時は戻り、現代。早苗は自分の家である『守矢神社』に帰り、神二柱に泣きつきた後、神奈子と諏訪子に事情を話そうとしているころ。
「話してみなよ、何があったのか」
「……」
「どんな相談でも受け止めるよ? だから」
「いえ、いいんです。本当に」
神奈子と諏訪子が相談に乗ろうとしても、早苗は頑として話そうとしない。無理やりは聞くまいと、二柱は黙りこむ。
「部屋に戻ってます……」
「ば、晩御飯は?」
「いいです」
早苗は何もかもを拒否するように、全てを断り、居間を出て部屋に戻る。そんな様子を今までに見たこともない二柱は、ただ額にしわを寄せること以外をすることがなかった。
○早苗の部屋の中……、
「ううっ、ヒグッ」
そこに敷かれている布団の中にうめき声とともにくるまっている早苗。その中で枕も布団もぐっしょり濡れていた。その理由はもちろん最も仲がよく、自分を闇から救ってくれた人たち。自分を救ってくれた人への言えなかったことの後悔。最も後悔していたのは三つ。ひとつは言おうと思っていた神奈子と諏訪子のこと。二つ目は私はその神でもあり、人でもある〝現人神″であるということ。そして……幻想郷への移住を。
「なんで、なんで、逝っちゃったんですかぁ……!?」
ただの後悔。懺悔。それでしかない感情を言葉で表す。もちろんまともな言葉にはならない。泣く。喘ぐ。叫ぶ。悲しむ。さまざまな負の行動。後悔。絶望。犠牲。いろんな負の感情。人の心は至極単純なことで闇に支配される。
「……」
闇に支配されるのか、闇を打ち倒すのか、それはその人の心の揺れ具合による。ただ今回の場合と人物の場合、一度取り込まれていた闇に取り込まれまいという気持ちが特に強かった。
「常識にはとらわれるな……」
いつもより低い声で自分の心に響かせる。彼らの、自分の恩人の声を真似しながら。その言葉を何回もつぶやきながら、彼女は眠りについた。浅いがしっかりとした眠りで。
○翌朝……、
彼女のことを心配していた二柱は、朝に早苗がどんな表情でやってくるのかを困りきった顔で待っていた。もちろんこの後にやってくる彼女の表情を予測することは絶対にできないだろう。
「早苗、大丈夫かなぁ?」
「大丈夫だと信じるしかないんじゃない?」
神奈子と諏訪子は心配しかしてなかった。過保護な彼女たちはとても心配である。だが、その心配も晴れる。その数秒後に。
ガララッ
「「!!」」
ふすまが開く。ここに住んでいるのは三人だけ。ならば消去法で早苗が確定だ。彼女たちは覚悟を決める。が、
「諏訪子様! 神奈子様! おはようございます!!」
白と青を中心とし、上は白で、袖や下半身は青をベースとした生地に白の水玉模様の巫女服を着、ムフンと顔を満足そうに笑みを浮かべながら、自信満々に現れた早苗を間抜けな顔で見ることになった。
「どうされたのですか、お二方?」
「いや、昨日、あれだけ、沈んで、いたん、じゃ……?」
あるとは思わない出来事が起こったために言葉がとぎれとぎれになる諏訪子。そんな諏訪湖に早苗は宣言する。
「常識にはとらわれてはいけないのですね!」
「「……はぁ?」」
「だから、常識にはとらわれてはいけないのですよ!!」
「「お、おう」」
いきなり宣言したその言葉を、二柱は意味を理解する余裕などなくただ返事を返すだけであった。
「私、幻想郷へ行きます!! お二方の為、私の友人の為!!」
その言葉を聞き、さらに思考回路が追いつかない二柱。行くのをためらっていた彼女が、行くことを強く願ったのだから。
「あ、えっと、早苗? 思考が追いつかないんだけど……。なにがあったのさ?」
諏訪子がさらに聞きなおす。早苗は自信に満ち溢れたような顔で自分の言ったことを彼女たちに説明した。その言葉を聞いた二柱は、摩訶不思議なことを見たと顔を間抜けな顔で固める。
「いいのか? お前の友人に別れも言わず行く気か?」
神奈子のその言葉に早苗は、
「もう言えませんから……」
小声でつぶやく。もちろん二柱が聞こえるわけもなく、首をかしげる。彼女の目にあった彼女の強い意志に、尋ねる必要もないと二柱も安堵の息を漏らす。
彼女の友人が自分の神様の恩人だと知るのは、幻想郷に移住してから少し後の話……。
二話上げ、がんばりました。
これで過去編は終了です。
では、また。