女遊撃隊   作:黒助さん

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今回も適当です


魔法少女、ロシアにて眠る

魔法少女、ロシアにて眠る

 

 

「はへーーーーつかれた」

「みゃーーーーーーーー」

 

 私達はあのあと無事に、何事もなかったかのようにホテルへと向かうと、早々にチェックインを済まし、ベッドへと倒れ込んだのだった。荷物の整理だとか、まず風呂に入ろうとか、そういう気分には全くならないのが辛いところだ。

 ふかふかのベッドに顔を埋めていると、コンコンと音がなる。おそらく連さんが来たのだろう。私は起き上がって扉を開いた。

 

「なんですか、連さん」

「ついてそうそうすまないが、紹介だけでもしておこうと思ってね」

 

 そう言うと、連さんは控えていた黒服の男たちを廊下に並ばせた。ぎょっとする私をよそに、連さんは話を続ける。

 

「彼らは要人警護のプロだ。対人戦があった場合、彼らが君を守ることとなる。もちろん、魔法少女であることは把握済みだ」

「はぁ」

 

 私はどこかの国の大統領なのだろうか? そう思わせるほどの屈強な男たちがずらりと並んでいた。それはもうはちきれんばかりの筋肉により、スーツが悲鳴を上げているようだった。何が始まるんです? 何も始まらないでくださいよ?

 

「というわけで、外に出る場合は彼らにお願いするように」

「分かりました」

「あと……なんで変身している状態なんだい?」

 

 それはこちらが聞きたい。200回ほど変身解除ワードを言っているというのに、一向に変わらないのだ。私は苦笑いしながら説明すると、連さんも苦笑いしながらなるほどと呟いた。ホント、なんでこんなにタイミングがよろしくないのだろうか。

 

「ま、とりあえず今日はゆっくり休んでほしいかな。明日から作戦会議と共闘する魔法少女の紹介とか色々とあるから、よろしくね」

「分かりました」

「 も、現地のガイドと連絡を取るみゃ。こういうのは連携が大事みゃからね」

 

 マーチも気合十分といった感じでそう言う。なんだろうか、決戦前の緊張感を少々感じるのは悪くないな。ドキドキしてきた。

 

「じゃ、おやすみ」

「おやすみです」

「おやすみみゃ」

 

 連さんは明日の集合時刻やら場所やらを手短に話すとそう言って自分の部屋へと向かっていったのだった。残る黒服の男たちはこちらを見ると扉の隣に立った。まるで王宮などで見かける、部屋の隣に立つ甲冑の騎士である。

 

「あー……よろしくお願いします……」

「……」

 

 き、気まずい。

 お互いに言語がわからないのだ。相手も返事しようがなければ、こちらの言葉も虚空に消えていく。それは当然のことであった。はっはっは、不安しかねぇ。

 しかし、とりあえず頭を下げると、彼らも頭を下げてくれた。どうやらなんとなく日本人の行動に理解がある方なようである。なんか少し可愛かったぞ。

 

「ふぃー……さて、どうしましょう」

「どうするもこうするもないミャ。まずお風呂に入って、次に寝るみゃ」

「確かに、休息は大事ですね」

 

 貴重な休憩時間を寝ることに費やするのは果たして正しいのだろうか? せっかくの異国である。満足行くまで楽しむのが礼儀ではなかろうか。しかし、これは仕事であり遊びに来ているわけではない。が、しかし、でも、せっかくの機会に遊びに行かないのはちょっと。

 

「さ、さ、お風呂にはいるみゃ、お風呂にはいるみゃ」

「そう急かさないでくださ―――!!」

 

 その時、私に電流走る。

 今、私は風呂に入るという極めて重大な任務の前にある。これがたった今重大な任務に格上げされた理由は、ただ一つである。

 私は今、変身している状態であるということ……!!

 

「どうしたみゃ?」

「……マーチ、私は今から、重大な罪を犯すのではないでしょうか」

「はぁ……?」

 

 完全に理解できない目線を向けられるが、私の意識はたった今自身の体に全集中していた。まてまて、このきめ細やかな柔肌に、立派な双山、魅惑のボデーライン、これらを直視しながらお風呂タイム、ですと……?

 ヒャッホウ最高じゃないか。

 

「いいでしょう。甘んじて、私はその罪を受け入れて世の男性諸君では得られない感覚を得て、経て、大人の階段を登ってみせましょう……」

「うぅわ……急にどうしたみゃ……」

 

 どん引きしないでください、マーチ。流石に傷つきます。ただ、今から行う行為は確かにその傷を背負うことになるであろう。だがしかし。だが、しかし、これは仕方のないこと……!!

 私のスケベ心が劇画調で微笑むと、私を風呂場(バトルフィールド)へと誘った。ふ、ノッてやるぜ、喧嘩は買うのが男の定石よ……!

 などと、キャラが怪しくなるレベルで興奮する私は、浴室に入ると服を脱ぎ始める。目指すべき双山が、そこにはあるのだ。目の前に山があれば、登らなければなるまい。

 さぁ! 今こそ夜の男たちの夢を叶えるとき!!

 

「うぉ、まぶしぃ!」

 

 その時であるッ!

 私の体が神々しく光り始めたのだ!

 こ、これが神秘的なナイスボデーを持つ私の体(女性)か……!! 神々しくて直視すら叶わないなんて!! Blu-Ray版を買っておけばよかったと叫ぶ私の中のオタク君は放っておいて、いや、実際何がどうなって!?

 そんな理解が及ぶ前に事態は急速に進み、やがて一つに収束した。光は収まり、もはやその肢体を遮るものはない……!

 私は勢い良く鏡を見た。

 

「……Oh My Son」

 

 そして、がっくりとうなだれるのであった。そう、そこには私の私がこんにちはしていたのである。私は、男に戻っていた。貧相なその若干筋肉質っぽいモヤシのその体を前にし、私は血涙を流すのであった。

 

「みゃ、どうしたみゃ?」

「マーチ……今は一人にしてください……」

「みゃ……」

 

 みゃ……じゃないが……?

 

 結局、私はその後細々と入浴を楽しんだ後、マーチと交代して風呂場から出るとそのままベッドに横になった。なんとも濃い1日である。思い起こせばカーチェイスを2回も行ったんだぞ? そんな馬鹿な。私は映画の中に生きる男だったのだろうか。だとすればなんて脚本なんだろう。美少女になって、あんな、あんな、あと一歩だったのに……!

 悔し涙で枕を濡らしていると、マーチが満足げな表情で風呂場から出てきた。ホクホクである。

 

「みゃー、良いお湯だったみゃ」

「コーヒー牛乳、用意しておきましたよ」

「わーい、ありがとうだみゃ! ミキも飲むみゃ」

「はいはい。……では、腰に手を当て30度から45度の角度で一気に一杯を!」

 

 そう言うと、私達は喉を鳴らして口当たりの良い甘めの液体を流し込む。五臓六腑にしみわたるこの感覚は風呂上がりには最高の一杯と言って過言ではない。

 

「ぷはー! やっぱりこれみゃね!」

「ぷはー! ですね……」

 

 なんだかんだと言って、マーチとはよくこうして飲むものだ。こいつなかなかノリがいいUMAだな。二人して片付けつつそう思う。

 そして、このまま今日一日を終わらせたくない私はトランプを取り出した。ぐっすり眠る予定ではあったが、こんな1日で終わらせたくはない。楽しんで終わりたいのだ。

 

「さぁ、マーチ。決闘の時間ですよ」

「もう寝るみゃ。時間だみゃ?」

「いいえ、実はその時計は止まっているのです」

「バリバリ秒針が動いているみゃ……」

 

 そう言うマーチはいそいそとベッドに潜り込んていく。しかし、待ってほしい。今日一日体験したことを考慮しなくとも、外に出るのは危険だから室内で済ますトランプに妥協したのだ。その配慮も組んで相手してはくれないのかUMA

 

「せっかくの遠出なんです! 楽しまなければ損ではないですか!」

「でも来たのは仕事みゃ。どうせ横になったらミキ、すぐにノックアウトだみゃ」

 

 いやいや。そんなわけあるか。

 このマスコットには私が青狸にすがりついちゃうメガネ君にでも見えるのだろうか。ふ、馬鹿め。私ほどの人物になれば、眠気に抵抗しながら深夜まで遊ぶことなんて造作もないのだ。

 しかし、私のそのドヤ顔に呆れたのか、マーチは私を力いっぱい押し倒すと、掛け布団をかけてきた。

 

「ちょわっ!?」

「さ、寝るみゃ」

「ま、まて、世界の半分をくれてやる、だから……!」

 

 ぐぅ! 3大欲求如きが、私を蝕むなよ睡魔! まるで世界の敵みたいな言動をしつつも、身動きができない私は、必死の抵抗むなしく、睡魔に襲われる。

 だが、これでやられる私ではない。何よりもマーチの言動どおりノックアウトというのが気に入らない。私はそんな即落ちてしまうほどやわな人間ではないのだ。大学生の徹夜作業のなんたるか、とくとその目で味わうがいい。

 

「ぐぅ……」

「ほら寝たみゃ……疲れてるんだから、無理はいけないみゃよ、ミキ」

 

 

 

 

 翌朝。どうやらぐっすり寝られた私はマーチの言うとおり1発KOだったようだ。相当疲れていたのかもしれない。

 

「……おはようございます」

「おはようみゃ……」

 

 二人して眠気眼をこすりながら起きると、洗面台へと向かう。まずは歯磨きである。

 

「んー……あ、歯磨き粉」

「はいみゃ……」

「ありがと……」

 

 もはや阿吽の呼吸と言えるくらい、マーチと馴染んでしまっている。私達は歯磨きを終え私服に着替えると、1階のレストランへ向かいバイキング形式の朝食をいただいた。スープは美味しく、フレンチトーストも甘く美味しい。そして、サーモンのカルパッチョも頂いてしまい、朝から豪華な食を楽しむ私だった。羨ましいでしょ。この代償が昨日のカーチェイスやエレーナパパさんとの鬼ごっこなのだから、許してほしいぜ。

 

「ふぅ、結構食べてしまいましたね」

「お腹いっぱいみゃ」

 

 けふ、と可愛らしいゲップをするマーチをよそに、私はあたりを見回してみる。一般客からの視線が多くこちらに向いており、なんだかむず痒く感じてしまった。まぁ、それも致し方ない。私を囲うように立つ黒服がそこにいたら、誰だってそちらを見ちゃうでしょうよ。

 それもお構いなしと周囲を警戒する黒服さんにはしかし、感謝しかない。念願の助けはここまでしっかりされた方々なのだから。

 

「やぁ、おはよう」

「あ、連さん。おはようございます」

「おはようみゃ」

 

 挨拶をしつつ、連さんと合流する私。確か、今日は朝から魔法少女の顔合わせであった。作戦立案や報告会も兼ねており、今日から本格始動するということである。なんだか少しワクワクする私に、連さんは早々に切り上げてホテルの出口へ案内し始める。

 

「それじゃあ、行こうか」

「そうですね、魔法少女の会議ですよね……どこでやるんです?」

「うーん、そこなんだけど……」

 

 言いよどむ連さんに、私は違和感を覚えた。そのままホテルの入り口を出た瞬間に、何となくその原因を察してしまう。まって、なんで昨日の爺やさんの黒塗りの車がそこにあるの。もしかしなくても、場所はまさか。

 

「昨日のお屋敷で行うことになったよ」

 

 私の胃が悲鳴をあげた瞬間である。エレーナパパさんとまたにらめっこするなんて、黒服さんたちは助けてくれないし、懲り懲りだぁ!




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