二週間かけましたので、いい感じにはなってると思います。
では、また。
二つの国の巫女の戦いが終わり、その戦いの熱が下がらないうちに二人の人物が戦いに脚を進めていた。大和の国側の天照、月読は巫女である台与が意識のあるうちに回復させようと、神力を振りしぼっている。大和の国でボロボロになり気絶した卑弥呼は諏訪子に抱かれながら、ミシャクジに舐められていた。ミシャクジは祟り神である、がしかし、神力でいえば神奈子に近いぐらいあるのだ。そのミシャクジに舐められれば傷は回復しやすくなるのだ。
「亮介、がんばってね……」
諏訪子はうつむきながら、亮介の背に自分にしか聞こえないぐらいの大きさで声を漏らす。そのまま流れるかと思っていたが、亮介の気が抜けたような安堵したような不思議な声を聞いて顔を上げる。
「おいおい、よりによってお前かよ。おっそろしいわ」
「そう言うな。こっちも最初は驚いたんだぜ?」
諏訪子はその様子に驚愕した。先ほどまで明らかに相手に敵意をぶつけていた亮介が、相手とまるで友人のように話しているのだ。そりゃびっくりするだろう。
「なに、なにがあったのさ!?」
諏訪子のあわてように、亮介は振り返って笑いながら理由を説明する。
「この前も言ったと思うが、コイツが俺の探していた人物である、北川 響。俺が知ってる中で最も俺に対抗できる奴さ」
諏訪子は、亮介が発したその言葉を疑うしかない。今回、こちら側で最も強い人物である亮介が認める人物の登場。確かに喜ばしいことだが状況は最悪。勝てると信じた矢先にほぼ同じ強さの人物がきたのだ。絶望しないわけはない。が、彼は違った。
「おい、響!! お前そいつと親友だったのか!?」
「まぁな」
向こう側も知らなかったらしく、須佐ノ男が響に質問を投げかける。響は振り向きもせず答える。その様子にため息を吐く向こう側一行だが、特に気にしていないようだった。
「だが、響。数億年ぶり、とはどういうことだ?」
月読が投げかけたもっとな疑問を、響は首だけ向けてニヤリと笑う。その時〝人間″だったはずの響からなかったはずの妖力が爆発的にあふれだす。月読が声を出す前に、彼の背中から蝙蝠型の紫色の翼が生える。
「俺が妖怪なら話は早いだろう?」
「……だましてたのですか?」
天照の冷酷な一言に苦笑いしながら、言い訳を言う。
「誰も人間だと言った覚えはないんだが……、気に入らないなら勝負を降りて、どこへでも消えるが?」
今日の一言を否定するかのように、三人が首を振る。そんな様子に亮介は一言。
「おいおい、これじゃあ楽に勝てないじゃないか。ま、負ける気はないが」
「それはこっちのセリフだ。お前には負ける気にはなれん」
その言葉が戦闘用意の言葉だったのか、はたまた同意の言葉だったのか。響はその特徴的な剣を逆手に持ち亮介に向ける。亮介は右腕、体を前に出し、左腕を折り曲げて手のひらを自分に向ける。
「始めるか」
「おう」
亮介が言い終わるか分からないぐらいに、巨大な金属音が鳴り響く。一瞬にして距離を詰めた二人が、拳と剣をぶつけあった音が。
「あらかじめ『
「お前相手に手加減無用だろ!!」
鍔迫り合いのような状態からお互いが弾きあい、亮介は空中に、響は地面を滑る。亮介は空中にいる状態から、響に向けて片足を向けながら突っ込む。
「『
空中から一気に加速、地面にいる響に迫る。が、彼もただ見ているわけではなく、回避行動をとって、亮介の目標位置から少しずれる。そこに亮介は突っ込み、地面に直径10m近い巨大なクレーターを造り出す。
「『
その亮介の隙をつこうとして、響は自分の腕を貫通するように鏡を創る。そして、鏡が二枚に増えると同時に腕と体が分裂。空中に浮くその腕は、尋常ではないスピードで亮介に斬りかかる。
「なにそれ、卑怯ぉ!!」
それをバック宙で避け、脚を振り、腕に当てようとするが腕そのものが鏡に覆われて消える。そして少し遠めの場所に陣取っている響の近くにあらわれ、分かれていた鏡同士がくっつく。
「変な技を身に付けたな、お前」
「亮介は相変わらず力技なんだな」
のんきに感想を言い合う二人。視界二人ともカメをしていて、隙はいっさいない。
「ほんじゃま、次行くか! 『
亮介はしゃがみ、逆立ち、そして回転。ほぼ無差別であるこの攻撃は、狙うことはできないが一部に集中させることはできるため、響に向けて斬撃を、空気の弾丸を繰り出す。
「『
その飛ばされた弾丸に向けて、槍突きのようにして突き、剣の虚影で撃ち落とす。巨大なものには複数ぶつかり、爆砕する。あまりに多くの数とスピードによる斬撃と衝撃波の乱闘に周りの人物は吹き飛ばされそうになる。しかし、数が限られている響の技は次第に押されていく。
「くっ!」
『
「ふぅ……」
「くふぁぁぁぁっ」
二人がほぼ同時に息切れを止めようとするように、息を吐く。緊張をほぐすかのように。おわかりだろう、二人は少し息切れをし始めていた。
「やっぱり、お前相手に出し惜しみをしている暇はないな。妖力も三割くらい使ったよ」
「俺は四割って言ったとこかな……。妖力の総量じゃ負けるんだなぁ、くやしいもんだ」
普通、最低限生きるために必要な妖力、霊力、神力は全体の五分。つまり5パーセント。しかし、あくまで生きるため必要最低限である。もし、動きたいのなら一割は必要となる。つまり、彼らはまだまだ戦えることを意味する。
「ククッ、響、先に言っておくぞ」
「どうした?」
「これからやんのは、殺し合いだ……!!」
その言葉が響いた瞬間に亮介の体から妖力が滲み出しだし、体の節々から赤い液体、つまり血が流れ出して、体の腕や脚を滴り、さまざまな部分をぬらす。彼の体、いや正確には彼の耳と尾が黒と紅が入り混じった色にどんどんと変色していく。まるで、地獄につながれた鬼のように。
「『
その技を見た瞬間に響は恐怖か何か分からないが彼としての直感で剣を使って前を塞ぐ。亮介はその構えが完了する前に響を殴った。そして
「「「「「……はぁ!?」」」」」
響はそのまま数百メートル吹き飛ばされ、遠くにあった森へと突っ込んで巨大な土煙が上がる。亮介は殴ったままの体制で地面に降り立つ。彼の体にまとわりつく血は彼の動きに合わせて地面をぬらす。
「……まさかこれで死ぬお前じゃぁねえよな、響」
その言葉が聞こえたかは分からないが、その言葉に反応するかのように亮介の目の前に等身大サイズの鏡が現れる。そこから出てきたのは全身がズタズタの響だった。
「血液の一部を気化、それによる超高速の酸素の交換によって身体能力を極限まで上げるか、規格外な事するな~」
響は頭上に創った『
「少々妖力が足りないがしかたあるまい」
彼が翼を大きく広げ、妖力を大きく放出する。紫色の翼の根元から黒紫色の煙が這い出てきて、腕に体に脚に翼に巻きつく。翼は紫にさらに黒が加わりいっそうまがまがしさが増し、彼の腰から煙が2本伸びて小ぶりな翼を生み出す。少し紫がかかった銀髪は半分以上が紫に代わり、逆立つ。
「『
響のその行動を見て、亮介はすべてを理解する。自分が生み出した圧倒的に体を強化する技を響も編み出しているということを。
「……まじかよ」
亮介が額を抱えるのを見て、響は苦笑する。
「お前が強化の技を考えることぐらいお見通しだよ。何年の付き合いだと思ってる?」
まるで当たり前だというように言い放つ。だが、亮介もそのことをすぐに理解したらしく大笑いする。
「やっぱお前はそうじゃねえとなぁ、響ぉ!!!!」
音を置き去りにするスピードで亮介は響を殴りにかかる。しかし響は全く動かず、ただ剣を前に振る。すると亮介がわずかに横にずれ、そして響を通り過ぎてしまう。
「……これがどういうことか分かるか? 亮介」
亮介は少し間をおいた後、手をたたいて理解したことを表す。
「なるほど、空間を斬ったわけか。音を置き去りにするよりそっちの方がかっこよさそうだな」
もう周りの人物は感嘆を通り越してあきれまで出てくるほどになった。大和の国でも諏訪の国でも伝説では空間を斬るのには二百年に没頭することが必要とされている。それを成し遂げている時点で完全に妖怪を超えてバケモノの域だ。
「もっと楽しもうか、心行くまで」
「あぁ、もちろん!!」
そんなことに驚きもしないのか、亮介は響に笑いかける。それにこたえて響は亮介に続けることを提案、亮介はそれを承諾する。
そのまま数十分、剣で空間を斬る音と拳が振りぬけた後に鳴る巨大な爆音が崩壊の歌を響きあう。草原は元あった緑色を保つことなく茶色に染まっていく。次第にところどころが紅く濡れ、紫色の霧が充満し始めた。妖力が詰まったそれはあまりに濃く、周りの人物たちは吐き気すら覚えるまでになっていた。
「「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」」
周りが紫色と紅色に染まりかけたころ、二人は大きく息切れして対峙していた。亮介は血を流しすぎ、響は妖力の枯渇でもう倒れそうになっていた。
「そろそろ……負けを……認めたらどうだよ、響?」
「無理だな……言ったろ、負ける気にはなれんって」
もう倒れてもおかしくないぐらいの妖力なのにいまだに立ち続けている二人。そんな状態の中、響が思いもよらない提案をする。
「なぁ、亮介……?」
「何だよ……?」
「俺は負けを認めないし、お前もそうだろう……。なら最後に本気で一撃をぶつけあわないか……?」
響の提案にしばらくの沈黙、そして、
「……乗った!!」
亮介は左手に右拳をあて後ろに構えて、右拳に残り少ない妖力をため込む。さらに彼の中に流れる血を最速で渡るようにして、全身の力を右拳にため込む。あまりに凝縮されたその力は紅黒く発光すらし始めた。響はラグナシアを上に構え、四つの翼を大きく広げる。すると四つの翼の先に小さな魔方陣ができ、四つの紫色のビームのようなものが出てきてラグナシアに当たる。ラグナシアは元あった銀色と紫色が喰らい合うように降り混ざり、刀身をはるか高くまで大きく伸ばす。
「行くぜ、『
「ああ、『
その二つの最強の一撃が当たった瞬間、時が止まった。
○
あまりの一撃に全てが吹っ飛び、全てがなくなった。観客組は天照と月読の加護によりどうにか損傷は免れたが、彼らがいた場所は……、
「亮介ーーーーー!!!」
巨大な穴が見えないぐらいの底で巨大な隕石が落ちてきたかのようになくなっていた。
「あの二人はどこ行ったんだっ!?」
二人の存在を確認できない不安に見舞われる神奈子の声が響く中、天照が叫ぶ。
「どちらも生きています!! あれを!!」
全員が穴をのぞきこみ、天照が自らの力で穴を照らす。底にいてボロボロになりながらも負けぬ意志を持ち、いまだに立っている人物が二人。そして掃除に倒れそうになる……。
「亮介っ!!」
諏訪子の叫びに亮介は辛うじて踏みとどまる。しかし、響は
「ははっ、やっぱり体力じゃかなわないな、お前には……」
そのまま倒れこむ。勝負が決まったと両国が判断して、天照そして諏訪子が中に跳び下り二人を抱えて地上に出る。
「諏訪子、勝ったぜ……」
「もう、無茶しすぎだよぉ……」
亮介の無邪気な笑顔と言葉に諏訪子は涙ぐみながら文句を言う。そんな諏訪子の頭を震える手でなでながら亮介は最初に言った注意をぶり返す。
「大将はどっしり構えとけって言ったろ。さぁ、行って来い」
「……うん、絶対勝つよ。二人の為にも」
亮介と卑弥呼を交互に見た後、気迫を出しながら戦場へ赴く諏訪子を最後に亮介は繋ぎ止めておいた意識を手放した。