東方雲狼劇   作:鏡狼 嵐星

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先に言っておきますが、響はしばらく出てきません。亮介の一人旅になります。


狼が行き着いた大国

「卑弥呼?」

 

現代では邪馬台国女王である卑弥呼。もちろん現代ならほとんどだれもが知っている有名人。だが、そんな常識を破るのが彼である。

 

「聞いたことはあるが……、気のせいか」

 

元高校生なら持っていてしかるべき知識であるが、彼はそんな常識は通用しない。

 

「あ、あの、助けてくれてありがとうございます!!」

 

卑弥呼がお礼を言い、亮介は考えている頭が切り替わる。

 

「おう、頭下げなくていいぞ……、いや、恩義に思ってるならさ……」

 

「な、何でしょうか!?」

 

「飯食わしてくれ……」

 

グギュルゥゥと、腹が減ったというような音を出す亮介。そんなかっれに少女はニカッっと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○森の中にある少しばかり切り開かれた道……、

 

その中を、少女を肩車しながら歩く狼の尻尾と耳を持つ少年が歩いている。

 

「この先がお前の村なのか?」

 

「そうですよ。私が知ってる中で一番いい村なんです!!」

 

少女はとてもうれしそうな顔で、両手を広げながら力説する。その様子を少年は笑顔で見ている。緑でできたトンネルを潜り抜け、坂を上り、峠に差し掛かったところで少女が叫ぶ。

 

「あそこですっ!!」

 

亮介は少しばかり背伸びをして遠くを見る。そこには、藁のようなほし草でできた家や高床倉庫が建ち、街の中を流れる少し小さめの川が、ここからでもそこが見えるくらいの透明度を保っていて、きれいだった。そんな光景が細い柵と一つある門がとても目立つ、大きな村があった。

 

「すっげえな、とにかく広い」

 

「でしょう!! 我らの〝諏訪大国″です!!」

 

少女がその村の名を口にするが、その時亮介が素直に思ったことをつぶやく。

 

「村なのに大国?」

 

「……そこには突っ込まないでください」

 

ボケと突っ込みを交わしながら、亮介は歩みを始める。

 

「そうだ、人に化けとくか」

 

「人になれるんですか?」

 

「一応な」

 

亮介が手を合わせ、目を閉じると尻尾と耳が消える。

 

「……何者なんですか、亮介さんは?」

 

「ただの戦闘好きさ」

 

そんな音を話し合いながら、二人は峠を下りきり、その村にある大きな門の前に着く。

 

「何者だ、貴様!」

 

門番の一人が、武器を構え、亮介を毒づく。

 

「大丈夫ですよ、門番さん。私がいますっ!!」

 

卑弥呼が声を上げる。亮介はこの時代では結構な高身長の部類に入るので、上には気づかなかった門番が少しばかり固まる。

 

「ひ、卑弥呼様でしたか! 失礼いたしました! その方はどちらで?」

 

「私の恩人です。いい人ですよ」

 

(人ですらないがな)

 

珍しく亮介が心の中で突っ込みを入れる。門番たちは少しばかり怪しいという目を向けるが、卑弥呼が笑顔なのを見て、何も言わなかった。

街の中を歩き、一回り大きい神社のような家に着く。すると、奥から目がついた不思議な帽子をかぶり藍色の服を着た少女が走ってきた。

 

「卑弥呼!! 心配したんだよ~」

 

「諏訪子様~~~」

 

諏訪子と呼ばれた少女と亮介の肩を降りた卑弥呼が抱き合う。さながら恋人みたいに。

 

「女子同士だとはいえ、お熱いね~」

 

「!! コイツ誰だい?」

 

亮介が一言声を出すと、諏訪子が殺気をムンムン出す。

 

「私が妖怪に襲われたときに、助けてくださったひとですよ」

 

「あらま、そうなの。こりゃすまないね。変な奴だと困るからね」

 

「いいよ、いいよ。ただ早く飯食わしてくれ」

 

腹をさすりながら、卑弥呼に話しかける。卑弥呼は「そうでした!」と声を上げながら台所へと走っていく。諏訪子は亮介のほうを向き、頭を下げる。

 

「あらためて礼を言うよ。ありがとね、私の大事な娘なんだよ」

 

「たまたまだ、たまたま。ひとつ気になるんだが、なんで一人であんなとこいたんだ?」

 

「あの子は巫女をしててね。たまに抜け出すんだよ、一週間に一度くらいの割合でね」

 

「ちゃんと見とけよ」

 

「あーうー、そこを突かれるとな~」

 

帽子で顔を隠す行為を、亮介は笑顔で見る。そのとき、亮介は彼女の名前しか知らないことを思い出す。

 

「ところであんたの名前はなんなんだい?」

 

「ん? 自己紹介してなかったかい? まぁいいや、私は洩矢 諏訪子と言うんだ。ここで土地神であり、祟り神だよ」

 

「俺は清水 亮介ってもんだ。戦闘好きの子供(ロリ)好きさ」

 

その紹介をした後、亮介は満面の笑みで諏訪子を見る。諏訪子はそんな彼を少し睨みつける。

 

「私のこと言ってんのかい?」

 

「だめなのか?」

 

真顔で聞き返す反応を予測してなかったのか、顔を少し赤くして黙りこむ。

 

「あーうー、私は祟り神だよ……。怖くないのかい?」

 

「別に。俺の友人のかつての怒号のほうがよっぽど怖い」

 

ブルッっと体を震わせる。気楽な彼ですら響の怒号は怖いのだ。その感覚のようなものを感じ取った諏訪子も、少し顔を青ざめる。

 

「怖いんだね、亮介の友人」

 

「質は怒らせると怖い、本当に。……そういや響はどこにいるんだろうか?」

 

近くにいなかった友人の名を口にする。心配するが、彼はすぐに顔に笑みが戻る。

 

「あいつは早々死ぬような奴じゃねぇからな、心配しなくていいか」

 

たいてい笑っている彼の顔が、一番笑っているように諏訪子ですら感じられた。

 

「諏訪子様~、亮介さ~ん、ごはんできました~」

 

「おっ、飯だな。腹減った~、食うぞ~~~~」

 

「今回、君は卑弥呼の恩人だからね。好きなだけ食べていいよ」

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