東方雲狼劇   作:鏡狼 嵐星

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現人神を救った二人

響たちが転生する十年近く前のお話……。

ここはあまり発展していないが、ド田舎というほど田舎ではないある町。その町にある、ある小学校でのこと。

 

「や~いや~い、かえる~」

 

「きもいぞ~、緑髪~」

 

運動場の端っこで放課後に起きていた、ある少女をいじめるイジメ。5人ほどの男子がゴツイ男子を中心にその少女を囲むようにして言葉の暴力をしていた。そんな男子の一人がバケツに水を入れたものを持ってきて、その少女の上にかける。

バシャァァァ、と大きい音を立てる水はその少女のきれいな緑色の髪を水でぬらす。

 

「汚ねぇ水が来るぞ~、逃げろ~」

 

そう言いながら少年たちはバケツを蹴り、走って逃げていく。少女はびしょぬれになりながらも、そのバケツをかたずけようとするが……、

 

「うう、うわあぁああぁぁあぁあぁぁああぁぁ!!!」

 

目がしらに溜まっていた涙を耐えきれず流してしまう。

その少女がいじめられている理由は〝髪が緑色だから″という単純な理由である。だがこの髪はその少女にとって自分の母のような人の遺伝という大事なものなのだ。それを悪いように言われてとてもいい気分ではなくなってしまったのだ。

 

「うう、……泣いちゃダメ、泣いちゃダメ……!」

 

涙をふき、なんとか自分の弱い部分を克服しようと頑張っていた。……そんな姿を近くの木の陰からのぞいている人物が二人。一人は120㎝より下回っているぐらいの女子のような容姿の男の子。もう一人は130ぐらいの髪がツンツンしている少し怖めの男子。

 

「……がんばるなぁ、なにがあんなにがんばろうって気持ちにさせてくれるんだろうな?」

 

「さぁ? 分かんない。けど、いい子だよね。すごく」

 

「んで? いじめられてるあいつをどうすんだ?」

 

「もちろん、助けるさ。……また頼んでいい?」

 

「おう、任せろ」

 

二人の少年がそんな会話をしていたのをその少女が知るわけもなかった。

 

* * *

 

翌日、昨日のことを気にもせず笑顔で登校してきた緑髪の少女。いま彼女はこの小学校の六年生で、毎朝生徒の中で一番に登校するまじめな生徒。

 

「今日もがんばらなくちゃ!」

 

そう言って自分の気持ちを奮い立たせ、昨日のバケツなどを片づけ始める。現在の時間は五時。こんな時間に登校しているのは彼女しかいないはずなのだが、その近くで服を泥だらけにして校門をこっそり出ていく影が二つあった。もちろん、彼女は気づいていない。

そのあとはいつもと変わらない授業、いつもと変わらない休み時間、いつもと変わらない給食があった。変わっているところといえば二人の少年が先生に、汚いという理由で怒られていたことぐらいだった。もちろん放課後に行われていたこともいつも通りに行われていた。

 

「おい、雑草! そこらの草としゃべってろよ!!」

 

「草なら水がいるよな? ほれ!」

 

ほとんどいつも道理に水をかけられる少女は、もう慣れてしまったのかのように平然ではないが抵抗はしなかった。

 

「じゃ~な、雑草! 片づけとけよ」

 

男子たちは水で濡れた少女をいつも通りにほって逃げようとする。……いつも通りだった。ここまでは。

 

「ていやっ」ドシャッ

 

少し高めの男子の声が響くとその男子たちが一斉にこける。このイジメは校舎の裏でやっていたのでその校舎に隠れていた小さな男の子。その少年がロープのようなものをひていじめっ子たちを転ばせたのだ。

 

「てめぇ、なにしやがんだ!?」

 

いじめっ子のリーダーに近いゴツイ少年が小柄な男の子に叫ぶ。他から見ればクマ対ハムスターぐらいに見えるその身長差に周りも勢いづくが、

 

「何をしているか、だって? それは僕がききたいな」

 

「あぁ?」

 

その身長差に怖気づいてもいないのか、変わらない口調で話す男の子。

 

「今、君らがやってたことは何かって聞いてるんだけど?」

 

「雑草を処理してたんだよ。別になんか問題あんのか?」

 

「雑草? 何いってんの君たちはさ」

 

両手を上げて、あきれるようにため息をつく男の子に異議を立てるようにリーダーが口を開ける。

 

「じゃあ、てめぇはなんだとおもうんだよ?」

 

「緑色の髪なんてすごいじゃないか。大自然と同じ色だよ? きれいと感じないわけないじゃないか、きみらバカ?」

 

「!!」

 

少女は初めて家族以外に自分の髪をほめてもらったことに驚き、

 

「なんだと!?」

 

リーダーは、明らかにおちょくっている女みたいな容姿の小柄の男の子に青筋を立てる。周りも徐々に殺気立ってきており、少しの刺激で襲ってきそうな状態だった。

 

「……そいっ」

 

その状態で刺激を加えたのはその男の子本人であった。リーダーの足を踏んだのだ。

 

「いって!?」

 

「逃ぃげるんだよ~、じゃあね~」

 

逃げる様子もいじめっ子たちをおちょくっているようにわざとらしい走りをしながら走っていく。もちろん他のいじめっ子たちはそれを許すはずもなく、

 

「まちやがれ、このヤロー!!!」

 

リーダーを含めた全員が追いかける。男の子は校門のほうへ走っていき、少し行ったところでいきなり直角に曲がる。

 

「くそっ、めんどくせえな!!」

 

曲がった先にあるのは一本の木。少年はその木に隠れるように後ろに回り込む。

 

「おい、チャンスだ。捕まえろ!!」

 

いじめっ子の一人が男の子を捕まえようとその気に近づいた瞬間、

 

「待ってましたぁぁぁぁ!!」

 

走っていた男の子と別の男子特有の低い声が聞こえ、上から黒いナニカが落ちてくる。いきなり降ってきたそれに反応できず、いじめっ子たちはそれの中に突っ込んでいく。

 

「い、痛ぁ!? 何これ、いが、いがぐりぃ~!?」

 

降ってきたのは大量のいがぐり。その痛みに耐えられず、少年たちはいがぐりが少ない右側へ逃げる。がしかし、それが運命の別れ道となる。

 

「お、おっわぁぁ!?」

 

いがぐりをよけようとした少年たちが突如として現れた巨大な穴に落ちていく。そしてその下にも地獄はあった。

 

「いって、ここにもいがぐりかよ!?」

 

穴のそこに敷かれていたいがぐりに尻から突っ込み、だいたいのメンバーが悲鳴を上げる。深さは1.5メートル近くあるため這い上がれず、いじめっ子たちが落ちたまま動けずにいたときに高々と声が響く。

 

「いっえ~い、成功だ~」

 

「いつも通りだな」

 

そういうのは先ほどのかわいらしい容姿の男の子と髪がつんつんしている男子であった。二人とも勝ち誇ったような顔をしている。

 

「なかなかばれないもんだね~。わざと左側にいがぐりを落してたってことをさ」

 

そう、ツンツン頭の男の子はわざと左側を多く、いがぐりを落としていたのだ。そのため、いがぐりのすくない右側へ移動し、まんまとはまったのだ。

 

「てめぇ、とっとだしやがれ!!」

 

「誰が出すか。しばらく反省しとけ」

 

「だよね~」

 

リーダーがわめくが、それを舌を出しながら拒否する二人。右の頬を右手の小指を使って頬を引っ張りながら舌を出す。その行為を見た瞬間いじめっ子の一人が青ざめる。

 

「まさかお前ら『トラッパー』か!?」

 

「そう、ご名答さ。結構有名になったもんだね、僕らも」

 

「『トラッパー』ってなんだよ!?」

 

「この小学校の超問題児の二人だよ! 問題児っとはいっても、問題を起こしたわけじゃなく、いたずらに関してが恐ろしいほど強い二人組のことだ!」

 

『トラッパー』とは、右の頬を右手の小指を使って頬を引っ張りながら舌を出す顔がトレードマークの問題児二人組を生徒たちが呼んだ名のことである。

ただ、問題児と呼んでいるのは彼らの幼稚園から連絡の言っている先生のみで、生徒たちからはヒーローに近い人物たちである。

 

「さて、ちょっと彼女のところに行ってくるね。あとはよろしく」

 

「おう」

 

「おい、待ちやがれ!」

 

少年が少女の所へ行こうとすると、穴をリーダーが駆け上がろうとする。

 

「おおっと、ここから先は行き止まりだぜ」

 

男子が、ふちに手をかけていたリーダーに向けて砂を蹴り上げる。リーダーはたまらず手を放し穴にもう一度落ちる。

 

「……なぁ、この大穴は俺らが掘ったんだが、その掘った砂はどこ行ったと思う?」

 

「「「「はぁ!?」」」」

 

「?マーク大量だな。いいか、わなってもんは即処分するもんなんだよね~」

 

そういって、木の奥の茂みの中から取り出したのは巨大な袋。その中に入っているのは大量の砂とその中にてんてんと見えるいがぐり。

 

「さ~て、今からわなを処分しないとな~」

 

男子は笑いながら穴の中へ袋の口を向ける。その動きに、これから自分たちに起こることを予想したいじめっ子たちは青ざめる。

 

「じゃ、かたずけますか」

 

「「「「「おい、ちょ、まっ、ギャァァァァァァァァァァ!!!!」」」」」




『トラッパー』というのはこの時代の子供たちの中で有名な、仮面ライダーの敵役だと思ってください。
では、また。
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