魔法少女遊撃隊   作:黒助さん

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今回はお着替えのシーンです。
結構難しかったのですが楽しめたら嬉しいなぁと思っております。


魔法少女、着替える

 

魔法少女、着替える

 

 

 緊急事態である。

 何がと問われれば、私は未だ美少女のままなのである。助けてほしい。このドレス姿では出るに出られまい。

 

「で、もとに戻る方法はないのです?」

「みゃ……いや、変身解除のキーワードを唱えればもとに戻るはずみゃ」

「で、変身解除キーワードってなんでしたっけ」

「おやすみ、私みゃ」

「で、私は何回言いましたっけ」

「135回みゃ」

 

 私は135回も睡眠にチャレンジしたことになる。裏路地で、一人ボソボソと。新しい都市伝説でも作る気なのだろうか。

 はぁ、とため息をついて私は136回の呪文を唱えた。だがもちろん効果はない。私は手に持つ摩耶さんのケー番に目をやるも、ちょっと頼りたくはなかった。帰っちゃったばっかりの子を呼び出すのも、そろそろ21時になるというのにこの街に呼び出すのも不味いでしょう。

 私は何度めかのため息をついて壁にもたれる。背中が冷たい。心細いです。

 

「ようよう、おねぇちゃん。可愛いねぇ? どこ住み?」

「てか、何そのカッコ。コスプレ? いいねぇ好きだよぉ?」

 

 心細いとはいったが、なにもこんなクソ難破野郎を連れてこなくても良くないですか神様よ。いい加減腹が立ってきた。とりあえず、こういった輩は無視するに限る。私は奴らの反対を向いて歩き始めた。

 

「おいまてよぉ。無視はよくねぇぜ!」

「ひっ」

 

 肩を掴まれた。あまりにも唐突に大きな手が乗ったものだから、変な声が出る。と同時に、私の心の奥底で恐怖と怒りが増す。ふざけるない。こちとら男じゃ。美少女になってから出直さんかい。

 私の中のオタクも声高らかにそう叫んでいるので、私はそれを振り払い、路地の角を曲がった。

 それと同時に、私は元の姿格好に戻ったのだった。淡い光が一瞬にして弾けると、マイサンが帰ってきた感覚とともに、視線が高く、もとに戻ったように感じた。

 当然のように難破野郎達は追いかけてきていたが、目的の女の子が居なくなって困惑していた。

 

「おい、てめぇ。めっちゃ可愛い女の子見なかったか」

「え、見てません」

「ち……嘘ついてんじゃねぇだろうな?」

「見てませんが……」

 

 はぁこわ。とずまりすとこ。奴らが目的の女の子(私)を探している間に、私は裏路地を出て帰路につく。何とも騒がしい一日であった。

 初戦闘は正直、拳の感覚が苦手な触感とともに襲いかかっていた。人を殴るのは良くない。それだけではなく、何かを殴るのは良くない。拳の痛みも殴った感覚も正直なれるものとは思えなかった。

 しかし、今後もし魔法少女としてやっていくと決めた場合、私はこの拳を遠慮なく振るうこととなる。何とも想像がつかない自分がそこにいた。

 

「いやぁ、疲れた。魔法少女は大変だなぁ」

「みゃ、僕もお腹が減ったみゃあ。ご飯はまだかみゃ?」

「まだだよ帰ったばかりだよ。せがむの早すぎですよ」

 

 にしても図々しいことこの上ない。私の悩みなんざいざ知らずとでも言いたげに感じてしまう。私はとりあえず冷蔵庫の中身と昨日の余り物で夕食を作った。

 

「お風呂わいたみゃー」

「こっちもご飯ができたところです。蓋は占めました?」

「しめたみゃ! ごはん〜!」

 

 テーブルに並べて両手を合わせると、いただきますと声を合わせる。マーチとの生活もだいぶ慣れたものだ。食卓を囲って、誰かと食べる夕食は悪くない。今まで一人だった分、賑やかな夕飯は心を落ち着かせた。

 

「マーチ」

「みゃ?」

「それで、なんで変身はすぐ解けなかったんだ?」

「魔力量の調節みゃ」

「魔力量の調節?」

 

「変身がすぐできたのは僕と思いの丈、そして魔法少女への変身が関係するみゃ」

 

「まず、魔力は水、ミキは蛇口と思って欲しいみゃ。まず僕がひねる手助けをしているみゃ。で、君の思いの丈が魔力の噴出量を決めていて、魔法少女への変身が蛇口を更にひねったりその水を使用したりするみゃ」

「つまり、魔力の大放出ですか」

「そうみゃ!」

 

 そうみゃではない。人体に直ちに影響はないのか心配であった。体の中に残る魔力が消費されているということなのだから、急激な眠気やらなんやらがあるのではないだろうか?もしくは筋肉痛的な副作用があったり?

 

「大丈夫みゃ。ミキはそれを超える無尽蔵な魔力量と質があるみゃ。さらに、どの魔法少女もそうだけど、時間が経てば魔力量はもとに戻るみゃ」

「そうなのかぁ」

 

 すごいなぁ。私、やばやばのやばじゃん。思わず語彙力を司る私が蒸発してしまった。私にはそれほどまでの力が存在するのか。驚きを通り越してしまった。

 

「それはそうと、明日は一限目からあるみゃ、そろそろ寝るみゃ?」

「あぁ、そうですね。ありがとうマーチ」

「みゃみゃみゃ、撫でられるのは嬉しいみゃ」

 

 なんとも便利である。リマインダー機能まで搭載されたペットというと、私は畜生に思われるかもしれないが、そう思えてしまうくらいには可愛いのだ。時折毒を吐くけど。

 こうして、私は研修日を乗り越えたのだった。なんとも騒がしく、新しく恐怖を植え付けられた日であったことが、脳裏にこびりついて悪夢を見る。頼みます。頼みますので、変身後に抱きついた精算を変身解除後に暴力で返すのはやめてくださいね。やめてね。やめろぉ!

 

 

 

 などとして、悪夢より明けた翌朝。悲鳴とともに起きた私は、カーテンの隙間から漏れる陽の光を睨んだ。畜生、最悪な目覚めだ。

 またもマーチを起こさないように静かに出る。学校では他愛のない話や授業の話をして、思う存分日常というものを楽しんでいた。かけがえの無い日々であるのだが、いかんせんやることが単調であるためか記憶にそれほど残らない。寧ろ、昨日の戦闘を含め、ここ最近の非日常的な新しい生活を思えば、授業や会話そっちのけで呆けてしまう。

 で、気がついたら四限も終わった帰り道だった。なんならもう自宅の前にいる。時の流れとは早いものだ。

 

「さてと……ただいま、マーチ」

「おかえりなさいみゃ!」

 

 とてとてと、可愛らしい足音を立てて玄関に近寄るマーチ。私は用意していたカバンを手に取り、マーチの前に置く。

 

「今日も見回りです。たぶん」

「そうなのかみゃ? なら、ついていくみゃ!」

 

 何かがあった場合を考えるなら、今後は大学にもこのカバンとマーチが必要になるだろう。ちょうどジェヌコにも向かうということであるし、使いやすいカバンを見つけられるかもしれない。そのまま用意を済ませた私は、ジェヌコのある商店街へと足を進めた。

 ジェヌコのある、昨日の商店街にたどりついた私は、スマホにて初めての女の子の電話番号に触れる。……ちょっとドキドキしてきたな。現役女子高生が、この電話口にいると考えるとぐふふ。

 などと邪な考えは一度置いておいて、発信ボタンを押す。少しの間コール音がなって、摩耶さんの声が聞こえた。

 

「もしもし」

「もしもし? あんた今どこなの?」

「そろそろ商店街付近のジェヌコにつきます」

「オッケー! ついたら連絡するわね!」

 

 ジェヌコ。スーパーではなく、女性服や家具などを取り扱う複合商業施設であり、女性のおしゃれの楽園と言って過言ではない。ゆえあってか、その周りには老いも若いもどうあれ、女性が溢れていた。何だこの場違い感。私ここにいていいのか?? ラグジュアリーショップにいる男性の気分だわ。

 すると、少し経ってからまたもコール音が鳴り、私は着信に出る。

 

「もしもし」

「もうそろそろでつくわ。目印は?」

「赤いポストです。この辺だとここしかありませんし」

「おっけ、見えたわ」

 

 そう言うと、電話はプツリと途切れた。なんというか遠慮がまったくないな、彼女は。少しして摩耶さんがこちらに向かって歩いてきているのが見えた。手にしていたスマホをポケットにしまい、マーチに静かにしてもらうように賄賂とお願いをしておいた。

 そして、到着して開口一番に彼女はいった。

 

「なんで変身してないの」

「いや、変身して行くはずないでしょう?」

「ちっ。ならこれに着替えて」

 

 おい、なんです今の舌打ちは。ちゃんと聞こえてるんだけど?と半目で睨むささやかな反抗を見せつつ、手に持っていた衣類を受け取る。

 

「これは?」

「私の妹のお古よ。そのまま着替えたら殺すから。ちゃんと変身して着替えてよね」

 

 なんでやねん。ツッコミどころが多すぎる。まず、なぜ女性服を持ってきていたのか、何故妹のものなのか、自分のものは嫌なのか、もしかして私変態に思われているのか。ただ、統合して言えるのはただ一つである。嫌である。着るの。

 

「え、嫌なんですけど……」

「は?」

「着替えてきますから睨まないでください……」

 

 しかし、現役女子高生の睨みつけは肝が冷える。あまりにも恐ろしいものなので、即決してしまった。脅さないでください。凄く怖いので。

 そう言って私は裏路地にある、少々古びており誰も近寄らないであろうトイレの個室へと向かった。ここのトイレはあまり人が使っていない。だが、緊急的に使用することもあるトイレであって、普通は店の中のトイレを使用されるだろう。

 だからこそ、タイミング良く私は利用させてもらった。

 

「……で、何を燃やそう」

「どうでもいいみ゛ゃ……早くこの匂いをなんとかしてほしいのみゃあ゛」

 

 鼻がひん曲がってしまったマーチは、涙ながらに私にそう訴えかけた。そうか。それはそうだ。結構刺激臭のするここは、鼻が詰まってないと臭いで鼻が取れてしまう。それほどまでに臭いのだ。

 

「では、男の子心よ、燃えろ……」

「みゃ……」

 

 マッチが小さく火をつけるように、私も小さく光ると変身できていた。ため息をついて手にした服を着てみる。……なるほど。現役女子高生の妹はこういう服を着るのかぁ……うへへ。

 おっとイカンと私の中の私がクラウチングスタートで表に顕在化しようとしている。扉をして、鍵をかけて自身を抑えた。犯罪行為はだめだぜ、私。

 今の魔法少女衣装を脱ぐと、双山が……双山がっ!? あっあ、あっ、これ、これが、これがこの、なんと、お、おおきめ、の、ほほぅ?

 私の中の男が顕在化していた。もはや押さえつけることはできないがしかし、これでは時間がかかり怪しまれる。

 私は早急に慌てつつも着方を考察して試し、試行錯誤の末なんとか女性者の服を着替えることができた。しかし、なんというか……胸がきつい。結構立派なもので、上の服が合わないためかおへそが出そうであった。最悪面倒だし、もうヘソチラを許容範囲としても良いかもしれない。

 そんなこんなで個室から出て、私は摩耶さんのもとへと向かった。

 

「あの、こ、これでいいのでしょうか」

「……可愛い……!」

 

 真剣に怖いです。臨戦態勢を取りつつ、私はスカートをつまむ。

 

「なんか、スースーします……こんなの履いてるんですか、世の女性は」

「良いのよ! きれいな脚線美は出して損はないわ」

「いやなんというか……心許ないです」

「つべこべ言わずについてきなさい! ふふ、今日はあなたの服を見繕うんだから!」

「え……」

 

 エロ親父みたいなことを言っていたが、最後の一言だけは聴きのがせなかった。まって? 私の服を探すだけなの? 見回りは……?

 

「え、じゃないわ! さ、行くわよ!」

「あ、ちょっと?」

 

 摩耶さんは私の手を取ると、ジェヌコへと引っ張っていく。女の子の手って、こんなやわわ……じゃなくてだね。ここまで来ると、後戻りができなくなってしまう。まずい。私に新しい扉を開かせるつもりなのか……!?

 私は全力で逃げ出したいが、その場合何されるかわからない恐怖が私を拘束していた。畜生、あと女の子とキャッキャできるのいいななんて思ってないからな。

 暫くして、とある服のコーナーにたどり着くと、彼女は手を離した。ちょっと勿体なさを感じつつ、彼女を見やる。とても楽しそうであった

 

「何にしようかな、何にしようかな〜」

「……なにしてるんだみゃ?」

「さぁ……きっと私は可愛い服を着せられてしまうのですよ」

「男の姿でみゃ?」

「今の姿で……! 男の姿で着てしまったら、取り返しがつかなくなります……!」

「ふーん」

 

 いや、興味ないんかい。

 話題を振っておいて投げっぱなしにしたマーチは、一つあくびをしてまた静かになった。眠ったのか?

 そのうちに、摩耶さんはほっこりとした笑顔でこちらに来る手に持つ服は何着分あるのだろうか。まさかとは思うが、それをすべて試着するのか?

 

「じゃ、まずはこれね」

「え、着なきゃだめですか?」

「だめよ! はい、着替える着替える!」

 

 試着室に押し込まれて、私は渡された服装に渋々腕を通す。結構ぴったりなものを選んできているな……ある意味才能ではなかろうか。

 スカート履いて、なんとか着付けが終わった私は、背後にある鏡で自身を見てみる。うむ。とんでもねぇ美少女だ。美人系の容姿であるからか、ちょっと凛々しい感じの服装がよく似合う。

 黒を基調とした、肩出しの大人っぽいがゴシック風味のある服が、体の輪郭を強調しつつも女性の格好良い一面をアピールさせる。下のスカートはフリルが少しあるもののチェック柄であり、カジュアルな雰囲気を感じる。こちらは少々紫がかっており、色合いはとても繊細かつきれいであった。首掛けのイアリングチェーンが黒い服の上で輝き、更にいいアクセントとなっている。

 摩耶さんはセンスがいいですね。私の中の私男の子心くんも喜びの舞を踊っているくらいだ。ただ残念なのはそれが自分自身であることだ。彼女だったらなぁ……。

 などと、呆けている場合ではない。カーテンを開いて着替え終わったことを摩耶さんに伝えた。

 

「き、着替えました」

「キャーー! 最高に凛々しくて格好いいわ! じゃあ次はこれね!」

「次……ほんとにすべてやるのですか……!」

 

 これはもう、観念するべきなのだろう。私はきせかえ人形として、その後1時間ほど着替えに着替えたのだった。




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