それでもこれからもよろしくです!!
では、また。
「あぁ~、やっとゆっくり寝られる」
「その前に、俺、腹減ったんだけど」
80以上の妖怪軍と戦闘し、相手を全滅、さらにほぼ無傷で、のんきに会話しながら帰ってきた二人の人物。その二人に対して町人は感嘆と驚愕と恐怖を感じていて、神子、屠自古、布都の三人だけは別のことを思っていた。
(美しい……)
二人の戦いを見ていて思った感想で、最初に思ったことだった。亮介は暴れているだけに見えるが、凶暴な美しさがあり、響はその見た目からも分かるだろうが綺麗と言える美しさがあった。
「……お~い、大丈夫か~。神子~?」
亮介に目の前で手を振られ、神子はハッと意識を現実へと戻す。屠自子や布都も響に頭を小突かれたらしく、頭を振っていた。響も亮介もそんな様子を見て少し笑った後、町に向けて歩き出した。その二人に質問が山ほどある三人はその二人を引き留める。
「……何か用?」
響がそのまま歩いて行ったのに対し、亮介は神子の言葉に返事を返した。
「あなた方は本当に何者なのですか?」
「ただの旅人、って言わなかったっけ?」
「確かに、旅をするにはある程度の身を守る手段が必要であることは分かります。しかし、あれだけ強ければ旅なんかする必要なんかないでしょう」
「旅好きだからじゃ駄目か?」
「そんなに簡単に割り切っていいような問題じゃありません!!」
「そういうことは響に言ってくれ。俺はあいつの考えに従ってるだけだから」
その言葉を聞いた瞬間、歩いて行った響を屠自子と布都が連れ戻そうと走りだした。響は最初は抵抗したが、二人がしつこくくっつき、振りほどけなかったため、諦めて戻ってきた。
「……んで、聞きたい事は?」
「あなた方は何者か、ということです」
「旅人、じゃあ駄目か。……駄目だ、眠すぎて考えられない」
神子の視線を感じて他の案を考えたのだろうが、途中でやめてしまった。三人は口を開けてしまったが、普段こんなことはないのか亮介が一番面食らっている。
「明日でいいか? どうせ法隆塔を見に行く気だったし、あんたらはそこにいるんだろ?」
その提案に神子は一言。
「明日でかまいませんが、今から来ていただきます。あなたの言う法隆塔に」
○ 法隆塔内部~皇太子の間~
案内されるがままについてきた二人は、神子の住む部屋に案内された。亮介は料理を頼み、響は壁にもたれかかって早速寝始めた。神子は推古天皇様に報告してきます、と言って部屋を出て行った。数十分後、いくつかの肉料理が登場し、亮介はそれにかぶりつく。そんなときに布都がある疑問を投げかける。
「なぁ、亮介殿。お主の能力はなんなのじゃ?」
その疑問は屠自子にもあったのか、屠自子もこちらの顔を向ける。
「一部始終しか見てなかったが、一瞬で移動したり、すごい威力で相手を殴っておったし……」
布都と屠自子が亮介に尋ねたとき、亮介は口の中を空にしてから言った。
「俺か? 俺は『距離をゼロにする程度の能力』だ」
「距離? それなら瞬間移動の説明はつくが、あんな力を人間が出せるとは思えんぞ?」
屠自子がそう尋ねると、亮介が人差し指と親指を重ねて〝でこピン"の用意をして、屠自子の額に寄せ、指をはじく。
「ぐっ!?」
屠自子がわずかに浮かび上がり、後ろに吹っ飛ぶ。
「自らの筋力の限界。それを距離に見立てて、限界近くまで強化した状態で修行したんだ。だから、能力を発動させなくても十分強いんだよ」
屠自子が額を赤くしながら、布都が固まった顔で納得した。
「じゃあ、響の能力はなんなのじゃ? 鏡を扱っておったが『鏡を操る程度の能力』か?」
「ああ、そうだ。俺から見れば、めっちゃややこしいぜ、あいつの能力。鏡の形変えたり、反射させたり、中にいれこんだり……。それぞれで全く霊力の込め方が違うんだよ。あいつぐらいの頭の良さがないと扱えないぜ、あれ」
響の顔を見てやれやれと首を振る亮介を見て、二人はその気持ちが分からなかった。自分自身の強さが良くわからないとよく言うが、亮介の強さは響の霊力の使い方と同じくらい強いと二人は感じていた。
「あともう一つ聞かせてほしい。私と布都に対して響が言った一言の『能力の使い方もなってない。もう少し活かすことを考えた方がいい』とはどういうことか、教えてくれないか? もちろん言ったのは響だ。わかる範囲でいい。頼む」
屠自子が土下座に近いぐらい頭を下げてきたのに驚いた亮介は、屠自子に頭を下げさせることをやめさせ、話し出した。
「お前らの能力なんだっけ?」
「我は『風水を操る程度の能力』。屠自子は『雷を起こす程度の能力』じゃ」
ん~、と少し考えた後、
「たぶん、響の言ったことはあってると思う。よほど攻撃にならないと分かるような能力じゃない限りは、戦うことができる能力のはずだ。もし俺や響がその能力を使ったらさっきの妖怪軍なら退けることはたやすくできるな」
「それは二人がけた違いな力を持ているからで……」
「そういう考えがある限り、響の言っていたことを実現することは無理だな。俺にも才能があったことは認めるが、俺は能力に気づく前にお前らぐらいには戦えたぜ?」
屠自子は爪を噛み始め、布都は頭を掻き始めた。
「まあ、焦ることもないし、〝活かす"ならお前ら相性がいいんじゃないか? 水と雷だろ?」
ガランッと豪快な皿の音を響かせ、あくびをする。あり得ないというような顔でお互いの顔を見ていた屠自子と布都を尻目に床に寝っ転がり豪快にいびきをかき、寝始じめた。